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メールマーケティング運用のポイント(8):
コンテンツ編

公開日:

2017年9月5日

この記事は13分で読めます

執筆者 岡安 裕一

執筆者 岡安 裕一

 メールマーケティング運用のポイント(8): コンテンツ編

第6回「メールマーケティング運用のポイント:効果測定編」では、メールマーケティングを改善していくために必要な効果検証を行うための基礎的な内容を解説してみました。

今回の記事では、メールマーケティングを開始する際に、顧客リストの整備や最初のメールでどんな内容を送るべきなのかといった初めの一歩を踏み出すための、現実的なシナリオについてご紹介していきます。

メールマーケティングやメルマガは、なんとなく効果が出そうとか、やってみたい!となっても、実際に踏み出そうとすると、いろいろな壁にぶつかることがあります。

まずはそのような壁をどのように乗り越えるのかといったことのヒントになれば幸いです。

本記事で学べること

  • メールマーケティングを始めるためのシナリオ

社内に散在している顧客リストや名刺情報をまとめ上げて活用するシナリオ

社内に散在している顧客リストや名刺情報をまとめ上げて活用するシナリオ

シナリオの前提と目的

CRMを導入済みでない場合などは、顧客データが最新の状態で管理されていることはありませんし、CRMが導入されていたとしても、既存顧客のデータのみを管理しているとか、メールマーケティングを前提としたデータ項目が整備されていないことも多いでしょう。

そこで今回ご紹介するシナリオとしては、メルマガなどの長期的なマーケティング施策ではなくて、まずは短期的な施策を実施することを前提とします。

長期的なシナリオの話になると、大きな話になりすぎて、なかなか話が進まないことが多いのが現実です。

スタートの時点でつまずかないために、短期的な効果が出やすいシナリオを実行し、どの程度効果が出そうかの見込を立ててから長期的なシナリオを練っていくというのが現実的なシナリオといえます。

もちろん、組織内でメールマーケティングの実施がすでに承認されているのであれば、長期的なシナリオも想定して始められるべきでしょう。

想定される効果

ここまで説明したような短期的な成果を上げることを前提としてシナリオを進めた場合、どのような効果が想定されるかというと、

  • 0(ゼロ)から始める新規開拓に比べて、労力対効果・コスト対効果が高い施策の実現
  • 比較的 短期的な成果を得られる
  • メールマーケティングに対する評価向上(メールマーケティングを推進しやすくなる)

といったことが考えられます。

多くの企業ではせっかく集めた見込顧客の情報などは、ほとんど活用されず、キャビネやPCの肥やしとして眠っています。

メールを使って、その眠っている情報を活かした施策を実施することで、0(ゼロ)から新規開拓するような活動と比べて、コスト対効果の高い施策を実現できる可能性は高いといえるでしょう。

見込み客の情報などはほとんどないような場合でも、既存の顧客とのコミュニケーションが発生していない場合、顧客以外の取引先にきちんと自社のサービスや商品を紹介できていないような場合には、十分効果を上げられる可能性があります。

そして、少しでも目に見える成果がでれば、その後のメールマーケティングやWebを活用したマーケティングなどが進めやすくなるのです。

シナリオを進める上での注意点

具体的なシナリオの進め方

それでは、具体的なシナリオについて説明していきます。

メールマーケティングのシナリオは、大きくは
 「企画・準備」、「実行」、「検証」
の3つの段階に分かれます。

まずは、企画・準備段階から。

1.既存リスト整備

前提のところでも触れましたが、多くの企業では顧客リストがきちんと整備されていないことが多いため、どのようなシナリオを進めるにしても、避けて通れないのが、見込み客&顧客リストの整備です。

顧客とは、は説明するまでもありませんが、契約や販売を行ったことがある顧客のことです。

それに対して、見込み客は、セミナーや展示会、Webお問い合わせなどをきっかけに名刺やデータを保持しているものの、実際の契約などは発生していない顧客候補のことで、一般的には、顧客数と比べると数倍から数十倍の数を保持していることとなります。

過去にリストを整備したことがなければ、まずはこの2つの情報を整備していくことからシナリオは始まります。

名刺のデータ化、社内に散在するExcelでの各種リストの収集、顧客以外の取引先のリストの収集などを行い、最終的に一つのリストにまとめて、顧客管理の仕組み上に一元化することになります。

Zoho CRMをはじめ多くのCRMサービスでは、メールアドレスや名前などを元にした名寄せ機能なども持っていることがありますが、大量の処理を一気に済ませるのは得意ではありませんので、ExcelやDBなどを使って、ある程度人手を使ってデータをきれいにする必要があります。

2.キャンペーン企画

今回のシナリオでは、リストの整備後に具体的なキャンペーン(一定の目的をもって行われる組織的なマーケティング活動)企画を行う流れとしています。

これは、そもそもどの程度の見込客数・顧客数があるのか、それはどのようなリストなのか、などがわかっていないと、特に短期的な成果を上げる企画を考えるのが難しいためです。

シナリオの最初の段階で企画をある程度決めておく必要もあるかと思いますが、その場合でも、いったんリストが整備された段階で企画を練り直すことをお勧めします。

ここでの企画とは、例えば、

  • 既存顧客のリストが大半を占め、一番低価格のサービスを利用している顧客が多いので、より高機能のサービスに乗り換えてももらうアップグレードキャンペーンを進める

とか、

  • 見込み客のリストがそれなりにあり、製造業が多いので、製造業向けの新規購入者向けのキャンペーンを進める

といったことが考えられます。

このキャンペーン企画も、リストの中身や、企業の持っている課題などによって優先度や実現可能性などが変わってきますが、できるだけ効果が出やすいという観点で検討してみましょう。

そして、営業部門をしっかり巻き込んで、メールで申し込みまでしなかったけど、メールを複数回開封したり、URLをクリックしてWebに誘導できたりした顧客は営業が電話でフォローして、クローズまでもっていくなどの具体的な営業活動も想定しておけるとよいでしょう。

3.メール配信準備

ここでは、キャンペーン企画を元に、配信リスト(見込・顧客・業種などで絞り込む)やメール文面を具体的に決めて作成していきます。

Webサイトへの誘導などを行う場合は、Webページやフォームを作成し、営業的なフォローを行う場合には、どのタイミングで誰がどのようにフォローを実施するのかなども決めていきます。

これはやや余談ですが、いわゆるマーケティングオートメーションツールなども活用すると、メールからの誘導だけでなく、その後の他のルートでのWebサイト訪問なども追跡できるようになるので、必要に応じて検討&準備ができるとよいでしょう。

メールをまったく送ったことがない状態からの配信時には、開封やクリックをしてもらえる可能性も高いので、顧客行動の追跡を行うためには最大のチャンスといえるので、このチャンスを逃さないようにしましょう。

Zoho SalesIQを利用すると、Zoho Campaignsから誘導できた顧客の追跡が容易にでき、開封やクリック以外の行動などがすべてZoho CRMに自動で連携されるようになります。

なお、この段階で、組織内の関係者向けのリストなどを用意して、テスト配信をこなして、後々の誤配信や差込データの誤りなどが発生しないようにしておきます。

ツールによっては、テスト配信では、正しくデータが差し込まれるかわからないということもありますので、必ずテスト配信を行うようにしましょう。

ここまでで「企画・準備」段階が終わり、「実行」段階に移ります。

4.メール配信

準備した内容を元に、メール配信を行います。

Zoho Campaignsのようなツールを使えば配信に手間はかかりません
最初の配信ではかなりドキドキしてしまうと思いますが、テストをしっかり行っておけば、問題はありません。

配信する際には、配信日時は意識して送れるとよいでしょう。

月曜の午前中などは、週末からのメールが溜まって、見落とされる可能性があるなど、タイミングによって、開封率などは大きく変わってしまう可能性があります。

リストを眺めたり、お客様からのメールの返信タイミング多い時間帯などの検討をつけたりしながら、具体的な曜日と時間を決めて配信を行いましょう。

なかなか見当がつかないといった場合には、火~木の間のお昼休み明けくらいのタイミングが、BtoBビジネスにおいては読まれやすいかもしれません。

メール配信を行うと、どんどんその反応を得ることができます。

そして、最初に見える反応は、配信エラーです。

初回の配信であれば、集めたリストがどの程度古いものかにもよりますが、2,3割エラーとなってもおかしくありません。

エラーとなる対象者は、転職などでメールアドレスが存在しない状態となっていることがほとんどです。

この時点での配信エラーは問題ではなく、リストの精度を上げていくのに必要なプロセスといえるものです。

Zoho Campaignsでは、メールアドレスが存在しない場合などは、その後は自動的にメール配信対象から外すといった機能を持っていますが、このような機能がない場合には、エラーとなったリストをもとに、配信リストから手動で外すといった作業が必要です。

もし、どんなメール内容や件名が反応がよいか悩んでしまうといった場合には、A/Bテスト配信と呼ばれる手法を採用してもよいでしょう。

A/Bテスト配信は、件名や文面などを2種類用意し、同じようなリストに同時に配信し、それぞれの反応率の違いを見て、その後の配信に活かしていくという手法です。

ある程度配信対象数がないと、結果の検証にあまり意味がなくなってしまいますので、最低1,000件くらいは配信対象が欲しいところです。

Zoho Campaignsでは、全体の配信リストの一部をA/Bテスト配信の対象とし、効果が高い側のメールを残りのリストに自動で配信するといった機能をもっています。

この辺りはメール配信ツールによって、いろいろな機能を持っていますので、ツールの検討の際に評価項目として入れておいてもよいと思います。

5.営業フォロー

メール配信を終えて、ひと段落つくと、メール単体で得られる効果もひと段落します。

メール配信の効果を最大限に活かすためには、営業フォローが欠かせません

企画段階で検討した内容を元に、フォローコールや訪問を行いますが、当初の想定よりも、反応がよい場合も、悪い場合ももちろんあり得ます。

そのような場合には、当初企画にこだわりすぎず、優先順位やフォロー方法の見直しを行わないと、営業担当者がパンクしてしまったり、まるでフォロー対象がいなくなったりといった状況になってしまいます。

また、その後の検証に活かす意味でも、営業フォローの結果は、別途資料を作って共有するといった無駄をなくして、各担当者が顧客管理の仕組みにデータを入力し、日々の状況を関係者が簡単に確認できるような形とするのがよいでしょう。

ここまでで「実行」段階が終わり、最後の「検証」段階に移ります。

6.実行結果の検証

メール配信後にある程度の期間(1か月など)がたった段階で、キャンペーン全体の効果検証を行います。

メールマーケティングの効果は場合によってはすぐ出ずに、1年後などのボディブローのように効いてくることもありますが、そのような場合は、他の施策との複合的な要因が考えられ実際の検証は難しいため、まずは短期的にどんな効果が出たのかを検証します。

できれば、企画段階で、キャンペーン内容などに応じて、どんな効果がどの程度あれば効果が出たと認められるといったことを決めておけるとよいでしょう。

大概の場合、まったくやらないことと比べたら何らかの効果が発生することになりますが、よく発生するのは、キャンペーンと関係なく商談が始まったといった類の状況です。

これは、キャンペーンには興味をもってもらえなかったけど、企業やサービスを思い出してもらうことによって起こるのですが、これもメールマーケティングの効果と言って差し支えないと思います。

ただし、後付けの効果検証を行ってしまうと、いくらでも効果をねつ造できてしまうので、結果的な気づきと、最初に想定した効果はしっかりと分けることをお勧めします。

いかがでしたでしょうか?

今回は、短期的な成果を目的とした、メールマーケティングの第一歩の進め方をざっくりと紹介してみました。

このシナリオでメールマーケティングの効果が上がりそうだねという話になれば、長期的なメルマガ施策やブログなどと組み合わせた、比較的手間もコストもかかりやすいマーケティング施策を実行しやすくなるはずです。

次回の記事では、法律や倫理的な観点、マーケティング施策としての注意点などをまとめて、連載記事の締めくくりとする予定です。

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