NPS®(ネットプロモータースコア)とは、顧客体験や顧客ロイヤルティに関して、ブランドの立ち位置を理解するための有力な指標となる調査を意味します。
このブログでは、NPS®の意味と計算方法、導入のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
なお、NPS®は、フレッド・ライクヘルド、ベイン・アンド・コンペイニー、サトメトリックスによって開発され、ライクヘルドが導入し、フォーチュン1000社の約3分の2の企業が導入しているものです。(注:Net Promoter Score、Net Promoter、NPS®は、NICE Systems, Inc.、Bain and Company, Inc.、Fred Reichheldの商標です)。
NPS®の概要
1. NPS®(ネットプロモータースコア)とは
NPS®(ネットプロモータースコア)とは、顧客に送る1問のアンケートで、製品や企業に対する顧客ロイヤルティを簡潔に把握するための指標です。
以下は、NPS®における一般的な質問例です。
【質問】当社の製品を友人や同僚に薦める可能性はどの程度ですか? 0~10の11段階でお答えください
2. NPS®による顧客分類
回答者の評価内容に基づいて、「推奨者」「中立者」「批判者」の3つのカテゴリーに分類できます。
カテゴリ | 点数 | 満足度 | 属性 |
---|---|---|---|
推奨者 | 9,10 | 高 | ロイヤルカスタマー |
中立者 | 7,8 | 中 | 他のカテゴリに移動する可能性がある |
批判者 | 0-6 | 低 | 解約する可能性が高い |
3. NPS®の計算方法
ネットプロモータースコアは、9点または10点をつけた参加者の割合から、6点以下をつけた参加者の割合を引いて算出します。
ネットプロモータースコア=推奨者の割合 ー 批判者の割合
4. NPS®スコアの解釈
スコアの範囲は-100から+100。マイナスの場合は、プロモーターよりディストラクターが多いことを意味し、プラスの場合は、その逆を意味します。
5. NPSの質問文と質問項目
NPS®の設問は変更できません。ただし、以下の例のように具体的な製品名やブランド名を質問文に含めることは可能です。
"0から10のスケールで、あなたは私たちの製品/ブランドを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?"
6. NPS導入のメリット
NPS®調査を行うことで得られるメリットは下記の通りです。
- ビジネスの成長予測
- 解約率の低減
- ロイヤルカスタマーの特定
- 改善点の発見
- 顧客生涯価値の向上
- アップセルやクロスセルの機会発見
- 競合他社に対するベンチマーク
7. NPS導入のデメリット
NPS®は効果が高いアンケート手法として人気がある一方、いくつかのデメリットがあります。
- 「なぜ」という問いに答えられない
- 回答離脱者を正確に区別できない
- 同じ商品でも地域やセグメントによって回答結果が異なる
- 適切なフォローアップができない
- サイロで処理される
8. NPS®の種類
トランザクション調査:
顧客がその製品・サービスを利用した直後の顧客体験に焦点を当てる方法です。顧客による商品・サービスの購入や、電話、メールでの問い合わせなど、それぞれの体験を体験直後に評価します。顧客体験を詳しく把握でき、自社が提供するブランドやサービスが抱える課題を発見できるのが特徴のこの調査は、PDCAをサイクルをまわす基準としても効果を発揮。トランザクション調査は1年を通して行うケースや、月次、週次、日次など必要に応じてその都度実施するケースがあります。
リレーショナル調査:
ブランドに対する顧客の総合的な体験に焦点を当てる方法です。直接的であるか、間接的であるかに関わらずすべての顧客接点において、年間を通して商品・サービスの購入や利用をしてくれる顧客に対し満足度を評価してもらいます。リレーション調査は数回にわたるのブランド体験を総合的に評価するため、年に1、2回実施するのが一般的です。
9. NPS®のハイスコアは何点以上か
スコアが0点以上であれば、調査対象が肯定的に受け入れられていることを意味しており、良いスコアと見なすべきでしょう。また、30点以上は業績が良く、さらに70点以上はトップクラスの企業であることを意味しますが、業界によってまちまちです。なお、100点に近いスコアは、ほぼすべての顧客があなたのビジネスを推薦することを示すもので、簡単に達成できません。
10. NPS®スコアは何点以下が低スコアか
NPS®スコアがマイナス、つまり0点以下であれば、その企業は推奨者よりも批判者が多いことを意味します。しかし、この場合、業界ベンチマークを考慮する必要があります。なぜなら、比較可能なスコアがなければ、マイナススコアを解釈することは難しいからです。
11. NPSスコアを改善するには
NPS®スコアは、受動的・消極的な人々を推奨者へ変える対策を講じることで改善できます。これを行うには、不満の原因を特定し、改めることが必須。また、その改善策を顧客に通知し、以後の評価の変化も考慮する必要があります。
12. NPSと顧客アンケート調査の違い
顧客アンケート調査の多くが「顧客満足度」を調べるのに対し、NPS®は「顧客ロイヤルティ」を調べます。
NPS®は比較対象企業の3分の2で利用され、CSAT(顧客満足度)は半分以下、CES(顧客努力指標)は14%の企業しか測定していません。(出典:ルーマオ)
13. NPS®とCX(カスタマー・エクスペリエンス)の違い
NPS®調査は、あくまでカスタマーエクスペリエンスを測定するための手法の1つ。顧客を理解し、顧客体験を向上させるためのきっかけに過ぎません。
14. 企業がNPS®調査に消極的な理由
NPS®調査はビジネスにおける特効薬として登場しました。しかし、経営陣にとっては、NPS®の具体的な効果を見えづらいため、調査に消極的な企業もあります。
この背景にあるのが、多くの企業がNPS®を実施したものの、その結果に基づいた行動をとることができなかった判断ミスに。これらの企業は、NPS®スコアを重要視しておらず、顧客の問題点への対処や、マーケティングや顧客体験向上の意思決定に活用しなかったのです。
15. NPS®への理解を深めるためにおすすめの書籍
- 「顧客愛」というパーパス<NPS3.0> - フレッド・ライクヘルド (著), ダーシー・ダーネル (著), モーリーン・バーンズ (著), 大越 一樹 (翻訳, 監修), 髙木 啓晃 (翻訳, 監修), 鈴木 立哉 (翻訳)
- ネット・プロモーター経営―顧客ロイヤルティ指標 NPS で「利益ある成長」を実現する - フレッド・ライクヘルド (著), ロブ・マーキー (著), 渡部 典子 (翻訳), 森光 威文 (監修), 大越 一樹 (監修)
16. NPSの調査対象とは
アンケートの対象は、製品やサービスを一定期間(例えば6ヶ月)継続的に利用している顧客で、有意義なフィードバックを提供できる人であれば誰でもかまいません。
顧客は、人口統計学、地域、購入履歴などのさまざまな要因に基づいてセグメント化され、それらに応じたターゲティングが可能です。
17. NPS®の調査頻度
一度アンケートを実施しただけでフォローアップをしないのは好ましくありません。調査は、定期的に行う必要があります。製品によっては、3ヶ月毎、6ヶ月毎、1年に1回が望ましいと言えるでしょう。
18. NPS®の実施手順
データの収集:アンケートを作成し、さまざまなチャネルで表示し、回答を収集する。
データの配布:回答の集計結果をチームに配布する。
フォローアップ:フィードバックの内容を確認し、それに基づいて行動する。
データ分析:顧客とそのロイヤルティをより深く理解するために、結果を分析します。
19. NPS®調査における回答の収集方法
- ウェブサイトのログアウトページ:製品からログアウトした際に、アンケートのランディングページに顧客を誘導します。
- メール:ハイパーリンクやCTAボタンとしてアンケートを追加したり、顧客に送信するメールに埋め込みます。
- 製品UI:製品のUI上に、バナーとしてアンケートを表示すれば、リアルタイムのフィードバックが得られます。
- SMS:テキストメッセージにアンケートを追加。顧客のターゲットリストに送信します。
- デジタルサイネージ:空港、映画館、ショッピングモールなど、公共の場でデジタルボードを使ってアンケートを表示します。
20. NPS調査に含められる質問項目
- 評価をもとにしたフォローアップの質問で、顧客が体験したことやスコアの理由を説明できます。
- 連絡先情報
- フォローアップのための同意(GDPR対応)
21. 回答収集後にすべきこと
回答を収集した後は、以下の2つを行う必要があります。
フォローアップ:顧客は、時間をかけて意見をていきょうしてくれました。今度はあなたの番です。顧客の評価に基づいて、すべての顧客にフォローアップを行います。
分析:NPS®のスコアはセグメントによって異なる場合も。データを分類・区分し、分析用のレポートを作成しましょう。
Zohoアプリケーションを使った実装
22. Zoho サービスを使ったNPS®調査の方法
- Zoho Survey - アンケートの作成と収集、分析
- Zoho Campaigns - アンケートメールの送信
- Zoho CRM - 販売情報に紐付けたアンケート結果の管理
- Zoho Desk - 顧客フォローアップ
- Zoho Analytics - データの集計と分析
23. アンケートの作成方法
NPS®に対応したZoho survey には、NPS®用の評価スケールが用意されています。回答を受け付けると、ユーザーが分類され、スコアが自動的に計算されます。
24. 回答結果の閲覧方法
Zoho Survey上で閲覧でき、集計データのエクスポートも可能です。また、回答結果をZoho CRM やZoho Desk に送信することもできます。
25. アンケートの回答結果を Zoho CRM に送信する方法
アンケートの結果を CRM に送信すると、誰がどのアンケートに、どのような回答をしたのかをCRM上で把握可能に。この操作は、サービス同士を連携させるだけで実現できます。
- Zoho Survey とZoho CRM を連携する
- 回答データを送信する タブを選択する
- 回答者の顧客データを新規作成するか、既存の顧客データを更新するかを選択する
- アンケートの質問項目とCRMの項目を関連付ける
26. アンケートの回答結果をZoho Desk に送信する方法
アンケートの回答が送信されたら、回答結果を指定したメールアドレスに送信するトリガーを設定できます。これらのメールは Zoho Desk においてチケットとして発行できます。
- Zoho Survey でメールトリガーを設定する
- アンケートの回答を差し込み項目としてメール本文に記載する、もしくはpdfドキュメントとしてメールに添付する
- これらのメールがZoho Desk でチケット化される
27. NPSの分析方法
顧客のプロファイルと評価の関係をより深く理解するために、セグメント分析が行えます。顧客を関連する要因に基づいてクラスタに分割し、各クラスタから与えられた評価を分析する必要があります。参考となるレポートには、以下のようなものがあります。
- スコア vs 地域
- スコア vs 顧客の年齢
- スコア vs エディション
- スコア vs ユーザータイプ
- スコア vs 業界タイプ
- スコア vs 組織規模
- 課題の種類 vs エディション
- 直面している問題の種類 vs ユーザータイプ
- 課題の種類と業種
- スコア vs 国別
- 直面している問題の種類 vs 国
Zoho Analytics は、調査結果に基づいたレポートやダッシュボードの作成に役立ちます。
28. NPS調査活用のヒント
やるべきこと
- NPS®を継続的に測定する
- 顧客からのフィードバックに基づいて行動する
- 回答者のフォローアップを行う
- GDPRの遵守を確認する
- フィードバックを組織の他のメンバーと共有する
やってはいけないこと
- すべての顧客を同じように扱う
- アンケートを社会的地位のためだけに利用する
- アンケートとフォローアップを縦割りで処理する
- 結果を分析するのに時間がかかりすぎる
29. アンケートの配布方法
製品UIにアンケート表示は、ユーザーが製品を使用しながらフィードバックを送信できるため、SaaS型サービスとは相性が良い方法です。一方、他の製品やサービスを提供している場合は、テキストメッセージでアンケートを送信する方が開封率や回答率が高くなります。
30. 回答数が少ない場合に改善すべきポイント
- メール/ウェブページをパーソナライズする
- ユーザーが参加しやすいようにする
- 顧客にアンケートを行う適切なタイミングを選ぶ
- 顧客の都合に合わせたチャネルを選択する
- 顧客に過剰なアンケートを実施しない
- 顧客のプライバシーを尊重する
31. 回答者のフォローアップをすべきか
フィードバックをくれた全顧客をフォローアップするのはよいことですが、不快な思いをした顧客は、ネガティブなフィードバックを拡散する可能性も。早急な対応が必要です。
32. フォローアップを行う際のポイント
回答を受けてから24時間以内にフォローアップを行うのが効果的です。特に、フィードバックのコメントがあれば必ず目を通し、適切にフォローアップしましょう。
33. 推奨者をフォローアップする方法
推奨者には、体験談、カスタマーストーリー、ケーススタディなどの形で、より詳細な情報を収集するために連絡を取ることができます。また、レビューサイトに誘導して、彼らの意見を聞くことも可能。また、これらのロイヤルカスタマーをブランドの支持者に変えることもできます。
34. 受動的な顧客をフォローアップする方法
「受動的な顧客」とは、今は中立的な立場にあり、いつ否定派や推進派に転じるかわからない顧客のこと。これらの顧客に接触し、必要な支援を提供し、確実に推進者に転換させるのがおすすめです。
35. 批判者をフォローアップする方法は
批判者とは、不満が高く、解約する可能性のある顧客のこと。このような顧客にはなるべく早くフォローアップを行い、彼らが直面している問題を発見・解決し、ブランド体験を向上させましょう。
まとめ
以上、NSP®調査を成功に導くための、35のヒントを紹介しました。
NSP®調査は従来の市場調査では知ることが難しかった「顧客が企業やブランドに対してどの程度の愛着や信頼を抱いているか」、すなわち顧客ロイヤルティを知ることができるマーケティングにおける画期的なツールです。
トランザクション調査とリレーション調査という2つの調査方法を組み合わせることで、これまでぼんやりとしか見えていなかった世界が、細部までくっきりと見えてくる――そして、この情報に基づいて高精度のマーケティング施策が行えるようになるわけですから、これを有効に活用しない手はありません。
さて、このように便利で画期的なNSP®調査をより快適かつ効率的に行うには、ITツールを活用するのが昨今のスタンダード。
Zoho CRM やZoho Survey をはじめとするZohoツールは、あらかじめNSP®調査を行うための評価スケールが備わっているため、初めて行う人におすすめです。