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CRM/SFAツールのトライアル
これまでのレッスンでは、営業における実践方法やマネジメントの考え方を学んできました。これらを実践に移すにはCRM/SFAツールの本格的な活用を進める必要があり、そのためには、自社の利用に沿ったカスタマイズが可能なツール環境が必要です。
しかし、いきなりCRM/SFAツールの本格的な活用を進めようと考えても、「エンタープライズ営業の実践に必要な機能はなにか?」、「自社にとって適切なコストで運用可能か?」、「数あるCRM/SFAツールの中で自社にとって適切なツールはどれか?」といったことを一つ一つ確認しながら検討を進める必要があります。
とはいえ、実際に使ったことのないツールや仕組みについて、最初から正しく理解し、的確に判断するのは簡単ではないため、まずは実際にツールに触れて試してみることが必要です。
ここからは、CRM/SFAツールの具体的な活用イメージを掴むために、例として Zoho CRM の15日間の無料トライアル期間を使用し、エンタープライズ営業の実践に必要な機能やマネジメント方法について実際に操作を通じて学んでいきます。
無料トライアル期間での学習を通じて、自社にとって必要なツールはどのようなものかを理解するきっかけにもなるため、15日間を効率的に利用して、計画的に学んでいきましょう。
Zoho CRMの無料トライアルの申込み
今回使用するZoho CRM の無料トライアルは、誰でも申し込むことができ、申し込みが完了するとすぐにツールを利用できます。今すぐエンタープライズ営業の実践方法を学ぶために適切なトライアルといえるでしょう。
申し込みはとてもシンプルです。
Zoho CRM の無料トライアルページにアクセスし、表示されている申込フォームに必要事項(氏名、メールアドレス、電話番号、パスワードなど)を入力して、「作成」ボタンをクリックするだけで完了します。入力した内容に問題がなければ、すぐにZoho CRMのアカウントの作成に移動します。

フォームを送信すると、画面が遷移すると同時に、登録したメールアドレス宛にアカウント認証メールが届きます。メール内に記載されたURLにアクセスし、アカウント認証を完了させておきましょう。認証が完了すると、Zoho CRM の管理画面にログインできるようになります。
なお、すでにZoho CRM の有料アカウントを利用しているメールアドレスでは、無料トライアルを申し込むことはできません。その場合は、すでにお持ちの環境を使って学習を進めるか、Zohoアカウントが紐づいていない別のメールアドレスを使って申し込みしましょう。
サンプルデータの読み込み
フォームの送信が完了すると、組織名と従業員数を入力する画面が表示されます。

この画面では、アカウントの基本情報を設定したうえで、「利用を開始する」ボタンを押すことになりますが、その前に一つ確認すべきポイントがあります。
それは、「サンプルデータを読み込む」というオプションにチェックが入っているかどうかです。このサンプルデータは、連絡先・取引先・商談などがすでに紐づいた状態で登録された練習用データで、CRMの基本的な画面構成や操作イメージをつかむのに非常に便利です。
サンプルデータは、あとからいつでも削除できます。削除する際は、画面右上の歯車マークから [設定] → [データ管理] → [サンプルデータの削除] を選択し、サンプルデータを一括で消去可能です。確認が一通り済んで不要になった場合は、ここから削除しておくとよいでしょう。
「利用を開始する」ボタンをクリックすると、サンプルデータの読み込みが始まります。データの準備には数分かかる場合があるため、しばらく待機しましょう。

その後、ユーザーの招待や権限設定を促す画面が表示されますが、これらの設定は次のレッスンで扱うため、ここではスキップします。
CRM/SFAツールの基本機能の確認
Zoho CRM をはじめとするCRM/SFAツールには、営業活動や顧客対応を効率化・可視化するためのさまざまな機能が備わっています。
まず、顧客情報の管理に関しては、多くのツールで「見込み客(リード)」「取引先」「連絡先」「商談」といった情報を個別に管理・保存できる構成になっており、案件の進行状況や関係性の把握がしやすくなっています。
さらに、各担当者の活動を管理・支援する機能として、「タスク」「予定(スケジュール)」「活動履歴」などの管理機能があり、進捗の可視化やチーム内での連携がしやすくなります。
加えて、「レポート」や「ダッシュボード」による情報の集約・分析、ワークフローや承認ルール、通知の自動化といった機能も備わっており、日常業務の効率化やマネジメントにも役立ちます。
エンタープライズ営業では、多くの部門や関係者が営業プロセスに関わるため、こうしたCRM/SFAツールの機能を活用して、情報を一元管理し、常に最新の状態で共有・活用できる仕組みを整えることが不可欠です。
とくに「誰が・いつ・何をしたか」を明確にし、抜け漏れを防ぐうえでも、ツールの活用は営業活動において必要不可欠でしょう。
まずは、CRM/SFAツールでどのようなことができるのかを全体像として把握し、基本機能の理解を深めていきましょう。ここからは、前のセクションで読み込んだサンプルデータを使って、具体的な機能を確認していきます。
顧客情報・案件情報管理機能
CRM/SFAツールのもっとも基本的な役割は、顧客情報や案件に関するデータを一元管理し、営業活動に活かすことです。

Zoho CRM では、こうした情報を「タブ」という単位で管理しており、各タブがそれぞれのデータ種別を担当しています。
見込み客タブ
顧客情報の例として、サンプルデータの入った[見込み客]タブを見ていきましょう。

画面上部のメニューから [見込み客] をクリックすると、サンプルデータが読み込まれている場合、複数の見込み客データの一覧が表示されます。ここでは、見込み客(リード)として登録された企業・個人の情報を管理します。
なお、氏名の表示順などが気になると思いますが、こちらは設定で変更が可能であり、次のレッスンでカスタマイズを行います。
この一覧画面は大きく以下の構成になっています。
- 中央~右側エリア:登録されている見込み客のリスト。各行が1件の見込み客データです。
- 左側エリア:検索やフィルターを行うための条件指定欄です。例えば「今月登録された見込み客」だけを抽出したいときに使用します。
よく使う検索条件は、「ビュー」として保存でき、以後はさまざまな条件抽出をワンクリックで呼び出せるため、営業現場での素早い絞り込みに便利です。
データの詳細を確認したい場合は、一覧の中から対象の行をクリックしていきます。例えば、一番先頭のデータをクリックしてみましょう。

画面が切り替わり、各種データの詳細を閲覧、編集を行うことが可能な画面が表示されます。詳細画面では、氏名・所属会社・連絡先・獲得経路・ステータスなどの情報が整理されて表示されます。
Excelでは1行にすべての情報を横に並べて管理するため、氏名や電話番号、会社名、進捗状況などが1画面に収まりきらず、情報が見づらくなりがちですが、CRM/SFAツールでは「一覧表示」と「詳細表示」が明確に分かれており、必要な情報に直感的にアクセスしやすくなっています。
また、編集操作を行わない限り、データが書き換わることはないため、複数人での情報共有やレビューにも安心して使える設計になっています。
次に、各タブの情報がどのように紐づいているのかを見ていきます。
商談タブ
CRM/SFAツールにおける営業活動の中心となるのが、[商談]タブです。このタブでは、営業担当者が取り組んでいる案件(=商談)の情報を管理し、[取引先]や[連絡先]の情報と紐づけて活用します。
画面上部のメニューから [商談] をクリックすると、複数の商談が表示されます。

[見込み客]タブとの主な違いは、進捗状況ごとに案件をステージで分けて表示する「かんばん表示(カンバンビュー)」が初期設定となっている点です。
各ステージには「条件確認」「ニーズの分析」「提案」「意思決定」などのラベルがあり、どの商談が今どの段階にあるかをひと目で把握できる構成です。
もちろん、表示方法は「リストビュー(一覧表示)」に切り替えることも可能です。

このように、目的や状況に応じて柔軟に表示を切り替えられるのが、Excelやスプレッドシートでの管理との大きな違いです。どちらの表示でも、商談のタイトルや担当者名などをクリックすれば、個別の詳細画面が開きます。

詳細画面を下にスクロールしていくと、さまざまな項目が整理されて表示されます。
中でも注目したいのが、「取引先名」と「連絡先名」の2つの項目です。これらは、[取引先]タブや[連絡先]タブの情報とルックアップ(参照)機能によって自動的に紐づけられており、クリックすることでそれぞれの詳細画面にすぐアクセスできます。

「取引先名」をクリックすると、該当の商談に紐づいた[取引先]タブの企業情報が表示されます。

このように、CRM/SFAツールでは、関連する情報が相互に連携しており、データのつながりを意識せずに自然に確認・活用できる点が大きなメリットです。
Excelなどでもvlookup関数などを使えば似たようなことは可能ですが、関数のミスや参照先の不整合などが起きやすく、運用には注意が必要です。
CRM/SFAツールではこうした参照や紐づけが自動かつ安全に処理されるため、データ連携の信頼性が高く、現場で安心して活用できます。
ここまで、見込み客から商談に至るまでの顧客・案件管理の基本を確認してきました。
次は、営業活動を日々支える「タスク管理機能」について見ていきましょう。
タスク管理機能
営業担当者が日々どのような活動をしているかは、個人の頭の中や紙の日報、バラバラなファイルに記録されていることが多く、活動内容や進捗状況を数字として正確に把握するのが難しい状況でした。このような属人的な情報管理が続くと、営業活動の全体像がつかめず、チーム全体での共有や改善にもつなげにくくなります。
多くのCRM/SFAツールでは、こうした営業活動を構造的に可視化・管理できる機能が備わっています。
Zoho CRM では、[タスク]、[通話]、[スケジュール] などのタブが用意されており、営業活動の種類や状況に応じた情報を一元的に記録・管理することができます。
ここでは代表的な[タスク]タブを例に、サンプルデータを見ていきましょう。

[タスク]タブでは、タスクのステータス(開始前/遅延/進行中/完了など)ごとに分かれた「かんばん表示」が初期設定となっており、営業担当者が現在どのような業務を抱えているかが視覚的に把握できます。ステータスの列はドラッグ&ドロップで移動できるため、進捗状況の変更も直感的に行えます。
詳細を確認したい場合は、対象のタスクをクリックすると、内容・期日・関連情報などが表示されます。


また、[商談]タブの一覧画面を見ても、各商談に紐づいたタスク情報が表示されており、タスクの期限や対応状況を商談の文脈の中で確認できるため、営業会議などでの進捗確認やフォロー漏れの防止にも役立ちます。
このように、タスク管理機能は単なる「ToDoリスト」ではなく、案件・顧客・担当者の活動をつなぐハブとして、営業マネジメント全体の可視化と改善に貢献する重要な機能と言えるでしょう。
レポート・ダッシュボード機能
これまで、各タブに登録された情報の「一覧表示」や「詳細表示」を見ながら、個別データの確認方法を学んできました。しかし、エンタープライズ営業の活動を管理する上では、チーム内や他部門との情報共有を行いながら、営業活動全体を俯瞰して管理することが求められます。
多くのCRM/SFAツールには、蓄積されたデータをもとに情報を集計し、レポートとして一覧化したり、複数の数値や指標を1画面で見える化するダッシュボード機能が備わっています。
レポート機能では、「誰が・どの顧客に・どんな活動を・どのくらい行ったか」といった情報を一覧で抽出し、具体的な活動量を把握でき、ダッシュボード機能では、複数のレポートやKPIを1画面に集約し、進捗や成果をひと目で確認・共有できます。
Zoho CRM には、これらの機能をすぐに使い始められるよう、実務で活用できるレポートやダッシュボードのテンプレートがあらかじめ用意されています。
カスタマイズを加えることで、自社に合った集計やグラフ表示も可能です。
- レポートの一覧画面

- 最初から用意されているレポートの例

- 最初から用意されているダッシュボードの例

ここまで紹介した機能以外にも、CRM/SFAツールには次のような機能が豊富に用意されています。
- ユーザーごとのアクセス権限や利用制限を管理する「ユーザー管理機能」
- 稟議・申請プロセスを効率化する「承認フロー機能」
- 日々の作業を自動化できる「ワークフロー(自動処理)機能」
- Webサイト上の入力フォームと連携する「Webフォーム連携」 など
まとめ
CRM/SFAツールを本格的に活用する前に、無料のトライアル期間を使って、自社にとって必要な機能やツールの見極めを行うことは非常に重要です。
今回のレッスンでは、見込み客・商談・タスクといった営業活動に欠かせない情報の管理方法を、実際の画面を通じて確認し、CRM/SFAツールの構造や使い方のイメージを掴むことができたはずです。
以降のレッスンでは、エンタープライズ営業の実践に欠かせない、複数ユーザーの招待や権限管理機能を紹介していきます。