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データ分析の流れ
前のレッスンでは、ウェビナーの成果を評価するためのKPIの設定方法を学びました。その指標を活用しながら、このレッスンでは、実際のデータを分析し、次回のウェビナーの改善につなげるためにはどうすべきか深掘りをしていきます。データの分析では、定量データと定性データを組み合わせてギャップを特定し、具体的な改善策を導き出すための4つのステップを見ていきます。
ステップ1:定量データ分析
まず、定量データを用いてウェビナーの成果を客観的に評価します。分析の視点は3つあり、それぞれの目的に応じたデータを整理していきます。
- 集客の評価・参加者の質の評価 → 参加者データの分析
- コンテンツの評価 → 参加者の行動データ分析
- 商談・売上への貢献度 → 商談・売上への影響
定量データの分析によって、「どのような参加者が集まったか」「ウェビナーがどれだけビジネス成果につながったか」を把握し、改善の方向性を探ります。
ステップ2:定性データ分析
次に、定量データだけではわからない参加者の関心や行動の背景を明らかにするため、定性データを分析します。具体的には、以下の情報を活用します。
- アンケートの自由回答(参加者の満足度・改善点)
- チャットやQ&Aの内容(関心の高かったトピック)
- 営業チームのフィードバック(商談に結びついたか)
定性データを分析することで、「なぜ視聴率が高かったのか」「なぜ商談につながらなかったのか」といった、数値では見えない要因を特定し、より精度の高い改善策を検討できるようになります。
ステップ3:ギャップ分析
データを分析したあとは、「期待していた成果」と「実際の結果」の違いを明確にし、課題を特定します。例えば、以下のようなギャップがよく見られます。
- 想定していたターゲット層と実際の参加者層が異なる(例:意思決定者向けウェビナーに担当者層が多く参加)
- 期待していた商談数と実際の成果が異なる例:MQLは増えたが商談につながっていない)
このようなギャップを分析することで、「ターゲットの再設定が必要か」「フォローアップ施策を強化すべきか」といった改善ポイントを洗い出します。
ステップ4:改善策の立案
最後に、特定した課題に対してどのような施策を優先的に実行すべきかを決定します。
- 影響度の高い施策(商談や売上に直結するもの)を優先
- 短期間で成果が期待できる施策を優先
- すぐに実行可能な施策(リソース負荷が低いもの)を優先
改善策を整理し、次回のウェビナーをより良いものにできるようになりましょう。
定量データの分析
まずは、ウェビナーの成果をさまざまな定量データを用いて客観的な数値で把握し、分析します。「参加者データ」「参加者の行動データ」「商談・売上への影響」の3つの分析を通じて、次回以降のウェビナー施策に活かせる具体的な改善ポイントを明確にしていきましょう。
参加者データの分析
ウェビナーに適切なターゲットが集まったかを評価し、ターゲット層の設定、集客チャネルの選定、訴求メッセージの設計などの戦略に改善点がないかを確認するため、参加者のデータを分析します。
分析要素とポイント(何がわかるか)
分析データ | 分析要素 | 何がわかるか |
業種・職種・企業規模 | 参加者の業種・職種・企業規模がターゲット層と一致しているか | ウェビナーのテーマや内容が狙った業種・役職に適切にリーチできたか。 |
役職 | 意思決定者の参加割合を確認し、商談化の可能性を測る | 過去のウェビナー参加者のデータと商談データを照合し、商談化しやすい業種・役職を適切にターゲットにできていたか。 |
新規・既存顧客 | 新規リードと既存顧客の割合を確認 | 新規のリード獲得・既存リードとの関係強化のどちらに寄与したか。 |
広告 | 広告経由の参加者の質とコンバージョン率を分析 | 広告での集客効果やROIはどうか。 |
メール | メール経由の参加者の反応・申し込み率を確認 | メールでの集客戦略が適切だったかどうか。 |
SNSなど | SNS経由の流入がターゲット層に届いているか、拡散効果を評価 | SNSでの集客戦略が適切だったかどうか。 |
行動データの分析
「ウェビナーのコンテンツや構成が適切だったか」「どのポイントで参加者の関心が高まったか」を評価するためにも、行動データを分析し、評価します。
分析要素とポイント(何がわかるか)
分析データ | 分析要素 | 何がわかるか |
参加率・視聴時間 | 参加者の関心度の変化を評価 | ウェビナーの内容や構成が適切だったかリマインドメール施策が効果的だったか参加率に影響があったか。 |
途中離脱率 | 離脱が多かったセグメントや時間帯を把握 | どのコンテンツやタイミングで視聴者が離脱したか。 |
Q&A、投票、チャットの参加状況 | 参加者のエンゲージメント度を測定 | 参加者が特に関心を持ったトピックは何か、参加者の関心度が高い部分は何か。 |
ウェビナー後のアクション(資料ダウンロード・問い合わせ・商談予約) | ウェビナー後のアクション率を分析 | ウェビナーを通してどれだけ次のステップ(資料請求・問い合わせ・商談予約)につながったか |
商談・売上への影響分析
ウェビナーが営業成果に結びついたかを評価するため、商談・売り上げへの影響の分析を行います。
分析要素とポイント(何がわかるか)
分析データ | 分析要素 | 何がわかるか |
MQL転換率・商談化率 | どれだけのリードがMQLに転換したか。 | 商談化しやすいリードの特徴 |
商談につながったリード | 実際に商談へと進んだリード | MQLから商談へ進むリードの特徴 |
成約につながったリード | 成約につながった割合 | 成約につながった割合 |
定性データの分析
定量データの分析だけでなく、参加者の本当の意図や満足度を把握することは難しいため、定性データの分析も重要です。参加者の声や営業現場のフィードバックを活用することで、ウェビナーの質を向上させ、より効果的な施策につなげることができます。特に以下の3つの視点から定性データを分析すると良いでしょう。
- アンケートの自由回答(満足度・改善点の把握)
- チャットやQ&Aの内容(参加者の関心ポイントの特定)
- 営業チームのフィードバック(営業成果への影響分析)
アンケートの自由回答は、参加者の生の声を直接収集できる貴重なデータです。満足度や改善点を明確に把握することで、次回のウェビナーの改善に役立てられます。
また、チャットやQ&Aの内容は、参加者が特に関心を持ったトピックを特定するための重要なデータです。関心の高いテーマを把握し、コンテンツ設計やフォローアップ施策に反映できます。
さらに、営業チームのフィードバックを活用することで、ウェビナーが営業活動にどのように貢献したかを確認できます。商談につながった要因や、リードの反応を分析し、営業の視点から改善点を明確にできます。
以下に、各定性データの収集に関する分析要素と、分析することで得られる示唆を表にしました。
分析データ | 分析要素 | 何がわかるか |
アンケートの自由回答 | 満足度・改善点を収集し、参加者の具体的な意見を把握 | ウェビナーのテーマや内容が狙ったターゲットに適切にリーチできたか、参加者の満足度や期待とのギャップを把握 |
チャットやQ&Aの内容 | 興味・関心が高かったポイントを特定し、リアルな声を施策に反映 | 参加者が特に関心を持ったトピックを特定し、次回のウェビナー企画やフォロー施策に活用できる |
営業チームのフィードバック | ウェビナーの内容が商談の進行にどの程度役立ったかを評価 | 営業チームの視点から、ウェビナーが商談にどの程度貢献したか、営業戦略の強化に活かせる |
定性データ・定量データを組み合わせてギャップ分析をする
データ分析を行う際、定量データだけでは「数値上の変化」を捉えられても、その背景や原因までは把握できません。逆に、定性データだけでは、具体的なインパクトや傾向を測ることが難しくなります。そこで、定量データの結果をもとに、定性データを組み合わせてギャップの要因を深掘りする「ギャップ分析」を行うことで、より適切な改善策を導き出すことができます。以下に、両方のデータを組み合わせたギャップ分析の例を示します。
「MQL転換率は高いが、商談化率が低い」場合
ウェビナー施策でよく見られるケースの一つとして、「MQL転換率が高いにもかかわらず、商談化率が低い」状況を取り上げてみましょう。
MQL転換率が高いということは、一見するとリード獲得が順調に進んでいるように思えます。しかし、いざ商談のフェーズに移行しようとすると、思ったより商談につながっていない、という問題が発生することがあります。この場合、定量データの結果と定性データのフィードバックを組み合わせることで、ギャップの原因を明らかにし、どのような改善策を導くことができるのか、見ていきましょう。
定量データの結果からわかること
まず、数値データを分析すると、以下のような結果がわかります。
- MQL転換率が高い → ウェビナーを通じて、多くのリードがMQLに分類された
- 商談化率が低い → MQLに転換したリードのうち、実際に商談につながる割合が低い
この結果から、「ウェビナーでリードは獲得できているものの、商談化につながるリードの質に課題があるのではないか?」という仮説が立てられます。
定性データのフィードバックからわかること
次に、営業チームのフィードバックを確認すると、以下のような意見が挙がっているとします。
- 「MQLとして渡されたリードの多くが、まだ情報収集段階にあり、商談化の準備ができていない」
- 「興味は示しているが、具体的な導入検討に進むリードが少ない」
このフィードバックを踏まえると、MQLに分類されているリードの中に、まだ購入意欲が十分に高まっていないリードが含まれてい可能性が考えられます。
このように、定量データだけを見ていると「リード獲得が順調」と判断しがちですが、定性データを組み合わせることで、リードの質やフォローアップの不足といった隠れた課題が浮かび上がります。
考えられる改善策
ギャップ分析の結果、以下の2つの改善策が考えられるでしょう。
1. MQLの基準を見直し、スコアリングの閾値を調整
現在のMQL基準では、ウェビナー参加だけでMQLと認定されている可能性があるため、より商談化につながりやすいリードをMQLとして分類できるようにスコアリング基準を調整します。
MQLの基準例:
- 商談化の可能性が高い行動(例: 特定の資料ダウンロード、Q&Aの積極参加)に加点
- 単なるウェビナー参加ではなく、一定の関心度を示したリードをMQLとする
2. ウェビナー後のフォローアップ施策を強化
MQLの基準を見直すだけではなく、ウェビナー後のフォローアップ施策も改善する施策も考えられます。ウェビナー終了後に次のような施策を取り入れることで、リードの育成を強化できます。
フォローアップ施策例:
- ウェビナー直後に「参加者向け限定コンテンツ」を提供し、次のアクションを促す
- ケーススタディやROIレポートを活用し、実際の導入メリットを伝える
- 営業フォローのタイミングを最適化し、リードがホットなうちに接触
「ウェビナーの参加率は高いが、商談につながるリードが少ない」場合
ウェビナーの集客はうまく行っているものの、参加者が商談につながらない場合、コンテンツの内容やフォローアップの施策を見直す必要があります。ウェビナーの内容がターゲットの関心に合っているか、営業アプローチが適切かを確認しましょう。
定量データの結果からわかること
まず、数値データを分析すると、以下のような結果が見られる場合があります。
- ウェビナーの参加率は目標を達成している → 事前の集客施策は成功し、多くの参加者が集まった
- 商談につながるリードが少ない → 参加者の多くがウェビナー後にアクションを起こしていない
この結果から、ウェビナーの集客自体はうまくいっているものの、参加者の関心を商談につなげるプロセスに課題があることが推測されます。
定性データのフィードバックからわかること
次に、参加者のアンケートや営業チームのフィードバックを確認すると、以下のような意見が挙がっていることがあります。
- 「内容は良かったが、具体的な導入メリットが伝わりにくかった」(アンケート回答)
- 「興味は持っていたが、次のステップが明確でなかった」(営業チームの声)
このフィードバックから、ウェビナーのコンテンツ自体は評価されているものの、導入メリットや次のステップが十分に示されていなかったため、商談へと進むモチベーションが生まれなかった可能性が考えられます。
考えられる改善策
このようなギャップを解消し、商談につながるリードを増やすためには、ウェビナーの内容の見直しとフォローアップ施策の改善が考えられます。
- ウェビナーの構成を見直し、導入事例や費用対効果の説明を強化する
- フォローの仕方を改善し、ウェビナー後の営業アプローチのタイミングを最適化する
「参加者の関心は高いが、資料ダウンロードや問い合わせにつながらない」場合
ウェビナー中に参加者の関心が高まっている行動が見られたにもかかわらず、ウェビナー後のアクションにつながらない場合、CTA(行動喚起)の設計やフォローアップの手法に改善の余地があります。
定量データの結果:
ウェビナーのQ&Aやチャットは活発だったが、ウェビナー後の資料ダウンロードや問い合わせが少ない
定性データのフィードバック:
営業チームから「参加者の関心は高かったが、次のアクションにつながる明確な動機づけが足りなかった」との指摘があった
考察と改善策:
- ウェビナー内でのCTA(行動喚起)を強化し、具体的なアクションを促す(特典資料の案内や、問い合わせのハードルを下げる施策)
- ウェビナー後のフォローアップメールの内容を最適化し、参加者の関心を継続させ
「経営層をターゲットにしたが、実際には担当者層の参加が多かった」場合
経営層をターゲットにしたウェビナーを開催したものの、実際には担当者層の参加が多かった場合、集客戦略や開催時間、コンテンツの内容を再検討する必要があります。
定量データの結果:
経営層をターゲットにしたが、実際には担当者層の参加が多かった
定性データのフィードバック:
アンケート回答で「決裁権者はスケジュールが合わず参加できなかった」「担当者が代理で参加した」などのコメントがあった
考察と改善策:
- 経営層に直接アプローチするため、開催時間を変更する or 経営層向けの別ウェビナーを企画する
- 担当者向けウェビナーから、経営層への紹介を促すCTA(上司向けの要約資料やレコメンドメール)を入れる
改善策の優先順位つけ
定量データと定性データを組み合わせたギャップ分析を行うことで、複数の改善策が見えてくることがあります。しかし、すべての施策を同時に実施するのは現実的ではありません。そのため、ビジネスへの影響度や実行のしやすさを考慮し、優先順位をつけながら効果的に進めることが重要です。
優先順位を決める基準
改善策の優先順位を決める際には、以下の3つの基準を考慮します。
- ビジネスへの影響度が大きいものを優先(商談や売上に直結する施策)
- 改善のインパクトが大きいものを優先(短期間で成果が期待できる施策)
- すぐに実行できるものを優先(リソースをかけずに迅速に対応可能な施策)
改善策は 「ビジネスへの影響度」 と 「実行のしやすさ」(短期で即時対応できる施策と、中長期的に取り組むべき施策)を分けて考えるのがより良いでしょう。
前の章で挙げた5つの事象例に対し、実際に優先順位を決めるとした場合は以下が考えられます。
改善施策 | 影響度 | 実行のしやすさ | 優先度 |
MQLのスコアリングを調整し、フォローアップを強化 | 高 | 中 | 高 |
ウェビナーのコンテンツとフォロー施策の見直し | 中 | 中 | 中 |
CTAの強化・フォローアップメールの最適化 | 中 | 簡単 | 高 |
経営層向けの別ウェビナー企画・紹介促進 | 低 | 難 | 低 |
上記の中で、比較的すぐに改善できる施策で影響度も一定ある「CTA&フォローアップメールの最適化」は優先度高く実施すべきでしょう。一方で、「MQLのスコアリング調整」や「ウェビナーのコンテンツ・フォロー施策の見直し」などは、影響度はあるものの、実行のしやすさが「中」であるため、CTA&フォロー施策の改善と並行して、継続的に検証・調整を進める ことが望ましいでしょう。
このように、短期・中期・長期のバランスを取りながら施策を整理し、リソースを最適化して実行することが重要です。