CRM/SFAを活用してウェビナー施策を分析する

前回のレッスンでは、CRM(顧客管理)/SFA(営業支援)ツールを活用することで、これまでExcelや手作業で進めていた申込管理や参加者フォロー、営業連携までを「集客・管理・分析・営業連携・成果把握」に一貫した仕組みに変える方法を解説しました。 このレッスンでは、その仕組みに蓄積されたデータをもとに、ウェビナー施策をどの視点で分析し、どのように成果を見える化し、次のアクションに結びつけるかを具体的に学んでいきます。施策全体の振り返り、営業貢献の確認、次回施策の改善に向けた「データに基づく実践的な分析・活用の流れ」を整理していきましょう。

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CRM/SFAを活用してウェビナー施策を分析する
目次

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このレッスンで学べること

このレッスンでは、CRM/SFAツールに蓄積されたデータを活用し、ウェビナー施策の成果を正しく把握する方法を学びます。どのリストやチャネルから集客できたのか、参加者の反応はどうだったのか、どれだけ商談や受注につながったのか、これまで感覚や経験に頼りがちだった振り返りを、データに基づいて確実に行える視点を身につけましょう。さらに、その成果をもとに次の施策や営業アクションにどのようにつなげるのか、全体像を整理していきます。

CRM/SFAツールに蓄積されるデータ

CRM/SFAツールを活用すると、ウェビナー施策に関連するさまざまな情報が1つのシステムに集約されます。ここでは、「どんな情報がそもそも蓄積されているのか」「どんな切り口でデータを持っているのか」を確認し、次の施策改善や分析を行ううえで最低限押さえておきたいポイントを整理します。

申込者の属性情報(誰が来たか)

ウェビナーの成果を正しく振り返るためには、まず「どんな人が参加したのか」を把握することが基本です。参加者の属性情報を把握できると、

  • 狙っていたターゲット層がきちんと集客できたのか
  • どの業種や役職の参加者が多かったのか
  • 集客チャネルごとの成果に差があったのか

といった視点で分析し、次回施策の改善につなげることができます。

Zoho CRM では、申込者の情報は主に [見込み客] タブに蓄積されます。見込み客の詳細画面では、以下のような情報をまとめて確認できます。

  • 氏名、会社名、役職、業種、業界といった基本情報
  • 見込み客のデータ元(どのチャネルから申し込んだか)
  • 見込み客のステータス など
Zoho CRMのさまざまな情報が確認できるリード詳細画面

これらの情報をもとに、「どのターゲット層が成果に結びつきやすかったか」「次に狙うべき層はどこか」を具体的に見極めることができます。

申込者/参加者の行動情報(どんな反応があったか)

ウェビナーは開催後のフォローで成果が大きく変わります。フォローは、開催から時間を空けず、参加者の温度感が高いうちに行うことが効果的です。その際、単に早く連絡するだけでなく、温度感の高い人から優先的にフォローすることが重要で、その判断の拠り所になるのが「申込者/参加者の行動情報」です。

申込者/参加者の行動情報を確認することで、

  • ウェビナーに参加したかどうかで対応の優先度を変える
  • 営業からの連絡を希望したリードには早急にアプローチする
  • 資料をダウンロードした人が何に関心を持っているか把握する
  • アンケート回答からリードの要望や課題を理解する

といった視点で、優先順位をつけた効果的なフォローや、次回施策の改善に役立てることができます。

Zoho CRM では、このような反応も見込み客の情報と関連付けて管理できます。ここではは、参加者の反応に関するさまざまな情報が確認できます。

見込み客の詳細画面で確認できる反応データ

さらに、Zoho CRM のスコアリングルールを設定している場合、ウェビナー参加などの特定の行動に応じて自動的にスコアが付与され、営業担当者は温度感の高いリードをひと目で確認できます。下記の例では、「ウェビナー用スコアリング」というルールに基づき、該当リードに 15 点が加点されています。このスコアは、優先的にフォローすべき対象の絞り込みや、次のアクションの決定に役立ちます。

見込み客の詳細画面で確認できるスコアデータ

このように、見込み客の詳細画面を見れば、営業担当者は「次に誰にどんなアクションを取るべきか」をすぐに判断でき、迅速で的確なフォローが可能になります。

成果情報(その後どうなったか)

ウェビナー施策の最終的な成果を正しく評価するためには、「その後、申込者や参加者がどんなアクションにつながったのか」を把握も必要になります。ウェビナー施策は、「開催して終わり」や「参加者数が多ければOK」だけではなく、商談が発生したか、受注につながったかまで指標を追い続ける必要があります。

CRM/SFAツールでは、ウェビナー施策の最終的な成果まで一貫して管理できます。どの参加者がその後商談に進展したのか、どのくらいの受注につながったのか、売上金額や営業活動全体の期間(リードタイム)、失注した場合の失注理由までデータとして可視化できます。

Zoho CRM では、[キャンペーン機能]を活用することで、申込者情報と実際に生まれた商談・受注情報を関連付け、「ウェビナー施策がどれだけ商談・受注に貢献したのか」を営業活動やキャンペーン単位で振り返ることが可能です。

下記のキャンペーン一覧画面では、現在進行中のキャンペーン(施策)がどれなのか、また、各施策ごとの売上、費用、費用対効果(ROI) などの数値も一覧で確認できるため、「どの施策が最も成果を上げたのか」「どの施策の費用対効果が高かったのか」を簡単に比較・分析することができます。

Zoho CRMのキャンペーン一覧画面でキャンペーンごとの情報を見る

さらに、キャンペーン機能を活用してでウェビナー施策を管理しておくことで、商談データと施策(キャンペーン)を紐づけて一元管理できます。Zoho CRM の [商談] タブでは、どの商談がどのキャンペーン(施策)から生まれたのかが一目で確認でき、商談ごとに「関連キャンペーン」が一覧で表示されます。

下記の画面では、左端の「関連キャンペーン」列により、各商談がどのウェビナー施策(キャンペーン)に紐づいているかが一覧で表示されています。さらに、商談名、取引先、連絡先、ステージ(例:条件確認、受注)、確度、金額、担当者、作成日時、完了予定日といった詳細情報も一目で確認できます。

ここでは、各商談の進捗状況や売上金額がどの施策に起因する成果であるのかを、直感的に把握できるようになっています。

商談タブで関連キャンペーン情報を確認する

Excelやスプレッドシートで参加者リストだけを管理している場合、営業部門が持つ商談・受注データとは切り離されてしまい、施策の本当の成果を正確に評価することが難しくなりますが、CRM/SFAツールを活用すれば、ウェビナー参加から営業活動までの一連の流れを一元化し、どの施策がどれだけ売上や成果に直結したかを数字で見極められるようになります。この結果、

  • どのテーマが商談や受注に最も貢献したのか、逆に受注に至らなかったテーマは何か
  • どの失注理由が多く、どんな追加のコンテンツやフォローがあれば受注を後押しできたのか
  • テーマや施策単位で営業成果をどう評価するか

といった多角的な視点での分析が可能になり、次回以降のテーマ設定や営業支援コンテンツの見直し、マーケティング施策の改善につなげることができます。

条件リスト・ビューを使った情報整理

CRM/SFAツールに蓄積された膨大なデータは、それだけでは活用しきれず、目的に応じて「必要な情報だけを切り出して整理・活用する」ことが重要です。

ここでは、条件リストやビューを使って、営業連携や次回施策のターゲティング、マーケティングの見直しに役立つ情報整理のポイントを見ていきます。

条件設定で営業連携をスムーズにする

Zoho CRM の「ビュー機能」を活用すれば、参加者情報や行動履歴をもとに、特定の条件を満たすリストを瞬時に抽出できます。[ビュー]とは、その条件に合うデータだけを整理して見られる機能です。条件を設定したリストは保存でき、いつでも呼び出せるため、営業やマーケティング活動に役立ちます。

例えば、アンケートで「導入検討中」と回答した参加者だけを抽出したのが下記のリストです。このリストに含まれるのは、すでにウェビナーに参加し、導入に向けて前向きに検討を始めているリードです。つまり、商談化への橋渡しをするための重要なリストであり、ここからどのように接点を深めるかが成果を左右します。

導入を具体的に進めてもらうために、「どんな追加情報が必要か」「どのような課題があるか」をヒアリングしたり、検討段階を一歩前に進める資料を提供したり、デモを提案したりと、積極的なアプローチを行うと良いでしょう。

Zoho CRMのビュー機能を使った導入検討中のリストの抽出

同様に、営業からの連絡を希望した参加者を抽出したのが以下のリストです。

営業希望ありということは、関心度が高く温度感の高いホットリードであり、優先的にフォローするべき対象です。このリストを活用することで、営業はタイミングを逃さず、すぐにアプローチできれば、早期の商談化を目指すことができるでしょう。

Zoho CRMのビュー機能を使った営業希望ありリストの抽出

また、こうした条件で作成したリストを保存し、営業チームや関係部門とリアルタイムで共有できます。誰がどのリストを優先してフォローするかを共通認識として持ち、営業アクションをチーム全体で一貫して進められるようになります。

次回施策のターゲット再設定に活かす

条件リストやビュー機能は、営業連携だけでなく、次回以降の施策のターゲット選定やマーケティング戦略の見直しに活用できます。営業担当者にとっても「どの層を次の施策で優先的に狙うべきか」を考えるうえで、非常に役立つ視点が得られます。

Zoho CRM のカスタムビュー機能を使えば、次のような条件で見込み客を抽出し、リストとして整理できます。

例えば、「過去に複数回ウェビナーに参加しているが商談化していないリード」を抽出したリストでは、これまでの施策で関心は高いものの、何らかの理由で商談に進んでいない層を把握できます。こうしたリードに対しては、「なぜ商談化に至らなかったのか」「どの情報が不足していたのか」を振り返り、追加の資料提供や個別フォローを行うことで、次の商談機会につなげるアプローチが効果的になります。

ビュー機能を使ったウェビナー複数回参加のリードを抽出したリスト

また、「初めて接点を持った新規層」のリストでは、初回接点ならではの不安や課題感に寄り添い、早期の信頼構築を意識したフォローが求められます。基礎的な情報提供や成功事例の紹介などが、次のアクションの後押しになるでしょう。

ビュー機能を使った新規のリードを抽出したリスト

さらに、「従業員数60人以上の中規模以上の企業層」に絞ったリストであれば、企業規模に応じた提案内容の見直しや、商材の適合性を評価する視点で次回施策の検討材料とすることができます。

ビュー機能を使った従業員数60人以上の会社のリスト

また、「関心テーマごとの参加者リスト」を活用すれば、参加者がどのテーマに興味を持ったのかを整理し、次回のコンテンツ企画や営業資料の強化ポイントを見極めるヒントにできます。例えば、自動化やダッシュボード活用といったテーマごとにターゲット層の課題感を把握し、施策を最適化していく流れが作れます。

ビュー機能を使った関心テーマごとの参加者リスト

Zoho CRM のカスタムビュー機能を使えば、こうした条件リストを簡単に保存・共有でき、マーケティング担当と営業担当が共通の視点で「この層にもっとアプローチすべきだ」「次はどんなメッセージが響きやすいか」といった施策の見直しや次のアクションプランを具体的に検討できるようになります。

成果を可視化するレポート・ダッシュボード

CRM/SFAツールの大きな強みのひとつは、蓄積されたデータをもとに、成果の全体像を「数値」と「ビジュアル」で把握できることです。ここでは、ウェビナー施策ごと、テーマごと、営業連携の流れ全体など、さまざまな角度から成果を見える化し、次の改善や意思決定に活かす方法を整理していきます。

ウェビナーごとの成果指標を確認する

ウェビナー施策を振り返る際、まず確認すべきは「集客や関心の初期段階でどれだけの成果があったのか」です。Zoho CRM のレポート・ダッシュボード機能を活用することで、こうした成果指標を簡単に可視化でき、次回施策の改善につなげるヒントを得ることができます。

例えば、あるウェビナーでの申込件数や参加率を比較すると、集客方法や案内の工夫が成果にどのように影響したのかを具体的に分析できます。以下のようなデータがその一例です。

まず以下では、各ウェビナー(例:250408ウェビナーと250515ウェビナー)への申込数の比率を可視化しています。申込数の差から、どの施策がより多くの見込み客を集められたかがひと目でわかり、集客チャネルや訴求メッセージの効果検証に役立ちます。

ウェビナーごとの申込件数を示したグラフ
ウェビナーごとの申込件数を示したグラフ

さらに、ウェビナーごとの参加率を表形式・グラフ形式で比較することで、参加意欲の高さや集客効率を確認できます。参加率のデータは、当日の参加促進施策(リマインドメールや当日連絡など)の改善ポイントを見つける手がかりになります。

ウェビナーごとの参加率を示したレポート
ウェビナーごとの参加率を示したグラフ

また、アンケート回答数のデータは、ウェビナー終了後の参加者の関心度やフォロー意欲を見極めるのに役立ちます。アンケート回答数は、施策後の参加者フォローの質や関心度の高さを見極め、ホットリード抽出の材料になります。

ウェビナーごとのアンケート回答数を示したレポート
ウェビナーごとのアンケート回答数を示したグラフ

これらのデータを総合的に確認することで、「どのウェビナーがより高い関心を引き出せたのか」「どの集客チャネルやテーマがより成果につながったのか」を客観的に評価でき、次回施策の改善に確実に活かすことができます。

テーマ別で成果を比較する

ウェビナーの成果を振り返る際には、「どのテーマが最も関心を集めているか」を比較する視点も重要です。

Zoho CRM のレポート機能を活用すれば、参加者がどのテーマに関心を示し、どのテーマで参加率や反応が高かったのかを一覧で確認できます。

例えば以下のレポート画面では、各参加者がどのテーマに関心を持っていたのかを、ウェビナー単位で詳細に確認することができます。ここでは、「自動化(ワークフローなどの活用法)」や「Zoho CRMの基本操作と設定方法」など、具体的なテーマごとに参加者の興味が整理されています。

関心のあるテーマを示したレポート

さらにグラフ化されたデータでは、ウェビナーごとにどのテーマがどれだけの参加者の関心を引きつけたのかが直感的に分かります。例えば「自動化」テーマでは、250515ウェビナーの参加者の多くが関心を示していたことが可視化されています。こうした情報は、次回以降のテーマ選定やフォロー施策を改善するヒントとなります。

関心のあるテーマを示したグラフ

成果レポート(商談化・受注状況)

施策の最終成果として、どれだけ商談や受注につながったのかを正確に把握することは、次の施策戦略を考えるうえで非常に重要です。

Zoho CRM のレポート・ダッシュボード機能を活用すれば、ウェビナー施策ごとの商談件数、受注件数、売上金額などを表やグラフで一目で確認できます。

例えば以下のレポートでは、各ウェビナー施策ごとに「何件の商談が生まれたか」を比較しています。250515ウェビナーでは5件の商談が生まれており、250408ウェビナー(1件)と比べて大きな成果を上げたことが分かります。これは、集客やテーマ、参加者層などの施策要素が商談化に強く寄与した可能性を示唆しています。

ウェビナーごとの商談件数

さらに、受注件数と売上金額を比較した下記のレポートでは、250515ウェビナーから2件・80万円、250408ウェビナーから1件・50万円の売上が生まれていることが分かります。このようなデータを基に、「どの施策がより高い売上に貢献したのか」「どのターゲットや訴求ポイントが成果につながったのか」を分析できます。

ウェビナーごとの受注件数と金額を示したグラフ

これらのレポートを活用することで、参加者の集客状況だけでなく、どの施策が実際に売上・成果に直結したのかを客観的に評価でき、次回の施策設計に確実に反映させることができます。

営業貢献までの流れを可視化する

施策全体の成果を一目で俯瞰し、マーケティングから営業までの一連の流れを把握するために、ダッシュボードの活用は非常に有効です。

Zoho CRM には、蓄積したデータを特定の条件や指標に基づいてグラフや表にまとめ、1画面で確認できる「ダッシュボード機能」が搭載されていて、[アナリティクス] タブから簡単に作成でき、チーム全体で成果を共有し、次のアクションを具体的に検討する際の情報の拠り所にできます。

下記の例のように、ダッシュボード上では、参加者数、申込数、アンケート回答数、商談件数、受注件数・金額、ROI(費用対効果)、関心テーマなど、ウェビナー施策に関わる複数の指標をまとめて可視化できます。

Zoho CRM ダッシュボード一覧画面

ダッシュボードを活用することで、マーケティングから営業までの成果のつながりを一度に把握でき、「どの施策がどこまで成果を出したか」をチーム全体で共有しやすくなります。施策の改善や次回戦略を考える際にも、数値やグラフで見える化されたデータが、より具体的な判断材料になります。