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メルマガとは?成果につなげるメールマガジンの配信方法

メールマガジンが未だに活用されている理由とは。SNSやチャットツールが普及した現代で「メール」を使う価値はあるのか?平均開封率やクリック率の基準も踏まえてメルマガ施策の実施方法を解説します。

目次

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メルマガとは?

メルマガとは「メールマガジン」の略で、企業などが会員登録しているユーザーに対してニュースやキャンペーン、連載コラムなどを一斉送信することです。

約50年もの歴史を持つメールマーケティング手法の一つです。

低コストで運用可能なことや、定期的に送ることで受信側の企業・商品理解が深まり、ユーザーのファン化が期待できるといったメリットがあります。

一方で、求めていない情報が頻繁に送られてくれば、ユーザーが煩わしく感じて購読をやめてしまうこともあります。
そのためどのような情報を、どのくらいの頻度やタイミングで送るかを受信者側の状況も踏まえて決定する必要があります。

SNSやチャットアプリの普及によって「メールはもう古いマーケティング手法」と言われることも多いですが、メールの利用者数は依然として多く、未だに有力なマーケティング施策のひとつであり続けています。

総務省が2023年6月に公表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、30代以上の世代では平日のメールとSNSの利用量は僅差であり、40代以上はSNSの利用率よりメールの利用率の方が高いとされています。

出典:『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』(総務省)

また、『メールマガジン購読状況調査2022年度版』(Benchmark Japan)では、全体の71.3%が「プライベートと仕事用のメールアドレスいずれかで、メールを最低1通以上受信している」という結果が出ています。

また、仕事・プライベートを問わず約8割が1日に平均1通以上のメルマガを開いて読んでおり、11件以上読む人も全体の20%程度いることから、情報収集の手段として現役であることが分かります。

メルマガは「メールマーケティング」の手法のひとつ

メールマーケティングといえば「メルマガ」を思い浮かべる方も多いと思いますが、メルマガはメールマーケティング手法のひとつでしかありません。

メールマーケティングには、ステップメール・シナリオメール・ターゲティングメール・リターゲティングメールなど、さまざまな手法があります。

まずメルマガから開始して、他の手法に発展させるというケースは少なくありませんので、あらかじめそれぞれの手法についても把握しておくとよいでしょう。

メールマーケティングの手段

内容

メルマガ

定期的にコンテンツを一斉送信する。

ターゲティング(セグメント)メール

見込み客の属性を分けて管理し、条件に合う見込み客にのみメールを配信する。

リターゲティングメール

Webサイトやモバイルアプリでの行動が特定の条件を満たした見込み客に対し、条件に適した内容のメールを配信する。

ステップメール

受信者の関心や検討度合いが変化しやすいタイミングをあらかじめ予想して、検討段階に合った情報を自動で配信する。

シナリオメール

シナリオに沿って段階的にメールを配信する手法で、受信者の行動を指標としてシナリオが分岐することで、配信内容を自動で変更する。

メルマガのメリット

導入コストが低い

メルマガに限らずメールマーケティングは他の広告媒体に比べて、制作・出稿のコストが低く抑えられます。

効果測定を円滑にするためのメール配信システムの導入にはある程度の費用がかかりますが、配信やコンテンツ制作を内製化しやすいので、月に数万件のメールを配信しても月額費用を数千~数万で抑えることもできます。印刷代や郵送料などがかかるダイレクトメールと比べてもかなりの低コストです。

中でもメルマガは、配信状況の個別管理が必要なステップメールやWebサイトとの連携が重要なシナリオメールなどと比べて高機能なツールが不要で、他のメールマーケティング手法と比較しても費用がかかりにくい取り組みです。

効果測定がしやすい

効果測定ができるメール配信システムを導入すれば、開封率やクリック率、コンバージョン(CV)率はもちろん、ツールによってはリンクをクリックした後のWebサイトでの行動もトラッキングできます。

ユーザーの行動を詳細に知れるため、ニーズを把握できますし、施策の改善点も見つけやすくなります。

見込み客の育成(ナーチャリング)が得意

マーケティングがさまざまな施策を実施して見込み客を獲得しても、営業担当者は商談につながりやすい見込み客に優先的にアプローチをかけるので、受注確度の低い見込み客は放置されがちです。

Googleが2022年2月に発表したレポート「Google Ads Benchmarks for YOUR Industry [Updated!]」によると、見込み客平均獲得単価(CPL:Cost Per Lead)は7,000〜1万5,000円/1見込み客とされています。
せっかくこれだけのコストをかけてセミナーや広告から見込み客を獲得しても、商談に至らなかっただけで放置しては宝の持ち腐れです。だからといって忙しい営業担当者がすべての見込み客に個別にコンタクトを取り続けるのも困難です。
メルマガには営業担当者に代わって「取りこぼされた見込み客」とのつながりを継続させる役割を持たせることができます。

メルマガで自社の製品や関連情報のコラムを配信することで、徐々に見込み客の製品理解や市場理解を深めることができます。

またメルマガによって接点を持ち続けられれば、少なくとも自社を意識し続けてもらうことができるので、何らかの要因で検討度合いが上がった場合に候補に上がりやすくなります。

メルマガ配信の手順

①戦略の決定

メルマガ配信をする際に、最初に行うのが「戦略」の決定です。

戦略を決めることで、重視すべき成果指標や配信するメールのテーマや内容も決まってきます。

戦略を決めるためにはまず、メルマガ配信の目的を定める必要があります。メルマガの配信自体が目的ならないように、最初にしっかりと配信の目的を定めておきましょう。

目的は多くの場合「認知」「訴求」「調査」「行動」「推奨」の5つのいずれかに当てはまります。(5つの分類はフィリップ・コトラー『マーケティング4.0』のカスタマージャーニーマップに基づいています。)

認知:知ってもらう
訴求:いいなと思ってもらう
調査:比較検討してもらう
行動:購入・契約してもらう
推奨:購入・契約し続けてもらう、他者に薦めてもらう

5つの目的ごとにメルマガの戦略の例を以下にまとめました。
戦略展開の詳しい内容は「Lesson 2 メルマガの企画 - 戦略と運用のポイント」 で解説します。

カスタマージャーニーマップの分類

認知

訴求

調査

行動

推奨

目的

知ってもらう

いいなと思ってもらう

比較検討してもらう

購入・契約してもらう

購入・契約し続けてもらう、他者に薦めてもらう

配信対象の例

見込み客

見込み客

見込み客

具体的なアクションがある見込み客

購入・契約者

内容・テーマの例

業界最新事情、カンファレンス誘致、展示会誘致

eBook紹介、事例紹介、新機能リリース告知

セミナー誘致、事例紹介、トライアル誘致、新機能リリース告知

商談会誘致、キャンペーン

新機能リリース告知、事例紹介

頻度の例

定期的(頻度高)

定期的(頻度高)

定期的(頻度中)

不定期

定期的(頻度中)

目標(KPI)の例

配信数、純粋想起率、ブランドワード検索ボリューム

開封率、クリック率、CV率

開封率、CV率

CV率

配信停止率、解約率、NPS

担当部署の例

マーケティング部(ブランド担当)

マーケティング部(リード獲得担当)

マーケティング部(リード獲得担当)

営業部

カスタマーサクセス部

メール配信の目的が定まったらそれを基に具体的な目標を明確にします。

例えば「調査(比較検討してもらう)」が目的の場合、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)として「メール経由での資料請求◯件/月」などが定められます。
さらにKGIを達成するために必要な数値を逆算して「メール開封率」や「クリック率」をKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として設定します。

ここで意識しておきたいのが、KPIとなるべき「メール開封率」や「クリック率」をKGIとしないことです。
メルマガ配信の目的は、「メールを読んでもらうこと」ではなく、あくまでその先での行動を促すことです。
分かりやすい指標である「メール開封率」や「クリック率」だけを追いかけて、最終的な目標を見失わないようにしましょう。

②配信リスト作成

設定した目標を達成するために必要な人数を計算して、メールアドレスをリスト化します。

実はここがメルマガ配信のネックとなる場合も多いです。
メルマガ配信は実施にかかるコストは低いですが、質の高いリストの作成は容易ではありません。

株式会社リンクアンドパートナーズが行った「メールマーケティングに関する調査」でもメールマーケティングの課題として、29.8%が「リストの不足(正確なメールリストの維持)」を上げています。

出典:メールマーケティングに関する調査(株式会社リンクアンドパートナーズ)

この課題はメルマガ配信の担当者一人で解決できるものではありません。

マーケティングチームひいては会社全体の課題として捉え、対策する必要があります。

具体的な手法としては「SEO対策や広告運用を行いWebサイトの登録者数を増やす」「営業部にセミナーで積極的に名刺交換を行ってもらう」などの方法があります。

ただ、メールアドレスは個人情報ですのでメリット無しで簡単に登録してもらえるものではありません。
Webサイトの会員登録「詳細な調査レポートをダウンロードできる」「定期的にクーポンがもらえる」「会員限定機能の開放」といった付加価値の提供が不可欠です。

会員登録時に詳細に見込みの情報を収集できれば、セグメント分けを的確に行うことができるので、今後「ターゲティング(セグメント)メール」や「シナリオメール」など発展させていく際に、見込み客の一人一人に合ったきめ細やかな施策を行えるようになります。

ただし、会員登録時の入力項目が多くなってしまうため、入力画面での離脱率も高くなってしまいます。

「企業名」のような個人を特定につながりそうな情報は、入力のハードルになることがあります。
入力項目の数はできるだけ少なくした上で、内容も「業界名」や「部署名」などといった、セグメント分けをするのに十分な情報を得られる項目に限定するようにしましょう。

また、営業部が保有する名刺をリスト化する場合にも課題となる点があります。
例えば、名刺をスキャナーで取り込む場合、表記揺れが発生しますし、名刺の情報だけでは、過去の取引・商談の内容など詳細な顧客情報は登録することができません。

質の高いメール施策を実施するためには、営業担当者が持っている情報を余すところなく登録する必要があるため、登録作業の協力を取り付けなくてはなりません。

登録作業がマーケティング施策のためだけではなく、営業部門の業績改善にもつながるような仕組み作りとその周知も重要です。

オプトインへの対応について

メール配信を行う際の注意しなければならないのが「メールを受け取ることに同意したユーザーにのみ配信できる」点です。

これは「オプトイン方式」といって、2008年12月の「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の改正以降は義務化されています。

違反した場合、法人ならば「行為者を罰するほか、法人に対して3000万円以下の罰金」が課せられることがあります。

メルマガ配信に向けてWebサイトなどから新たにリストを収集する場合は、会員登録の際にメール受信の同意に関する項目を設けましょう。

※オプトイン規制の例外
オプトインの義務化で「営業の持っている名刺からリストを作成するのはまずいのでは?」と疑問に思った方も多いと思います。

ご安心ください。
以下の場合は例外として事前の同意を得ずにメールを配信することができます。

  • 電子メールアドレスの通知をした人
  • 取引関係にある人
  • 自己の電子メールアドレスを公表している団体又は営業を営む個人

企業が取引先やセミナーで交換した名刺から配信リストを作成する場合は、これらのいずれかの条件を満たす場合がほとんどですので、問題なくメールマーケティングの施策対象とすることができます。

出典:『特定電子メールの送信の適正化等に関する法律 第三条』(e-GOV法令検索)

③メールの作成

実際に配信するメールを作成します。
メルマガには「HTMLメール」と「テキストメール」の2種類があります。

HTMLメールとテキストメールの比較

「HTMLメール」は、Webページのように文字装飾や画像を盛り込んだメールです。

Webページを作成する際に使われるHTMLという言語が使われているため、文字情報以外にも細かく作りこむことができます。また、開封やボタンのクリックといった効果測定もしやすい、といったメリットがあります。
一方で、作成にはHTMLの知識が必要で工数がかかります。また、容量が大きくなりがちで、受信者の環境によって正しくメールが表示されない場合もあります。

「テキストメール」は文字や記号で構成する一般的なメールです。

受信者の環境がどのようなものでも問題なく表示されるメリットがあります。また文章だけのため作成の工数が少なく済み、HTMLよりもデータの容量が小さくなるため、表示速度も早いです。

 

HTMLメール

テキストメール

メリット

- 画像や文字装飾が使えるためデザイン性が高い
- 計測用の情報をHTMLに埋め込めるため開封、クリックなど効果測定しやすい

- 文章だけのため作成の工数がかからない
- 受信者の環境に影響を受けにくい
- 容量が小さいので表示が早い

デメリット

- デザイン性を追求すると作成に工数がかかる
- 受信者の環境によって正しくメールが表示されない場合がある
- 容量が大きいと表示に時間がかかる場合がある

- 決められた文字や記号で表現する必要がある
- 効果測定にはリンクの加工など工夫が必要

どちらを選ぶ場合でも、「安定した配信」「ブランドイメージの維持」「読みやすさの確保」といった観点からメールの「テンプレート(ひな形)」を作っておくことをおすすめします。

テンプレートの作り方は「Lesson 3 メルマガの作成 - テンプレートを用意する」で詳しく解説しますが、基本的な構成要素は以下の7つです。

  • ヘッダー
  • ファーストビュー(アイキャッチ)
  • CTA(Call to Action)
  • 本文
  • フッター
  • 件名
  • 送信者
メールマガジンの主な構成要素

テンプレートが作成できたら、コンテンツを作成します。

継続的なコンテンツの作成は、リストの確保に次ぐマーケティング担当者の悩みのタネです。
コンテンツを作る際の手順や注意点は「Lesson 4 メルマガの作成 - コンテンツを用意する」で詳しく解説していますが、端的に言えば「質」と「量」を意識する必要があります。

「質」に関しては「今、ここでしか得られない情報」を提供できているかどうかを意識します。
分かりやすい方法としては「○月○日までダウンロードした方には○○資料もプレゼント」「弁護士の○○氏が業界の○○を解説」などの要素を付け加えることです。

「量」については「1つのテーマについてさまざまな切り口で解説する」と良いでしょう。例えば新しいeBookのダウンロードを訴求するのメルマガを配信する場合でも、「XXX法施行まで半年。eBookでいま一度チェック」と訴求したり、角度を変えて「大好評のeBook、ダウンロード特典延長」と訴求したり、様々な切り口が考えられます。
「同じようなテーマで送り続けたら飽きられるのでは?」と心配になるかもしれませんが問題ありません。
メルマガ購読者は毎日さまざまな企業から大量のメルマガを受け取っているので、よほど毎日送り続けない限りは同じようなテーマでも意識さえしてもらえません。
まずは認知や訴求といった目的を達成するためにも、どんどん作って送りましょう。

メールに表示する義務がある項目

メール配信を行う場合、送信者は以下の項目を表示することが義務付けられています。

  • オプトアウト(受信解除)の通知ができること
  • オプトアウト(受信解除)ができることを通知する文言
  • 送信者の氏名もしくは名称
  • 送信者の住所
  • 苦情や問い合わせ等を受け付けるための電話番号li メールアドレス・URL
  • 送信者のメールアドレスなどの連絡先

ただ表示義務はありますが、メール内に記載されていれば任意の場所に配置してよい項目ですので、フッターや署名欄にまとめて表示する場合が多いです。テンプレートに記載することで入力漏れがないようにしておきましょう。

記載例と注意点を日本データ通信協会が作成しているのでよく確認しておきましょう。

メールに表示する義務がある項目

出典:『特定電子メール法』(日本データ通信協会 迷惑メール相談センター)

出典:『特定電子メールの送信の適正化等に関する法律 第三・四条』(e-GOV法令検索)

④メールの配信

メルマガの配信方法はおおまかに分類すると「メールソフト」「メルマガ配信ツール」「CRM(顧客関係管理システム)/SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)」の3つがあります。

メルマガ配信を始めるにあたっては、身近なツールである「メールソフト(GmailやOutlookなど)」を利用することが多いです。

具体的な手順は「Lesson 5 Gmailなどのメールソフトを使ってメルマガを配信する」で解説しています。

また、詳細な効果測定や、営業・マーケティング部門で協力してメルマガ配信をしたい場合は「CRM/SFA、MA」することも多いです。

こちらの手順は「Lesson 6 CRMを使ったメルマガ配信 - 配信準備編」「Lesson 7 CRMを使ったメルマガ配信 - メール配信編」で解説します。

どのツールを使うにせよ、配信の際は配信リストの中の誰に送るか、いつ送るかに気を使いましょう。

特に配信時間は非常に重要です。

メールには「読まれやすい時間帯」というものがあります。『メールマガジン購読状況調査 2022年度版』(Benchmark Japan)によると、仕事用ならば、朝の出勤時間と昼休憩以降の時間が読まれやすくプライベートでは21時以降が最も読まれやすいという傾向があります。

メルマガを読む時間帯はいつか?

これは業種や製品によっても異なりますが、メルマガ配信をする場合は想定しているペルソナの行動時間も想定して読まれやすい時間に送るようにしましょう。

例えば、40代女性用の化粧品に関するメールならば、料理や子どもの世話が落ちつく21時ごろに送る。
会社員の男性向けの商品ならプライベートで使う製品でも出勤時間の朝7~9時を狙うといった具合です。

メール配信時に必ず設定しておきたい「SPF」「DKIM」「DMARC」

メールに記載する送信元メールアドレスは、容易に詐称することができます。

「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の第五条・第六条で「送信者情報を偽った送信」および「架空電子メールアドレスによる送信」は禁止されています。

しかし、実在する企業のメールアドレスを騙って迷惑メールやフィッシングメールを送信する行為は後を絶ちません。

そのため「SPF(Sender Policy Framework)」「DKIM(DomainKeys Identified Mail)」「DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance)」といった技術で送信元詐称の疑いがあるメールを検出する仕組みが普及しています。

「SPF」は、送信元メールサーバーが正当なものかどうかを判別する技術です。
具体的な手法としては、まず送信者側がDNSサーバーにメール送信時に使うサーバーのIPアドレスを登録します。
メールを受信した際、記載されているメールアドレス(ドメイン)が登録されているサーバーのIPアドレスをDNSサーバーに問い合わせ、実際に送信されたメールサーバーのIPアドレスと比較することで、送信元メールアドレス(ドメイン)の詐称を判断します。

「DKIM」は送信するメールに電子署名を付与し、受信者が署名の検証を行うことで、信元メールアドレスの詐称やメール内容の改ざんを検知する仕組みです。

「DMARC」は「メールに表示されるメールアドレス(ドメイン)」と「SPF」「DKIM」の認証に合格したメールアドレス(ドメイン)が一致しているかを確認するものです。

それぞれの仕組みはともかく、重要なのはメール配信する際にこれらの認証を行っていないと迷惑メールとして扱われ、そもそも見込み客に届かない場合があることです。(例えばGmailは2024年2月からDMARCに対応していないメールを迷惑メールとして扱うようになっています)

「SPF」と「DKIM」はいずれも「送信元サーバーやメール内容の正当性を保証する」ものですので、どちらか一方の認証で問題ありません。メール配信する際には「SPF」「DKIM」のいずれか、および「DMARC」の認証を必ず行いましょう。

⑤効果測定および検証、改善

メールを配信した後は、最初に決めた目標の達成度を確認するために配信結果をチェックします。

メルマガ配信ツールを使用している場合、到達率、開封率、リンクのクリック率、コンバージョン率、購読解除率などを計測できます。

設定していたKPIよりも開封率が低かったならメールの件名を見直す、クリック率が低かったならCTAの設置位置を改善するといった工夫を行いましょう。

メルマガの開封率とクリック

メルマガの効果を測定する際の指標として重要な「開封率」と「クリック率」。
どの程度の水準なら施策の見直しが必要なのかを判断するために、業界ごとの「開封率」「クリック率」を把握しておきましょう。

業界によって差は大きいですが、「開封率」は約20〜30%、「クリック率」は約3%を目安としておくとよいでしょう。

業種

開封率(%)

クリック率(%)

広告/マーケティング/PR/メディア/デザイン

26.41%

1.60%

建築・建設

16.86%

0.81%

観光/エンターテイメント/ホスピタリティ

27.59%

1.30%

教育(大学、社会人)

12.77%

0.54%

コンサルタント/HR/人材

20.33%

0.94%

ファイナンス

17.94%

0.75%

医療

28.14%

1.80%

保険

17.92%

0.71%

製造/物流/エンジニアリング

17.03%

1.06%

不動産

26.65%

2.40%

小売/消費サービス

24.28%

1.34%

テクノロジー/通信

20.33%

1.19%

フィットネス

24.46%

1.27%

出典:『メルマガ平均開封率レポート【2024年版】』(Benchmark Email )

メルマガの課題

メルマガの最大の課題点はOne to Oneのコミュニケーションが不可能であることです。
メルマガは一斉配信になってしまうので、どうしても登録者一人一人にきめ細やかな対応をすることはできません。

登録者全員の状況が同じということはあり得ませんので、常に同じテーマで配信していてはなかなか成果が改善しません。

例えば、「オフィス移転の基礎知識」を配信しているメルマガは、受信者が「認知~訴求」の段階にある間は効果的です。
しかし、いざオフィスの移転を決定し、実際に物件を検討する「調査~行動」の段階に移った場合、受信者が求める情報は「空き物件の情報」「希望エリアの相場」などに変化します。
この段階に移行したユーザーにいくら「基礎知識」のメルマガを送っても、良好な反応は得られません。

メルマガの弱点はステップメールやシナリオメールとの併用で補う

One to Oneのコミュニケーションが苦手なメルマガですが、ステップメールやシナリオメールと併用することで、欠点を補うことができます。

ステップメールとは、徐々に登録者の理解度や検討度を高めることを意識した段階的なメールのことです。ステップメールはリスト登録初期の見込み客をナーチャリングするのに向いています。

最初にメルマガ「オフィス移転の基礎知識」を何通か送信したあとしばらくしてから、「主要オフィス街の坪単価相場」を送り、その後「新着空き物件紹介」を2通送る、というようなスケジュールを立てて運用します。

ステップメールは登録者全員への一斉配信では実現できませんので、登録者ごとに配信スケジュールを管理する必要があり、メルマガに比べるとやや運用が煩雑です。

また、受信者全員がメルマガをすべて読み、同じペースで理解を深められるわけではありません。
例えば「メルマガを開封すらしていない受信者」「毎回メールの内容を読み込んでいる受信者」「メールから興味を持って詳細を調べた受信者」では当然理解度は異なります。
「ステップメール」ではこうした理解度のばらつきに対応できませんので、「メールの開封」「自社サイトへの訪問」などの行動を追跡し、それぞれの行動を指標にして配信内容を振り分ける「シナリオメール」という手法もあります。

「シナリオメール」はユーザーの行動を踏まえた「シナリオ」をあらかじめ設定しておくことで、ユーザーにとって最適な情報を最適なタイミングで配信する手法です。
そのため、高い開封率・クリック率・コンバージョン率を期待することができます。ただし、多様なユーザー行動に対応した複雑なシナリオを設計するのは容易ではないため、メールマーケティングの導入初期段階から行うのはほぼ不可能です。

まずメルマガ配信から取り組み初めて、データを蓄積しながら「ステップメール」から「シナリオメール」へと発展させていくのが良いでしょう。

また、「シナリオメール」ほどの大掛かりなキャンペーンにせずとも、リスト登録者を属性別に分類し条件に合う登録者にのみメールを配信する「ターゲティング(セグメント)メール」という手法もあります。

オフィス移転向け不動産会社の例で言えば、希望するエリアや坪数などでセグメントして新着物件メールの内容を出し分けたり、リスト登録者の役職毎に配信するメルマガのコンテンツに変化を付けたりする方法が考えられます。

「ステップメール」「シナリオメール」「ターゲティングメール」のいずれもGmailやOutlookなどのメールソフトだけでは実現できません。

登録者の行動のトラッキング、属性・行動履歴の管理できる「メルマガ配信ツール」や「CRM/SFA、MA」などのツールが必要になります。

特にWebサイトでの行動追跡まで行いたいのなら「CRM/SFA、MA」が必要です。

「CRM/SFA、MA」を使ったメルマガ配信の方法は「Lesson 5 Gmailなどのメールソフトを使ってメルマガを配信する」で「Lesson 6 CRMを使ったメルマガ配信 - 配信準備編」「Lesson 7 CRMを使ったメルマガ配信 - メール配信編」で解説します。