DXとは

そもそもDXとは、「Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション」の略称で、2004年にスウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏によって提唱されました。経済産業省が公開している「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:『デジタルガバナンス・コード2.0』(経済産業省)

DXは「競争優位性を確立する」ために「AI(人工知能)やIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用しビジネスモデルや業務を抜本的に変革する取り組み」という意味で用いられています。

単にITツールを導入しただけではDXの成功とは言えません。ITツールやデータ化、AI活用によって、社員の働き方や商材、ビジネスモデルそのものが変革されてはじめてDXの成功といえます。

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マーケティングDXとは?

「マーケティングDX」とはマーケティング活動を起点としてDXを推し進めること、つまりデジタルツールを用いてマーケティング業務やプロセスを改善し、
マーケティング組織やビジネスの変革を実施すること指します。

マーケティングDXを理解するために、まず「マーケティング」について整理します。
マーケティングには様々な定義がありますが、ここでは「マーケティングの4P」を基に考えていきます。1950年代にアメリカのマーケティング学者のジェローム・マッカーシー教授はマーケティングを構成する4つの要素として「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促)」の「4P」を提唱しました。この4Pは、今もなおマーケティング戦略の立案や構築に用いる定番の手法として利用されています。DXが、デジタル技術の活用によるビジネスモデルや業務の変革という定義なので、つまるところマーケティングDXとはデジタル技術を活用して「マーケティングの4P」を変革する取り組みといえます。

それぞれの観点でどのようなマーケティングDXが行われるのか具体例を紹介します。

要素の説明
マーケティングDXの具体例

製品Product

どのような製品を顧客に提供するのか。誰のためにあるのか、どのような利点があるのかなど製品のコンセプトを決める。

消費者行動をPOSによるデジタルデータで可視化し、顧客のニーズや行動パターンをもとに製品を開発する体制を構築する

価格Price

製品を顧客にいくらで提供するのか。低価格帯による差別化や高級志向の顧客に対して高価格帯で販売するなど。

AIや機械学習を活用して、需要、競合、在庫状況などのリアルタイムデータに基づいて価格を自動的に調整する

流通Place

製品を顧客にどのような経路や手段で提供するのか。店舗、卸、通販など。

倉庫に保存されている商品在庫をデータ化し、物流会社と共有することでできるだけすみやかに顧客に商品を届ける

販促Promotion

どのように製品を顧客に認知させるか。広告、広報、ホームページ、SNS、キャンペーンなど。

マーケティングオートメーションを導入し、オンラインからの見込み客の獲得を強化。さらに複数の事業に同様の変革を展開する。

マーケティングDXとデジタルマーケティングの違い

マーケティングDXと「デジタルマーケティング」は混同されることがしばしばあります。
マーケティングDXは、デジタルツールを活用し、マーケティングプロセスや業務を変革することを指します。これに対して、デジタルマーケティングは、「Promotion(販促)」内でのWeb広告やメール配信などデジタル技術を活用したマーケティング施策のことを指します。

MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入し、デジタルマーケティング業務を自動化・効率化するという取り組みは「Promotion(販促)」をDX化する取り組みの第一歩といえます。

マーケティングDXの成功事例

日本コカ・コーラ株式会社

日本コカ・コーラ株式会社のマーケティング施策として、自販機を連動させたモバイルアプリは、マーケティングDXの成功事例としてよく知られています。
アプリを利用して自販機からドリンクを購入できます。購入するとアプリにスタンプが貯まり、スタンプを集めることで、無料で商品と交換できます。
この施策は自販機を利用する顧客の体験を変革したことも大きな特徴です。アプリからのコンテンツ配信やキャンペーンなどの販促を行い、自販機での購入・リピーターの獲得を図り、売上アップにつなげています。

出典:楽しくつながるスマホ自販機(日本コカ・コーラ株式会社)

イオン株式会社

大型ショッピングセンターを運営するイオン株式会社は全国の店舗から収集されるPOSデータをもとに、顧客属性と商品の購買パターンを分析し、顧客へのおすすめ商品の紹介やクーポンの配布に役立てています。
イオンでは「レジゴー」というアプリを提供しており、自身のスマホをレジ代わりにすることができます。「レジゴー」にはかごに入れた商品をもとに、おすすめが割り出され、買い物中にもクーポンが配信されます。また、買い物中以外にも、新製品の発売情報やクーポンなどを送付して来店を促す施策も行っています。
ビックデータを活かしたマーケティンDXの好例と言えます。

出典:イオン副社長が明かす本気のデジタル戦略「究極の顧客体験」とは
(日経クロストレンド)

江崎グリコ株式会社

菓子メーカーの江崎グリコ株式会社でもマーケティングDXに取り組んでいます。法人ノベルティ事業では、営業担当者が交換した名刺や電話からの問い合わなどで集めた見込み客をExcelで管理し、この見込み客に対して訪問営業を行っていました。しかし、顧客の購買タイミングにあわせた営業が難しく、商談化に課題を感じていました。
この課題の解決策としてMAを導入、顧客の属性や検討段階の可視化が可能になり、適切なタイミングでコンテンツに誘導することで、見込み客の獲得につながり、ほとんどなかったWebからの問い合わせが増え、全体の4分の1まで占めるようになりました。
ここまでではMAツールの導入であり、マーケティングDXではありません。さらにグリコでは、この仕組みを災害用備蓄販売のビジネスにも展開し、Webサイトからの問い合わせを獲得。こうした問い合わせからの受注率がほぼ100%という成果につながっています。1つの部門だけでなく、部門を横断したビジネスの変革をもたらした、マーケティングDXの成功事例です。

出典:「Glicoのデジタル戦略 パーパス実現に向けて」(江崎グリコ株式会社)

マーケティングDXの課題

  • 01

    他部門との連携

    マーケティング部門だけが新システムの導入や運用体制の見直しを進めてもビジネス体制の変革にはつながりません。営業部門との連携はもちろんのこと、IT部門や製品開発部門や物流部門など、部門を横断した取り組みが必要です。部門ごとに目標や業務の進め方、デジタル技術への理解や導入意欲も異なります。さらに、部門によって勤務場所や連絡手段が異なることもあり、コミュニケーションをとること自体が難しい場合もあります。
    また体制面だけでなく、データ面での連携もマーケティングDXには必要です。しかし、部門ごとにそれぞれのツールを利用しており、データが分散していたり、データの管理方法も異なっており、データが欠損してしまったり、データを統合することが難しいこともあります。

  • 02

    リソース不足

    DXは企業全体として取り組むべき長期間なプロジェクトです。
    マーケティングDXにおいてもこれは変わることはなく、全体を見据えたうえでプロジェクトの適切な計画を立て、予算を確保する必要があります。システムの導入や開発、ツールの利用にかかわる予算を確保できなければ、適切なデジタル技術を活用できず、DXの推進計画自体が頓挫し失敗に終わってしまいます。

  • 03

    大規模な計画に取り組んでしまう

    マーケティングDXの最終的な目的はビジネスモデルや部門を横断した業務フローの改善です。しかし、いきなり大きな計画を立てマーケティングDXに取り組んでしまうと、今までの業務フローから大きく変わってしまい現場に大きな混乱が生じてしまいます。結果として、現場の従業員からの理解が得られずプロジェクトを進めることが難しくなります。

  • 04

    マーケティング人材の不足

    マーケティングに関する知識とともに、デジタル技術に関して高い専門性を持った人材の不足は深刻な問題です。
    マーケティング部門が活用するべきデータは多岐にわたります。そのうえ、マーケティング部門がリーチするべきリードの数は膨大ですので、データの形式を統合し、重複や欠損を確認するだけでも非常に手間がかります。さらに、整理した情報を分析し施策に落とし込むとなるとマーケティングとデータ解析の両方で高い専門性が要求されます。

    こうした人材の採用は各社がDXを推し進める中で需要が高まっていることもあり、容易ではありません。実際に株式会社タナベコンサルティングが実施した「マーケティング・プロモーションに関する企業アンケート調査」では、4割以上の企業が「専門的に行う部署・チームがない」という状況にあることが分かっています。

  • 05

    既存システムからの移行、データ連携

    デジタル化を進めるにつれて、システムやプロセスとの統合が求められますがこれには多くの困難が伴います。
    既存のシステムが複雑化しており、新しいツールやプラットフォームとの統合が難しい場合があります。また、事業部ごと・部署ごとに異なるシステムを導入している場合や、そもそも「どのような情報を誰がどう管理しているのか」を把握できていない場合もあります。

    こうした場合、新システムを導入する前に、多くの時間とコストをかけて現状を把握し、移行計画を立てることから始めなくてはいけません。最悪の場合、複雑化したプロセスを新規システムに移行するめどが立たずDX計画が頓挫することもあります。

マーケティングDXの進め方

マーケティングDXを円滑に進めるためには、課題を踏まえて、効果的な手順で行う必要があります。
そこで、DXを進めるための手順を5つのステップに分けて解説します。

  • ステップ1戦略の明確化
  • ステップ2自社の現状把握
  • ステップ3人材確保と組織の構築
  • ステップ4システムの選定
  • ステップ5データの分析・活用
ステップ1戦略の明確化
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01. 戦略の明確化

DX推進の第一段階として、経営陣がDX推進の戦略を明確にする必要があります。
「DX推進」自体が目的では無いことに注意してください。「どんな経営課題の解決に向けて」「どういった業務の」「何をDX化するか」を明確にして取り組んでください。例えば「リード数が少ない」「リード情報を担当者・部署ごとに管理しており有効に活用できていない」「マーケティング部から営業に引き渡されるリードの受注率が低い」「ターゲティングができておらず、リードのニーズがわからない」など具体的な課題を洗い出します。そして、これらの目標達成のためにはマーケティングの「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促)」の4つのうちどれを変革するのかという戦略を立てます。

その後、を推進して何を改善すべきか具体的な目標を設定します。例えば「ECサイトのSEOを強化して、〇セッション/月UP」「リード情報を一元管理することで、クロスセル◯件/月受注する」「データをもとに営業に引き渡すリードの選定基準を変更して、受注率〇%UP」「リードの行動を追跡して関心の高いコンテンツを把握し、◯ページ/月作成する」などです。このとき定める目標は、マーケティング部門の範囲で実現できるものに限らず、全社的なKPIを設定することもあります。

ステップ2自社の現状把握
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02. 自社の現状把握

戦略が決まったら、DX対象業務の棚卸しを行い、既存の社内システムと各業務の関係性、部署ごとに管理している情報資産、各業務プロセスの全体像などの現状を把握し、課題を整理します。

既存システムが老朽化・複雑化していれば、改修や刷新が必要ですし、部門ごとに持っている情報とその形式を把握しなければ、共有するためのシステムを検討することができません。

また、現場の担当者にヒアリングを行い、現状の業務プロセスにどのような課題があるのかなど業務の現状を把握する作業も欠かせません。

無駄な業務や重複している業務があれば、廃止や統合の検討が必要です。
ミスが発生しやすい作業や、他に比べて負荷が集中している作業がある場合は、プロセスの改善や、システムによる自動化・効率化を検討します。

ステップ3人材確保と組織の構築
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03. 人材確保と組織の構築

現状の把握ができたら、社内の体制を整えるために人材確保や組織改革を行います。
DXの推進は、時間も手間もかかるため、業務の片手間で進めるのはほぼ不可能です。また、社内全体を改革することになるため、部門を横断した業務も多くなります。そのため、DX専任の部署やプロジェクトチームを立ち上げて専任の担当者を任命すべきでしょう。
また、マーケティングに関する知識も不可欠ですのでメンバーの選出は、DXの専門家とマーケティングの専門家の両面から行います。全社的な変革を目指すために、関連する各部門からメンバーを招集したり、DXチームとの橋渡し役として各部門でDX担当のポストを設置したりするのも良いでしょう。

人材を社内から探すのが難しい場合は、新規で採用を行うか、外部の専門家への委託も視野にリソースを確保します。
その際はDXレポート2でも指摘されている通り、「単なる受託先」ではなく「パートナー」として信頼に足る事業者を慎重に選定してください。

ステップ4システムの選定
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04. システムの選定

設定した戦略を実行し目標を達成するためのシステムの選定を行います。

例えば「Product(製品)」ならば、PIM(製品情報管理システム)やCRM(顧客関係管理システム)
を導入することになりますし、「Price(価格)」ならば、市場調査ツールやRMS(収益管理システム)など、「Place(流通)」戦略ではIMS(統合生産管理システム)やWMS(倉庫管理システム)など、「Promotion(販促)」戦略でのDXならばMA(マーケティングオートメーション)やCRMがあります。

自社の戦略と現状に合わせたシステムの選定が必要なのです。

具体的なシステムを選定する際は、スモールスタートできるようにクラウド型で、かつ月額制のシステムを推奨します。
その他の選定基準としては、既存システムとの連携性、導入時のカスタマイズ性、導入後のサポート体制などがあります。

ステップ5データの分析・活用
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05. データの分析・活用

DXの取り組みは、これまでのビジネスモデルを大きく変革する中長期的な試みであり、すぐに成功するとは限りません。
そのため、実行した施策が事前に決めていた戦略とプロセスに基づいてDXが実施できたのかを分析し、軌道修正していく必要があります。DXの推進度合いは事前に定めたKPIの達成度合いを元に判断します。
運用を始めて発生した問題点は社内で共有し改善策を協議します。分析結果をもとに戦略やリソース配分を見直し、必要であれば目標の見直しも行いましょう。
例えば、リード数は増加したものの、営業に送ったリードの商談化率が低下しているという場合は、ホットリードの選定基準を見直す必要があります。

特にスコアリング設定やホットリードの定義は導入直後からうまくいくものではありません。
購買意欲が高いリードの行動や、受注しやすいリードの特性の特定は、運用しながらデータを蓄積していくことで行う必要があります。

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