スタートアップが事業拡大を見据えてZoho CRM Plus を導入
顧客情報を一元管理し、最適なマーケティングコミュニケーションを可能に

スタートアップの創業期や新規事業の立ち上げ時には、営業や開発などに多大な労力が費やされる。その反面、顧客管理は後手に回りがちだ。まだ顧客や商談の数が少ないことから、つい属人的な管理手法に陥ってしまう。しかし、属人的な顧客管理は、ユーザーコミュニケーションを阻害する要因となり、事業拡大のボトルネックになり得る。新たな事業にのぞむ際には、将来の事業拡大を見据え、早い段階で顧客管理の体制構築に取り組む必要があるだろう。

お金の悩みを持つ人とお金の専門家が出会うマッチングプラットフォーム「オカネコ」などを運営する株式会社400F(以下、400F)は、設立から3年後の2020年10月にZoho CRM Plus を導入。それまでは複数のスプレッドシートで行っていた顧客管理をZoho CRM に移管し、顧客情報の一元管理を実現した。さらに、Zoho CRM をZoho Campaigns やZoho Desk などと連携し、マーケティングやカスタマーサクセスを後押しするデータ基盤としている。

顧客管理を疎かにしていると、サービスや事業が拡大したのちに、「負債」として重くのし掛かってきます。Zoho CRM Plus は安価かつ機能が充実しているので、顧客管理に早いうちから取り組むのに最適なツールだと思います

株式会社400F
加藤正紘氏

―400Fの事業概要を教えてください。

400Fはお金の悩みを持つ人とお金の専門家が出会うマッチングプラットフォーム「オカネコ」を運営しています。「オカネコ」は保険、投資、相続などに不安を抱えるユーザーが、家計診断を受けられたり、FP(ファイナンシャル・プランナー)やIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)などのプランナーに無料相談できたりするサービスです。ユーザーはスマホで気軽にお金の悩みを相談できる一方で、プランナーはB2Bサービス「オカネコBiz」を通じて、オンライン上で効率的に集客を行えます。こうした特徴がユーザー、プランナーの双方からご支持いただいております。累計登録ユーザーは36万人以上(2023年3月末時点)にのぼり、登録プランナーも250社700名以上(2023年4月時点)に達しています。

また、継続的な機能追加にも注力しており、2023年には生成AIを活用したチャット相談サービス「AIおかねこ」をリリース。ユーザーがより効率的かつ気軽にお金の相談ができる体制を構築し、さらなる顧客層の開拓を進めています。「AIおかねこ」は多くの方から注目を集め、リリースから4ヶ月後には利用者数が7万人を突破。今後も機能強化に取り組んでいく方針です。

顧客管理を起点にしたマーケティング強化を目的にZoho CRM Plus を導入
複数名で管理項目を管理し、ボトムアップ型でシステムを構築

―Zoho CRM Plus の導入に至る経緯を教えてください。

導入の目的は「顧客管理の体制確立」でした。以前、当社ではユーザーの顧客情報やプランナーの顧客情報を複数のスプレッドシートで属人的に管理していたのですが、事業が拡大し、登録ユーザーや登録プランナーが増えていくなかで、さまざまな不都合が生じるようになりました。

その一つが「プランナーの状況を把握できないこと」です。以前、当社ではセールス担当者が属人的にプランナーの顧客情報を管理していたため、商談のステータスや流入チャネルなどを担当者以外が把握するのが難しい状況でした。それではプランナーに適切なコミュニケーションを取れず、商談の機会をみすみす逃してしまいます。つまり、以前の顧客管理は、バケツの底に穴が開いているのと同じ状態だったのです。

また、ユーザーに対しては「マーケティングコミュニケーションを取ることができない」というのが課題でした。「オカネコ」はサービスへの登録後すぐにユーザーがプランナーにつながるため、もともと登録直後ではナーチャリングなどのマーケティングコミュニケーションを取る余地が少ないサービスでした。とはいえ、サービスへの登録検討段階などで取り逃しているユーザーは少なくないはず。そのため、サービスへの登録前後の段階からユーザーの情報を管理し、積極的にマーケティングコミュニケーションを図れる仕組みが必要でした。

―Zoho CRM Plus を選定した理由は何でしょうか。併せて、顧客管理システムのZoho CRM ではなく、統合パッケージのZoho CRM Plus を選んだ理由をお聞かせください。

導入を検討していたころは、「オカネコ」がリリースされて間もない時期だったため、システム導入に投下できる予算には限りがありました。ただ、その一方で、機能が簡素すぎても目標としていた顧客管理を実現できないため、「安価かつ一定以上のクオリティが担保されているシステム」が選定要件でした。

その要件に最も適していたのがZoho です。Zoho は比較的安価な料金体系であるにも関わらず、こちらの意図した形にシステムをカスタマイズできる柔軟性を備えていました。また、検討初期にはCRM機能のみを求めていたのですが、事業や組織が拡大すれば、その他の機能も必要になるはずだと考えました。その点、Zoho CRM Plus はメールマーケティングツールのZoho Campaigns や、ヘルプデスクツールのZoho Desk など、これから必要になるであろう充実した機能が取り揃えられており、Zoho CRM Plus の導入を決めました。

実は、私は前職時代に他社のCRMをさまざまなシステムに連携させて利用していたのですが、それぞれが異なるベンダーのシステムのため、APIのつなぎ込みなどに手間を要することがしばしばありました。その点、Zoho CRM Plus は多様なシステムを容易に連携できますし、マーケティングやヘルプデスクに顧客情報を利用するのも簡単であることが魅力的でした。

―Zoho CRM Plus の導入時に工夫したポイントがあればお聞かせください。

一定の統制ルールは設けつつも、複数のメンバーで管理項目の追加や修正を行ったことです。当初は私がシステムの管理を担当し、Zoho CRM のみを利用していたのですが、事業が拡大し、サービスが進化していくなかで、私一人では管理項目を管理するのが難しくなっていきました。そのため、それぞれの部署管理者に権限を移譲し、各部署で必要な管理項目を追加できるような体制に変更。これにより、社内のメンバーが利用しやすいシステムが構築され、利用範囲は拡大していきました。

スタートアップのサービスやビジネスモデルは、日々進化しており、次々と新たな形に変化していきます。そのため、管理すべき顧客情報は必ずしも一定ではありません。複数名で管理項目を管理し、ボトムアップ型でシステムを構築するのは、事業環境の激しい変化に対応するうえでも有効だったと考えています。

Zoho CRM ではユーザーごとにカスタマイズした操作権限や、データの閲覧範囲の設定を設定できる(権限・役職機能)

Zoho Campaigns やZoho Desk を活用した新たな業務体制を確立
顧客管理の一元化を通じ、最適なマーケティングコミュニケーションが可能に

―現在、Zoho CRM Plus をどのように活用されていますか。

B2Cの「オカネコ」のユーザー情報とB2Bの「オカネコBiz」のプランナー情報を、Zoho CRM で一元管理しています。両者は利用するサービスが異なるため管理項目は別々です。しかし、それぞれにユニークIDを設定して、二つの体系に分類することで、一元管理を実現しています。これにより、従来、複数のスプレッドシートに分散していた顧客情報が集約され、社内の多くのメンバーが顧客情報を即座に把握できるようになりました。

さらに、現在はZoho CRM の顧客情報をその他のシステムに連携して利用しています。その一つがZoho Campaigns です。以前、メールマーケティングには他社製品を利用していたのですが、メールを配信するたびにスプレッドシートから顧客情報を抽出して入力しなければならないなど、手間がかかっていました。しかし、今ではZoho CRM の顧客情報をZoho Campaigns に連携してメール配信ができるため、そうした手間がなくなりました。

さらに、ヘルプデスクにはZoho Desk も利用しています。事業の立ち上げから数年間はカスタマーサクセスの担当者が2名だけだったため、ヘルプデスクツールはそれほど求められていませんでした。しかし、事業が拡大し、カスタマーサクセスのメンバーが増えていくうちに、チケットの消化やステータスの管理でメンバーが齟齬をきたすようになりました。そこで、Zoho Desk を活用し、カスタマーサクセスの業務を一元化しました。現在カスタマーサクセスの担当者は5名以上在籍していますが、チケットを取りこぼすことなく、スムーズに顧客対応ができています。

そのほか、アンケートツールのZoho Survey をイベントの開催後などに配信するアンケートのフォーム作成に活用しています。以前はGoogle Formsで行っていましたが、Zoho Survey はフォームのヘッダーに表示されるロゴを自社のものに変更できるなど、細かい機能が充実していて、とても重宝しています。

― Zoho CRM Plus の導入効果を教えてください。

分散していた顧客管理を一元化し、マーケティングやカスタマーサクセスを推進するデータ基盤を構築できたのが、最大の効果です。ユーザーやプランナーが「今、どのような状況にあるか」を詳細かつリアルタイムで把握できるようになり、最適なマーケティングコミュニケーションやカスタマーサポートが可能になりました。事業のさらなる成長を目指すうえで、中核を担う重要なツールになることは間違いありません。

Zoho CRM の顧客管理をアップデートし
顧客の状態を可視化するデータ基盤の完成を目指す

―最後に、Zoho CRM Plus の活用について今後の展望をお聞かせください。

現在、Zoho CRM の改修を進めています。事業が拡大するなかで管理項目も多岐にわたり、顧客管理の手法にも改善が求められています。今後は、この改修を完了させ、データ分析の基盤を完成させるつもりです。

現在は「今、どのような状況にあるか」といった定量的な情報の把握はできていますが、「なぜ、その状態に至ったのか」という定性的な情報までは可視化しきれていません。それを可視化するにはデータ分析が必要です。そのため、今後はビジネスインテリジェンス(BI)ツールのZoho Analytics の活用を検討しながら、 Zoho CRM の顧客情報を起点としたデータ分析の体制を構築したいと考えています。その先に、さらなる事業の拡大とサービスの発展を実現するつもりです。

株式会社400F

  • 所在地:東京都中央区日本橋兜町9-1 兜町第2平和ビル FinGATE BLOOM 4F
  • 業種:情報サービス業
  • 社員数:73名 (2023年9月現在)
  • ビジネス:B2B、B2C
  • 事業内容:『オカネコ』プラットフォームの運営、『オカネコ』を活用した金融オンライン・アドバイザー事業
    (金融サービス仲介 + 保険代理店事業)、オウンドメディア『オカネコマガジン』の企画/開発/運営、
    金融機関のコンサルティング事業
  • 設立:2017年11月1日
  • URL :https://400f.jp/