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営業マネジメントの前提シナリオ
本レッスンでは、「さまざまな規模の企業に教育・研修サービスを提供する企業(C社)」での利用を例に、Zoho CRM の機能を活用した営業マネジメント手法を解説していきます。状況設定や具体的なカスタマイズ手順を参考に、自社のビジネスモデルや実際の営業活動に合ったカスタマイズやマネジメント実践の参考としてください。
C社の詳細なプロフィールやエンタープライズ営業に取り組み始めた経緯などは、レッスン8のプロフィールを参照してください。
営業マネジメントを行う状況設定
C社では、エンタープライズ営業に本格的に取り組むために、CRM/SFAツールを導入し、データドリブンな意思決定を行うためのカスタマイズとデータに基づくターゲティングを行いました。(前レッスンまでに実施した内容)
ターゲット企業に対して適切な過去の顧客情報や案件情報などをCRMに移行し、日々の営業活動情報などの入力を行うことで、営業マネジメントを行うための情報が蓄積されてきた状況です。
営業マネジメントの方針
C社では、エンタープライズ営業のターゲットとなる企業や担当者のリストアップまでが完了し、見込み客については新規開拓活動を、既存顧客にはより深い関係構築のためのアクションを起こしていくこととなりました。
具体的には、以下の流れで営業活動を行っていきます。
- リストアップされた見込み客と既存客を本年度のエンタープライズ営業対象リストとして管理し、担当者を割り振る
- 営業担当者は割り振られたリストをもとに、顧客の状況や自社との関係性を踏まえた適切な営業活動を行い、行動内容をCRM/SFAツールに適宜入力する
- 営業マネージャーは、CRM/SFAツールに入力された活動内容等をもとに、各営業担当者にアドバイスを行い、組織としての目標達成を目指す
エンタープライズ営業のターゲット管理
ここからは、Zoho CRMを使って、リストアップされた見込み客や既存客(連絡先)を管理し、その後の活動入力および状況把握を行える準備を行っていきます。
キャンペーン管理
Zoho CRMでは、展示会出展のようなマーケティング活動や、既存客に特定の商品を紹介するような一連の販促活動を管理するために、[キャンペーン]タブを活用します。
[キャンペーン]タブでは、特定の目的を持ち期間を定めた活動を管理するために、キャンペーン活動で得られた売上やかかった費用、キャンペーン活動の対象者リストの管理などを行うことが可能です。
今回は、2025年度において行われるエンタープライズ営業に関連する活動を管理するためにキャンペーン情報を登録し、対象リストをキャンペーンに関連付けて、営業マネジメントを行う準備を整えていきます。
キャンペーン登録と見込み客・連絡先の紐づけ
まず最初に、キャンペーンタブに情報を登録しておきます。
キャンペーン情報の登録の手順、対象の登録は以下の動画を参考としてください。

今回作成したキャンペーンでは、まだ具体的な商談が発生していないため、売上は0の状態ですが、営業活動が進んで商談情報も紐づけると、該当年度のエンタープライズ営業の活動で積み上げられた売上や今後の見込みなどが自動で集計されます。

また、動画の中では、見込み客を3件、連絡先を16件紐づけられ、合計19件がエンタープライズ営業のターゲット顧客として、組織ではなく個人レベルでリストアップされている状態です。
キャンペーンに紐づいた情報は、[見込み客]や[連絡先]からもフィルター条件として利用することでできるので、各タブで対象のリストを表示させることも可能です。

Zoho CRMを始めとするCRM/SFAツールでは、このようなキャンペーン情報を使ったリストや活動の管理を行うこともありますし、シンプルに各タブに項目を追加したり、柔軟に情報を付与できる[タグ]と呼ばれる情報を使って管理することも可能です。
自社がどのような管理を行いたいか、管理のためにどの程度の時間を割けるのかといったことを考慮し、管理方法を決めて運用を行いましょう。
担当者の割り振り
リストアップが完了したら次は対象顧客の営業担当者を割り振ります。
既存顧客については、過去に対応した担当者が継続的にフォローを行うことが一般的なので、今回は見込み客について割り振りを行います。
現状では、3件の見込み客がターゲットとしてリストアップされています。IT業界が2件、流通業界が1件となっています。
担当者の割り振りにはさまざまな考え方があります。純粋に現状の担当件数などから割り振る方法、問い合わせなどが入った順に割り振っていく方法、営業担当者の得意業界や課題などの条件で割り振る方法などが挙げられますす。
今回は、IT業界の2件について、IT業界の経験が長い佐藤氏に担当を変更します。
一括で担当者を変更する方法は以下の動画を参考としてください。

純粋な活動量や素早い対応が求められるSMB向けの営業であれば、担当数や順番に割り当てる単純な割り振りで問題がないことが多いですが、エンタープライズ営業では、初期段階から信頼関係を築いていく必要があります。
可能であれば、見込み客をしっかりと見極めて、適切な営業担当者を割り振るようにしていきましょう。
3つの視点での営業マネジメント
エンタープライズ営業のマネジメントにおいては、レッスン5で解説した通り、次の3つの視点が欠かせません。
- 顧客管理
- 案件(商談)管理
- 活動管理
これらを統合的に管理・最適化することが、顧客との中長期的な関係性構築とLTV最大化への第一歩です。
CRM/SFAツールには、それぞれの情報を蓄積・構造化し、営業マネージャーが再現性のある成果を生むための「情報基盤」としての役割が求められます。
顧客管理のマネジメント
これまでの作業の中でターゲットのリストアップは完了しているため、各担当者に求められるのはターゲットの状態管理です。
見込み客が自社の商品やサービスに興味があるのか、具体的な検討を行っているのか、すでに利用しているが、いまいち満足していないのか、個人・組織の両面で状態を把握していく必要があります。
顧客の状態を把握できれば、対応の優先順位やいま何をすべきなのかを適切に判断することができるようになりますし、マネジメントの視点では、組織全体として目標達成するために、各状態の顧客が十分な数確保できているのか、足りていなかった場合にどのように改善していくのかを考えられるようになります。
顧客管理については、[見込み客][連絡先][取引先]で視点が異なるため、それぞれ解説を行っていきます。
見込み客のマネジメント
見込み客の場合、展示会やセミナーに参加したり、資料ダウンロードを行っただけで、詳しい状況が把握できていないところからのスタートとなることがほとんです。
同じ展示会に参加しても、単なるお勉強モードの情報集なのか、具体的な課題を持ち解決策を検討しているのかなど、顧客の状況はさまざまです。
このような顧客の状況・状態を管理する項目として、Zoho CRMでは、[見込み客のステータス]という項目が存在します。

初期段階の項目としては、連絡済みであるのかといった内部管理的な選択肢も含まれますが、どのような内容で管理すべきかを検討した上で、自社にあった項目として管理していきましょう。
たとえば、営業活動視点では、以下のような項目で管理することがあります。
- 未連絡:まだ何もアクションができていない状態
- 初期アプローチ:初回連絡を行い、ターゲットとして適切かを把握している状態
- 継続アプローチ:ターゲットとして適切であることが判明したが、今すぐ具体的なアクションを行えない状態。定期的に接触を行う
- 対象外(精査済):アプローチした結果適切なターゲットとはいえないことが判明した状態
- 対象外(競合):アプローチした結果、競合企業であったことが判明した状態
顧客の状態を把握した上で、誰がいつまでに何をするのかを決めていきますが、詳細は活動管理で解説します。
連絡先のマネジメント
すでに取引があるか、見込み客としての評価・アプローチが終了し、商談が始まっている個人情報の連絡先についても、見込み客と同様の状態管理が必要です。
また、組織の中でさまざまな立場の関係者が取引に関与するエンタープライズ営業では、決定権の有無や関与する立場、自社に対する態度など複数の情報から誰にどのような活動を行っていくべきかを決定していきます。
以下の画面では、とある企業の連絡先一覧を表示しています。

上記を見ると、経営層、人事教育現場と幅広い層に接触が出来ており、自社に対して好意的な立場を撮っている連絡先が多く、よい関係性が築けていることが分かります。
一方、別の企業では、以下のような状態を確認できます。

上記は現場や教育担当との接触がなく、自社への態度も1人だけが積極的という状況であるため、自社に好意的な経営企画の担当から紹介を受けることで顧客内での接触先を増やし、自社の味方を増やすような活動が必要であることが分かります。
このように各担当者との関係性の状態を管理し、必要な活動を決めてマネジメントしていくことが必要です。
取引先のマネジメント
組織単位の関係性のマネジメントにおいては、より大きい視点で取引先の状態管理を行っていく必要があります。
レッスン5で顧客との関係性構築のプロセスについて解説しました。

上記を踏まえて、今回のC社の例では、よりシンプルに、以下のような自社との関係性を定義しています。

上記のプロセスをカスタマイズで追加した項目に反映しているため、画面上は以下のような表示されます。

また、それぞれの状態については、以下のような設定を想定しています。
- なし:まだ関係性が築けていない状態
- 単発依頼:初回の研修を受注・納品した状態
- 継続依頼:初回の研修が評価され、2回目以降の研修を受注・納品した状態
- パートナー:継続依頼を受けつつ、具体的な案件だけではなく、組織課題について相談を受けたり、解決に対して協力関係が築けている状態
一般的な顧客との関係性よりもプロセスを少なくしているのは、商品・サービス特性を考慮していること、取り組み始めたばかりのエンタープライズ営業における顧客との関係性が細かく把握できていないことや、細かく分ける過ぎることで各担当者の認識がずれることを避けるためです。
エンタープライズ営業に取り組み始めた場合には、よりシンプルなプロセスを定義し、徐々により現実に即して、再現性の高いプロセスを構築していくようにしましょう。
マネジメントという観点では、より関係の深いパートナーとしての立ち位置となっている顧客を増やしていくのか、そのためにどのようなアクションを行うべきかを検討して活動を行っていく必要があります。
案件管理のマネジメント
エンタープライズ営業における案件管理では、個別の案件状況に一喜一憂するのではなく、顧客との関係性と関連づけて、より大局的な視点でその案件の位置づけと意義を把握することが重要です。
今回のC社の例では、[案件の位置づけ]という項目をカスタマイズで追加し、以下のような状態を定義しています。

また、それぞれの状態については、以下のような設定を想定しています。
- 情報収集:顧客の課題やキーマンに関して情報収集をするための案件。場合によっては無償の体験会や勉強会などを行うことを目的とすることもある
- 初回取引:初回の研修を受注するための案件。その後の展開につながりやすい担当者は部門を選んでアプローチする必要あり
- 信頼関係構築:初回取引後の継続的な受注を目指すが、十分な差別化や信頼関係作りが出来ていない場合には、受注や売上にこだわらない活動を行うこともある
- 他部門展開:特定の部門や階層向けの研修から別の部署などの研修に関する受注を目指す状況。現場や採用担当者主導の案件から、人事・研修部門の主導する研修など、その後の展開に進みやすいアプローチ先を選定する必要がある
- 全社展開:階層型研修の複数の層に研修サービスを提供し、人事戦略やさまざまな教育機会に関わっている状態を目指す
- グループ展開:グループ企業などの他社への展開を目指す状況。研修による成果を明確にして、紹介を受けられる状態でないとグループ展開にはつながらない
案件ごとの位置づけを意識した活動を行い、個別案件の受注だけでなく、顧客から信頼を得られるような活動を意識した案件管理を行うことで、中長期的な関係構築が可能となります。
活動管理のマネジメント
エンタープライズ営業における活動管理では、単なる営業行動の記録や量のモニタリングにとどまらず、「戦略的に顧客関係を深化させるための活動設計と優先順位付け」が求められます。
活動量の記録からマネジメントを行う場合、営業担当者の活動量を単純にみるだけでなく、
- 見込み客と既存顧客との活動量と比率
- 既存顧客の優先度ごとの活動量と比率
- 個別案件のステージごとの活動状況
- 案件の位置づけごとの提案数や受注数や受注率
などをモニタリングすることが必要です。
上記のようなモニタリングにより、
- 各担当者が計画通りの行動を行えているのか
- 優先度は高くないが訪問しやすい顧客にばかり時間を割いていないか
- 組織内で他部門への展開が苦手な担当者がいるなど、得意不得意がないか
といった視点で活動状況を把握することができ、適切なアドバイスを行うきっかけを得られるようになります。
今回のC社の例では、[予定]タブには、[活動目的]という項目をカスタマイズで追加し、以下のようなな画面で活動の種類を入力し、モニタリングできる設定を行っています。

このような活動の目的を定めたり、活動と紐づける[取引先]や[商談]を適切に選択することで、各営業担当者の活動状況を把握することができるようになります。
さらに、Zoho CRMにおいては、[タスク]や[予定]などの活動情報は、
- 個人単位:[見込み客]か[連絡先]のいずれかのタブ
- その他の情報:[商談]か[取引先]などのタブ
を紐づけることが可能です。[商談]と[取引先]を同時に紐づけることができないといった制約があるため、活動管理を行う上で、各活動情報をどのタブと紐づけるべきかというデータ活用の視点を持って、運用ルールを定めるとよいでしょう。

具体的には、
- 個別の案件に関連する活動は、[連絡先]と[商談]に紐づける
- 個別の案件に直接関連しない活動は、[連絡先]だけに紐づける
といったルール決めが必要です。
顧客の組織単位での活動状況を把握するには、[連絡先]や[商談]といった[取引先]に必ず関連づけられる情報を紐づければ状況把握ができると考えておくとよいでしょう。
適切な運用ルールで蓄積されたデータをレポートやダッシュボードといった情報を集計したり、ビジュアル化できる機能を使って、週次や月次といった単位で把握しながらマネジメントを行っていきます。
まとめ
エンタープライズ営業においては、「今月や今期の売上」だけを追いかける短期視点では適切なマネジメントは行えません。組織の営業活動全体が「お客様との信頼関係づくり」に向かって統一されることで、顧客との関係性構築とその結果としてのLTVの最大化という目標を達成することが可能となります。
上記のような状態を目指すために、CRM/SFAツールを以下のように目的をもって活用するとよいでしょう。
- 顧客ごとに中長期の関係性を定義し、関係性を適切に把握する
- 一つ一つの案件(商談)を分類し、顧客との関係性と関連づけて管理する
- 営業活動を可視化し、顧客や案件ごとに活動量や活動の質を把握する
- 組織全体の状況を把握し、目標達成に向けて活動をコントロールしていく
CRM/SFAツールのデータは、入力されただけで、活動の改善に活かされなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。営業現場で日常的に活用され、マネージャーが判断と指導に活かし、経営層が戦略判断の材料とすることで、ようやく「経営の武器」になります。
本記事を参考に、CRM/SFAツール活用の次なるフェーズへと踏み出し、持続的な成長につなげてください。
次のレッスンでは、本レッスンで学んだ営業マネジメントに必要な数値管理やレポート・ダッシュボードの作成や活用について解説していきます。
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