[実践編]既存データを活用したターゲティングの実践

CRMの初期導入やカスタマイズを終え、営業プロセスに合わせたデータ項目の整備が進んできた企業にとって、次に重要になるのが「蓄積された情報を使ってどの顧客にアプローチするかを戦略的に決定すること」です。特に営業プロセスが長期化・多層化するエンタープライズ領域では、「誰に注力すべきか」を見誤ると、時間も人材も無駄に消費してしまう恐れがあります。
そのため、CRMに蓄積されたデータを活用し、過去の取引実績から成功パターンを導き出し、それに基づいて見込み客を精査する「データドリブンなターゲティング」が求められます。
本レッスンでは、Zoho CRMを用いて既存顧客のうち、売上金額や受注率の高い属性を分析し、それをもとに類似の見込み客を抽出する流れを解説します。
また、これらの分析の前提として、Zoho CRMにおけるデータのインポートと整理についても簡単に触れます。実践的な活用を前提とした本レッスンを通じて、自社にとって本当に価値のあるターゲット層の明確化と、それに基づく営業戦略の高度化を目指しましょう。

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[実践編]既存データを活用したターゲティングの実践
目次

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ターゲティングの前提シナリオ

本レッスンでは、「さまざまな規模の企業に教育・研修サービスを提供する企業(C社)」での利用を例に、Zoho CRM の機能を活用したターゲティング手法を解説していきます。前提条件や具体的なカスタマイズ手順を参考に、自社のビジネスモデルや実際の営業活動に合ったカスタマイズやターゲティングの選定の参考としてください。

C社の詳細なプロフィールやエンタープライズ営業に取り組み始めた経緯などは、前レッスンのプロフィールなどを参照してください。

ターゲティングを行う状況設定

C社では、エンタープライズ営業に本格的に取り組むために、CRM/SFAツールを導入し、データドリブンな意思決定を行うためのカスタマイズを行いました。(前レッスンで実施した内容)

過去の顧客情報や案件情報などをCRMに移行し、日々の営業活動情報などの入力を行うことで、ターゲティングを行うための情報が蓄積されてきた状況です。

ターゲティングの方針

C社では、既存顧客の中で一定以上の企業規模を持つ顧客には様々な研修ニーズがあり、一度入り込むと長期間に渡って売上や収益を確保できることが見えてきたため、エンタープライズ営業のターゲットとなる企業や担当者を以下の流れで選定することとしました。

  1. 企業単位では、従業員数が多く、社員教育に積極的な姿勢を持つ企業が継続取引につながっている可能性が高い(仮説立案)
  2. 既存の取引先の情報や商談結果をもとに、売上金額が大きく、継続的な取引が行われている企業を抽出し、同様の組織としての属性、担当者の属性を把握し、今後の見込み客へのアプローチの参考とする(データによる検証)
  3. 既存データから導き出された見込み客をターゲットとしてリストアップ
  4. リストアップされた見込み客にアプローチを行い、行動結果からターゲットとして適切かを定期的に見直す

本レッスンでは、3のリストアップまでの手順を具体的に解説していきます。

サンプルデータの削除とインポート

この後の設定やターゲットの絞り込みを行うためのサンプルデータを用意しました。

以下の手順に従って、トライアルを開始した時点で設定したサンプルデータを削除し、改めて用意した[取引先]、[連絡先]、[商談]のデータをインポートしてみましょう。

まずは、環境設定を行った時点でZoho CRMに設定したサンプルデータの削除から行います。

サンプルデータの削除は[設定]>[サンプルデータの削除]メニューから実施できます。

サンプルデータの削除画面

サンプルデータの削除について[続ける]ボタンをクリックすれば削除処理が進行します。

サンプルデータを削除する

削除が完了するとサンプルデータがすべて消えた状態になるので、各タブのデータを確認してみましょう。

サンプルデータが削除されたことを確認する

次に、本レッスンのために用意された[取引先]、[連絡先]、[商談]、[見込み客]のデータをインポートしていきます。インポート手順については、以下の記事も参考としてください。

きっちり達人シリーズ:よくわかるSFA [実践編] 取引先、連絡先、見込み客の登録

きっちり達人シリーズ:よくわかるSFA [実践編] 商談タブの設定と登録

各タブのデータの紐づけを正しく行うために、[取引先]、[連絡先]、[商談]のインポート順は守るようにしてください。

[取引先]タブのインポート手順を以下の動画で示しますので、他のタブのデータも同様にインポートを進めます。

データインポート

インポートが正常に完了すると、各タブにデータが保存されていることを確認できます。

既存顧客の分析によるターゲティング

ここからは、Zoho CRMを使って、既存顧客の売上情報や属性情報を使って狙うべき顧客の条件を分析する流れを紹介しています。

今回の例では、C社ではすでにエンタープライズ企業との取引が何社か存在している状況ですので、エンタープライズ企業に該当する企業に絞った上で分析を進めていきます。

既存顧客の情報をビューで確認する

Zoho CRMでは、[取引先]のような各タブで、条件に一致する情報を簡単に絞り込んで、一度設定した条件を保存し繰り返し利用することが可能です。

以下の動画では、条件に一致した情報を表示する[ビュー]を作成し、登録された情報の中から、必要な項目を表示させ、今後のターゲティングに活かせる状態を作っています。

取引先ビューの作成

今回はターゲティングに必要な項目を中心に表示項目を設定していますが、さまざまな条件や項目の選択は自由に設定可能です。

取引先ビュー

これで既存顧客の中でエンタープライズ企業が抽出されました。

レポートによる分析

先ほどはビューを作成してエンタープライズ企業の一覧を表示させましたが、分析する際には、これまでの売上金額の合計や年度別の推移の変化などを把握する必要があります。

[取引先]などの項目として売上数を集計することも可能ですが、色々な角度から分析する場合には、レポート機能を使用するとよいでしょう。

以下の動画では、取引先別に過去3年間の受注済みの商談の金額を集計し、各企業の取引の変化を分析できるレポートを作成しています。

取引先レポート

今回作成したレポートでは、受注済みの売上の合計金額が集計されるので、まずはエンタープライズ企業の中で売上金額の合計が大きい企業に注目します。

さらにエンタープライズ営業においては、関係構築が進み、適切な活動を推進できれば徐々に取引額が上がっていく可能性が高いため、2022年~2025年の間で売上が増加傾向にある企業が今後のターゲットの参考となる企業といって差し支えないでしょう。

取引先レポート

上記の条件に当てはまるのは、赤枠で囲った「▽▽株式会社」と「◇◇株式会社」の2社となっています。

ターゲットの仮説立案

絞り込んだ2社のうちの1社である「▽▽株式会社」では、以下のような情報が確認できるので、ターゲットとなりうる企業の仮説を立ててみましょう。

取引先詳細

まず、従業員数が多く、教育投資にも積極的な企業が取引先としては有望そうです。また、社員のスキルと組織力が直結するIT業界というのもターゲットの属性としては有望である可能性が高いでしょう。

上記の条件はエンタープライズ企業であれば多くの場合該当する可能性が高いため、状況に応じて、組織の持つ課題なども参考の属性として利用していくこともあります。

上記の例では、[教育・人事課題]が[組織文化]となっており、短期的な取り組みでは長期の取り組みを行っていることが伺えます。

次は、各商談の履歴や顧客側の担当者の情報をもとに分析を進めていきます。

取引先詳細
取引先詳細

取引の推移と顧客側の担当者の属性を見てみると、現場主導のチームビルディング研修をきっかけとして、徐々に階層別研修の領域に入り込み取引を拡大している流れを確認できます。

エンタープライズ企業では、すでに研修会社との密な取引があったり、教育専門の子会社を持っていることなどが多くなります。そのような顧客に入り込む入り口としては、現場側の強い要望で研修を実施し、それをきっかけとして研修部門や経営層にアピールしていくという進め方は十分に可能性を感じられる流れです。

「◇◇株式会社」についても分析を進め、「IT・流通業界」で「一定の企業規模を持ち、教育投資に長期的な視点を持って対応を進めている」組織、さらに「現場に近い立場の顧客」が最初のターゲットとなりえるという仮説が見えてきました。

今回はサンプルデータで、2社の情報をもとに分析を行っていますが、実際には複数の企業との取引の経緯や属性を分析してターゲットや営業戦略などを検討してく形になります。

仮説に基づくターゲティング

仮説の立案ができたら、仮説に基づいて、既存顧客のリストを見直して注力すべき既存顧客を明らかにしたり、まだ取引のない見込み客のリストの中で優先順位を設定して、アプローチを行っていきます。

見込み客の絞り込み

今回は見込み客として登録されているリストの中から優先的にアプローチするターゲットを抽出する作業を行っていきます。

取引先で新たな[ビュー]を作成した流れと同様に条件設定で絞り込み対象を明らかにしてみましょう。

[ビュー]ではさまざま条件を設定することが可能です。今回は、以下のような条件設定をしてみます。

見込み客のターゲティング

見込み客の場合、顧客との接触が始まった初期段階では、定性的な情報などは取得が難しいため、できるだけ客観的で公開されている情報をもとに絞り込むとよいでしょう。

以下の動画で、[ビュー]を作成し、見込み客を絞り込む手順を確認してください。

見込み客のターゲティング

既存顧客の仮説立案の際に出てきた[教育投資額]などは、アプローチをしてある程度関係性が出来始めてから獲得できる可能性が高いため、最初の条件に入れるのが難しいといったことが起こります。

実際に動画の中でも最初の条件では、対象者が0件となってしまい、[教育投資額]の条件を除外することで、3件のターゲットが表示されました。

見込み客のターゲティング
見込み客のターゲティング
見込み客のターゲティング

また、仮説に基づくと現場に違い担当者をターゲットとして抽出できればよかったのですが、今回のサンプルデータでは該当の条件にあった見込み客はいなかったようです。

仮説を立てたとしても、その仮説に合致する見込み客がいなかったり、少数だったりすることも多いため、最初の条件は少し幅を持たせて、ある程度のターゲット数を確保し、アプローチをかけて実際に情報を収集しながら、情報の精度やターゲットの精度を上げていけると成果を出しやすくなっていきます。

他部門との連携

先ほど解説したように自社にとって狙うべき企業や担当者の情報をすでに十分に確保できていることはほとんどありません。そのようの状況において重要になるのは、ターゲット仮説を他部門と共有することです。

特に見込み客の獲得に直接関わる可能性の高いマーケティング部門、分業されている場合のインサイドセールス部門との連携が重要になってきます。

CRM上のデータに基づいて仮説が立案できていれば、獲得するべきターゲット像に説得力を持たせることができ、現在の見込み客リストの対象者数、アプローチ成功率や受注率などから必要な見込み客数なども算出できます。

CRM/SFAツールを導入し活用することで、他部門との連携も具体的な事実や数字に基づいて行うことができるようになるでしょう。

まとめ

営業プロセスが複雑化・長期化するエンタープライズ営業においては、どの企業の・どの担当者に・どのような内容でアプローチすべきかを見極める力が、成果を大きく左右します。

適切なアプローチを行い、活動を改善し続けるためには、CRM/SFAツールに蓄積された情報を活用し、既存顧客の成功パターンを抽出して、見込み顧客へのアプローチに活かす「データドリブンな営業活動」が欠かせません。

本記事で紹介した分析と抽出のプロセスを継続的に実施することで、

  • 営業リソースの最適配分
  • 再現性のある営業戦略の構築
  • 部門を超えた営業・マーケ部門の連携

を実現でき、結果としてアプローチ成功率・受注率の向上や売上や利益の最大化へとつながります。

CRM/SFAツールの活用の本質は、「データを集めること」ではなく「集めたデータを戦略的に使いこなすこと」です。

これから本格的にエンタープライズ営業の実践やデータ活用に取り組む企業では、最終的にどのようにデータを使いこなすのかをイメージしながら、CRM/SFAツールの導入の検討を進められるとよいでしょう。

次回以降のレッスンでは、顧客のターゲティングをもとに適切な活動を行うための営業マネジメントについて、具体的に解説していきます。