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営業目線でリード優先順位をつける重要性
営業活動において、すべてのリードに対して同じ時間と労力をかけるやり方には限界があります。人員や時間といったリソースが限られている以上、「より成果につながりやすい相手から優先的に対応」していく必要があります。優先順位が明確になっていないと、営業担当者ごとの判断にバラつきが生まれ、成果のばらつきや機会損失にもつながります。そこで重要になるのが、営業リストに登録されたリードの中から、「誰に、どの順番でアプローチすべきか」をあらかじめ見極めておくことです。
例えば、以下のようなリードは優先的に対応すべき対象といえるでしょう。
- 自社との親和性が高い業種や過去に実績のある地域に属する企業
- 資料請求や問い合わせなど、すでに具体的なアクションを起こしているリード
- 現時点で明確な課題を抱え、解決手段を積極的に探している企業
こうしたリードを見逃さず、それぞれに適したタイミングと方法でアプローチを行うことで、営業活動の効率は飛躍的に高まります。
では、どのようにリードの優先順位を判断すればよいのでしょうか?優先順位の付け方は2つの方法があります。
一つは、営業リストに含まれる既存情報やターゲット基準を基に優先順位を設定する方法と、もう一つは、営業担当者が直接ヒアリングした情報(例:課題や予算など)を基に見極める方法です。
このような優先順位づけを行うためには、営業リストが「どこから手をつけるべきか」を判断できる状態に整理されている必要があります。リストをきちんと整理することで、場当たり的な営業活動から脱却し、再現性のある成果につながるアプローチを実現できるようになります。
優先順位付けのベースとなるリード分類
営業リストを使って安定的に商談数を増やすには、「どのリードに、どのタイミングでアプローチすべきか」を判断する基準を持つことが重要です。その起点となるのが、リードを状態に応じて分類し、優先順位をつけるという考え方です。
リードを分類することで、営業リストは単なる連絡先の一覧ではなく「今、どの相手に優先して営業すべきか」を判断するための営業活動の判断軸として使えるようになります。ここでは、営業リストの優先順位を整理する際に活用する「ホット」「ウォーム」「コールド」で分類するフレームワークについて学びます。
ホット/ウォーム/コールドの基本的な考え方
リードの状態を判断する際によく用いられるのが、「ホット」「ウォーム」「コールド」という3つの温度感による分類です。
新規開拓の初回接点の段階においては、すべてのリードが同じ温度感を持っているわけではありません。そのため、リードの購買意欲や導入検討の進み具合に応じて、3つに分類し、それぞれへの営業アプローチの設計を行えるとより効果的な活動ができます。各分類の定義は各企業の方針ごとに異なるものですが、状態を大まかに分けた一般的な定義は以下となります。
分類 | 状態の特徴 |
ホットリード | すでに導入意欲が高く、短期的に商談・契約につながる可能性がある。予算や決裁権限も明確になっており、具体的な相談が始まっている。 |
ウォームリード | 一定の関心はあるが、まだ比較検討中や社内での合意形成に時間がかかっている。 |
コールドリード | 関心がまだ薄い、またはニーズが具体化しておらず、情報収集の初期段階にある。 |
このようにリードを分類することで、営業チーム全体で、次にアプローチすべき対象とその優先度を整理できるようになります。個人の判断に頼らず、チーム全体で共通の基準を持つことが、成果のばらつきを防ぎ、営業力の底上げにもつながります。
各基準の特徴と営業アプローチの違い
リードを「ホット」、「ウォーム」、「コールド」に分類した後に重要なのは、それぞれにどのような対応をするかを明確にしておくことです。対応方針が定まらなければ、分類しても、具体的な行動に結びつかず、営業活動が属人的になってしまう恐れがあります。以下に、それぞれのリードに適したアプローチの特徴を整理します。
分類 | 状態の特徴 | アプローチ |
ホットリード | 購買意欲が高く、導入意向が明確 | すぐに営業担当が接触し、商談化を進める。ただし、いきなり提案に進むのではなく、本当に導入意欲が高いかを確認するヒアリングを挟むことで、優先対応の精度を高めることができる。 |
ウォームリード | 関心はあるが、検討段階。社内調整や比較検討中 | 定期的にヒアリングを行い、課題にあった情報提供で関係性を深める |
コールドリード | ニーズが不明確、または関心が低い | メールマガジンや資料の提供などを中心に行い、自社への関心を高め、関係性をつなぎ留める |
「ホットリード」の場合は、購買意欲が高く、商談・契約に早期につながる可能性があります。ただし、いきなり提案を進めるのではなく、本当に導入意欲があるかどうかを確認するために初期のヒアリングによる見極めを行うことが重要です。
その上で、確度が高いと判断できた場合は、アポの獲得、提案内容の提示、見積の作成など、具体的な商談ステップへと進めていきます。
「ウォームリード」は、一定の関心を示しているものの、検討中だったり社内での調整に時間がかかっていたりする段階です。このようなリードには、定期的なフォローや情報提供を行いながら、中長期視点でゆるやかに関係を深めていく対応が適切です。
一方「コールドリード」は、まだ関心が薄く、ニーズが明確になっていないリードのため、すぐに商談化を目指すのではなく、適度な距離を保ちながら関係を維持することが重要です。
このように、リードを分類した上で、それぞれに適した対応方針をあらかじめ決めておくことで、営業活動を無理なく、効率的に進めることができます。
営業リストの優先順位をつける2種類の方法
ここでは、営業リストに優先順位をつける具体的な進め方と活用のポイントをみていきます。それぞれの特徴と注意点を理解し、自社の状況に応じた活用方法を学びましょう。
1. 既存情報・ターゲット基準をもとに優先順位を設定する
優先順位の設定において最も取り組みやすい方法の一つが、営業リストにすでに含まれている情報を活用して優先順位を設定する方法です。特別な調査や追加のヒアリングを行わなくても、営業リスト作成時点で取得している企業属性や担当者情報を基に評価・選別を行うことができます。まずは、前のレッスンで定めた情報項目の中から、「優先順位の判断に使える情報」を整理しましょう。
優先順位の評価に活用する項目
以下は、実際の営業リストに含まれる情報を基に、リードの優先度を見極める際に役立つ項目例です。
項目 | 優先すべき条件例 | 優先度を高める理由 |
購入意欲レベル | 比較検討中/即決可能性あり/購入確定 | 購入のタイミングが近く、今すぐ営業対応すべきリードであるため |
商談ステータス | 商談中/提案中/見積提出 | 商談が進行中で、次の営業アクションが明確。フォローの遅れは失注リスクにつながるため |
過去の接触履歴 | Web面談/次回フォローあり | 過去に具体的な接点があるリードは、関心があった経緯をもとに再アプローチをかけやすく、現在の状況を確認・深掘りする入り口として優先しやすいため |
Webフォームからの資料請求履歴 | 直近の日時での資料請求あり | 自発的な情報収集行動があるリードは温度感が高く、素早い対応が成果につながりやすいため |
ウェビナー・セミナーへの参加履歴 | 直近の日時での参加履歴あり | |
役職名 | 経営層(CEO・代表取締役など)/部長クラス | 意思決定に近いポジションにいるリードは、短期間での判断が可能であるため |
従業員数 | 自社のターゲット規模(例:100名〜1000名など) | 自社の商材と親和性が高い規模帯であれば、導入の現実性・提案のしやすさが高いため |
業種 | 自社との親和性が高い業界(例:過去実績が多い業種) | 過去実績が多い業種の場合、課題理解や提案ノウハウが蓄積されており、商談が進みやすいため |
特徴と活用ポイント
この方法の特徴は、営業担当がリードに接触する前の段階から、ある程度の優先度を設定できることです。特に、CRM(顧客管理ツール)やMA(マーケティングオートメーションツール)などを活用して一斉メール配信等でのアプローチを実施する前の「仕分け」としても有効であり、限られた営業リソースをどこに集中すべきかを判断するための基準になります。
ただし、この方法だけでは、リードの実際のニーズや導入意欲といった“内面の確度”までは判断できないため、あくまでも、初期段階での選別手法として活用し、その後のヒアリングや行動データと組み合わせて、より精度の高い優先順位づけへとつなげていくことが重要です。
2. インサイドセールスがヒアリングし、BANT情報をもとに分類する
営業リストに記載された情報だけでは判断が難しい「リードの本音」や「導入への本気度」を見極めるために有効なのが、インサイドセールスによるヒアリングを通じた優先順位の分類です。
インサイドセールスとは、訪問を前提とせず、電話・メール・オンラインミーティングなど非対面で顧客と接点を持つ営業スタイルです。一般的には初期接触や情報収集、商談化の見極めを担当し、フィールドセールス(訪問型営業)に引き渡す前の整理役としての役割を担います。
このヒアリングを行う際には、BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁権、Need:ニーズ、Timeline:導入時期)と呼ばれるヒアリング情報を収集し、各リードの確度と優先度を可視化していきます。
BANT情報内容:
- Budget(予算):購入にあてられる予算があるか
- Authority(決裁権):意思決定を担う人物が誰か
- Need(ニーズ) :課題や目的が明確か
- Timeline(導入時期):導入の検討タイミング
BANT情報をもとに購買意欲レベルを振り分ける
ヒアリングを通じて得られたBANT情報を基に、リードを購買意欲レベルで分類することで、主観や属人的な判断に頼らずに、営業対応の優先度を整理できます。以下は、BANT情報をもとにした優先度判定の一例です。
購買意欲レベル(入力ルール例と判断の目安)
リードランク | Budget(予算) | Authority(決裁権) | Need(ニーズ) | Timeframe(優先順位) | 優先度の判断 |
高(ホット) | 確保済み/サービス金額と合致(200万円〜) | 決裁者と接点あり | 導入確定 or 即決可能性あり | 1〜3ヶ月以内 | 高 |
中(ウォーム) | 下限ギリギリ(50〜199万円) | 担当者+キーマン候補と接点 | 比較検討中 | 3〜6ヶ月程度 | 中 |
低(コールド) | 低め/未定(〜49万円) | 担当者レベルのみ | 情報収集中 or 興味なし | 未定〜6ヶ月以上 | 低 |
なお、ここで挙げた予算(Budget)の基準は、自社の製品やサービスの価格帯、あるいは過去の商談単価に応じて適宜調整が求められます。
また、導入時期(Timeline)についても、商材によってリードタイムの長さが異なるため、自社の平均的な商談プロセスを参考に、適切な目安期間をあらかじめ定めておきましょう。
特徴と活用ポイント
この手法の特徴は、リードの温度感や確度を、定量的な基準で把握できることです。BANT情報を基に、現時点で「今すぐアプローチすべき相手」と「中長期的に育てていく相手」を見極めることができます。その結果、営業プロセス全体の中で「ホットリード」を明確に抽出できるため、商談化のスピードを高めることが期待できます。また、リードの温度感を把握することで、営業チームはフォローの内容やタイミングを調整しやすくなり、結果的に無駄のないアプローチを実現できるようになります。
もちろん、BANT情報の取得には一定の時間や労力が必要です。しかし、丁寧に情報を収集・蓄積することで、アプローチの精度が上がり、商談数や成約率の向上にもつながる非常に有効な方法といえるでしょう。
属性・行動・ヒアリング情報を組み合わせたリード評価
「既存情報を基にしたリードの分類」と「インサイドセールスによるBANT情報の取得」という2つのリード評価手法を前述しました。
これらはいずれも有効な手法ですが、営業活動全体の優先順位をさらに明確にし、アプローチの精度とスピードを高めるには、属性情報・行動履歴・ヒアリング結果という3つの視点を組み合わせたリードを評価が効果的です。
なぜ3つの情報を組み合わせるべきか?
両方の方法とも実務で効果的な方法ですが、それぞれ単一の情報だけでは、リードの状態を正確に把握するには限界があります。
例えば、業種や企業規模などの「属性情報」が自社のターゲット像に合っていたとしても、実際に購買意欲がなければ商談にはつながりません。
一方で、過去に接点がなかった企業でも、資料のダウンロードやウェビナーへの参加などの「行動情報」があれば、潜在的なニーズを持っている可能性があります。これらの情報に追加して、BANTヒアリングで、導入意欲や検討時期といった情報が得られれば、そのリードが「今どれだけ購買意欲あるのか」という確度まで判断できるようになります。
このように、リードの評価を属性・行動・ヒアリングの3軸で整理し、それらを組み合わせて総合的に判断することで、営業判断の精度を大きく高めることができます。
それぞれの情報の特性と取得手段
リードを評価する際に見るべき3つの情報と、取得方法の概要は以下の通りです。
- 属性情報:業種、従業員規模、役職など。リスト作成時点の企業情報から取得。
- 行動情報:資料ダウンロード、メール開封、セミナー参加など。MAツールやアクセスログから取得。
- ヒアリング情報:BANT(予算・決裁権・ニーズ・導入時期)。インサイドセールスによる対話で取得。
3軸による評価例
以下は、属性・行動・ヒアリングの3軸を使ってリードを評価した例です。
企業名 | 属性 | 行動 | ヒアリング | リードランク | 対応内容 |
A社 | ターゲット完全一致 | 資料DL+セミナー参加 | BANT条件全てヒアリング済み | 高(ホット) | 即営業引き渡し・商談設定 |
B社 | 一部条件が一致 | メール開封・サイト閲覧 | 情報収集中・時期未定 | 中(ウォーム) | ナーチャリング+再接触 |
C社 | ターゲット外 | 行動履歴なし | ヒアリング未実施・情報不明 | 低(コールド) | 営業対応をせず長期育成・長期間行動がない場合は除外検討 |
このように情報を統合することで、「誰に・いつ・どう動くか」を営業チーム全体で共有しやすくなります。
営業活動への活用方法(優先対応・ナーチャリング設計)
3軸によって整理されたリード評価を活用することで、営業担当者は「対応の緊急度」や「商談化の可能性」を見極めながら、適切なタイミングでのアプローチが可能になります。成果の期待できるリードには早急に対応し、まだ検討段階のリードには育成中心の対応を行うといった、リードの状態に応じた効率的な営業活動が実現できます。以下は、リードランク別の営業アプローチ例です。
A社:ホットリード
- 営業担当に即時引き渡し、「反応が高いうち」に初回接触を行う
- 初回接触では、課題の明確化と要件整理を行う
- 意思決定者との接点があれば、条件交渉やクロージングに向けた対応も視野に入れる
なお、行動履歴や属性情報からホットと判断されたリードであっても、実際のヒアリングで導入意欲が低いと判断された場合は、ウォームリードとして再分類するなど、柔軟な判断が必要です。
B社:ウォームリード
- すぐに営業対応せず、マーケティングと連携して中長期のナーチャリング対象に設定
- 行動履歴に基づいて、該当業界の導入事例、比較資料などのコンテンツをメールで配信
C社:コールドリード
- 営業対応は行わず、まずは定期的なメルマガや無料ウェビナー案内など、緩やかに接点を維持
- リードの何らかの行動がなければ、営業リストから除外、または管理対象外とする
ナーチャリング施策への活用
属性・行動・ヒアリングという3つの情報軸でリードを評価すると、単なる“今すぐアプローチすべきかどうか”の判断だけでなく、どのようなナーチャリング施策を組み立てるべきかを明確にする材料にもなります。
例えば、行動履歴はあるものの、BANT情報が不明確なウォームリードは、「関心はあるが検討が浅い状態」と読み取れます。このようなリードには、より興味関心度の高いコンテンツを用意してアプローチをするなどの、別のナーチャリング設計が必要です。一方で、属性は自社と一致しているが行動が全くない、かつヒアリングできていないコールドリードには、まずは関心を引くウェビナー誘導など、行動喚起につながる起点を作る必要があります。
3軸の仕分けを前提にすることで、ナーチャリングは「リード全体に一律で施策をかけるもの」ではなく、「状態に応じて施策を出し分ける設計」へと変わっていきます
ExcelとCRMツールでリードの優先順位を管理する
これまで見てきたように、リードの優先順位づけは営業活動の効率化に欠かせない考え方ですが、一度分類して終わりではなく、日々の接点や情報の変化に応じて見直し・更新していくことが重要です。
そのためには、ExcelやCRM(顧客管理ツール)などを活用し、情報の整理と視覚化を行う必要があります。また、どちらのツールを使用する場合でも、優先順位を数値や分類として一元管理し、営業チーム全体で共有できる状態にしておくことが重要です。
独自のラベル・分類タグで柔軟にリードを管理する
Excelを使う場合
Excelを利用する場合は、営業リストに「優先度」「購買意欲レベル」などの評価軸を列として追加し、フィルタ機能や条件付き書式を活用して管理するのが基本です。
例えば、以下のようにシンプルなランクを設定し、視覚的にわかりやすく整理することができます。
- Aランク:ホットリード(すぐに営業対応すべき)
- Bランク:ウォームリード(中長期で育成が必要)
- Cランク:コールドリード(今すぐ対応は不要)
このようにランクや状態をExcel上で明確にしておくことで、対応の優先度を簡単に抽出したり、担当者間で共通認識を持ったりすることが可能になります。また、業種、地域、従業員数、役職などのタグ項目を加えておくと、施策の対象絞り込みや効果分析にも活用できます。
CRMツールを使う場合
CRMツールでは、Excelのような「フィルタ」ではなく、カスタム項目やラベル、条件付きビュー(表示切り替え)を使ってリード情報を管理するのが一般的です。
例えば、「ホットリードかつ関東エリアの製造業」だけを抽出して一覧表示するなど、条件に応じた絞り込み表示を保存しておくことで、営業の優先対応リストとして活用できます。また、CRMツールの多くは、ラベルやタグを基に以下のようなことも可能です。
- ターゲット別にメール配信対象を自動で切り替える(MAツール連携)
- 優先度や検討状況ごとに営業アラートを出す
- 商談進捗や成約率を評価別に可視化する
このように、CRMは日々変化するリードの状態をリアルタイムで反映しながら、営業判断に必要な情報をすぐ取り出せる環境づくりに適しているツールです。
ExcelもCRMも、それぞれの特性に応じて使い分けることで、リードの優先度を「可視化し、共有し、活用できる」状態を継続的に保つことができます。営業チーム全体で共通の指標を持ち、判断のブレをなくすためにも、ツールを活かしたリスト管理は非常に有効な手段です。