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なぜリードの分類が重要なのか
前のレッスンでは、シナリオ設計の重要性について学びましたが、シナリオを効果的に運用するには、情報を届ける相手を正しく見極め、選定する必要があります。例えば、資料請求をしたばかりのリードと、何度もウェビナーに参加し、製品カタログをダウンロードしているリードでは、関心の度合いに大きな差があります。それにもかかわらず、製品について十分に理解していないリードに対して価格情報やデモの提案をしても期待する反応は得られません。一方で購買意欲が高いリードに基礎情報ばかり提供していては、せっかくの営業機会を逃してしまう可能性もあります。
リードを正確に分類することで、各リードの状態に合わせた最適なシナリオを提供できるようになり、リードの関心を維持しながらホットリードへの育成をより効率的に進められます。
リードの分類の定義
一般的に、リードは購買意欲や興味関心の度合いに応じて、Cold(低関心)、Warm(中程度の関心)、Hot(高関心)の3つのカテゴリーに分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
Coldリード(低関心)
Coldリードは、製品やサービスに関する興味・関心が薄く、購買意欲が低く、情報収集の段階にいるリードです。例えば、展示会の来場者、ホワイトペーパーのダウンロードやメルマガ登録をしたばかりのリードが該当します。
Warmリード(中程度の関心)
Warmリードは、ある程度の製品やサービスに興味を持ち、比較検討の段階に入っているリードです。製品の詳細ページを閲覧したり、セミナーに参加したりするなど、積極的な行動を取っていることが特徴です。
Hotリード(高関心)
Hotリードは、製品やサービスに強い関心を持ち、購買意欲が高く、営業のアプローチが必要なリードです。問い合わせや見積依頼を行ったリードや営業との接触を求める行動を取るリードが該当します。ホットリードの判定には、リードの具体的な行動情報を活用します。資料ダウンロードやフォーム送信などのアクション、Webページの訪問頻度・滞在時間、メールの開封・クリックデータといった「行動情報」に加え、「属性情報」(企業規模、業種、役職、予算規模など)を組み合わせて判断します。
リードの分類方法
どのような基準でリードを分類するのか、属性情報と行動情報を基準とした分類と具体例をここで挙げます。
1. 属性情報を基準とした分類
属性情報とは、リード(企業や個人)の基本的な特徴を指し、ターゲットとして適しているかどうかを判断するための情報です。
■主な属性情報例
企業規模 | 大企業 / 中小企業 / スタートアップ |
業種 | IT、製造業、医療、教育など |
役職 | 経営者、部長、担当者 |
地域 | 国内 / 海外 / 特定のエリア |
予算規模 | 〇万円〜〇億円 |
例えば、高単価なBtoB向けのサービスを提供している企業の場合、「中小企業よりも大企業のリードの方が受注につながりやすい」「役職が担当者よりも経営層の方が意思決定が早い」といった傾向が、分析の結果として明らかになっているとします。このような場合、属性情報を基準にして、ターゲットに合致するリードを優先的に分類するのが望ましいでしょう。
2. 行動情報を基準とした分類
行動情報とは、リードがどのようなアクションを取ったかを示すデータで、関心度や購買意欲を判断するために活用されます。
■主な行動情報例
Webサイト訪問 | 製品ページを3回以上閲覧 |
資料ダウンロード | 製品カタログ、ホワイトペーパー |
メールの開封・クリック | メールを複数回開封、リンクをクリック |
セミナー参加 | ウェビナー / オフラインイベント |
問い合わせ・見積依頼 | 価格ページを複数回閲覧、問い合わせフォーム送信 |
「Webサイトを1回訪問したリード」と「価格ページを3回以上訪問し、資料もダウンロードしているリード」で比較した場合、後者の方が購買意欲が高いと判断できます。後者をホットリードとして営業に引き渡し、前者はシナリオ配信で育成を行い、関心度を高めるといった対応を行います。
3. 属性情報と行動情報を組み合わせた分類
前述した属性情報や行動情報基準だけでリードを分類するより、属性情報と行動情報を組み合わせて判断することで、より精度の高いリード抽出が可能になります。
■組み合わせ例
属性情報 | 行動情報 | リード分類 |
IT業界・経営者 | 製品ページを5回以上訪問・セミナー参加 | Hotリード |
中小企業・担当者 | 資料ダウンロードのみ | Warmリード |
製造業・部長 | メルマガ登録のみ | Coldリード |
このように属性情報だけでなく行動情報を組み合わせることで、関心度の高いリードを優先的に営業へ引き渡し、Coldリードにはシナリオ配信でリード育成を継続する、といったリード管理が可能になります。
リードスコアリングで優先度を定める
リードの分類によって、購買意欲の度合いに応じた適切な対応が可能になりますが、分類だけではリードごとの関心度や優先順位を正確に判断することは難しく、営業活動において最適なアプローチを決めるためのさらなる指標が必要です。そこで活用されるのが「リードスコアリング」です。
スコアリングを取り入れることで、リードの行動や属性を数値化し、より精度の高い優先順位付けが可能になります。リードスコアリングは、大きく2つのステップに分けられます。 まず、リードの初期情報(属性情報)を基に、ターゲットとしての適合度を評価する「初期スコアリング」を行います。次に、シナリオ配信やリードの行動情報を活用しながら、現在の関心度の変化を反映する「スコアの更新」を実施します。
1. 初期スコアリング(基本情報の評価)
リードが獲得された直後に、初期スコアを付与します。例えば、意思決定権を持つ役職であれば +10点、企業規模が大きい場合は +5点といったように、購買に関係する基本情報(企業規模や役職など)を基に、リードがターゲットとして適しているかを判断し、スコアを設定します。この初期スコアによって、リードの重要度を一定の基準で判断することが可能になります。
2. 行動情報をもとにスコアを更新(育成しながら評価)
初期スコアリングの後、シナリオ配信を活用してリードを育成しながら、リードの行動情報に基づいてスコアが随時更新されていきます。例えば、「製品ページを3回以上閲覧」で +10点、「資料をダウンロード」で +15点、「セミナーに参加」で +20点 というように、関心度の高い行動に応じてスコアが加算されます。
このように、スコアリングを活用し、リードの適合度(属性情報)と関心度(行動情報)の両方を数値化することで、単なる関心の推測ではなく、客観的なデータを基に購買の可能性が高いホットリードを見極めることができます。最終的には、一定のスコア基準を満たした精度の高いホットリードを営業に引き渡すことで、適切なタイミングでのアプローチが可能になり、商談の成功率を高めることにつながります。
リードスコアリング設計のステップ
次に、リードスコアリングの設計ステップを学びます。データに基づいて加点要素を決定し、それぞれの行動や属性にスコアを割り当てる流れを見ていきましょう。
1.スコア基準を定める
まず初めに、スコアの基準を明確に定めます。どの行動や属性にスコアを割り当てるのかを決めるためには、リードの行動や属性が購買意欲にどの程度影響を与えるのかを分析し、それぞれに適切な重み付けを行うことが重要です。
スコアリングを設計する際には、「ターゲット適合度」「自社への認知」「興味関心」の3つの要素に基づいてスコアを配分します。まず、リードがターゲットとして適しているかを評価し、次に自社との接触履歴を確認します。その上で、リードの行動データを基に現在の興味関心を数値化し、優先度を判断します。
この3つの要素の中でも、購買意欲を直接示す「興味関心」が最も重要ですが、「ターゲット適合度」も商談が順調に進むかに大きく影響する要素です。 一方、「自社への認知」は、初めて接触しただけでは購買意欲が高いとは限らないため、優先度は低くなる傾向にあります。ただし、企業のビジネスモデルや営業プロセスによって、どの要素を重視するかは異なるため、ターゲットに応じた柔軟な設計が求められます。
2.スコア要素を定める
実際に、それぞれのスコア要素を具体的に見ていきましょう。
① ターゲット適合度(属性情報)
リードが自社の理想的な顧客像に合致しているかを評価する要素です。リードの基本情報(企業規模、業種、役職など)を基にスコアを設定します。
- 職種(マーケティング担当者、営業担当者、経営者など)
- 役職(意思決定者かどうか)
- 企業規模・業種(ターゲット市場に合致しているか)
- 既存顧客か新規顧客か(新規顧客の場合、優先度を上げるケースも)
例えば、意思決定者や導入の影響力を持つリードは、購買につながる可能性が高いため、スコアを高めに設定します。業界によっては特定の業種や企業規模をターゲットにしている場合もあるため、ターゲット企業と一致する場合には加点すると効果的です。例えば、BtoB SaaS企業向けのソリューションを提供している場合は製造業よりもIT企業のリードに高スコアを付与する、といったケースです。
② 自社への認知
リードが自社とどのような形で接触したかを評価する要素です。最初の接触がどのように生まれたかを基にスコアを設定します。
- ウェブサイトの訪問(特に製品ページやサービスページ)
- 資料ダウンロード(ホワイトペーパー、製品カタログなど)
- ウェビナー参加(オンラインイベントやセミナー)
- 展示会での名刺交換(オフラインの接点)
これらの行動は、リードが自社を認識したことを示しますが、購買意欲が高いとは限りません。特に、ウェブサイト訪問や資料ダウンロードは情報収集の初期段階であることが多いため、スコアは控えめに設定すし、後の行動データと組み合わせて評価すると良いでしょう。
③興味関心
リードが自社の情報にどれだけ興味を持っているかを評価する要素です。関心度が高まるほど、スコアが高くなります。
- 直近1ヶ月以内の行動履歴(訪問回数やダウンロード数)
- 特定ページの複数回閲覧(価格ページ・導入事例ページなど)
- メールの開封・クリック
- セミナー参加後に取ったアクション
購買意欲が高いリードは、頻繁に行動を起こす傾向があります。例えば、「価格ページを複数回閲覧したリード」は、製品の購入を検討している可能性が高いため、スコアを高めに設定します。また、短期間で複数の行動を取っている場合、通常よりも加点を大きくすることで、ホットリードを迅速に抽出することができます。
3.ポイントを配点する
次に、それぞれの加点要素に対して具体的な配点を考えます。まずは、リードの行動や属性が購買意欲にどの程度影響を与えるかを踏まえ、自社への認知・興味関心・ターゲット適合度の3つの要素に適切なスコアを設定します。例は以下です。
- 自社への認知(最初の接点) → 低スコア(+5点 〜 +15点)
- 興味関心(行動の頻度と質に応じて適切に加点する) → 高スコア(+10点 〜 +30点)
- ターゲット適合度(属性情報) → 中スコア(+10点 〜 +25点)
次に、それぞれのデータに具体的なスコア配分を設定します。以下に配点例を挙げます。
ウェブサイト訪問(1回目) | +5 |
製品ページ閲覧(1回) | +5 |
ホワイトペーパー・カタログのダウンロード | +10 |
ウェビナー参加 | +15 |
展示会での名刺交換 | +10 |
メール開封(複数回) | +5 |
メール内リンククリック | +10 |
導入事例ページの閲覧 | +10 |
価格ページの閲覧(1回) | +15 |
資料ダウンロードを複数回実施 | +15 |
直近1ヶ月以内に複数の行動を実施 | +20 |
問い合わせフォーム送信 | +30 |
意思決定権を持つ役職(経営者・部長クラス) | +20 |
一般担当者 | +10 |
ターゲット業種(例:IT企業) | +15 |
非ターゲット業種(例:個人事業主、関係の薄い業種) | +0 |
企業規模がターゲットに合致(例:500名以上の企業向けサービス) | +15 |
営業へ渡すリードの判断基準
リードスコアリングを活用することで、営業がアプローチすべきホットリードを明確にすることができますが、一定数のスコアを超えたリードをすべて営業に渡せば良いというわけではありません。スコアはリードの関心度や行動の積み重ねを示すものですが、「購買意欲の高さ」と「今すぐ購入する準備ができているか」は別の話です。リードの中には複数の資料をダウンロードしているが、具体的な行動がないといったリードも含まれてきます。
このようなケースを防ぐためにも、「スコア条件」と「行動条件」を掛け合わせて、営業に渡すホットリードの条件を定めてみましょう。
スコア条件と行動条件の考え方
リードを営業に渡すための基準は、以下の2つの要素を組み合わせて判断します。
① スコア条件
スコアが一定基準を超えたリードは、営業がアプローチ対象として検討します。ただし、スコアのみで判断するのではなく、後述の行動条件も満たしていることが必須です。
スコア範囲 | 対応方針 |
80点以上 | 営業がすぐにアプローチすべきホットリード |
50〜79点 | ナーチャリングを続けながら、追加の行動を確認 |
49点以下 | まだ関心度が低いため、マーケティング施策で関心を高める |
② 行動条件
スコアが基準を超えていても、具体的な行動が伴っていない場合は、まだ営業アプローチには早い可能性があるため、以下の行動条件のいずれかを満たしているリードのみを優先的営業に渡します。
行動条件 | 理由 |
フォーム送信(問い合わせ・資料請求・無料トライアル申し込み) | 具体的なアクションを起こしており、営業との接点を求めている可能性が高い |
製品ページの複数回閲覧(例:3回以上) | 製品に対する強い関心を持っている |
価格ページの閲覧(例:2回以上) | 購入を具体的に検討している可能性が高い |
ウェビナー参加後に追加のアクションがある(例:資料ダウンロード) | 情報収集を進めており、比較検討段階にいる可能性が高い |
直近1ヶ月以内に複数の行動を取っている(例:メール開封・リンククリック・ページ閲覧などが3回以上) | 継続的に関心を示しており、購買プロセスが進んでいる可能性が高い |
営業へ渡すリードの判断基準
これらの2つの条件を組み合わせて、営業へ渡す最終的な基準を以下のように設定します。
スコア | 行動条件 | 営業への引き渡し判断 |
80点以上 | 満たしている | 営業にすぐ渡す |
80点以上 | 満たしていない | ナーチャリングを継続し、営業に渡すタイミングを検討 |
50〜79点 | 満たしている | ナーチャリングを継続し、営業に渡すタイミングを検討 |
50〜79点 | 満たしていない | まだ関心度が低いため、長期的なナーチャリングを継続 |
49点以下 | 問わない | まだ関心度が低いため、長期的なナーチャリングを継続 |
この表のように、スコアが一定基準を超えているかつ行動条件を満たしている場合のみ、営業に渡すというルールを設定すると、より効率的なアプローチが可能になります。
営業部門に引き渡しタイミングを決める
営業部門にリードを引き渡すタイミングを事前に明確に決めておくことで、マーケティングと営業の連携がスムーズになり、商談化率の向上や営業リソースの最適化につながります。引き渡しの基準が曖昧なままだと、営業が確度の低いリードに時間を割いてしまったり、適切なタイミングを逃してしまったりする可能性があります。そのため、スコア基準と行動条件を基に、事前に引き渡しのルールを定めておくことが重要です。
引き渡しのタイミングを決める際は、マーケティングチームと営業チームが情報を共有しながら連携して決定します。また、営業部門との定期的なフィードバックを行い、営業が受け取ったリードの質を評価(「商談につながったか?」「時期尚早だったか?」など)し、その結果をもとにスコアの基準や引き渡しのタイミングを継続的に最適化していきましょう。
スコアリングをより効果的に活用するポイント
スコアリングを効果的に運用するためにも、定期的な効果検証と基準の見直しを行うことが重要です。リードのスコアが適切に機能しているかを確認し、必要に応じて調整を行うことで、より精度の高いリード管理が可能になります。ここでは、スコアリングの効果を検証する方法と、適切な基準を維持するための見直しポイントについてみていきます。
効果検証の実施
スコアリングの精度を高めるためにも、定期的に効果検証を行うことが重要です。スコアが実際の成果とどの程度相関しているのかを確認し、必要に応じて改善を行います。
確認すべき指標としては、以下のようなものが挙げられます。
- ホットリードの商談化率(スコアが高いリードのうち、実際に商談につながった割合)
- 成約率(商談に進んだリードのうち、成約に至った割合)
- 営業部門のフォロー効率(営業が対応したリードのうち、成果につながった割合)
例えば、商談化率が低い場合、スコアが高くても営業に渡す基準が甘すぎる可能性が考えられるため、スコアの設定が適切かを再検討します。一方で、商談化率が高すぎる場合は、スコアの閾値を引き上げることで、より確度の高いリードに営業が集中できるかを検討することが重要です。このように、指標を分析することで、スコアリングの精度を高めるための改善ポイントが見えてきます。
また、効果検証を行う際は、スムーズに検証できる仕組みを整えることが大切です。そのためにも、配点はできるだけシンプルに設定し、スコアリングの運用をわかりやすくすることが望ましいでしょう。
適切な基準を維持するための見直しポイント
スコアリングの精度を維持し、適切なリード評価を行うためには、定期的な見直しと調整が必要です。以下のポイントを意識しながら、現状に即したスコアリング基準を維持しましょう。
1. 初期設定の基準が現状に合っているか
- 過去のデータと照らし合わせ、スコアが適切に商談化や成約に寄与しているかをを評価する。
- 営業部門のフィードバックをもとに、リードのスコアと実際の確度にズレがないかを確認する。
2. 新しい行動指標の追加
- リードの行動パターンの変化に応じて、スコアリング対象を見直す。
- 新たな購買行動の兆候を取り入れる。
3. スコア配分の調整
- 特定の行動に対するスコアが過大または過小でないかを分析する。
スコアリング基準は一度決めたら終わりではなく、市場の変化やリードの行動傾向に応じて柔軟に見直すことが重要です。