CRM/SFAツールで始める顧客管理

このレッスンでは、将来的に検討すべきExcelによる管理から、CRM(顧客管理)/SFA(営業支援)ツールによる顧客管理への乗り換えをテーマに、導入を検討するべきタイミング、ツールを使い始める際の準備や手順、ツールで実現できることなどについて解説していきます。

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CRM/SFAツールで始める顧客管理
目次

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Excelでの顧客管理から乗り換えるべきタイミング

これまでのレッスンで解説してきたように、基本的な顧客管理を行うにはExcelやスプレッドシートで十分対応可能です。

しかし、ファイルの管理や共有などの煩雑さや担当者の負荷、各種情報の変更履歴の管理やデータ活用の効率性などを考えると、将来的にはCRM/SFAツールへの乗り換えを検討するとよいでしょう。

具体的に、乗り換えを検討するタイミングとしては以下のようなものが考えられます。

Excelを管理している担当者の異動や退職

Excelでの顧客管理は細やかな設定や定期的な更新、バージョン管理などが必要となるため、運用の属人性が高くなりがちです。担当者一人で管理している場合などはマニュアルなども未整備であることも多く、管理担当者が異動や退職となった場合に、同じ運用を引き継ぐことは容易ではありません。

CRM/SFAツールでは、基本的な機能で運用を効率的に行うことが可能なため、担当者が異動・退職するタイミングが乗り換えを検討すべきタイミングといえます。

部門間連携や全社的なデータ活用を進める必要がある

Excelでの顧客管理は、作りこみ次第で様々なことが可能ですが、PowerQueryなどの機能を使ったとしても、他のツールやクラウドサービスとの連携にも限界があり、また、部門を超えた情報共有にも技術的な制約が出てきてしまいます。

営業部門やマーケティング部門との連携に課題があったり、全社的なDXの推進のためにデータ活用レベルの向上や組織間連携の強化を目指す場合には、CRM/SFAツールへの乗り換えを検討しましょう。

これからExcelによる顧客管理をはじめようとしている

乗り換えとはすこし異なりますが、近い将来にCRM/SFAツールへ乗り換える必要が出てくる可能性が高い場合には、最初からCRM/SFAツールで顧客管理を始めるという選択肢もありえます。

一度運用を始めて組織内に浸透してしまった管理方法を変更するのは抵抗を感じやすいため、データ移行の手間を考えて、最初からCRM/SFAツールを利用することを検討するのもお勧めです。

CRM/SFAツールで顧客管理を始める手順

次に、CRM/SFAツールで顧客管理を始める場合に、どのような手順で進めればよいかについて解説していきます。

組織ごとのこれまでの顧客管理の方法やビジネスモデルによっては進め方は変わりますので、これから解説する進め方を参考に、自社にあった進め方を検討してください。

おおよその進め方としては、

  • 社内の管理データの収集・整理
  • CRM/SFAツールのデータモデルにあわせたデータ成型
  • アカウント登録とユーザー招待
  • 自社の業務にあった設定・カスタマイズ
  • データのインポート
  • 説明会実施
  • 利用の開始

となります。

CRM/SFAツールで顧客管理を始める手順

社内の管理データの収集・整理

すでにExcelで顧客管理を行っている場合には、Excelファイルに含まれる情報をCRM/SFAツールに移行する形になります。

しかし、組織内には多くの場合、各営業担当者が保持している情報や未登録の名刺情報、マーケティング部門やカスタマーサポート部門が独自に管理している情報があるため、パフォーマンスの問題や部門の壁により分断していたデータを一元化するためにも、顧客や案件に関わる情報を集めて整理する必要がでてきます。

顧客管理に関わる情報としては、以下の図のようなものがあります。

顧客関連情報

CRM/SFAツールのデータモデルにあわせたデータ成型

これまでのレッスンでご紹介したExcelでのテンプレートでの顧客情報では、そのままCRM/SFAツールにはデータ移行できない可能性があります。

これは、各CRM/SFAツールで行われる顧客管理や案件管理手法によって、必要となるデータモデル(構成)が異なることが原因です。

CRM/SFAツール上で管理される情報とその関連性(データモデル)は、多くの場合、以下のような形となっています。

データモデル

※「キャンペーン」「コミュニケーション履歴」「タスク」は、「見込み客」や「連絡先」「取引先」「商談」にそれぞれ紐づきますが、図表内では省略しています。

Excelでの管理とCRM/SFAツールでのデータの違いとしては以下のような違いがあるので、注意しながらデータ移行の準備を進めましょう。

見込み客(リード)と連絡先(コンタクト)を別のテーブルで管理する

Excelでの管理の場合には、これからフォローを行う見込み客と仕掛中・既存顧客の個人情報である連絡先は一つのテーブルで管理されることがほとんどですが、多くのCRM/SFAツールでは、見込み客と連絡先が別に管理されています。

この違いは、マーケティング部門と営業部門の役割分担をしやすくするためであったり、見込み客として登録されてから、商談が始まる期間などの意思決定の参考情報として有用なデータを取得しやすくするために生じています。

必ずしも見込み客と連絡先を分けなければならない訳ではありませんが、業務上問題がなければツールで推奨されている管理方法を選ぶとデータ活用が進めやすくなります。

取引先(組織情報)と連絡先(個人情報)を別のテーブルで管理する

Excelでの管理の場合には、組織としての顧客情報と個人としての情報がまとめて管理されていることが多く、場合によっては顧客側の担当者の個人情報が管理されていないこともあります。組織ごとに売上や利益を集計したり、個人に対するアクションを管理するためには、取引先と連絡先を別に管理する必要があります。必要に応じてデータを分割したり、これまで管理していない項目があれば新たに追加するようにしましょう。

さまざまな情報を紐づける

Excelでの管理の場合には、取引先・連絡先・商談・タスクなどの管理情報が完全にはリンクされておらず、必要な情報の集計に手間がかかることがあります。CRM/SFAツールでは、各種情報を紐づけて、簡単にデータ集計やレポートの作成ができる形になっています。データ活用を推進するためにも、メールアドレスやID情報などで各種データを紐づけることが必要です。

CRM/SFAツールのアカウント登録とユーザー招待

クラウド型のCRM/SFAツールでは、利用者分のライセンスを購入し、各ユーザーを招待して利用を始める形になります。

本格的な導入・利用の開始前に無料でお試し利用ができるツールも多いため、まずは登録してさまざまな機能に触れてみるとよいでしょう。

Zoho CRM でのアカウント登録やユーザー招待や権限設定については、以下のレッスンが参考となります。

きっちり達人シリーズ > CRMとは >Lesson7 ユーザーを追加して、役職と権限をコントロールする

自社の業務にあったツールの設定・カスタマイズ

アカウント登録ができたら、次はツールの設定やカスタマイズを行っていきます。

各テーブルの項目の追加や削除、メールの送受信設定や必要なレポートの作成などを行っていきます。

CRM/SFAツールを初期状態のままで利用すると、不要な項目が目につき、利用者が、「利用が大変そう」とか「自分には難しそう」という感想を抱き、利用の推進の妨げとなる可能性があります。

最初の段階では、必要最低限の項目の利用からはじめ、活用が進んでから管理項目を増やすようなカスタマイズを行うのがお勧めです。

なお、Zoho CRM では、項目の並び替えや削除、追加を簡単に行えます。業務を改善し続けるために、自社で簡単にカスタマイズできるツールを選ぶようにしましょう。

以下の動画は、取引先情報の住所関連項目のカスタマイズ例です。

住所情報をカスタマイズする例

データのインポート

事前に準備した組織内の情報をカスタマイズした項目にあわせて調整し、インポートして利用開始の準備を進めます。

インポートの前にデータの重複をなくすことができるのが理想ですが、ツールによってはインポート後にデータの重複を解消する機能を持つものもあるため、選定したツールの機能を活用して効率的に準備を進めるとよいでしょう。

説明会の実施

ExcelからCRM/SFAツールに移行を行うと、入力方法がわからなかったり、どのタイミングでどの項目の情報を入力すべきかに迷って、データ入力が行われないことがあります。

そのような事態を避けるために、利用開始前に、ツール導入の意義や目的、具体的な操作方法などを伝える説明会を行うとスムーズに移行が進みます。可能であれば利用者マニュアルなども用意できるとよいでしょう。

利用の開始

説明会実施直後からCRM/SFAツールの利用を開始していきます。

利用者が多い場合や新しいツールの活用に抵抗感を持ちやすい組織の場合には、一部の部署から利用を開始したり、最低限の機能(例えば、まずは案件管理から)の利用から始め、徐々に慣れていける活用シナリオを用意できるとよいでしょう。

CRM/SFAツールでできること

ここまでで、Excelでの顧客管理からCRM/SFAツールに移行する際の導入手順の参考例について詳しく解説してきました。

実際には移行を決定・実施する前に、

  • 自社にとって顧客管理とは何か
  • どのような目標を達成したいのか
  • 目標達成のために、どのような機能が必要か
  • 導入・運用に回せる必要な予算・人員はどの程度か

といったことを整理し、Excelのままでよいのか、CRM/SFAツールを選択する場合に、どのツールを選ぶのかを決める必要があります。

ここからは、自社にとっての最適なCRM/SFAツールを選択するために、ビジネス的な観点で、CRM/SFAツールでどのような機能を持つことが多いのかを解説します。

見込み客(リード)の管理

Webサイトからの新規問い合わせや展示会といった顧客開拓チャネルから取得した個人情報を見込み客もしくはリードと呼び、主にマーケティング担当者やインサイドセールス担当者がフォローする対象として管理します。もちろん、フォロー業務を営業担当者が直接行うこともあります。

Excelでの顧客管理では、既存顧客と同じシートでまとめて管理することが多くなりますが、見込み客と既存顧客では、管理すべき項目や実施するアクションも異なるため、最終的には既存顧客と分けて管理すべき情報といえるでしょう。

ビジネス的には、情報取得後の状態管理やフォロー状況などを確認し、情報を保存して継続的にアクションを取り続けるべき対象者として管理していきます。

キャンペーン(マーケティング施策)管理

キャンペーンとは、ある目的を達成するために、組織的・計画的に行われる一連の活動を指すものです。つまり、キャンペーン管理とは、マーケティング施策や営業施策を管理することだと理解しておけば間違いないでしょう。

具体的には、見込み客や既存顧客に対して行うマーケティング/営業施策と対象者、実施状況や投資対効果を管理するための機能です。

例えば展示会であれば、対象となる展示会で獲得した見込み客数、商談が始まった顧客数、受注した件数や金額などを管理し、その投資対効果を計測して、次回以降の施策を検討する際の参考情報として管理する必要があります。

Excelでの管理の場合、施策ごとに獲得顧客リストがファイルとして管理され、最終的にはきちんと管理されずに放置されてしまうといったことが起こりますし、どの顧客が受注までに至ったのかを管理することは難易度が高いといえるでしょう。

CRM/SFAツールでは、データが一元化されて、各施策に情報が紐づくため、フォロー状況をしっかりと管理したり、簡単に費用対効果を算出することができます。

仕掛中・既存顧客(組織・個人)管理

見込み客のフォローを行い商談が始まった仕掛中の組織・個人の情報や取引のある既存顧客を管理する機能です。

組織と個人の情報を紐づけた上で別の情報として管理するため、組織と個人(担当者)ごとに商談数、受注数や受注金額、アクション状況なども分けて管理することができます。

営業戦略に沿った顧客の優先順位付け、キーマンの見極めや特定の部門に対するアプローチの過不足の把握など、さまざまなアクション・状況判断に役立てることができます。

Excelでも組織と個人を分けて管理することは可能ですが、データの紐づけや集計などが煩雑になったり、同じ会社名が複数できやすかったりと管理上問題がでることが多くなります。

商談管理(案件管理)

発生した商談の進捗状況を管理する機能で、案件管理とも呼ばれます。営業活動の標準化を行うために欠かせない機能です。

商談の進捗状況をステージ(ステータス)項目で管理し、受注見込みのタイミングと比べて順調に進んでいるのか、停滞しているのかを判断したり、進捗状況に応じた適切なアクションが行われているかを管理し、営業マネージャ―が適切なアドバイスやサポートを行うために利用されます。

商談の進捗状況

Excelでも簡単な進捗管理は行えますが、それぞれのステージに掛かった期間などの履歴情報の管理を行うことが難しく、案件と紐づけたタスク管理なども行おうとすると入力や管理が煩雑となります。

活動管理(タスク管理)

取引先や商談などの各種情報に紐づけてタスク管理を行う機能です。

取引先や商談と紐づけてタスクを管理することで、様々な視点で適切なアクションが行われているのかを数字で判断したり、既存顧客のフォロー漏れなどが起こらないように管理できるようになります。

Excelやタスク管理ツールでのタスク管理は、シンプルでわかりやすい反面、タスクの担当者単位での管理となりがちで、顧客単位や商談単位での分析などに向かない傾向があります。

レポートやダッシュボードを活用したマネジメント

CRM/SFAツールで管理している情報を自動で集計・見える化する機能です。

部門横断で顧客を中心とした様々な情報を関連付けて管理するCRM/SFAツールであれば、常に最新情報を知りたい形で集計し、意思決定に活かすことができます。また、ダッシュボードなどを使うことで、営業会議に向けた資料作成なども省略することができ、生産性の向上にもつながります。

ダッシュボードを作成
ダッシュボードを作成

Excelでもレポートや見える化は実現でき、複雑な指標計算や柔軟なレポートを作成できますが、一つ一つのレポートの作成・メンテナンスに時間がかかり、複数のデータを紐づけての集計なども難しかったり、表示までに時間がかかるなどのパフォーマンスの問題が出てしまうことがあります。

生産性向上につながる機能

CRM/SFAツールによっては、これまで解説していなかったさまざまな機能を持っています。

顧客とのメールでのやりとりを自動で顧客や商談情報に紐づけることで、情報共有や引継ぎを容易にしたり、ワークフロー機能などを使って、追加購入のタイミングで自動で顧客に購入を促すメールを送信したり、商談の進捗状況に応じてタスクを自動で登録し、営業活動の標準化・効率化に貢献したりと生産性向上につながる機能をぜひ活用してみましょう。

また、営業活動に欠かせない見積書や請求書の作成や管理機能を持つCRM/SFAツールも存在します。経理部門側での入金確認などにも活用できるものですので、部門横断の業務改善につながる機能の利用もぜひ検討しましょう。

見積書のPDF

まずはトライアルでできることを試してみる

ここまでCRM/SFAツールによる顧客管理の始め方や具体的にできることなどを解説してきました。

自社でも利用できるのかを判断したり、ツールとしての操作感や他のツールとの違いを把握するには、実際に使ってみるのが一番の近道です。

まずはExcel管理からと考えている場合でも、Excel上でどんなデータを管理して運用すべきかを検討するのにも役立ちますので、まずは無料のトライアルからツールに触れてみてください。