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商談情報を管理するデータベースをカスタマイズする
前のレッスンでは、顧客情報を管理する項目のカスタマイズやデータのインポートなどを行いました。ここでは、1つの案件を一連活動として管理する商談情報を管理するデータベースのカスタマイズとデータのインポートについて学びます。
今回、例として利用しているZoho CRM では、企業情報などを管理するデータベースのことをタブと呼び、タブごとに項目の追加や削除、並び替え、項目の選択肢の変更などを行うことができます。
Zoho CRM では、案件情報は[商談]タブで管理し、顧客情報である[取引先]や[連絡先]、活動情報である[タスク]などと関連付けて、データ活用を行います。
アカウント営業における案件管理(商談管理)を行う場合のカスタマイズ例を見ていきましょう。
商談の進捗管理
アカウント営業における商談管理に必要となるのが、商談の進捗状況を把握するための項目です。
例えば、取引の開始までに時間がかかることが多いアカウント営業では、関係構築が始まったばかりの顧客から売上が挙がる可能性は低いですが、将来に向けて一定数以上の初期段階の商談を抱える必要があり、組織の目標や個人の目標に応じた各段階の商談をどの程度保持しているのかを把握することが非常に重要となります。
Zoho CRM では、[商談]タブの[ステージ]項目で、商談の進捗状況を管理することができます。どのような項目を設定すべきかは自社のビジネスモデルや営業スタイルにより異なりますが、初期設定では以下のようなステージが設定されています。

初期設定の[ステージ]は、比較的短期的な営業活動による受注に至るモデルが採用されているため、実際の受注に至るまでに年単位の活動が必要となるアカウント営業では適切とはいえない可能性があります。
特にステージの初期段階である、「条件確認」や「ニーズの分析」には時間がかかりますし、個別の商談とは別にレッスン4で学んだアカウントプランをもとに、適切な提案先かの判断も必要となってきます。
ここでは、新たな取引先を開拓する際のイメージで、[ステージ]項目を以下のようにカスタマイズしてみましょう。
- 接点構築:自社の保有商品・サービスや競合状況などを調査し、適切な接点(提案先)を調べてアプローチをしている段階。
- 関係構築:情報提供などによりアプローチしている部署や担当者と関係構築を行い、組織が抱えている課題や担当者のミッション、予算編成や意思決定プロセス、部門間の力関係などを明らかにする段階。ある程度精度の高いアカウントプランが作成されている。
- 提案:把握した顧客の課題などをもとに具体的な提案活動を行う段階。関係部門への根回しなども同時に行う。
- 予算確保:顧客社内で稟議申請を行う段階。顧客の予算申請プロセスや予算が確保済みの案件かなどによって活動が異なる。
- 契約:基本契約など含め取引に必要な手続きを行う段階。提案内容に合意がされても契約条件などが折り合わず、失注に至ることもある。
- 受注:契約が完了し、納品に向けて活動している段階。
- 納品:契約した商品・サービスの納品が完了した段階。
- 請求:顧客側の検収を受け、請求書の発行までが完了した段階。
- 入金:顧客からの支払いが完了した段階。
上記の[ステージ]では、営業活動がイメージしやすいようにステージを細かく管理しています。また、大企業向けの取引においては、納品手続きや請求手続きなども手間がかかることも多く、適切な手続きを行うことで信頼関係の構築につながるため、受注後のプロセスも管理する形としてあります。
上記はあくまで例となるため、自社のモデルに応じたステージ設計を行うようにしましょう。
[商談]タブの[ステージ]をカスタマイズする手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [カスタマイズ]の[タブと項目]をクリック
- [商談]をクリック
- レイアウト[標準]をクリック
- [ステージ]の[・・・]をクリックし、[ステージと確度の関連付け]を選択
- [ステージ]と[確度]の値を編集
- [完了する]をクリック
- [保存する]をクリック
設定手順の詳細は、以下の動画を参考としてください。

なお、今回は具体的な商談が見えていない段階から[商談]タブを使って管理を行う想定でステージを設定しました。接点構築の段階では、商談を登録せずに、[取引先]や[連絡先]を中心とした管理を行うこともあるため、自社の管理方法に合わせたカスタマイズが必要なことに留意してください。
商談の種類・期日のカスタマイズ
アカウント営業においては、新規と既存取引の場合でフォローの方法が異なる場合があります。
しかし、アカウント営業の担当者は、抱える担当社数こそ多くなくとも、様々な部門へのアプローチを行い、また、社内の関係者とのコミュニケーションも必要となり多忙を極めます。そのため、忙しい営業担当者がフォロー漏れなどを起こしたりしないためにの仕組みづくりが必要となります。
具体的には、商談の種類に応じて適切なフォローが行われるように、通知が行われたり、顧客に契約更新の案内メールが自動で届くような効率化が求められます。
ここでは、商談の[種類]のカスタマイズ、フォローや案内を行うタイミングを管理する項目を追加して、通知や手続きの自動化のための基本情報を追加してみましょう。
[種類]項目については、以下の4つの分類として、契約が自動継続となるサービスについては、継続を促すような案内メールを自動で送るようにします。
- 新規(単発)
- 新規(継続)
- 既存(単発)
- 既存(継続)
[商談]タブをカスタマイズする手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [カスタマイズ]の[タブと項目]をクリック
- [商談]をクリック
- レイアウト[標準]をクリック
- [種類]の[・・・]をクリックし、[プロパティの編集]を選択
- [プロパティ]の値を編集
- 新しい項目から[日付]をドラッグ&ドロップ
- 項目の名称を変更
- [完了する]をクリック
- [保存する]をクリック
設定手順の詳細は、以下の動画を参考としてください。

なお、今回は[商談]の[種類]で新規/既存、契約形態である単発/継続をまとめて管理していますが、項目を分けて管理してもよいでしょう。
商談のインポート
Zoho CRM や多くのCRM/SFAツールでは、データの一括インポートに対応しています。これまでスプレッドシートやExcelで管理していたデータを成形し、一括で入力することで、個別の入力の手間を省いたり、展示会などのイベントで取得した名刺情報などをまとめて入力可能となっています。
[商談]のサンプルデータを用意しましたので、以下のインポート手順を参考に一括インポートを行ってみましょう。
商談のサンプルデータはこちら
[商談」にデータを一括でインポートする手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 上部のメニューから[商談]をクリック
- [商談をインポート]をクリック(サンプルデータ投入済みの場合は、右上の[商談を作成]の横にある[▼]ボタンをクリック)
- インポートしたいファイルをドラッグ&ドロップ
- [商談の新しいデータとして追加する]を選択し、[次へ]をクリック
- インポートしたい項目をすべて関連付けして[次へ]をクリック
- [完了する]をクリック
設定手順の詳細は、以下の動画を参考としてください。

データのインポートが正しく完了すると、サンプルデータが[取引先]や[連絡先]とも紐づいて、正しく取り込まれていることが確認できます。
商談のステージに基づくワークフロー
ここまでで各商談情報の進捗管理を行う準備が整いましたが、各進捗状況での活動を担当者任せにしてしまうと、属人的な運用となり、フォロー漏れや不適切な対応が行われる可能性が残ります。
案件の種類や進捗状況に応じて、自動でメール通知やタスクの登録が行われれば、マネージャ―はフォローの実施状況を管理することができ、担当者のうっかりミスがすくなくなります。
ここからは、商談のステージに基づく、通知やタスクの登録、フォローの自動化の設定を行っていきます。
納品完了後の請求処理のタスク自動登録
Zoho CRM では、ワークフロー機能を活用することで、登録されたデータの更新や登録されている日付などをもとに様々な自動処理を設定することが可能です。
ここでは、シンプルなワークフローとして、[商談]の[ステージ]が「納品」となったら、請求書発行のタスクを登録し、担当者に通知が届く設定を行ってみましょう。
[商談]の[ステージ]の更新をもとに、タスクを追加するワークフローの設定手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [自動化]の[ワークフロールール]をクリック
- [ルールを作成する]をクリック
- 起点となる[タブ]を選択し、[ルール名]を入力して[次へ]をクリック
- ワークフローの実行条件を選択して[次へ]をクリック
- 条件を[すべての商談]として[完了する]をクリック
- すぐに実行する処理として、タスクを選択
- タスクの割り当てで、[実行日][ステータス][担当者への通知][リマインダー]を設定して[保存して関連付ける]をクリック
- [保存する]をクリック
設定手順の詳細は、以下の動画を参考としてください。

動画では、ワークフローの設定後にある商談のステージを「納品」にした際に、タスクが自動で追加されていることが確認できます。
担当者への通知やリマインダーを設定することで、登録段階、タスクの期限の1週間前に担当者にメールで通知が飛ぶことで、フォロー漏れを防止することが可能となります。
アカウント営業では、商談のステージや顧客の状況に応じて、さまざまな活動を行う必要があります。
そのような複雑な活動を担当者任せにするのではなく、タスクとして自動登録することで、各ステージで行うべき行動が標準化され、営業活動の品質や顧客満足度の向上につなげることができるようになります。
契約更新に関する顧客への通知の自動化
Zoho CRM のワークフロー機能では、社外へのメールの自動化も設定可能です。また、メールの送信と同時にフォロー活動をタスクとして登録するような複数のアクションを設定することもできます。
ここでは、特定の[種類]の[商談]において、[契約更新日付]の2か月前に、顧客への更新案内メールの送信と社内の営業担当者へのタスクの登録の自動化を行う設定をしてみましょう。
[商談]の[ステージ]の更新をもとに、タスクを追加するワークフローの設定手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [自動化]の[ワークフロールール]をクリック
- [ルールを作成する]をクリック
- 起点となる[タブ]を選択し、[ルール名]を入力して[次へ]をクリック
- ワークフローの実行条件を選択して[次へ]をクリック
- 条件を[条件に一致する商談]として条件を入力し、[完了する]をクリック
- すぐに実行する処理として、[メール通知]を選択
- 新たなメール通知を作成して紐づける
- すぐに実行する処理として、タスクを追加
- タスクの割り当てで、[実行日][ステータス][担当者への通知][リマインダー]を設定して[保存して関連付ける]をクリック
- [保存する]をクリック
設定手順の詳細は、以下の動画を参考としてください。

今回の設定ではメール通知やタスク登録を行いましたが、次の契約に関する商談を自動で生成したり、関係各所へのメール通知を同時に行うなど、営業担当者が個別にデータを管理したり、連絡する手間をさらに効率化することも可能です。
これまでご紹介してきたように、ワークフロー機能を活用することで、忙しい営業担当者の日々の活動をサポートする自動化・効率化が実現できますが、注意点もあります。
アカウント営業では、単純な効率化よりも人対人の関係性の構築が何よりも重要です。
効率化ばかりを追い求めるのではなく、効率化すべき部分と手間を掛けてでも密なコミュニケーションを取るべき場面などを見極めて、自動化機能を活用するよにしましょう。