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なぜ顧客情報は散らばるのか
まずは、実際の現場でどのような形で顧客情報が散らばっていくのか、また、分散した状態が、どのような経営や営業上のリスクにつながるのかを具体的に見ていきます。
情報が分散する典型パターン
顧客情報が散らばる背景には、見込み客を獲得する経路(入口)が異なることで情報を一つに纏められなかったり、情報の保存形式が異なるため情報分散がされる、といったケースが考えられます。
例えば、見込み客の獲得経路別で、次のような管理を行なっていないでしょうか。
- 展示会では名刺を回収し、後日Excelに手入力している。
- Web問い合わせはフォームから自動でメール通知され、担当者の受信箱に残るだけになっている。
- Web広告経由の資料ダウンロードは、広告代理店からCSVデータで共有され、フォローメールを一回送ったあとは、そのままマーケティング部のフォルダに保存されている。
- 紹介案件の情報は、営業担当者の個人メモやスケジュール帳にだけ記録されている。
このように、見込み客の獲得経路も、都度の利用方法も保存媒体が異なるため、明確にデータを一元管理しようとしないかぎり、情報は散在し続けることとなります。
さらに、部門ごとに顧客情報管理の視点が異なるために情報(項目や形式)が統一されないという問題も発生します。
マーケティング部門は「どの施策から何件の新規見込み客を獲得したか」、「その費用対効果はどうか」といった観点で管理しようとしますが、営業部門は「見込み客といつ接触したか」、「受注確度はどれくらいか、」「月末に売り上げ予算は達成できそうか」といった営業活動視点で管理を行います。
そのため、マーケ側のExcelには「流入経路」や「キャンペーン名」が細かく入っているのに、営業側の管理表には「見積金額」や「受注確度」しかない、など情報がまとまらない状態が生まれます。
このように、
- どこから入ってきた情報なのか
- どの形式で保存されているのか
- 誰が何の目的で使うのか
が揃っていないため、同じ顧客情報・見込み客情報でも別々の場所で管理され、結果として情報が分散していくのです。
情報がバラバラだと何が起きるのか
ここまで、顧客情報が組織内に散在することとなる原因について解説してきましたが、ここからは、顧客情報が分散することで、どのような問題が起こるのかを見ていきましょう。
引き継ぎミスが起きる
顧客対応を行っているような営業担当が異動や退職をする際には、担当してた顧客の引継ぎが行われます。
この引継ぎの際に、顧客の基本情報やこれまで行われてきた商談の背景や検討状況に関する情報などがまとまった形で登録されてないと、口頭での引継ぎだけが行われ、情報の欠落や時間経過による情報の劣化が起こりやすい状況となります。
このような状況では、情報の引き継ぎがうまく行われず、顧客にすでに確認済みの事項を再確認してしまったり、一度興味がないといわれている商品を再度説明してしまうなど、顧客からの信頼関係を損なうような行動を繰り返してしまう可能性があります。
顧客側からは、前任者からの情報引継ぎが行われていないことから、組織としての活動が行われてない企業だと判断されて、信頼を損なう原因になります。
顧客対応が属人化する
当たり前の話ですが、顧客情報が営業担当者の手元のExcelやメールにしかない場合、上司や他メンバーはその情報を参照することができず、商談状況などを把握することはできません。そのため、担当者が出張していたり、休んでいると顧客からの問い合わせなどがあっても適切に対応することができません。
あの顧客の対応は〇〇さんしかできないという、いわゆる属人化した状態となり、非効率な業務を行うしかなくなってしまいます。
また、それぞれの担当者が抱える案件が停滞しているような状況でも、マネージャーが気づくことができず、フォローもできず、なぜ案件が失注してしまったのかも振り返れない状態になります。
重複対応が発生する
一度お断りしたのにも関わらず、同じ企業の営業担当者から似たような売込みの連絡を受けて、不快な気持ちになったことはないでしょうか。
ほかにも、展示会後にマーケティング部門が来場者へのフォローメールを配信し、その情報を営業部門が把握していないまま電話でフォローを行い、メールの件を聞かれても答えられなくてしどろもどろになってしまうといったことはよく起こります。
成果を一気通貫で把握できない
マーケティング部門が把握している情報と営業部門が把握している情報をうまくつなぎ合わせなければ、組織全体の活動が適切に行われているかを判断することはできません。具体的には、どのマーケティング施策で獲得した顧客が商談や受注につながったのか分からず、どの施策に重点的に投資をすべきかが判断ができないという問題が起こります。
セキュリティリスクが高まる
ここまで業務の効率化や最適化という視点で見てきましたが、少し違う視点でも情報が散在するリスクはあります。
個人が管理しているPCやメールに顧客情報が残っていれば、当然ながら端末紛失や不正アクセスによる情報漏えいのリスクが高まり、セキュリティ管理の問題も発生しやすくなります。
ここまでみてきたように、顧客情報が組織内に散在している状況は、業務の手間が増えるだけの問題ではなく、顧客の信頼を失ったり、営業成果が把握できないといった問題にもつながり、セキュリティリスク増段など、さまざまな問題を引き起こす原因となるのです。
分散した顧客情報を解決する鍵は「CRMによる一元化」
分散した顧客情報の問題を解決するために重要なのは、見込み客や顧客に関する情報の「保管場所」を一つに定め、すべての情報をそこに集める仕組みをつくることです。
ここで活用するのがCRM/SFAツールのうち、顧客情報の基盤となるCRM機能です。CRMを中心に情報を一元化することで、次のようなことができるようになります。
- どの施策から獲得した見込み客かが一目で分かる
- 見込み客との過去のやり取りや、過去に行なった商談履歴を誰でも時系列で確認できる
- 営業やマーケが顧客情報を共通言語として共有しながら、組織全体の判断を下せるようになる
- 見込み客を獲得した施策から受注までの営業プロセスを一気通貫で確認できる
CRMにデータを一元化して活用する上では、「情報を正しく入力する」ことは何より重要ですが、情報を確認しながら後からまとめて入力するという運用ではうまくいきません。「最初からCRMに情報を集める前提で全体の運用設計をする」ことが大事になってきます。
例えば、展示会後の名刺は個々に持参せずにその場でスキャンしてCRMへデータを登録する、Webサイトの問い合わせフォームをCRMと連携し、自動で登録される仕組みにするなど、すべての接点が直接CRMに紐づいている状態をつるのが理想です。
情報を一元化するための4つのポイント
ここからは、情報を一元化し、分析や活用につなげるための具体的なポイントを順に整理します。
① 散在している顧客情報を整理する
最初に行うのは、バラバラになっている顧客情報を整理することです。いきなり「一元管理に必要な情報は何か」を考えるのは簡単ではありませんので、まずは、今どこにどのようなデータが存在しているのかを把握することから始めます。
はじめに、見込み客と既存顧客の両方のデータを洗い出します。どこに顧客データが存在しているのかを整理してみましょう。
例えば、次のような場所を確認します。
- 展示会リスト(Excelや名刺データ)
- Web問い合わせ管理表
- 広告代理店から共有されたCSVデータ
- 営業担当者の個人管理Excel
- メール履歴やチャット履歴
各種データの存在があきらかになったら、次に、それぞれの情報にどのような項目が含まれているかを整理し、一覧化します。
たとえば以下のような項目が考えられるでしょう。
- 企業名
- 担当者名
- 電話番号
- メールアドレス
- 流入経路
- キャンペーン名
- メモ欄
- 受注確度
- 見積金額
この段階では、どんな情報が、どの形式で、どこに存在しているのか、現状を把握して可視化するまでの対応で問題ありません。現状把握ができてくると、自ずと必要な項目が見えてくるようになります。
② CRMでデータ項目を設計する
情報の棚卸しができたら、CRM上で管理するデータ項目を設計していきます。
CRM/SFAツールでは、一般的に「見込み客」「取引先」「連絡先」「商談」といった箱(テーブル・タブ)が用意され、この単位で情報を管理します、(名称はツールにより異なります)
それぞれの箱には以下のような役割の違いがあります。
- 見込み客:まだ商談が始まっていない段階の顧客情報の管理
- 取引先:商談が始まったり、すでに取引のある顧客の法人単位の情報の管理
- 連絡先:商談が始まったり、すでに取引のある顧客の担当者やステークホルダーの個人単位の情報の管理
- 商談:具体的な案件・取引プロセスの情報の管理 ※見込み客へのアプローチで商談が始まった段階で、見込み客の情報が取引先や連絡先に引き継がれるデータの流れが発生します
それぞれの役割に併せて、どの箱にどのような項目を持たせるのかを整理する必要があります。
例えば、企業規模は見込み客や取引先に紐づく情報であり、受注確度は商談に紐づく情報、と切り分けられます。
ここでは、項目として最低限押さえておくべき情報を以下に載せます。
■ 基本情報
- 企業名
- 業種
- 企業規模
- 担当者名、役職
- メールアドレス
- 電話番号
- 住所
■ 流入・施策情報
- どの施策から獲得したか(展示会、Web広告、紹介など)
- キャンペーン名
- 獲得日
■ 顧客状態情報
- 関心テーマ
- 導入予定時期
- 現在のステータス(情報収集段階、比較検討中など)
■履歴情報
- 対応履歴(問い合わせ内容やメールのやり取り等)
- 商談履歴
顧客情報に関連する情報としてどんな種類や項目があるのかを押さえておくと整理しやすくなるでしょう。これまで管理していなかった項目も含め、自社で管理したい項目をまとめていきます。
管理したい項目がある程度決まったら、①で整理した既存データをもとに重複項目がないか、さらに足りない項目がないかを確認します。できれば複数の部署の担当者が参加して検討できると抜け漏れが少なくなります。
ただし、管理項目がふ得すぎると入力負担が増え、結果として仕組みの運用が定着しなくなりにくくなります。分析や活用に本当に必要な項目だけを選び、シンプルな設計から始めることがポイントです。
項目を増やしたい場合には、ある程度仕組が定着してから検討するようにしましょう。
③ 誰が・いつ入力するかルールを決める
次に、決めたデータ項目に対して「誰が・いつ入力するのか」のルールを決めます。そのためには、情報の入り口である「見込み客」の獲得経路を把握し、どのような情報が入ってくるのか整理します。以下が見込み客獲得の一般的な経路です。
- Webフォームからの問い合わせ
- 資料ダウンロード
- 展示会での名刺獲得
- Web広告経由のリスト取得
- 既存顧客からの紹介
- 営業の新規開拓
WebフォームなどはCRMと連携し、自動で登録される設計が可能です。一方で、展示会名刺や紹介案件などは手動登録やインポート作業が発生します。どの経路が自動で、どの経路が手動登録が必要なのかを整理して誰が入力するかをルールづけましょう。
以下に、誰がどの情報を登録や更新を行うか、経路ごとに整理したルール例を挙げます。
項目 | 主な入力経路 | 入力方法 | 入力担当 | 入力タイミング |
企業基本情報(企業名・所在地など) | Webフォームからの問い合わせ/資料ダウンロード | 自動 | マーケティング | フォーム送信時に即時登録 |
企業基本情報 | 展示会での名刺獲得 | 半自動(名刺取込)+手動補完 | マーケティング | 展示会後3営業日以内 |
企業基本情報 | Web広告経由のリスト取得 | CSV取込+手動補完 | マーケティング | リスト受領後3営業日以内 |
企業基本情報 | 既存顧客からの紹介 | 手動 | 営業 | 紹介発生当日 |
企業基本情報 | 営業の新規開拓 | 手動 | 営業 | 初回接触前または当日 |
流入経路・キャンペーン名 | 全経路共通 | 自動+手動 | マーケティング | 登録時必須 |
初回接触日 | 架電・初回メール | 手動 | 営業 | 当日中 |
ステータス更新 | 商談進行 | 手動 | 営業 | ステージ変更時 |
商談メモ | 商談実施 | 手動 | 営業 | 24時間以内 |
受注結果・失注理由 | 受注/失注確定 | 手動 | 営業マネージャー | 確定当日 |
④ データを統一するよう入力形式を選択式にする
最後に、入力されたデータが統一されるように、各項目を自由入力形式で管理せず、かのなものはできるだけ選択式にします。せっかく情報を一元管理できる仕組みを導入うしても、入力された情報に表記のゆれがあると、データを正しく分析することができなくなります。
例えば、業種の入力が自由記述になっている場合、
× NG例
- IT
- IT企業
- 情報通信
- システム会社
といった表記ゆれが発生するとします。この状態では、IT業界に関する情報を正しく集計できません。
そのため、分析に使う項目は原則としてプルダウンなどの選択式に統一します。
○ OK例(プルダウン選択式)
- IT
- 製造業
- 建設
- 医療
入力形式を選択式にすることで、データのばらつきを防ぎ、業種別受注率や業界別商談化率などの分析が可能になります。
項目の細かい設定でもう一つ重要なのは、必須項目を増やしすぎないことです。
必須項目が多すぎると担当者の入力負担が増え、結果としてデータを入力しないといった弊害が起きる場合もあります。また最終的には必須項目でも、初期段階では把握できない情報などもあるので注意しましょう。
最初のうちは、業務の遂行や分析に絶対必要な項目だけを必須にし、それ以外は任意入力項目とするとよいでしょう。
例)最低限の必須項目
- 企業名
- 担当者名
- 業種
- 流入経路
- 現在のステータス
顧客管理の仕組化を行う場合、どうしてもあれここれも管理したくなったり、複数の部署の意見を取り入れたら入力項目が増えてしまったということはよく起こりがちな問題ですので注意しましょう。
一元化した情報を活用し、分析できる状態にする
最後に、一元化した情報を基に「分析できる状態」に整えていくことも必要です。
これまでの基礎的な項目だけでも十分活用は可能ですが、さらに活用度をあげるために有効なのが、多くのCRMツールに備わっている「キャンペーン管理機能」と「タグ機能」です。ここではそれぞれの機能の違いについてご紹介します。
タグやキャンペーンを使った顧客の分類
CRMには「キャンペーン管理機能」と「タグ機能」という、顧客を分類・分析するための代表的な仕組みがあります。まず両者の違いを整理してみましょう。
キャンペーン管理機能は、展示会、セミナー、メルマガ配信などの施策単位で顧客を紐づけ、反応率や商談化率、売上への貢献度などを管理・測定するための機能です。
- 施策ごとの参加者管理
- 費用対効果(ROI)の算出
- 反応履歴の記録
といった高度な活用・分析が可能です。一方で、キャンペーン管理機能を適切に活用するためには、事前設計(目的・期間・対象条件)や運用ルールの統一が必要で、入力の手間も増えるため、初心者や少人数体制では活用の難易度が高くなりがちです。
Zoho CRMにおけるキャンペーン管理の画面例

キャンペーン機能の利用に不安がある場合には、タグ機能の活用を検討しましょう。
タグ機能とは、顧客情報に自由にキーワードを付与できるシンプルな仕組みのことです。
例:
- 「展示会2026春」
- 「休眠顧客」
- 「重点フォロー」
以下の画像の見込み客名の下にある黄色いマークがタグです。

タグ活用のメリットは、設定が簡単で、すぐに始められる点や事前の複雑な設計が不要である点です。
スピード重視・現場定着重視の運用に向いています。一方で、簡単にキーワードを追加できるため、タグが乱立されて似たようなタグで活用しにくくなるといった問題も起きやすくなります。
理想はキャンペーン管理までしっかり使いこなすことですが、いきなりそこを目指すと運用が複雑になり、入力負荷が増え、定着しないケースが少なくありません。
まずは運用定着を優先する場合、タグを活用したシンプルな分類から始めて、徐々に活用の度合いをあげて、将来的にはキャンペーン管理まで行うことを目指しましょう。
ダッシュボードでの分析
顧客情報を一元化し、タグやキャンペーンで分類できるようになった後は、実際にそれらのデータを分析して改善点などを導き出してみましょう。ここで活用するのがCRM/SFAツールのレポート機能とダッシュボード機能になります。
レポート機能とダッシュボード機能の違いは以下の通りです。
- レポート機能:条件を指定してデータを集計・抽出する機能
- ダッシュボード機能:作成したレポートをグラフやファネルを活用して可視化する機能
ここでは、実際に Zoho CRM を活用し、ダッシュボード機能を使って「施策別の商談化数」と「施策別の受注額」を可視化する手順を説明します。
- [アナリティクス] → [商談の分析] を選択
- 右上の [表/グラフを追加する] を押下

- [グラフ] を選択

- [かんたん作成] を押下

- [表/グラフ名] を入力
- [タブ] から「商談」を選択
- [指標(Y軸)] で「件数/商談」を選択
- [グループ化] で「見込み客のデータ元(商談)」を選択

- [保存する] を押下
この手順で作成した際、実際に表示される施策ごとの商談化数のグラフは以下の通りです。

施策ごとの受注数を知りたい場合は、先ほどの手順の7番目、[指標(Y軸)]の箇所を「金額の合計」に変更することで確認ができます。実際のグラフは以下の通りです。

せっかくつくったレポートなので、すこしデータの見方も解説していきます。
今回のグラフからは、いくつかの示唆が見えてきます。
まず、社内セミナーは商談化数が6件と比較的多く、安定して案件化につながっていることが分かります。件数ベースで一定の成果が出ていることから、質の高い見込み客を獲得できている可能性が高く、今後も強化すべき施策の一つといえるでしょう。
一方で、広告経由の商談化は1件にとどまっています。受注額も小さく、現時点では投資対効果が十分とは言いにくい状況です。広告のターゲット設定やクリエイティブ、導線設計を見直す必要があるかもしれません。
また、顧客紹介は件数こそ2件と多くはありませんが、売上は1,200万円と高く、1件あたりの単価が高いことが推察されます。紹介経路は「量」よりも「質」に強みがある施策であり、紹介を増やす仕組みづくりを検討する価値があります。
このように可視化することで、入力データに基づいた分析による判断が可能になります。ただし、こうした比較は、CRM/SFAツールに正しい情報が入力されていなければ成り立ちません。だからこそ、日々の入力を徹底し、情報を正しい形式で蓄積することが重要です。




