【BtoCマーケ】アップセルとクロスセルの手法・評価・改善

本レッスンは、アップセルとクロスセルの手法や評価、どう改善していくかについて、BtoCビジネスのマーケティング活動に焦点を当てて解説します。例として取り上げる生命保険の代理店の施策を参考に、自社の個人向けビジネスのアップセル・クロスセルに活かしましょう。

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【BtoCマーケ】アップセルとクロスセルの手法・評価・改善
目次

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このレッスンで学べること

レッスンで学べること

Lesson 3とLesson 4は個人向けビジネス(BtoCビジネス)のアップセル・クロスセルを取り上げます。Lesson 3は多くの対象にアプローチするマーケティング活動、Lesson 4は個別の営業活動にそれぞれ焦点を当てます。生命保険代理店のアップセル・クロスセルという具体例を通じて、どのような施策を行い、評価し、改善していくかを学びます。

アップセル・クロスセルにおけるマーケティング活動の整理

アップセル・クロスセルを狙うマーケティング活動は、さまざまなタイミングを活かします。きっかけが無く、製品やサービスを訴求すると受け手が困惑したり、行動してくれなかったりするためです。

例えば、大手の小売サイトでは顧客が商品を検索したりかごに入れたりした後に関連商品や上位モデルを表示してアップセル・クロスセルを狙います。オンライン英会話スクールであれば、週2回のプランを契約したすぐ後に回数無制限のプランを利用したユーザーの声を紹介するメールを送信してアップセルを狙います。

タイミングを活かす

購入や契約以外にも、ライフイベントもタイミングになり得ます。日本生命保険相互会社による調査によると、就職や進学、結婚や出産、家・車などの大きな買い物などの多くのライフイベントが保険契約のきっかけになっていることが分かります。

BtoCビジネスは個人のライフイベントも含めてアップセル・クロスセルの契機を探る必要があります。

このレッスンの例:個人向け生命保険代理店

個人向け生命保険代理店のアップセル・クロスセルに関するマーケティング施策として以下の手法と、それぞれに関する評価・改善について具体例で紹介します。

  • メール:生命保険契約完了の連絡メールで関連保険のクロスセル
  • 郵送DM:住所変更した顧客に対してライフステージ変更に伴う保障内容が厚いプランへのアップセル
  • セミナー:資産を見直す時期に合わせた資産形成商品のクロスセル

以降、個人向け生命保険代理店でのマーケティング施策を取り上げますが、保険代理店では顧客に商材を提案する際には、保険業法第300条、保険業法施行規則第234条に違反しないことが求められます。施策はあくまでBtoCビジネスのアップセル・クロスセルの具体的なイメージを持つための例であり、実際に保険業で活用できることを保証したものではありません。

出典:日本損害保険協会

クロスセル施策:メール

メールは比較的コストを抑えた形で実施できるアップセル・クロスセル施策です。開封率やクリック率など、分析できる項目が多いので効果測定が行いやすい特徴があります。

一方、顧客は他社のプロモーションメールなども常に受け取っているという点を念頭に置いておく必要があります。

メールの設計例

生命保険の契約者に対して、医療保険や学資保険を紹介するメールを送る、という想定で設計します。

目的

生命保険契約者に対する医療保険や学資保険のクロスセル

対象者

配信日前日に生命保険の契約を完了した顧客

紹介保険

医療保険や学資保険

タイミング

生命保険契約完了日の翌日

メール文の例

契約完了メールは開封される可能性も高く、通常のプロモーションメールと比べて効果が期待できます。今回は生命保険の契約が完了し、家族構成に子どもがいる、と把握できた顧客に対するメール を作成しました。

件名:生命保険契約完了のご報告とご案内

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

〇〇様

この度は、〇〇生命保険をご契約いただき誠にありがとうございます。

保障内容抜粋 詳しい保障についてはマイページ上からご確認ください

  • XXXXXXXXXXXXXXX
  • XXXXXXXXXXXXXXXX
  • XXXXXXXXXXXXXXXX

ライフイベントに備えるには

人生には結婚、出産、子供の教育、退職など、さまざまなライフイベントがあります。これらの大切な瞬間を安心して迎えるためには、適切な保険の準備が欠かせません。予期せぬ出来事にも柔軟に対応し、家族と自分の未来をしっかりと守るためのサポートを提供します。

学資保険のご紹介

現在の生命保険に加えて、学資保険へのご加入をおすすめいたします。学資保険により、お子様の教育費を計画的に準備することができ、将来の負担を軽減することが可能です。

学資保険の必要性

教育には多大な費用がかかります。たとえば、文部科学省の調査によると、私立大学に進学した場合、学費だけで年間平均約150万円が必要です。さらに、生活費や教材費が別途必要になります。このような高額な教育費に対する備えは、早めに始めることで負担を軽減できます。

学資保険のメリット:

  • 教育費の計画的な貯蓄
  • 将来の学費上昇リスクへの対応
  • 安心して教育を受けさせるためのサポート

[学資保険の詳細を確認する]

ご不明な点やご質問がございましたら、お気軽にご連絡ください。〇〇生命保険のカスタマーサポートが、いつでもご相談をお受けいたします。

引き続き、〇〇生命保険をどうぞよろしくお願いいたします。

〇〇生命保険

お問合せ先: [カスタマーサポートの連絡先]

ウェブサイト: [〇〇生命保険のウェブサイトリンク]

PDCAサイクルの例

メール施策のPDCAサイクルは今回、開封率・クリック率を改善する前提で解説します。開封率の観点ではメールタイトルや配信時間の検討を行い、クリック率についてはメールの中身の改善を実施します。

件名の改善例

配信したメールがHTMLであれば、ツールを使って開封率やクリック率を測定することができます。例えば、保険業界の平均メール開封率は17.92%、というように業界の平均や自社の施策と比較して改善が必要かを判断することができます。

出典:平均メール開封率・クリック率レポート (2024年度版) 業種別・地域別(国別)の最新情報

開封率の改善には、メールのタイトルおよび配信タイミングの見直しを行います。
今回のメールの件名、「生命保険契約完了のご報告とご案内」となっていますが、以下のような方向性も考えられます。

  • 件名に○○様という固有名詞を自動挿入されるように設定して受信者向けであることを明示する
  • 「ライフイベントに備える学資保険」という自分ごと化を促す内容を明示する

配信タイミングの改善例

配信タイミングについては多くの観点があります。社会人や主婦などの生活様式に合わせて工夫することで、開封率の改善に効果がある場合があります。

例えば、社会人の多くは、平日の朝から夕方まで働いており、メールを確認する時間が限られています。そのため、配信時間を通勤時間や昼休憩を中心に設定することが望ましい場合があります。ただ属性によって大きく異なるため、自社の実績も重視しましょう。

デザインの改善

クリック率の向上にはメールの内容の改善が必要になります。HTMLメールを採用している場合は、デザインを刷新することで大きな改善効果が望めます。

テキストメールよりも作成に時間がかかりますが、レイアウトの自由度が高く、画像の挿入も可能なため、ビジュアル面を考慮すると、HTMLメールの方が改善効果が見込めます。

アップセル施策:郵送DM

郵送DMは、顧客に物理的な形で情報を届けられるため、視覚的なインパクトが強い媒体です。メールに比べて到着しさえすれば見てもらえる可能性が高い点が特徴です。一方、デザインや印刷、発送にコストと時間がかかるため、計画的な実施が求められます。

さらに、郵送DMでの測定を前提とした仕掛けをしそこに顧客のアクションがないと正確に効果測定ができないため、改善活動が難しいケースがあります。

郵送DMの設計例

住所情報を変更した生命保険の契約者に対して、ライフステージが変わった、という可能性を想定し、生涯のリスクをイメージしてもらい、保障が厚いプランをアップセルする、という前提で郵送DMを設計します。

目的

生命保険契約者に対する保障が厚いプランへのアップセル

対象者

住所変更手続きをした顧客

紹介保険

現在の生命保険よりも保障が手厚いプラン

タイミング

住所変更手続きの翌週

DM文の例

引っ越した顧客に対して、新しい生活に合わせた保険の見直しを提案します。
このタイミングでのDMは、顧客が生活環境の変化に伴う新たなリスクに対して敏感になっているため、アップセルの成功率が高まります。

〇〇様

この度は、新住所をご登録いただきありがとうございました。新しい環境での生活が豊かで幸せなものでありますよう、心よりお祈り申し上げます。

ライフステージの変化はございませんか?

お引越しに伴い、生活環境やご家族の状況に変化が生じることが多いかと思います。ライフステージの変化に合わせて、保険の見直しを検討することが重要です。

保険はライフステージに合わせて変化が必要

ライフステージが変わると、必要な保障内容も変わってきます。新しいご家族が増えたり、お子様が成長されたりすることで、将来的な安心を確保するための保障がより重要になります。

さらに手厚い保障への変更のご提案

新しいライフステージに合わせて、より手厚い保障内容への変更を検討されてはいかがでしょうか。〇〇生命保険では、お客様の現在の保障内容をさらに充実させたプランをご用意しております。

おすすめプランの例

保障範囲:〇〇 → 〇〇(例:入院保障の拡充、通院保障の追加など)

保険期間:〇〇年

費用負担:〇〇万円 → 〇〇万円程度(お客様のご状況により変動)

これにより、将来の不安をさらに軽減し、ご家族の安心を確保することができます。

今すぐご相談を!

新しい保障プランについての詳細やご質問がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。専任のカスタマーサポートが、お客様のご要望に合わせた最適なプランをご提案いたします。

〇〇生命保険

お問合せ先:電話番号:〇〇-〇〇-〇〇
メールアドレス:〇〇@〇〇.com
ウェブサイト:[〇〇生命保険のウェブサイトリンク]

PDCAサイクルの例

郵送DMの場合はメールと異なり、開封率のデータはないので反応率をベースに改善を実施していきます。郵送DMは送付数がそのままコストに直結するので、配信セグメントを見直すだけでも効率化につながります。

また、視覚的に強い媒体のため、デザインの改善を行うことも有効です。

送付セグメントの改善例

送付したDMに固有の電話番号やQRコードを配置し、反応率を測定します。日本政策金融公庫の調査によると、郵送DMの平均レスポンス率は0.5~1.0%です。

今回の例では、引っ越しした理由を保険代理店が持つ個人情報を掛け合わせて下記のような提案内容との組み合わせパターンを検討することが可能です。

引越しの理由

提案商材

提案内容の詳細

新居購入

住宅ローン保険、火災保険、総合保険

新居購入に伴い、住宅ローン保険や火災保険で新しい住まいを保護。総合保険で家族全体のリスクに備える。

同居開始

家族総合保険、医療保険、学資保険

家族が増えた場合、家族総合保険や医療保険で家族全体のリスクに備える。子どもがいる場合は学資保険も提案。

結婚

夫婦総合保険、生命保険、医療保険

結婚に伴い、夫婦での保険ニーズに対応する総合保険や生命保険、医療保険を提案。

デザインの改善

送付対象と内容はそのままでもデザインの改善を行うことで、効果が出る可能性があります。メラビアンの法則によると、人とのコミュニケーションにおいて、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%影響すると言われています。

つまり、DMに関しても同様に、言語情報よりも視覚情報が顧客にとっては重要です。これらの法則も意識しながら、パターンを検証していくことで、より効果的な郵送DM施策を実施できます。

クロスセル施策:セミナー

セミナーは、顧客と直接対面し、信頼関係を築くための効果的な手段です。詳細な説明やデモンストレーションができるため、複雑な商品やサービスを訴求する際に有効です。セミナーは営業担当者と顧客の関係ではなく、講師と受講生の関係になるため、警戒されにくいという特徴もあります。

一方、準備や運営に時間とコストがかかるため、ターゲットを明確にし、参加者のニーズに応じた内容を提供することが重要です。

セミナーの設計例

契約者限定の資産形成の勉強会セミナーを開催し、資産について関心が高い契約者に対して、終身保険や年金保険といった商品をクロスセルする、という前提で設計します。

目的

生命保険契約に対する終身保険や年金保険のクロスセル

対象者

生命保険契約者の中で資産形成に興味がある顧客

紹介保険

終身保険や年金保険

タイミング

生活や家計を見直す時期(年始や年度初め)

テーマとアジェンダの例

セミナーのテーマは「資産形成のための保険活用術」とし、参加者には具体的な事例やシミュレーションを通じて、保険商品のメリットを理解してもらいます。重要なことは、商品の宣伝ではなく、資産形成という顧客のニーズに合わせる、という点です。

テーマ「資産形成のための保険活用術」

1. 開会の挨拶とセミナーの目的 (5分)

2. 資産形成の基礎知識 (10分)
- 資産形成とは何か
- 資産形成の重要性とその方法

3. 保険の基本と種類 (15分)
- 生命保険、医療保険、がん保険などの種類
- 保険の役割と目的

4. 資産形成に役立つ保険の選び方 (20分)
- 長期的な資産形成に適した保険商品
- 貯蓄型保険 vs 掛け捨て型保険
- 保険を利用した税制優遇策の活用方法

5. 保険を活用した具体的な資産形成プラン (20分)
- ライフステージに合わせた保険活用術
- 保険を使ったリタイアメントプランニング
- 教育資金、住宅購入資金のための保険活用方法

6. ケーススタディと実践的アドバイス (10分)
- 実際の事例紹介
- 資産形成の成功例と失敗例
- 専門家からのアドバイス

7. 質疑応答 (10分)

8. まとめと閉会の挨拶 (5分)

PDCAサイクルの例

セミナーにおいては満足度を調査し改善を図ります。アップセル・クロスセルの要素も盛り込んだ上でセミナーの満足度が高ければ、その後の商談や契約につながる可能性が高いためです。

セミナーの満足度を向上させるためには、セミナーの内容改善や講師の変更を検討することで改善を行っていきます。

セミナーの内容改善例

セミナー参加者にアンケートを実施します。アンケートを通じて、参加者がどの部分に満足し、どの部分に改善が必要かを把握し、改善に活かします。アップセル・クロスセルすることが目的の場合、参加者のニーズだけをくんでしまい売上を生まないセミナーにならないようにします。

改善項目

アンケート質問例

改善例

セミナーの充実度

セミナーの内容は分かりやすく、役に立ちましたか?

専門用語の解説や具体的な事例を増やす

講師の説明の分かりやすさ

講師の説明は分かりやすく、理解しやすかったですか?

講師のプレゼンテーションスキル向上のための研修を実施

時間配分の適切さ

セミナーの時間配分は適切でしたか?

セミナーを短縮し、要点を絞った内容に変更

質疑応答の充実度

質疑応答の時間は十分でしたか?

質疑応答の時間を延長

資料やスライドの分かりやすさ

配布資料やスライドは理解しやすいものでしたか?

デザインやフォントの見直し、情報の整理を行う

フリー入力欄

次回のセミナーで取り扱ってほしいテーマは何ですか?

テーマ内容改善