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トスアップの基準とタイミングを明確にする
CRM/SFAツールを活用したトスアップの仕組化を進める前に、まずはマーケティング部門から営業部門へのトスアップの基準やタイミングの定義を決定しましょう。
マーケティングと営業でトスアップの判断基準が揃っていないと、引き渡しが遅れて商談機会を逃したり、逆に温度感の低い見込み客が営業に渡されてリソースが無駄になる事態が起こり得ます。
こうした問題を行ることを防ぐには、CRM/SFAツール上で明確なトスアップの基準と処理ルールを設けることが重要です。
トスアップの基準
これまでのレッスンで解説してきたように、一定の基準を満たした場合にインサイドセールス部門から営業部に顧客情報が引き渡されるのがトスアップです。
そのため、トスアップの精度をスピードを高めるには、トスアップを行う基準が非常に重要となります。
よく利用されるBANT条件であれば、
- 予算:予算がある、もしくは年度内に稟議申請可
- 決裁権限:決済プロセスが明確
- ニーズ:自社の製品で解決できるニーズ
- 導入時期:1年以内
のような基準を決めていく必要があります。ただし、BANT条件のような基準はインサイドセールス部門がアプローチしている初期段階で確認できないこともあります。
最初から基準を厳しめにはせずに、最初は緩めに「BANTのうち1つでもクリアし、規模が500人以上であればトスアップする」といった基準から始めていくのがお勧めです。
トスアップのタイミング
CRM/SFAツールを活用する場合は、見込み客から商談情報が作成する操作を持って、トスアップを行ったと定義するとよいでしょう。
Zoho CRM には[見込み客の変換]という機能があり、見込み客に登録されているデータをもとに取引先・連絡先・商談の3つのデータを簡単に登録することができます。
この機能により、顧客情報が別のテーブルや画面に表示されるのようになり、誰の目から見ても、単なる見込み客から具体的な商談が始まっている仕掛中の顧客であることがわかるようになります。
この処理を行ったタイミングをマーケティング・インサイドセールス部門から営業へのトスアップと決めることで、データを受け取った営業担当者が、商談と紐づく顧客情報を管理し、営業活動を進めることができます。
ただし、世界基準のCRM/SFAツールではこの[見込み客の変換]機能は一般的ですが、伝統的に、役割分担を行って顧客対応を進めるでのはなく、1人の営業担当者が最初のアプローチからクロージングまで対応することが多かった日本企業においては、少しなじみにくい考え方でもあります。
自社で見込み客の変換機能を使った役割分担やデータの管理を行うべきかは、具体的に利用を始める前に一度検証を行うとよいでしょう。
トスアップの精度・優先順位を決める項目を整理する
トスアップの精度を高めるには、受注見込みの高い顧客から優先的にトスアップを行うことが重要ですが、何をもって受注見込みが高いと判断するかを決めることが必要となります。また、優先順位をつけることも必要となるため、設定すべき項目を正しく理解することが重要です。
CRM/SFAツール、特に Zoho CRM では、判断基準や優先順位付けに必要な項目が標準で用意されており、標準項目を活用することで初期設定の負担を軽減し、スムーズに運用を開始できます。
ここでは、標準項目の中で特に重要なものと、必要に応じて追加・カスタマイズする項目の考え方を整理します。
標準で用意された重要項目を活用する
標準で用意された項目は、ツールを使う大きなメリットの一つです。Zoho CRM でも、トスアップ判断の材料や優先順位付けに必要な基本項目があらかじめ揃っており、ゼロから項目設計を行う手間が省け、営業活動の標準化をすぐに始められます。
以下は、見込み客の詳細情報を確認する画面です。(標準項目をもとに項目を追加し、セクションにより分類などを行ったカスタマイズ後の画面です)

最初から用意されている項目で、トスアップの基準や優先度にかかわる重要な項目として次のような項目が挙げられます。
- 見込み客のステータス:各見込み客の状態を整理し、適切なタイミングでフォローアップを行うために必要な項目です。選択肢は「Cold/Warm/Hot」などのように、自社で状態を定義し、カスタマイズし、Hotの中からトスアップすべき見込み客を見極めていくといった使い方をしていきます。
- 見込み客のデータ元:どのルートから見込み客が発生したか、受注確度に関わる情報として重要です。たとえば、Google検索で自らサイトに訪問した顧客と展示会で配布品目当てに登録された顧客では状態は大きく異なります。
- 業界:業界によって勧めるサービスや商品、受注率などが変わる場合に重要な項目となります。
これらの項目は、あらかじめ標準で用意されていることで、必要な情報をすぐに整理・管理でき、初期設定や運用設計の負担を大幅に軽減できます。さらに、自社の営業プロセスやマネジメント方針に合わせて、必要に応じて項目の追加・カスタマイズが可能です。
必要に応じてカスタマイズ項目を追加する
トスアップの運用は企業の営業方針や管理体制によって異なるため、標準項目だけでは不十分な場合もあります。そのため、自社の方針や業務フローに応じて、必要なカスタマイズ項目を追加することが重要です。
例えば、次のような項目を追加することで、よりきめ細やかな管理が可能になるでしょう。
- 役職クラス:経営層など、役職クラスが高いほど受注に至る確率が高くなります。
- 部門:どの部門の見込み客が受注率が高いかの判断材料になります。
- 売上規模・従業員数:どの企業規模の見込み客が受注率が高いかの判断材料になります。
- BANT条件:「予算・決裁権・ニーズ・導入時期」の4点で、商談が進む見込みがあるかを判断する考え方
Zoho CRM ではこうした項目の追加や管理項目の編集が直感的に行える操作画面が用意されています。
以下の動画では、BANT条件の項目にニーズを加えて、選択肢をカスタマイズ、されに営業にトスアップする際に自由記入できる項目としてBANT詳細項目を追加しています。


見込み客に優先順位を付ける
項目のカスタマイズができたら、次に重要になるのはトスアップを行うために「どの見込み客を優先的にフォローするべきか」を判断するための共通基準です。このときに有効なのが「スコアリング」という仕組みです。
見込み客の属性や行動履歴に応じて優先度を数値化し、優先順位の高い見込み客をフォローすることで、営業にトスアップすべき見込み客を見極めることが可能となります。
ここでは、CRM/SFAツール上でどのようにスコアリングを設定・活用し、見込み客の優先順位を明確にしていくのか、その具体的なイメージを整理していきます。
見込み客の優先順位をスコアリングで設計する
スコアリングとは、見込み客の持つ情報に応じて点数をつけ、営業優先度を定量的に評価する仕組みです。属人的な判断ではなく、誰もが同じ基準で判断できるスコアリングの導入が有効です。
Zoho CRMでは、「スコアリングルール」を設定することで、自動的に点数が付与されます。たとえば、以下のようなスコアリングルールを決めておくことで、営業・マーケティングが共通の視点で顧客の優先度を判断できるようになります。
- 資料ダウンロードを行っている:+10点
- 導入時期:3か月以内+10点、半年以内+5点
- 従業員数が100人以上:+10点
- 業界がIT・ソフトウェア、製造業、建設業、金融・保険のいずれか:+10点
- セミナー参加済み:+20点
こうしたルールは、Zoho CRM のスコアリングルールの設定画面で条件ごとに何点を加算するかを一覧で定義できます。

今回は見込み客が所属する会社の情報などの[属性情報]を基にスコアリングを設定しましたが、必要に応じて、見込み客に送信したメールの開封状況や資料のダウンロード有無といった行動情報を基にスコアリングを設定することも可能です。
フォローからトスアップの流れを効率化する
スコアリングとビューの活用によって優先度の高い見込み客を可視化できるようになったら、それを基にフォローを行い、トスアップの効率化、運用設計を行います。
トスアップを行う際には、営業担当者を割り当て、その営業担当者が対応漏れを起こさないように、タスクを作成してあげると良いでしょう。
ここでは、トスアップを行うタイミングにおける営業担当者の割り当てやタスクの割り振りについて見ていきます。
フォローする見込み客を抽出する
見込み客の状態をスコアリングによって数値化できるようになると、そのスコアを基に「どの見込み客を優先的にフォローすべきか」を具体的に絞り込み、効率的に優先順位をつけることが可能になります。
Zoho CRM では、スコアリングの値に基づいて見込み客リストをスコア順にソートしたビューを作成したり、「Hot・Wormリード(40以上)」のように条件を絞り込んだリストビューを共有したりすることが可能です。
以下は、[ビュー]を活用して、見込み客ステータスが「Hot or Worm」でスコアが40点以上の見込み客をスコア順に並べたリストです。このビューを基に、どの見込み客をフォローするかを判断します。


このように、ビューを活用することで、抽出したい見込み客を簡単に絞り込むことができます。これを基にインサイドセールス担当者は見込み客をフォローし、基準を満たした見込み客を営業にトスアップする流れを作ることができます。
見込み客を変換して営業担当者に割り当てる
トスアップするべき見込み客が特定できたら、いよいよ営業へ引き渡します。
Zoho CRM では本レッスンの冒頭でも紹介した[見込み客の変換]機能を使うのがおすすめです。
以下の動画のように、見込み客の詳細画面から[次のステップへ]をクリックし、ひも付ける取引情報や連絡先情報、商談を作成することでトスアップが完了です。
このタイミングで商談の担当者を指定することができ、指定された営業担当者へ通知を送信することができるため、スムーズなトスアップが可能となります。
実際に見込み客を変換する一連の流れは以下の通りです。

なお、カスタマイズして追加した項目を変換した先に移行するためには、「見込み客の変換の関連付け」設定で、見込み客の項目をどのタブのどの項目に紐づけるかを設定する必要があります。

営業担当者のタスクを作成する
見込み客を商談へ引き上げ、営業担当者を割り当てることでトスアップ自体は達成されましたが、割り当てた営業担当者に対してタスクを作成してあげることが重要です。タスクを作成することで営業担当者は次にやるべきことがすぐに分かり、その後スムーズに活動を開始できます。
タスクの作成は簡単で、以下のように商談タブから作成が可能です。

このように、タスク作成までをトスアップの時点で行うことで、トスアップから初回対応までの時間を短縮することができます。
なお、営業担当者は複数のトスアップを受けた場合には、スコアリングが高い順からフォローを行うことで効率的な活動が可能になります。
まとめ
CRM/SFAツールを活用して、インサイドセールス部門から営業部門へのトスアップの精度とスピードを高めるには、トスアップの基準を決めることが重要です。
決めた基準や他の優先順位を判断できる項目をもとに、インサイドセールス部門がフォローを行うべき対象者をリストアップし、基準を満たした見込み客を簡単にトスアップできる仕組みを作れば、トスアップの精度とスピードは向上させることが可能です。
実際の運用では、一度決めた基準と運用法をそのまま利用するのではなく、組織の状況や成果に応じて変化させていく必要があることも忘れないようにしましょう。
