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営業トスアップの基本
マーケティング施策を商談や受注につなげるには、営業部門へのリード引き渡しがスムーズに機能していることが前提です。このプロセスをどのように設計・運用するかは、マーケティングと営業の連携を深めるだけでなく、施策の成果を最大化するうえでも重要なポイントです。ここでは、営業トスアップとは何か、その役割や営業活動との関係を整理し、ビジネスプロセスにおける位置づけを明らかにします。
営業トスアップとは何か
営業トスアップとは、マーケティングやインサイドセールスが発掘・育成した見込み客情報を、営業部門に引き渡すプロセスを指します。単にリードを移すだけではなく、談化に向けて精度の高い情報を提供する重要なステップです。特にBtoBビジネスでは、マーケティング活動で集めたリードの中から、具体的なニーズや関心を持つ見込み客を見極め、営業担当者がスムーズにアプローチできる状態に仕上げることが求められます。
例えば、トスアップされるリードには「顧客が抱える課題」「導入検討のタイミング」「予算感や決裁プロセス」など、営業が商談化の際に必要な情報が含まれます。これにより、営業担当者は初回の接触からより具体的な提案や解決策の提示が可能になります。
営業トスアップがうまく機能すれば、商談化率が向上し、営業活動が確実に成果へつながるようになります。逆に、基準があいまいだったり、営業部門に渡す情報に不足があったりすると、せっかくのリードが活かされず、成果につながらなくなります。営業トスアップは、営業とマーケティングの間をつなぐ重要な役割を果たすプロセスであり、ビジネスの成長に直結する仕組みだと言えます。
営業トスアップの流れ
営業トスアップは、通常「マーケティング → インサイドセールス → 営業」という3段階で進みます。まず、マーケティング部門は広告施策やコンテンツを通じてリードを集め、興味関心を醸成します。ここでは、セミナーやホワイトペーパー請求、メルマガ登録など、複数のチャネルを活用しながら、リードの属性や行動履歴を蓄積していくことがポイントです。マーケティング段階で意識すべきのは、「どのチャネルから獲得したか」「どのコンテンツに反応したか」といった行動情報をしっかり管理することです。
次に、インサイドセールスがそのリードにアプローチし、ヒアリングや初回接触の打ち合わせを通じて顧客ニーズや関心度を具体的に把握します。インサイドセールスの役割は、商談化に向けた見込み度のスクリーニングです。ここで意識すべきポイントは、「顧客の課題・検討段階」「意思決定フロー」「予算感」など、営業が商談化する際に不可欠な情報を収集することです。さらに、単に情報を集めるだけでなく、顧客の温度感を的確に伝えることも重要です。
最後に、営業部門へトスアップされる段階では、顧客の関心度や課題が明確化されていることが理想です。営業が受け取る情報としては、「具体的なニーズ・優先度」「競合状況」「商談に進む確度」など、すぐに動ける情報が揃っていることが望ましいです。この3段階のリレーがうまくいくことで、営業は無駄なアプローチを減らせ、より確度の高い商談に集中できます。結果として、全社的な営業生産性の底上げにもつながります。
マーケティングと営業をつなぐ橋渡しの役割
営業トスアップは、単なる部門間の情報移動ではなく、マーケティング部門と営業部門をつなぐ橋渡しの役割を果たします。マーケティングは潜在層・関心層のリードを母集団として育てる役割を持ち、営業は確度の高い見込み客を商談化し、最終的に受注につなげる役割を担います。両者の役割が異なる以上、「どの情報をどの粒度で渡すべきか」を明確にしておく必要があります。
この橋渡しでは、マーケティング段階で集めた行動データや関心度、顧客の課題感などを、営業がすぐに活用できる形に整理することが重要です。さらに、インサイドセールスはその中継点として、マーケティング情報を「営業視点で見た見込み度」に翻訳する潤滑油のような役割を担います。
橋渡しの質が高まると、営業は商談前から顧客の期待や課題をイメージでき、提案の精度が上がります。逆に、橋渡しが形骸化していると、営業がヒアリングからやり直さざるを得ず、商談化のスピードや質が落ちてしまいます。こうした部門間の役割分担と情報の質を高めることが、トスアップの成果を決める最も重要なポイントと言えます。
なぜ営業トスアップが必要なのか
マーケティング施策を商談や受注につなげるには、営業トスアップの役割を正しく理解し、適切に機能させないといけません。ただリードを集めるだけでは、最終的な売上にはつながらず、施策の投資対効果も見えにくくなります。ここでは、営業トスアップが果たす意義を改めて整理します。
マーケティングの成果は引き渡し方で決まる
マーケティング部門は、広告やウェビナー、コンテンツ配信などを通じて見込み客を獲得し、育成を進めます。しかし、たとえマーケティング活動が効果的に行われ、リードの購買意欲が高まっていたとしても、営業への引き渡しが適切でなければ、商談や受注にはつながりません。
実際、リードがきちんと営業に引き渡されないことで、「施策の成果が見えにくい」という問題に直面する企業は少なくありません。施策ごとに獲得したリード数は把握できていても、それが実際に商談数や受注数にどの程度つながったかが営業に渡した後に見えなくなるケースが多いのです。その主な原因は、営業へのトスアップが属人的であったり、基準が曖昧だったりすることにあります。
適切なタイミングと情報量で営業に引き渡せていれば、リードは商談へと進展し、マーケティング活動の成果が明確になります。つまり、マーケティングの成果は、引き渡し「後」に生まれるのではなく、引き渡し「方」で決まるという視点が重要です。
トスアップが機能しないと起きる問題
営業トスアップが仕組み化されていない、あるいは形骸化している状態では、さまざまな問題が発生します。
まず、ホットリードの機会損失です。購入意欲が高まっているリードは、スピード感を持ってアプローチすることで商談化の可能性が高まります。しかし、トスアップのフローが整っていないと、営業の対応が後手に回り、競合に先を越されたり、リードの温度感が下がってしまいます。
次に、無駄な営業活動が増えてしまうことです。トスアップの判断基準があいまいだと、営業は温度感の低いリードにも時間をかけてしまい、肝心なリードへの注力が後回しになります。
さらに、マーケティング部門と営業部門の関係も悪化しやすくなります。営業側は「価値のあるリードが来ない」、マーケ側は「せっかく送ったリードが放置されている」と感じ、双方の認識がズレてチーム連携を阻害します。
そして、施策の評価も難しくなります。トスアップされたリードがその後どうなったか把握できなければ、どのマーケティング施策が成果につながったのかも分からなくなります。これは、投資の効果測定を妨げ、施策改善の足かせにもなります。
このように、営業トスアップがうまく機能しない状態は、単なる一時的な「連携ミス」にとどまらず、売上機会の損失や施策改善の遅れといった、組織全体のパフォーマンス低下につながる深刻な問題です。
精度とスピードが商談化を左右する
営業トスアップをうまく機能させるためには、「精度」と「スピード」の両方が必要です。まず、精度については、営業に渡すべきリードをいかに正確に見極められるかがポイントになります。スコアリングや判断基準が曖昧だと、関心の薄いリードばかりが営業に送られてしまい、「成果につながらない」と感じる場面もあるでしょう。逆に、本当にアプローチすべきリードを絞り込めていれば、商談化の確率は自然と高まっていくはずです。
次に、スピードも同じくらい重要です。多くのBtoB商談では、検討初期に接触した企業がその後の商談や受注につながりやすいとされています。まり、リードの関心が高まっている今この瞬間に営業が動けるかどうかが、その後の成果を大きく左右するのです。例えば、資料ダウンロードから24時間以内に連絡があった場合と、3日経ってからアプローチがあった場合では、相手の反応が違ってくるのは想像できるでしょう。
このように、営業トスアップの効果を最大化するには、「誰に」「いつ」引き渡すかを明確に定義し、高い精度でリードを見極め、スピーディに渡せる仕組みを整えておくことが不可欠です。
営業トスアップをスムーズに進めるための仕組みとコツ
営業トスアップを有効に機能させるためには、「どの情報を、どのタイミングで、どの精度で渡すか」を明確にし、仕組みとして定着させることが不可欠です。ここでは、営業トスアップをスムーズに進めるために必要な仕組みや工夫を整理します。
リード情報の整理と可視化
営業トスアップをうまく機能させるには、まず、リード情報の整理と可視化です。マーケティング部門が集めるリードには、氏名や会社名といった基本情報だけでなく、セミナー参加履歴、資料ダウンロード状況、サイト訪問データなど、多様な行動情報が含まれます。これらの情報がスプレッドシートや複数のツールに散在していると、営業は「誰に、なぜアプローチすべきか」が判断しづらくなります。
まずは、情報を一元管理できる仕組みをつくりましょう。最初は簡易な台帳でも構いません。リード数が増えた段階では、CRMやSFAなどのツールを活用し、リード情報をリアルタイムで更新・共有できる仕組みを整えることが重要です。情報の可視化が進むことで、営業は「次に動くべきリード」がすぐにわかり、トスアップ後のアプローチの質が一気に高まります。
トスアップ基準の明確化
次に必要なのが、トスアップの基準を明確にすることです。基準があいまいなままでは、個人の感覚で判断され、成果につながるリードを取りこぼすリスクが生まれます。トスアップ基準を定める際は、以下の4つの観点を軸にしましょう。
- 属性情報(例:業種、企業規模、担当者の役職など)
- 行動指標(例:資料請求やセミナー参加、サイト滞在時間)
- 検討度合い(例:導入時期や課題感のヒアリング結果)
- 社内での決裁フロー(例:決裁者の情報や関心の有無)
例えば、中小の製造業向けに業務効率化ツールを提供している企業の場合を考えてみましょう。
基準 | 判断例 |
属性情報 | 製造業の企業であることを確認。企業規模が「従業員数50〜300名程度」の中小企業であることも基準とする。さらに、決裁に関わる担当者(例:工場長や総務部長など)がリードとして登録されているかどうかも重視する。 |
行動指標 | ツール導入に関心が高いリードは、「業務改善セミナーに参加」や「導入事例資料を2回以上ダウンロードしている」といった行動履歴を持つ。製品ページの滞在時間が長いなどのWeb上の行動も判断材料になる。 |
検討度合い | ヒアリングやフォーム回答で「老朽化した機械のデータ管理ができていない」など具体的な課題が挙がっていれば、検討意欲が強いサイン。さらに「半年以内に業務効率化ツールの導入を検討中」といった時期感が明確だと、商談化の見込みが高いと判断できる。 |
社内での決裁フロー | 例えば「最終決裁者は社長だが、現場責任者の推薦が必須」という情報がヒアリングで得られれば、営業は「まず現場責任者の課題感に寄り添う提案が必要」と準備できる。逆に、決裁フローが不明なリードはトスアップ前にインサイドセールスで追加ヒアリングを行う、といった運用を検討する。 |
このように、属性情報・行動指標・検討度合い・決裁フローの4つの観点を明確にすることで、「どのリードを営業に引き渡すか」という判断の基準がぶれにくくなります。
営業が動きやすくなる情報共有の工夫
トスアップ後に営業にスムーズに動いてもらうには、営業がすぐに動けるように情報を整えておく工夫必要もあります。例えば、トスアップ時に営業向けの「商談準備シート」を用意し、顧客の課題や競合情報、優先度などを網羅的にまとめるのも有効です。さらに、インサイドセールスが営業へ5分程度の口頭ブリーフィングを行い、ニュアンスや温度感を補足するのも効果的です。
営業が受け取る情報としては、以下の要素がそろっているとベストです。
- リードの背景(接点のきっかけ、過去のやり取り)
- 行動履歴(いつ何をしたか、どのページを見たか)
- 推奨アプローチ方法(架電・メール・オンライン面談などの手段)
これらの情報が揃っていれば、営業は「この人は〇〇に興味があるから、まずはこの資料の話を切り口に電話してみよう」といった具体的な行動イメージを持てるようになり、初回接触から顧客との信頼関係を築きやすくなります。
トスアップ後のフィードバックを得る仕組み
トスアップ後の取り組みの重要です。トスアップの質を改善し続けるには、営業からのフィードバックを得る仕組みが必要です。営業が「このリードは成果につながった」「情報が不足していた」といった結果を共有しないままだと、マーケティング施策やトスアップ基準の改善が進みません。
フィードバックを仕組み化するために、以下のような取り組みを導入すると良いでしょう。
- 営業が対応結果を入力するルールの整備
CRMやSFAで「商談化/失注/継続検討」を更新する仕組みを徹底。未導入の場合はGoogleフォームやスプレッドシートでも十分です。 - 振り返りミーティングの実施
月次・週次で営業・マーケ・インサイドセールスが集まり、「成果が出たリードの特徴」「改善すべきポイント」を共有します。 - 成約・失注理由の集計・分析
どの施策や条件が成果につながったか、逆に失注した要因は何かを可視化し、基準や施策の精度を高めていきます。
こうした仕組みが整うことで、営業とマーケティングの間の連携も深まり、組織全体としての営業生産性が向上します。
トスアップの成果を見える化する評価指標
営業トスアップを仕組みとして運用するうえで、成果を可視化する評価指標を設計する必要がありますん。指標を設計する際はトスアップの件数だけではなく、トスアップ後の商談化や受注へのつながりまでしっかり見える化することが重要です。ここでは、営業トスアップの成果を測るうえで押さえておきたい2つの視点を解説します。
トスアップ件数・転換率・商談化率のKPI
まずは、営業トスアップの活動量と成果の関連を客観的に把握するために、以下のような基本的なKPIを設定することが有効です。
- トスアップ件数
マーケティングやインサイドセールスから営業に引き渡されたリードの件数。営業部門が受け取った「攻めるべきリストの母数」を示す指標です。 - トスアップ転換率
トスアップされたリードのうち、営業が実際に商談化に向けて動いた割合です。単に件数が多いだけでなく、営業が「動く価値がある」と判断した質の高いリードかどうかが見えてきます。 - 商談化率(受注化率)
トスアップされたリードのうち、実際に商談に進んだ割合。さらに、商談から受注に至った率(受注化率)を追うことで、マーケティング施策やトスアップ基準の精度も把握できます。
こうしたKPIをモニタリングすることで、トスアップの活動量と成果のバランスを把握できるだけでなく、「どのチャネルからのリードが成果につながりやすいか」「どの基準が最適か」といった振り返りにも役立ちます。
営業・マーケ両方の評価基準の設計
トスアップの成果を正しく見える化するには、営業だけでなくマーケティング側の評価指標も一体的に設計する必要があります。営業は受注や商談化に注目しがちですが、マーケティングはリード獲得や関心層の醸成までを担います。それぞれの役割の違いをふまえ、評価指標を以下のように整理しておくと良いでしょう。
- マーケティング側の評価例
- 獲得リード数や質(属性、行動データ)
- トスアップ件数や営業からのフィードバック(「条件が合わないリードが多い」など)
- 営業側の評価例
- トスアップ後の商談化率・受注率
- トスアップ情報の活用度(提案に役立つかどうか)
また、営業・マーケ双方が集まる定期的な振り返り会議を設け、KPIだけでなく「なぜ成果が出たのか・出なかったのか」という質的な情報も共有すると、トスアップ基準や施策全体のブラッシュアップが進みやすくなります。
企業規模ごとに異なる営業トスアップの課題
営業トスアップの重要性は企業規模にかかわらず共通ですが、実際の運用課題は企業の規模や体制によって大きく異なります。
中小企業では属人化、大企業では部門間の壁などそれぞれに特有のハードルがあります。ここでは、中小企業・中堅企業・大企業それぞれに見られる典型的なトスアップ課題と、それに対してどのように対応していくかの方向性を整理し、仕組み化を進めるうえでのポイントを見ていきます。
中小企業で起こりやすい属人化と判断のばらつき
中小企業では、営業トスアップのプロセスが特定の担当者に依存しがちです。マーケティング・営業・インサイドセールスが明確に分かれていないことも多く、個人の経験や勘に頼ってトスアップの判断がなされるケースが目立ちます。例えば、リードを獲得した担当者が「そろそろ営業に回そう」と判断し、自分で営業対応まで行うケースや、口頭やメールベースで営業に引き渡す運用などが典型です。
その結果、
- 誰がどのリードに対応しているのかが不透明になる
- トスアップのタイミングや判断基準にばらつきが出る
- 対応の重複や漏れが発生する
といった問題が起こりやすくなります。
また、CRMやSFAの導入が後回しになるケースも多く、仕組み化が進まない要因となります。このような状況では、まずはシンプルな共有ルールと記録フォーマットを整えるところからスタートするのが現実的です。例えば、Googleスプレッドシートや共有メールテンプレートなど、小さな仕組みでも「情報がたまる」「見える」状態を作ることが重要になります。
中堅企業が直面する分業化による情報の断絶
中堅企業では、マーケティング、インサイドセールス、営業といった機能分化が進む一方で、役割間の情報断絶が問題になることが多いです。各部門でKPIや目標が異なり、リードの質や優先度に対する共通認識が不足しがちです。
例えば、マーケティング部門は「リード数を増やす」ことを重視し、営業部門は「すぐに商談化できるリードがほしい」と考えるなど、視点のズレが生まれます。その結果、営業が「本当に成果につながるリードかどうか」を把握しきれず、トスアップが成果につながらないことも起こりがちです。
この視点のズレが、以下のようなプロセス上の問題を引き起こします。
- トスアップ時に共有される情報が不十分
営業は必要な情報が得られないまま動き出さざるを得ず、商談化までに余計なヒアリングが発生してしまう。 - CRMやSFAの運用ルールが部門ごとに異なる
ツールは導入済でも、入力内容や更新頻度が統一されていないため、情報の一貫性がなくなってしまう。 - 営業からのフィードバックが戻らない
トスアップされたリードの結果(商談化・失注・受注)に関する情報がマーケティングに伝わらず、施策改善に活かせない。
この段階の組織においては、共通ルールの整備と、情報の受け渡し方法の標準化が大きな改善ポイントになります。CRMの中で引き渡しテンプレートを統一したり、月次でトスアップの成果を定点観測するなど、運用の「すり合わせ」を行う仕組みづくりが求められます。
大企業における部門間の壁と情報連携の課題
大企業では、マーケティングから営業までの業務プロセスは整備されていることが多いものの、部門の壁が高くなりやすく、トスアップの流れがスムーズに進まないことが多いです。営業・マーケティング・インサイドセールスがそれぞれ大規模な組織で運用されるため、情報の共有に時間がかかり、スピード感が損なわれるケースがあります。
例えば、リード情報の引き渡しにおいても、営業部門が必要とする情報が「不足している」「遅い」といった声が生まれやすくなります。また、ツールや仕組みは整っていても、運用ルールが形骸化し、実態としては属人的な判断に戻ってしまうこともあります。
大企業でこの課題を克服するには、ツールや仕組みだけでなく、「どの情報を、どの粒度で営業に届けるか」という運用ルールを現場に定着させる取り組みが不可欠です。さらに、部門間での役割認識を合わせるために、マネジメント層を巻き込んだガバナンス設計や評価基準の共有も重要です。
トスアップされたリードの商談化率を高めるコツ
営業トスアップの仕組みやプロセスを整えても、最終的に成果を決めるのは「商談化の質とスピード」です。トスアップされたリードを確実に成果に結びつけるためには、顧客理解の深め方や初回アプローチの仕方、そして具体的な提案の仕掛けなど、営業が現場で意識すべきポイントを押さえておく必要があります。ここでは、商談化率を高めるための3つのコツを紹介します。
顧客理解を深めるヒアリングのポイント
営業活動で商談化率を高めるには、トスアップされたリードに対して「顧客理解を深めるヒアリング」を行うことです。単に「興味がありますか?」と聞くのではなく、顧客が直面している課題や業務上の背景までを掘り下げていくことが重要です。
例えば、
- 「いまどんな業務フローに課題感を持たれていますか?」
- 「これまでに他のツールやサービスを検討されたことはありますか?」
- 「導入の際にネックになる部分はどこですか?」
など、具体的な課題や導入検討の背景に踏み込んだ質問を投げかけることで、顧客が考えていることの“本音”を引き出せます。
また、インサイドセールスがヒアリングした情報を営業がもう一度確認し、必要に応じて「更新された情報」を顧客から直接得るのも重要です。顧客理解が深まるほど、営業は「どんな提案が刺さるか」を的確にイメージでき、商談化率を高めやすくなります。
初回アプローチのタイミングと温度感
トスアップされたリードに最初にアプローチするタイミングは、商談化率を左右する大きなポイントです。特にBtoB商談では、顧客の関心が高まっている瞬間に営業が動けるかどうかで成果が決まります。
例えば、イベント参加後のフォローアップを考えてみましょう。オンラインセミナーや展示会など、顧客と接点を持つ機会で得たリードは、イベント直後が最も関心度が高い状態です。このタイミングで「イベントの感想はいかがでしたか?」と声をかけると、営業は顧客の課題感やニーズを自然に引き出せます。
逆に、1週間経ってから連絡した場合、顧客の記憶からイベントの内容や印象が薄れてしまい、関心度も下がっていることが多いです。営業は、こうしたイベント後のタイムリーなフォローアップを意識することで、温度感の高いリードを確実に商談化へつなげることができます。
加えて、初回アプローチ時には「すぐに提案しよう」と焦るのではなく、顧客の話をじっくり聞き出し、ヒアリングで得た情報を次の商談につなげるスタンスが重要です。温度感に寄り添った初回アプローチは、結果として商談化率の底上げにつながります。
商談化に向けた提案資料・トークの工夫
最後に、営業が顧客に向き合う「提案の場」を最大限に活かす工夫が必要です。顧客は、すでにインサイドセールスとのコミュニケーションで情報を得ている場合が多いです。そのため営業は、
- 顧客の業種・課題に合わせた事例資料や効果事例を用意する
- 相手の関心度や導入意欲に応じて、提案内容を柔軟にカスタマイズする
といった工夫をすることで、顧客に「自分たちの話を聞いてくれている」と感じてもらいやすくなります。
また、トスアップ情報を受け取る際に「決裁フロー」「予算感」「競合状況」なども整理しておくことで、商談の場面でより踏み込んだ質問や提案が可能になります。商談化率を高めるには、こうした営業資料・トークの工夫と、トスアップ情報の活用度合いをセットで高めていくことが重要です。