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製造業における案件管理の重要性
製造業における案件管理は、他業界に比べて関与部門が多く、管理の難易度が高いため、適切な仕組みがなければ様々な問題が発生しやすくなります。特に、営業、設計、生産、購買など多くの部門が関与し、長期にわたる案件の進捗管理 が求められる点が特徴です。ここでは、製造業特有の案件管理のポイントと、管理不備による影響について見ていきます。
製造業の案件管理が他業界と異なるポイント
どの業界でも、案件情報の管理や共有は営業活動に欠かせませんが、製造業では営業活動だけでは完結せず、設計、購買、生産、品質管理などの部門が深く関与し、案件の進行に応じてさまざまな調整が必要になります。さらに、在庫リスクやリードタイムの長さ、利益率の管理など、製造業ならではの案件管理の特徴があり、それらに適した管理手法が求められます。
リードタイムが長い
製造業の案件は、製品の設計や生産プロセスを伴うため、初回コンタクトから受注・納品までの期間が長くなりがちです。ある調査によると、製造業の平均的な営業サイクルは約130日とされ、ソフトウェア業界の約90日と比べても長期化する傾向にあります。
※参考 : Average Sales Cycle Length by Industry: 2024 Report - Focus Digital
リードタイムが長いため、商談中に顧客のニーズや市場環境が変化する可能性が高まり、適切なフォローと進捗管理が不可欠になります。
受注生産と見込み生産の違い
製造業には、大きく分けて、受注を受けてから生産を開始する「受注生産」と、需要を予測して在庫を生産する「見込み生産」があります。
受注生産の場合、受注ごとに仕様が異なり、個別の設計や生産計画が必要となるため、案件管理では各案件を個別プロジェクトのように扱います。また、生産開始が受注後になるため、リードタイムが長くなりがちで、仕様変更や調整が頻繁に発生する点が特徴です。
一方、見込み生産の場合、需要を予測し、事前に生産を行うため、受注後に即納できるメリットはありますが、需要予測の精度が求められ、予測を誤ると過剰在庫や欠品のリスクがあります。そのため、在庫管理と販売見込みの精度向上が重要になります。
案件管理において、受注生産では個々の案件の進捗や仕様管理が重要となり、見込み生産では需給バランスの管理が中心になります。
営業、設計、製造、購買の連携が必要
製造業の案件管理は営業だけで完結せず、技術部門、生産計画、購買、品質管理など多くの部門が関与します。例えば、それぞれの部門の役割を整理すると以下の通りです。
- 営業:案件を獲得し、顧客の要求をヒアリング
- 設計・技術:仕様の妥当性を確認し、設計を作成
- 生産・購買:生産計画を立案し、必要な部品を調達
- 品質管理:製造後の品質チェック
- アフターサービス:納品後のサポートや保守
このように、案件は複数の部門をまたぐため、各プロセスで円滑な情報共有が不可欠です。
利益率の分かりづらさ
製造業では、見積もり時に想定していなかったコストの発生や仕様変更による手戻りが頻繁に発生し、案件が完了した時点で当初の利益率と実際の利益率にズレが生じることがあります。例えば、
- 見積もり時には考慮していなかった追加工数が発生 → 利益率が低下
- 原材料費の急騰 → 予定よりコストが増加
- 顧客からの仕様変更による再設計 → 追加費用が発生
こうしたリスクを抑えるためには、案件管理の中で定期的にコストをチェックし、利益率のズレを把握することが求められます。
アフターサービスや保守契約が案件の収益に影響
製造業では、製品の納品後も、アフターサービスや保守契約を通じて継続的な収益を確保することが求められます。そのため、納品後の案件管理では、以下のポイントを適切に管理する必要があります。
アフターサービスで管理すべき項目:
- 保証対応: 保証期間内の無償修理、交換対応の履歴管理
- 修理・メンテナンス:顧客からの修理依頼対応、定期メンテナンスのスケジュール管理
- 顧客対応履歴:過去の問い合わせ履歴を記録し、トラブル対応の迅速化
保守契約で管理すべき項目:
- 契約内容:保守範囲、対応レベル(SLA)、提供サービスの詳細
- 契約更新:更新時期の管理、更新提案のスケジュール化
- 追加サービス:追加オプションの提案、アップグレード対応
例えば、保守契約を結んでいる場合、契約更新の時期を正しく管理し、営業部門が適切なタイミングで顧客にアプローチできる仕組みを整えることが求められます。アフターサービスや保守契約を適切に管理し、継続的にフォローを行うことで、顧客満足度を向上させるだけでなく、長期的な収益基盤の強化にもつながります。
案件管理が適切でないと発生する問題
製造業では、営業・設計・製造・購買などが同時に関与するため、情報共有の不備が重大なトラブルに直結しやすいという特性があります。
受注案件の情報が適切に共有されず、生産計画がズレたり、仕様変更が伝わらず手戻りが多発したりすると、納期やコストに深刻な影響を及ぼします。ここでは、案件管理の不備によって発生しやすい代表的な問題について深掘りしていきます。
受注後に発生するトラブル(納期遅延、仕様変更対応ミスなど)
受注後の案件も、適切な管理ができていないと、製造プロセスにおいてさまざまなトラブルが発生します。
特に大きな問題となるのが納期遅延です。進捗管理が不十分なまま生産に入ると、部品調達の遅れや生産ラインの確保ミスが発生し、結果的に納品予定に間に合わなくなります。発注が必要な部品の納期を事前に確認していなかった場合、生産スケジュール全体が後ろ倒しになり、顧客との約束を守れなくなるリスクがあります。
また、仕様変更の伝達ミスもトラブルの要因になります。顧客から仕様変更の要望があったにもかかわらず、営業部門内で情報が止まってしまうと、製造現場では旧仕様のまま生産を進めてしまうことがあります。その結果、完成後に「仕様が違う」と判明し、大幅な手戻りやコスト増加が発生することになります。
営業と生産計画のズレ
案件情報が営業部門内で適切に管理・共有されていないと、生産計画とのミスマッチが生じることがあります。
例えば、営業が「この製品は売れる」と判断し、十分な需要が見込めると考えていたものの、生産部門との情報共有が不足していたため、必要な生産ラインの確保ができていなかったケースがあります。その結果、受注が取れたのに納品できないという問題が発生します。
逆に、生産部門が一定数の製品を生産する計画を立てていたにもかかわらず、営業部門が十分な受注を取れず、在庫が余ってしまうこともあります。このようなズレは、営業と生産計画の情報共有不足が原因です。
実際、製造業で生産実績と計画にズレが生じる主な原因の一つは、営業と生産部門の連携不足にあります。営業が獲得した案件の進捗状況や、受注の確度をリアルタイムで共有できる仕組みがなければ、こうしたミスマッチは繰り返されてしまいます。
見込み案件の管理不足による商機損失
製造業では、製品の開発や納期管理が優先されるあまり、見込み案件の管理が後回しになるケースが少なくありません。その結果、重要な商機を逃してしまうことがあります。
例えば、見込み顧客からの問い合わせに対応し、提案まで行ったものの、その後のフォローが不十分で、商談が自然消滅してしまうケースも少なくありません。特に、案件の長期化が進むと進捗が不透明になり、営業担当が「いつ、どの顧客に、どのようなアプローチをすべきか」の判断が難しくなります。
さらに、案件のステータス管理が曖昧な場合、受注が確定しても生産側の準備が整っていないことがあります。営業が突然「この案件が決まったので、すぐに生産してください」と依頼しても、部品の手配や製造ラインの調整が間に合わず、納期遅延や機会損失につながる可能性があります。
見込み案件の進捗が適切に管理されていないと、売上の見通しも不明確になり、経営判断にも影響を及ぼします。営業部門と生産部門の連携を強化し、案件の進捗をリアルタイムで管理できる仕組みを導入することが重要です。
製造業における案件管理の基本プロセス
製造業における案件管理は、単に「営業が受注して終わり」ではありません。リードの獲得から受注、設計・製造、納品、さらにアフターフォローに至るまで、長期にわたるプロセス全体を管理する必要があります。その間、営業・技術・生産・購買・品質管理など複数の部門が関与し、部門間での円滑な連携が不可欠です。管理が不十分だと、見込み案件の失注、仕様変更の対応遅れ、納期の遅延、生産計画の混乱など、さまざまな問題が発生します。だからこそ、各プロセスの役割や管理ポイントを理解し、全体を通じて適切な案件管理を行うことが重要です。ここでは、案件の発生から納品・アフターサービスまでの基本的な流れと、それぞれのプロセスにおける管理のポイントを具体的に見ていきます。
案件獲得(展示会・問い合わせ・紹介など)
展示会、ウェブからの問い合わせ、パートナー経由の紹介、営業活動などで新たな案件を獲得したら、顧客情報やニーズを整理して、案件として管理を始めましょう。
顧客情報の正確に登録する
案件管理を適切に進めるには、初期段階での情報登録が重要です。以下のような項目を整理・記録しておきましょう。
登録すべき情報:
- 基本情報(会社名、担当者名、連絡先)
- 企業属性(業種、規模、所在地)
- 案件発生の経緯(展示会・問い合わせ・紹介・営業訪問など)
- 顧客の関心や課題(どの製品・サービスに興味を持ったのか、どのようなニーズがあるのか)
案件リストの分類する
案件が増えると、管理の煩雑さも増していきます。そこで、以下のような観点で案件リストを分類・整理しておくと、後の進捗管理や営業戦略の策定がしやすくなります。
- 企業規模別(中小企業・大企業・グローバル企業など)
- 業種別(製造業・IT・建設・自動車関連など)
- 案件の発生経路(展示会・ウェブ問い合わせ・紹介・営業訪問など)
案件を獲得した段階できちんと整理しておくことで、優先順位付けや部門連携もスムーズに進みます。
案件情報の整理(見込み度、仕様要件、納期希望)
案件を獲得したら、「見込み度」「仕様要件」「納期希望」の3つの視点で案件情報を整理し、どの案件を優先すべきかを明確にしましょう。案件を整理することで、「受注の確度が高い案件」「優先的に対応すべき案件」 を見極めやすくなります。また、見込み度が低い案件でも、適切なタイミングでフォローを行うための判断材料になります。下記は、案件情報を整理する際の確認ポイントです。
見込み度(受注確度)を評価する
見込み度の評価では、以下のポイントを確認し、案件ごとに適切な対応方針を決めます。確度の高い案件は優先的に対応し、低い案件は長期的なフォロー対象として管理します。顧客のニーズの強さ(導入意欲がどの程度あるか?)
- 導入意欲や課題の深刻度
- 予算の有無・確保状況
- 意思決定者との接触の有無・商談の進行度合い
仕様要件を整理する
仕様要件の整理では、以下のポイントを確認し、技術・生産部門とすり合わせて対応方針を決めます。特に、仕様変更の可能性がある案件は、変更リスクを考慮して管理することが重要です。
- 顧客の要望やカスタマイズ内容
- 技術的な制約や設計の可否
- 標準製品で対応できるかどうか
納期希望を確認する
納期希望の整理では、以下のポイントを確認し、対応方針を決めます。納期が厳しい案件は、調達・生産のリードタイムを考慮し、早めに対応 する必要があります。また、納期に余裕のある案件は、他の案件とのバランスを見ながらリソースを調整しましょう。
- 顧客の希望納期と自社の生産スケジュールのすり合わせ
- 長納期が必要な部材や特注品の有無
- 緊急対応が必要かどうかの判断
この段階で情報を正しく整理し、案件ごとの優先順位を明確にすることで、スムーズな案件進行が可能になります。
技術・生産部門との調整
案件が具体化すると、営業だけでなく、技術・設計・生産部門との調整が必要になります。特に、技術的な実現可能性の確認、生産リソースの確保、部品・材料の調達計画 の3つのポイントを事前に確認することが重要です。これらの調整が不十分だと、受注後に「生産できない」「納期が守れない」といったトラブル が発生するリスクが高まるため、慎重な検討が必要です。
技術的な実現可能性の評価
案件が成立するかどうかは、顧客の要求仕様が実現可能かどうかに大きく依存します。そのため、営業と技術部門が連携し、事前に技術的な実現可能性を評価することが重要です。
- 顧客の要求仕様が既存の製品で対応可能か、それとも新たな開発が必要かを判断
- 必要に応じて試作・検証を行い、問題がないかを確認
この段階で十分な検証を行わないと、受注後に設計の見直しや追加コストが発生する可能性があります。
生産リソースの確保
受注が決まっても、生産リソースが確保できなければスムーズな納品はできません。特に、工場の稼働状況や納期スケジュールを事前に確認し、生産体制を整えることが重要です。
- 工場の稼働状況や納期スケジュールを確認し、対応可能な納期を決定
- 既存の生産ラインで対応できるか、新たな設備や工程が必要かを検討
生産計画のズレが発生すると、納期遅延や追加コストの原因となるため、事前に生産部門とすり合わせを行い、柔軟に調整できる体制を整えましょう。
部品・材料の調達計画
製造業では、部品や材料の調達が納期を左右する大きな要素です。特に、長納期の部品がある場合、早期の調達計画が欠かせません。
- 必要な部品の在庫状況や調達リードタイムを確認し、納期に間に合うかを判断
- 長納期の部品がある場合は、早期に調達計画を立てる
万が一、部品が予定通りに調達できなかった場合、納期遅延やコスト増につながるため、リスクを考慮しながら計画を立てることが重要です。
見積もり・受注確定
技術・生産部門と調整が完了すると、正式な見積もりを提示し、受注の確定を進めます。この段階では、適正な価格設定、交渉の進め方、契約内容の明確化が重要です。見積もりの精度が低いと、後に利益率が悪化したり、契約後のトラブルにつながる可能性があるため、慎重に進める必要があります。
見積もりの作成
見積もりは、コストと利益のバランスを取りながら、顧客と納得のいく価格を設定する重要なプロセスです。適正な見積もりを作成することで、価格交渉の余地を持たせつつ、企業の利益を確保できます。
- 製造コスト、部品調達費、工数などを考慮し、適正な価格を設定
- 過去の案件データを活用し、適正な利益率を確保する
顧客との交渉
顧客との交渉では、価格、納期、仕様などを最終調整し、契約を締結するプロセスです。この段階では、契約後のトラブルを防ぐためにも、交渉のポイントを明確にしておくことが重要です。
- 価格、納期、仕様などについて最終調整を行い、契約を締結
- 仕様変更のリスクを最小限に抑えるため、契約内容を明確化し、双方で合意を取る
交渉の際には、「どこまで譲れるのか」「絶対に譲れない条件は何か」を事前に社内で共有 しておくことが不可欠です。また、見積もりや提案の変更履歴を記録し、合意形成の流れが追えるようにしておくことも重要です。契約後に「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、交渉内容を文書化し、契約書に明記することでリスク回避につながります。
生産・納品・アフターフォロー
受注が確定したら、生産計画を立て、製造・納品を進めます。この段階では、納期遅れや品質トラブルを防ぐために、案件ごとの進捗を細かく管理することが重要です。特に、「生産の進行管理」「納品・検収」「アフターフォロー」 の3つのプロセスを適切に実施することで、スムーズな案件完了と次回の受注につなげることができます。
生産の進行管理
生産が計画通りに進むかどうかは、案件全体のスケジュールに影響を与えます。納期遅延や仕様変更によるトラブルを防ぐため、工場の稼働状況を把握し、進捗管理を徹底することが重要です。事前に想定されるリスクを洗い出し、生産部門と連携しながら柔軟に対応できる体制を整えましょう。
- 工場の稼働状況を把握し、スケジュール通りに進んでいるかを確認
- 仕様変更やトラブルが発生した場合は、迅速に対応
納品・検収
納品は顧客との関係を深める重要なプロセスです。スムーズな納品を実現し、検収時に問題が発生しないよう事前準備を整えることが求められます。検収でトラブルが発生すると、追加対応が必要となり、コスト増加や顧客満足度の低下を招く可能性があるため、納品前の品質チェックを徹底しましょう。
- 顧客の希望スケジュールに合わせ、納品の準備を進める
- 納品後、顧客の検収を受け、不具合がないか確認
アフターフォロー・保守
製造業では、納品後のアフターフォローや保守対応が重要な役割を果たします。ここでしっかりと顧客に向き合うことで顧客の満足度が高まり、リピート受注や長期的な関係構築につながるため、継続的なフォローを行いましょう。
- 納品後も、顧客の問い合わせ対応や保守契約のフォローを行う
- 長期的な関係を構築し、次回の受注につなげる
特に、保守契約の更新や追加提案の機会を逃さないよう、CRMなどを活用してフォローのタイミングを管理することが重要です。
案件管理を仕組み化して効率化する
案件管理の精度を高め、効率的に運用するためには、単に個別の案件を管理するだけでなく、評価基準の明確化・データ活用・ツール導入による仕組み化 が不可欠です。ここでは、案件の見込み度を評価する方法、データを活用した管理手法、そしてCRM/SFAの活用ポイントについて詳しく見ていきます。
案件の見込み度を評価
製造業では、案件の獲得に時間がかかるため、受注の可能性が高い案件に営業リソースを集中させることが重要です。そのため、案件ごとに「受注確度」を評価し、適切な営業アクションをとる仕組みが必要になります。
案件の見込み度を評価する際は、次のような視点があります。
- 顧客の関心度(問い合わせ回数、過去の商談履歴)
- 技術要件の適合度(既存製品で対応可能か、新規開発が必要か)
- 意思決定プロセス(キーマンとの接触状況、競合の有無)
- 予算の確保状況(明確な予算があるか、まだ検討段階か)
- 納期の緊急度(短期間で決定が必要か、長期案件か)
案件の評価基準
以下は一例として、上記の要素を基に案件を評価したものです。
評価項目 | 優先度低 | 優先度中 | 優先度高 |
顧客の関心度 | 過去に接点なし | 複数回の接触あり | 過去に取引実績あり |
技術要件の適合度 | 新規開発が必要 | 既存製品のカスタマイズで対応可能 | 標準製品で対応可能 |
意思決定プロセス | キーマン不在 | キーマンと一度接触済み | キーマンと交渉中 |
予算の確保状況 | まだ検討段階 | 予算はあるが決裁待ち | 予算確保済み |
納期の緊急度 | 長期案件(6か月以上) | 3〜6か月以内に決定予定 | 1〜3か月以内に決定予定 |
評価を行った後は、案件ごとに適切な対応を決定し、リソースを最適に配分しましょう。下記は案件の優先度ごとの対応方針の一例です。
案件の優先度ごとの対応方針:
- 優先度高:受注の可能性が高いと判断し、優先的にアプローチをして短期間でのクロージングを目指すようにする。
- 優先度中:定期的にフォローアップを行い、状況に変化がないかをモニタリングし、変化があればアプローチの優先度を変えるようにする。
- 優先度低:長期的な関係構築を目的に、定期的に製品の新機能の情報やウェビナーなどの情報を提供し、良好な関係を作る。
案件管理のデータ活用
製造業の案件管理では、データを活用することで、営業活動の最適化や製造計画との連携強化が可能になります。特に、以下のようなデータを活用することで、案件管理の精度を向上させることができます。
受注率の分析による営業戦略の最適化
過去の受注データを分析し、成功パターンを把握することで、より効果的な営業活動が可能になります。
- 過去の案件データを基に、受注率が高い業種・製品・営業手法を特定。
例:「特定の業界では、技術的な提案より価格競争が決め手になっている」 - 競争の激しい市場では、競合との勝率を分析し、提案内容を強化。
例:「A製品はB社に対して50%以上の勝率があるため、積極的にアプローチ」 - 受注率の低い案件は、提案の改善やターゲットの見直しを実施。
活用例:
営業戦略を見直し、「過去1年間で受注率が高い業界・製品を重点ターゲットに設定」 することで、営業の効率を高める。
製造部門の負荷予測
受注確度の高い案件をもとに、事前に生産計画を調整し、納期遅延や生産負荷の偏りを防ぎます。
- 受注確度の高い案件を一覧化し、将来の生産負荷を予測。
例:「来月はA製品の受注が集中するため、生産ラインを増強」 - 部品調達のタイミングを最適化し、急な部材不足を防止。
例:「調達リードタイムが長い部品は、受注確度が60%以上の時点で発注検討」 - 営業と生産計画を連携させ、リソースを適切に配分。
活用例:
営業部門と製造部門が「来月の受注確度80%以上の案件リスト」を共有し、事前に生産計画を調整することで、納期遅延を防ぐ。
営業のKPI管理でパフォーマンスを向上
営業活動の成果をデータで可視化し、営業パフォーマンスの向上を図ります。
- 成約率を分析し、効果的な営業手法を特定。
例:「訪問回数3回以上の案件は成約率が20%上昇」 - 商談期間(リードタイム)を分析し、営業サイクルの改善を行う。
例:「平均リードタイムが6ヶ月の案件は、競合に奪われるリスクが高いため早期に決裁者と接触」 - フォロー回数と成約率の関係を分析し、最適なフォロー回数を決定。
例:「フォローが3回未満の案件は成約率が低いため、最低5回のフォローを標準化」
活用例:
営業チームがKPIデータをもとに「フォロー回数5回未満の案件は優先的に追加アプローチ」することで、成約率の向上を目指す。
CRM/SFAの活用ポイント
製造業では、営業・設計・製造・購買の各部門が関わるため、CRM/SFAを活用し、案件情報をリアルタイムで共有することが重要です。特に、以下のポイントを押さえて活用することで、案件管理の効率を向上させることができます。
案件ごとの進捗管理
CRM/SFAを活用して案件のステータスを管理し、進捗を可視化することで、対応漏れを防ぎましょう。各案件の現在のステージや、次に必要なタスクを明確にすることで、「この案件、次に何をすればいいのか?」が誰でもすぐに把握できるようになります。
タスク管理機能を活用すれば、案件ごとの業務をシステム上で依頼・管理でき、期限を過ぎたタスクには自動で通知を送ることも可能です。
例えば、
- 「提案書の作成が完了したら、次に図面手配を依頼」
- 「設計の承認が下りたら、生産管理に自動で通知」
- 「納期が迫っている案件はアラートを表示し、フォローを促す」
といった形で、案件の進行をスムーズに進められます。
この仕組みがあることで、担当者間の情報共有がスムーズになり、もし担当が変わった場合でも引き継ぎがスムーズに行えます。また、営業部門は案件の進捗を一目で把握できるため、「どの案件が遅れているのか?」「どこに人員を投入すべきか?」といったリソース配分の判断がしやすくなります。
顧客・案件情報の一元管理
顧客情報と案件情報をひも付け、CRM/SFAで一元管理を徹底しましょう。
基本情報、商談の内容、見積履歴、やり取りの記録がバラバラに管理されていると、情報漏れや重複対応が発生しやすくなります。これをCRM/SFAに集約することで、誰でも必要なときに最新情報にアクセスでき、スムーズな対応が可能になります。
特に製造業では、過去の提案内容や納入製品履歴が次の商談につながるケースが多いため、それらの履歴を蓄積し、活用できる環境を整えることが重要です。例えば、
- 過去の納入実績から、リピート受注やアップセルの機会を発掘
- 類似案件の見積履歴を活用し、新規商談の提案精度を向上
さらに、蓄積されたデータを活用し、商談履歴の分析を行うことで、より戦略的な営業活動が可能になります。
- 「どの商談が成功しやすいのか?」 → 受注率の高い業界や提案内容を特定し、営業アプローチを最適化
- 「どの段階で失注するのか?」 → 商談の停滞ポイントを把握し、対策を講じる
- 「どの顧客が再アプローチの可能性が高いか?」 → 過去のやり取りを基にフォローアップの優先順位を決定
CRM/SFAを「単なる情報管理ツール」にとどめず、蓄積データを分析し、次の商談につなげる仕組みを作ることが重要であり、経験や勘に頼らず、データに基づいた営業活動を実現し、受注率の向上を図ることができます。
特に製造業では過去の提案内容や納入製品履歴が次の商談につながるケースも多いため、そうした履歴を蓄積して活用できる環境が重要です。
技術・生産部門との連携
CRM/SFAの活用は営業部門だけでなく、技術部門や生産管理部門とも連携し、情報共有を強化することが重要です。
例えば、システム上で製造部門が案件情報を参照できるようにし、仕様や納期要求の確認に加え、仕様変更の履歴も管理する仕組みを導入することで、変更の影響を適切に評価できるようにします。
- 仕様変更の管理と影響評価の仕組み
- 変更履歴を記録し、影響範囲を明確化(追加工数、コスト増加、納期遅延の可能性を可視化)
- 設計・製造部門へのリアルタイム通知(仕様変更が発生した際に即時アラート)
- 過去の変更履歴を活用し、類似案件の対応スピードを向上
さらに、生産スケジュールと営業活動の連携も不可欠です。
営業が案件の進捗を把握するだけでなく、生産負荷や納期の変動に応じて、営業活動の優先度を調整できる体制が求められます。例えば、
- 「〇月の生産キャパが埋まりそうだから、新規案件は納期調整が必要」といったフィードバックを営業に提供
- 「緊急案件が発生し、生産スケジュールが変更になった」場合、即座に営業と共有し、顧客対応を迅速化
この連携をさらに強化するため、生産管理システムやERPとCRMを連携させ、受注情報や納期変更情報を自動で反映できるようにする企業も増えています。
この結果、営業担当者は「この案件、今どの工程にあるのか?」をリアルタイムで把握でき、顧客への説明やフォローがスムーズになります。
営業・技術・生産管理が密接に連携し、情報を一元管理することで、案件の遅れやリスクを最小限に抑え、スムーズな対応を実現できます。
CRM/SFAの運用ルールと活用ポイント
ここでは製造業の案件管理でCRM/SFAを活用する際に決めておきたい運用ルールについて深掘りします。
案件ステータスを明確に定義する
製造業の案件はリードタイムが長いため、進捗状況が曖昧になりやすく、対応の遅れや見込み違いによるトラブルが発生しやすいのが特徴です。案件ごとの状況を明確にし、次のアクションを的確に判断するためには、案件ステータスを定義し、可視化することが重要です。
ステータスの具体例
案件の進捗に応じて、以下のようなステータスを設定すると管理しやすくなります。
ステータス | 状態の概要 | 主な対応内容 |
リード獲得 | 初回コンタクト、情報収集の段階 | 顧客の関心度やニーズを確認し、基本情報を登録する |
商談中 | 要件や仕様のすり合わせが進行中 | 技術部門と連携して仕様の確認・提案・試作などを進める |
見積もり提出 | 提案内容・見積を提示した段階 | 見積書・提案資料を提示し、顧客からのフィードバックを収集 |
契約調整中 | 契約締結・発注書を受領した段階 | 生産・納期計画を立て、技術・購買・生産部門と連携する |
受注確定 | 契約に向けて調整が進んでいる段階 | 価格や納期、条件面の調整を行い、社内承認を取得する |
生産進行中 | 製造工程に入った段階 | 生産スケジュールを確認し、進捗を定期的にモニタリング |
納品完了 | 納品済みで検収を待つ段階 | 検収処理、請求手続き、アフターサービスの準備 |
アフターフォロー | 納品後の保守・追加提案フェーズ | メンテナンス対応や契約更新の管理、追加提案などを実施 |
ステータスの管理ルール
案件の進捗を適切に管理するため、以下のルールを徹底することが望ましいです。
- CRM/SFAでステータスを管理し、リアルタイム更新を徹底
- ステータスごとに必要なアクションを定義し、対応の漏れを防ぐ
- 案件の停滞があれば、フォローアップの仕組みを導入
ステータスを明確に定義することで、案件の進行状況を可視化し、適切なアクションを取ることが可能になります。
商談履歴や見積もり履歴を正しく記録する
CRM/SFAには商談履歴や見積もり履歴を漏れなく記録することを徹底しましょう。いつ、誰が、どのような提案ややり取りを行ったか、見積もり金額はいくらだったか、顧客の反応や要望事項は何か、といった情報です。これらをテキストメモやログに残しておくことで、担当者が不在でも過去の経緯を追跡できますし、担当変更時の引き継ぎもスムーズになります。
特に仕様変更が多い製造業の案件では、「当初見積1000万円だったが追加要望で1200万円に変更」といった履歴を残しておくと原価管理や利益分析にも役立ちます。
営業、技術、製造部門間の情報共有を強化する
運用ルールとして、部門間の情報共有を習慣化しましょう。具体的には、CRM/SFAに入力する項目やタイミングを取り決め、営業以外の部門も必要な情報を必ず参照・更新する運用とします。
例えば、営業担当者は案件を登録する際に「この製品なら対応可能か?」「納期はどれくらいか?」といった情報を入力します。
その情報をもとに、技術部門が設計の検討を行い、「この仕様なら標準製品で対応可能」「この部分は追加設計が必要」などのフィードバックを返します。
一方で、製造部門は「生産ラインの調整が必要か?」「納品スケジュールに影響はないか?」を確認し、実際の生産開始日や納品予定日を登録します。
こうした情報のやりとりをスムーズに行うことで、案件が進むたびに必要な情報が整理され、全体の流れが可視化されるようになります。
