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商談分析の重要性
商談率・受注率を高めるためには、まず過去の商談データから、「成果につながりやすいターゲット」と「成果につながりにくいターゲット」を客観的に見極めることから始めます。ここでは、分析の重要性について整理していきます。
属人的なターゲット選定により起こる問題
ターゲット選定は担当者の経験や勘に依存しやすく、組織としての方針とズレが生まれることがよくあります。こうした属人的な判断は、営業効率の低下や部門間の認識の不一致を招き、成果のばらつきにも直結します。ここでは、具体的にどのような問題が起きるかについて整理します。
担当者の経験や得意分野に依存したターゲット選定の偏り
新規開拓営業において、多くの企業が抱える課題の一つがターゲット選定の属人化です。営業担当一人ひとりが、経験や得意分野に基づいて「狙うべき企業」を判断してしまうため、組織としての方針と大きくズレが生まれることがあります。
Aさんは製造業が得意なため製造系企業ばかりにアプローチし、Bさんは広告業界の経験が長いため広告会社を中心にリストアップする、といった具合に、戦略ではなく担当者の判断でターゲットが決まってしまうケースがあります。
温度感の低いターゲットへの無駄なアプローチ
「せっかくリストがあるから」という理由だけで温度感の低い(受注の可能性の低い)見込み客へ架電し続けてしまうと、本来優先すべき温度感の高い見込み客へ時間を割けない状況が起こりがちです。営業活動の生産性が上がらないだけでなく、担当者自身も成果を実感しにくくなるため、モチベーション低下にもつながります。
マーケティング部門との連携不足による優先度の不一致
マーケティング部門との連携が噛み合わず、ターゲットの認識が食い違うことも少なくありません。マーケティング側は「Web問い合わせのリードへ注力すべき」と考えていても、営業側は「展示会で獲得した名刺リードの方が成果につながるはず」と判断してしまうなど、部門間で優先度が揃わず、全体最適が進まないという問題も発生します。
こうした要因が重なると、最終的になんとなくの優先順位で活動が進んでしまい、商談化率や受注率に大きなばらつきも生まれます。これらの課題を解消するためにも、属人的な判断から脱却し、データに基づくターゲット選定を行う必要があるのです。
データで見極める「勝てる市場」と「勝てない市場」
営業成果を高めるためには、自社がどのような顧客に対して成果を出しやすく、どのような顧客には成果が出にくいのかを正確に把握することが重要です。
実際に商談データを分析してみると、業界や企業規模、流入経路などによって商談化率や受注率に明確な差があることがわかります。
例えば、ITサービス業ではIT投資が業績に直結する金融業は受注につながりやすく案件規模も大きくなりがちだが、製造業はコスト意識が強く、比較的検討プロセスが長く競合比較も多い業界なので失注が多い、といった傾向が分析により見えるかもしれません。
また、顧客位からの紹介経由のリードは高確度で商談化しやすいのに対し、展示会で獲得したリードは温度感が低く受注率が伸びづらいなど、流入経路によっても成果が大きく変わることもあります。
このような違いは担当者の偏った経験だけでは把握しきれず、データとして可視化して初めて見えてくるものもあります。成果につながりやすいターゲットを明確にすることで、営業リソースを集中すべき領域が明確になり、無駄なアプローチを大幅に減らすことができるでしょう。
商談分析の基本
ここからは商談分析の基本的な考え方である「失注分析」と「受注分析」について解説していきます。
「やるべきでない領域」を見極める失注分析
商談データを使った分析手法のひとつである失注分析は、自社がどのような企業や案件に対して成果が出にくく、どのようなケースで失敗しやすいのかを明確にするためのものです。これにより、成果につながりにくい領域へ無駄にリソースを投下することを避け、営業活動の優先順位を正しく設定できるようになります。
特に新規開拓営業においては、「どこにアプローチすべきか」を考える前に、「どこにアプローチすべきではないか」を明らかにすることで、商談化率や受注率の向上につながりやすくなります。ここからは、まず失注分析を通じて「やるべきでない領域」をどのように見極めるのかを整理していきます。
失注理由を整理していくと、競合負けが多い業界、予算が合わない企業規模、検討時期が定まらない流入経路など、自社が苦手としている領域が浮き彫りになります。
「狙うべきターゲット」を見極める受注分析
失注分析によって「やるべきではない領域」が明確になると、次に必要になるのが「狙うべきターゲット」を見極めるための商談分析です。
商談分析は、過去の受注案件を振り返り、自社がどのような顧客属性・商談条件の組み合わせで成果を上げやすいのかを明らかにするプロセスです。ここでは、「狙うべきターゲット」をどのように整理するのかを整理します。
過去の受注案件を振り返ってみると、業界や企業規模、流入経路、社内の意思決定プロセスなどに共通点が見られることが多く、自社が成果を出しやすい顧客や案件の特徴が自然と浮かび上がってきます。
例えば、100〜300名規模の中堅企業では商談の早い段階から意思決定者が商談に同席しやすく、商談が前に進みやすい傾向があったり、Web問い合わせのように課題が明確な企業からのリードは商談化率が高く、受注までの期間も比較的短いなどの傾向があるかもしれません。こうしたデータをもとに「勝ちやすい顧客の条件」が明確になれば、営業活動の優先順位が定まり、無駄なアプローチを減らすことができます。
こうした傾向を捉えることで、「誰に・どのタイミングで・どのようなアプローチをすべきか」という判断の精度が高まり、営業活動の効率が格段に向上します。
商談分析の基本ステップ
失注分析にしても、受注分析にしても、商談分析を進める際の具体的なステップは、どちらもおおよそ同じ工程です。以下の5つのステップで整理していきます。
- Step1:過去の商談を一覧化する受注・失注に関わらず過去の案件について、業界・規模・流入経路・役職などの情報をまとめます。
- Step2:業界・業種別の受注率・失注率を確認する業界や業種によって、商談が前に進みやすいかどうかには違いがあります。分析を行うと、特定の業界では商談がスムーズに進みやすかったり、意思決定のスピードが速かったりとその業界ならではの特徴が見えてきます。
- Step3:流入経路と受注率・失注率の相関を見る紹介>Web>展示会の順で受注率が高い、などはよくあるパターンです。流入経路による傾向が把握できれば、どのリードに優先的にフォローすべきか、またどの施策に投資すべきかといった判断がしやすくなります。
- Step4:担当者の役職が商談に与える影響を把握する意思決定者が早い段階で参加している商談は受注につながりやすい傾向があります。参加者の役職をデータとして蓄積しておくことで、どの案件に積極的にリソースを投じるべきかを判断する材料になりますし、インサイドセールスがアポイントの質を見る際にも活用できます。
- Step5:商談期間(検討スピード)を分析する商談期間を可視化しておくことで、短期決着を狙うべき案件と、長期フォローの前提で進めるべき案件かの判断ができ、営業リソース活用の精度が高まります。
今回は例として、業界・業種、流入経路、担当者の役職、商談期間などを属性情報として分析の軸に利用したステップをご紹介しましたが、どのような属性で商談の受注率などに違いが出るかは扱っている商材などによっても異なります。
このように商談分析のステップを踏むことで、自社がどのような条件の顧客に対して成果が出にくいのか、逆に成果が出やすいのかが明確になります。
ターゲットを抽出するための分析軸
商談分析の結果をもとに、最終的に狙うべきターゲットを抽出する際には、一定の共通した分析軸を用いることが重要です。
ここでは、どの企業でも汎用的に活用しやすい4つの分析軸を分析事例と共に整理します。
①顧客企業の業界・業種
業界ごとに導入検討の背景や課題の構造が異なるため、自社のサービス・商材との適合度により勝率が大きく変わる要因になります。
例)
情報通信業:既存の業務にITが密接に関わるため課題が顕在化しており、比較検討のスピードも早い。初回商談の時点で競合との比較が済んでいることが多く、「導入前提」で話が進むケースが多い。
製造業:拠点が複数に渡り、複数部門の合意が必要となる傾向。提案内容は評価されても承認プロセスが重たく長期化しやすかったり、現場用・本社用の2種類の説明資料が求められることもある。
広告・メディア業界:新しい業務改善ツールへの適応が早く、検討期間も短いが自社の業績による「予算の波」が大きいため四半期単位で勝率が変動することも。
②企業規模
企業規模は意思決定プロセスや予算感に直結しやすい属性です。
例)
- 50〜150名規模:経営層との距離が近く、意思決定者が商談に参加しやすい。導入スピードは早いが、年間予算の上限が低い。
- 300名以上:導入は大規模になるため競合比較が必須となり、意思決定プロセスが複雑になる。検討期間は長いが、利用者は利用部門数が多く、導入後の売上や利益額は大きくなる。
③流入経路
流入経路は検討フェーズの違いを反映するため、勝率に大きな影響があります。
例)
- 紹介:紹介者を通じた信頼関係があるため初回商談から意思決定者が出てくることが多く、話がスムーズに進む。
- Web問い合わせ:見込み客が能動的な行動を取っている状態。課題が顕在化していて比較検討フェーズに進んでいることも多く、商談化率が高い。緊急性のある問い合わせほどすぐ商談に進む。
- 展示会:情報収集段階の見込み客の名刺獲得だけしたケースも多く、温度感の高い企業は全体的に数%。そのため展示会リードは商談化までに時間が掛かることが多い。
- セミナー参加:参加者は課題意識が明確であることが多く、資料DLやアンケート回答など行動データと組み合わせるとターゲットの精度が高まる。
④ニーズと提供価値の一致度合い
顧客課題が自社のサービス・商材の提供価値とどれほどフィットしているかは受注率を大きく左右します。
例)
- 顕在課題が一致:課題が言語化されており、どのような課題をどんな手段で解決しようとしているのかが明確になっている状態で、その課題を自社のサービス・商材が解決できる状況 →早期に商談化し、比較的短期間で受注しやすい。
- 潜在課題が一致:課題が言語化されておらず、どうすれば困りごとを解決できるのか、何を解決すべきなのかがはっきりしていない状態で、困りごとを自社のサービス・商材で解決できる可能性が高いが、課題意識の醸成が必要→ヒアリング力や情報整理力などが問われるため、営業担当のスキルによって差が出やすい。
- ニーズ不一致:既に競合がサービス、商品を全社導入済み、必要性がない、他の業務が優先→商談化しても失注が続くため、早期に切り捨てを検討すべき領域。
ターゲットを適切に抽出するためには、単一の要素だけで判断するのではなく、前述した業界・企業規模・流入経路・ニーズなどの軸を組み合わせて総合的に評価します。
勝ちパターンからターゲット像を言語化する
分析結果を踏まえると、どのような企業が受注しやすいのか、勝ちパターンが浮かび上がります。次は、これらのパターンを言語化し、以下のようにターゲット像を構築していきます。
- 「業界」:IT企業は課題が顕在化していることが多く意思決定が速い
- 「規模」:中堅企業は導入検討がスムーズ
- 「流入経路」:Web経由は比較検討フェーズに至っていることが多く温度感が高い
- 「ニーズ」:役職者が直接参加している=組織としての課題意識が強い
上記の要素から、勝ちやすいターゲット想定して、言語化すると、
勝ちパターン例:ITサービス業 × 100〜200名規模 × Web経由リード × 役職者(課長以上)が初回商談に参加
が浮かび上がってきます。
このように勝ちパターンを言語化することで、営業組織全体で、誰を優先的に追うべきかが揃い、リスト作成や、テレアポ、メールナーチャリング、アプローチなど、すべてのアクションに優先順位付けがしやすくなります。また、マーケティング部門と営業部門が共通言語で会話できるため、リード獲得施策の設計の精度も高くなります。
CRM/SFAを活用したデータ分析とターゲット管理
ここからは、Zoho CRMでの活用を例に、事前に受注データを分析しやすい形に整え、レポートやビューを使って「勝ちパターンに合致するターゲット」を抽出する流れを整理します。
Zoho CRMで商談データを整備する手順
商談分析の精度を高めるためには、蓄積されるデータを分析しやすい状態に整えることが必要です。CRMに入力される項目がばらついていたり、担当者ごとに記述ルールが異なっていると、正確な傾向を読み取ることができないからです。
ここでは、Zoho CRMの商談データを分析可能な形にするために最低限整えておきたい「項目設計」と「商談ステージ設計」を解説します。
①項目設計
まずは、分析に必要な情報がきちんと入力されるよう、商談タブの項目を整えます。
特に重要になるのが「失注理由」とリードのソースの記載となる「見込み客のデータ元」です。ツールによっては「失注理由」の項目は既にデフォルトで設定されている場合もあります。例えば、Zoho CRMでは、選択リスト(単一)形式で以下のような項目が用意されています。
- 要件に合わなかった
- 料金・不適当なお客様だった
- 反応がなかった
- フォローアップしなかったターゲットではなかった
- 競合
- 導入時期が先だった
これらのデフォルトの項目を活用することも可能ですが、自社特有の失注傾向を細かく表現したい場合は、項目のカスタマイズを行うことを推奨します。
例えば、IT関連サービスを商品に対して「ニーズの不一致」が失注理由であった場合、具体的に以下のように、どのようなニーズが要因かを選ぶと後々に細かく分析することができます。
カスタマイズ例:
- 機能の不足(管理系)
- 運用イメージが持てない
- 想定ユーザーの定着が困難
- 現行業務プロセスと合わない
複数の項目を設定すると逆に分析がしづらくなるため、過去の商談結果から特に失注した要因を項目に設定すると良いでしょう。
ZohoCRMでは、以下のようにレイアウトのカスタマイズ画面から、「プロパティの編集」画面で項目の追加・変更・削除ができます。


②商談ステージの設計
次に、商談の進捗を表す「ステージ」の項目を、自社の営業プロセスに合わせて整理します。
ステージの項目もツールによってはデフォルトで設定されている場合があります。このまま使うことは問題ありませんが、ステージの進行条件をチームで共通認識にしておくことが重要です。また、ステージの粒度や名称はツールによってバラバラですので、分析できる形に整え直すと良いでしょう。
Zoho CRM では、標準で次のようなステージが用意されています。
- 条件確認
- ニーズの分析
- 提案
- 意思決定
- 見積もりの提示
- 交渉
- 受注
- 失注
- 競合選択による失注
ZohoCRMでは、以下のようにレイアウトのカスタマイズ画面から、「プロパティの編集」画面でステージの項目を追加・編集が可能です。


Zoho CRMで失注商談を分析するレポート設定
次に、整備したデータを使って、分析用レポートを作成して分析を行っていきます。
今回は、どの業界での失注が多いのか、どのような要因で失注しているのかを、可視化するレポートを作成します。
失注要因を分析をする
① 商談レポート一覧画面の確認
Zoho CRMは、以下のように標準で「ステージ別の商談」「確度別の商談」「失注した商談」など、商談分析に使えるレポートが複数用意されています。

まずは基本的なレポートを活用し、必要に応じてカスタマイズする流れがおすすめです。
② フィルターで「失注理由」を絞り込む
次に、左側のフィルターを活用し、失注データだけを絞り込み表示させます。
今回の例では、
- ステージ:失注
- 失注の理由:空欄ではない(=理由が入力されている)
というフィルターを設定しています。
これにより、「失注理由が明記されている案件」だけを抽出し、担当者の入力ムラを排除して、より正確に傾向を把握することができます。

ここでは「ステージ」で「失注」を選択されているものを条件としているため、以下のように必ず商談ページ内の「ステージ」の項目内で「失注」が選択されている必要があります。また、要因分析を行う場合は、ステージに加え理由も選択されていることが重要です。

③「失注した商談」レポートを一覧で表示する
レポート画面では、以下のように「失注理由」が一覧で表示され、純粋にどの理由が最も失注に影響しているかを把握することができます。


今回の結果では、「料金」と「要件に合わなかった」が多いです。
料金が市場価格より高いことが問題であれば、価値訴求か競争力の課題があると考えられるため、提案価値の伝え方を見直すことを検討する必要があるかもしれません。
また、要件に合わなかった、という要因に対してはヒアリングフェーズでの要件把握不足に課題がある可能性から、初期段階のターゲットの精度を高める必要性が考えられます。
数が多いものから順に、優先的に改善を行うことができるでしょう。
業界と失注理由を組み合わせて、特定業界で失注理由が偏っていないかも確認し「負けパターン」を分析するということもできます。仮に、製造業だけ「要件に合わなかった」が多数ある場合には、業界理解が不足している可能性もありますので、市場調査が必要になるでしょう。
Zoho CRMでターゲットリストを作成する
失注レポートでは、失注理由の多くが料金や要件に合わないという2点に集中していましたが、逆に言うと、 「料金の議論が出にくい顧客」「要件が最初から合致しやすい顧客」は勝ちやすいターゲットである可能性が高いとも言えます。
今回は、価値>価格になりやすい層として、年間予算が確保されている中堅〜大企業、また、ROI等の説明が通じやすい役職があるリードをターゲット対象としてリストを作成してみましょう。
▼条件
中堅〜大企業(従業員数300名以上)×役職あり
①ビューを作成する
ZohoCRMでの「ビュー」とは、各タブの情報を条件を指定して一覧化できる機能です。「ビュー」は画面上部の各タブをクリックして表示される一覧画面の左上に表示されており、「新しいカスタムビュー」を選択し、新たなビューの作成と作成したビューの条件変更などの設定を行います。

次のように、従業員数が「300名以上」、また意思決定者が関与している可能性が高いリードとして、「職位が空ではない」を抽出条件として設定します。

このように、抽出条件で一覧表示ができます。ビューとして保存すると、毎回検索条件を入力せずともワンクリックで優先リードを一覧化することができます。

③ 抽出したターゲットにタグ・ランクを付与する
抽出したターゲットにタグ、または項目をカスタマイズし、ランクを設定すると、「誰を優先すべきか」が視覚的にわかりやすくなります。
以降は、その優先度順にアプローチを行っていけば、受注率の高い見込み客や案件に営業リソースを集中させることができるようになります。
ただし、ここで設定した優先度はあくまで仮説の一つです。実際の業務では、設定した優先度に沿った営業活動によって、受注率が実際に変化したのかまで追うことが求められますので、注意しましょう。
