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商談管理の重要性
商談管理の目的は、営業一人ひとりの感覚や経験に頼らず、組織として受注率を高める「共通の進め方」を持つことです。
前のレッスンで見つけた勝ちパターンを活かすためには、「どのターゲットを狙うか」に加え「商談をどう進めるか」の基準をそろえることが大切です。
まずは、属人的な商談管理がどのようなボトルネックを生み出しやすいのかを整理し、共通の管理ルールを持つ重要性を見ていきます。
属人的な商談管理が招く問題
属人的な商談管理では、担当者の頭の中にだけ情報があり、チーム全体で状況を共有しにくくなります。その結果、フォローのタイミングや進め方に差が出やすくなります。
ここでは、現場でよく見られる典型的なボトルネックを整理します。
フォロー漏れ・過去履歴が追えない問題
アポイント後の追加提案や、見積提示後の確認など、本来実施すべきアクションがスケジュール帳や担当者の記憶だけに残っていると、忙しい担当者ほど対応漏れが発生しやすくなります。また、誰がいつ、どのような内容で話をしてきたのか過去の履歴が共有されていなければ、同じ説明を繰り返してしまったり、顧客の社内事情や検討の背景を、今後の営業活動に十分に活かしきれません。
進捗判断が担当者任せの問題
「そろそろ決まりそう」「もう少し時間をかけたい」などの判断が担当者ごとに異なると、上長や他メンバーが支援に入るタイミングがつかみにくくなります。
「商談への確度が80%」という記載があっても、人によって意味合いが違うケースは少なくありません。「見積提出済みで、意思決定者の了承もほぼ得られている状態」なのか、「良い感触だが、まだ先方社内での調整はこれから」という状態なのか不明瞭で、周りから具体的なアクションが取りづらいといった問題が起こりやすくなります。
商談進捗の全体が見えづらい問題
案件ごとの状況が担当者のメモや感覚に依存していると、営業責任者は「どの案件に支援を入れるべきか」「今月の着地見込みはどの程度か」を判断しづらくなり、今後の営業方針が立てづらい状況も起きる可能性もあります。
また、優先度の高いリードが営業に渡った後、その後の状況がマーケから見えない状態になると、どの施策から来たリードが、商談のどの段階まで進んだのかの分析が取りづらく、マーケ施策の最適化も行いづらくなるでしょう。
商談管理の目的は「再現性の獲得」
商談管理のゴールは、特定の営業担当者だけが成果を上げる状態ではなく、チーム全体が安定して受注できる状態へと組織のマネジメント力を進化させることにあります。そのためには、商談の進め方をルールとして標準化し、誰が担当しても同じ考え方とプロセスで進められるようにしておくことが大切です。
具体的には、ステージ設計や必須項目、ネクストアクション管理といった形で落とし込むことで、成果の出やすい進め方を組織の標準として定着させることができるようになるでしょう。
次の章では、この再現性を形にするために、商談プロセスをどのように設計し、どのようなステージで管理していくのかを整理します。
商談プロセスの設計と管理
商談プロセスを整える目的は、営業担当者の経験や判断に依存せず、誰が担当しても安定した進め方ができる状態をつくることにあります。そのためには、顧客が社内でどのように検討を進めるのかという購買プロセスの理解を前提にしつつ、実際の営業アクションを的確に管理できるステージ設計が必要です。
おおよそのCRM/SFAツールには、一般的な営業活動のプロセスを基にした標準ステージが用意されていることが多く、標準ステージを活用することで現場の管理と顧客理解を両立できます。
ここでは、Zoho CRMの標準ステージをベースに、商談ステージの設計例と入力すべき主な項目についてを整理していきます。
標準的な商談ステージの設計例
ZohoCRMの場合、営業担当者の行動を基準にした商談ステージが標準で設定されています。標準ステージは次の通りです。
- 条件確認
- ニーズの分析
- 提案
- 意思決定
- 見積もりの提示
- 交渉
- 受注
- 失注
- 競合選択による失注
営業現場での使いやすさと管理のしやすさが考慮されており、そのまま活用するだけでも商談の進捗を揃えやすい構造になっています。
これらはあくまで営業行動視点での分類ですが、「このステージにある顧客はどの検討段階にいるのか」を定義し、チームで共通理解として持つことも重要です。
例えば、「提案」ステージにある商談であれば、顧客側ではすでに社内で比較検討が始まっている状態を定義としたり、「見積もりの提示」ステージでは、予算の枠組みが社内で確認されていること、「交渉」ステージでは導入の方向性が固まっていることなど、顧客側の状況に紐づけてステージの意味合いを定義すると、チーム全体で商談の温度感や確度をそろえて捉えられるようになります。
以下はステージごとの営業側と顧客側の定義例です。
定義例 | ||
ステージ名 | 営業側の状態 | 顧客側の状態 |
条件確認 | 基本情報の確認が完了し、商談として成立している段階。日程調整、担当者把握など初期接点が整っている。 | 課題は明確になっていないが、情報交換の段階に進んでいる。 |
ニーズの分析 | 顧客の課題・要望・背景をヒアリングし、必要な情報を把握できている状態。 | 課題認識が進み、解決策の検討に前向きな状態。複数部門で現状整理が始まるケースもある。 |
提案 | 顧客の課題に対し、提案内容・導入ストーリー・解決イメージを提示している状態。デモや具体案の説明が完了。 | 比較候補がいくつかに絞られ、サービスを具体的に検討している。利用部門との確認も発生。 |
意思決定 | 導入の方向性について顧客と認識を合わせ、意思決定プロセスに進んでいる状態。 | プロジェクトの必要性が社内で認識され、稟議・承認プロセスの準備が始まっている。 |
見積もりの提示 | 金額・契約形態・スコープを提示し、顧客が具体的な条件を確認している状態。 | 予算確保に向けた調整が進み、見積金額をもとに社内協議が行われている。 |
交渉 | 契約条件・期間・オプション・導入範囲など、具体的な条件調整が進んでいる状態。 | 導入意向が固まり、最終的な条件の調整に入っている。 |
受注 | 契約締結が完了し、導入準備が開始されている状態。 | プロジェクト開始準備、キックオフ調整が始まる段階。 |
失注 | 導入の検討を中止した状態。顧客の事情や優先順位の変更が理由となるケースが多い。 | 予算の見送り、検討停止、タイミングの先送りなど。 |
競合選択による失注 | 他社サービスを選択したことが明確な状態。 | 他社が要件にマッチした、社内評価で優位だったなど、比較検討の結果が確定している。 |
また、各ステージに進むための条件も一緒に明確にしておきましょう。
「ニーズの分析」から「提案」へ進める条件を「デモを実施した」などではなく、「意思決定者の関心ポイントが確認できている」「比較基準がヒアリングできている」など、顧客側の検討が前進した事実を基準に置くと、商談の進捗基準が揃い、担当者による判断のばらつきも抑えやすくなります。
ステージごとに設定すべき管理項目
ステージを定義したら、そのステージで必ず確認しておきたい情報を「管理項目」として設計します。
代表的な管理項目は次の通りです。
項目名 | 概要 | 主な内容 |
案件名/担当者/金額/確度 | 商談全体の規模や重要度、担当者を明確にする基本情報。 |
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顧客ニーズ(担当者・意思決定者) | 現場と意思決定者の視点を分けて課題を把握し、提案精度を高めるための情報。 |
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予算に関する情報 | 稟議や意思決定プロセスの前提となる予算状況を把握し、提案内容の整合性をとるための項目。 |
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導入時期・検討スケジュール | 顧客側の意思決定プロセスとスケジュールを把握し、商談遅延を防ぐ。 |
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意思決定者・関係者情報 | 誰が意思決定し、誰が影響を与えるかを整理することで、アプローチの優先順位を可視化。 |
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競合情報 | 顧客が比較している選択肢や判断基準を可視化し、自社の打ち手整理につなげる項目。 |
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ネクストアクション | 商談の停止を防ぎ、常に「次の一手」を明確にするための項目。 |
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商談メモ(面談記録) | 会話内容や顧客の意図、ステージ移行理由など、定型項目に落とし込めない情報の記録。 |
|
CRM/SFAツール上で、これらの項目をカスタマイズで追加することを検討しましょう。
さらに一歩進める設定では、上記項目に対しては、埋まっていない限り、次のステージに進めないようにルール化すると、商談情報の入力の精度とマネジメントの再現性が高まります。
ただし、最初からすべての項目を必須にしてしまうと、営業担当者の入力の手間がいきなり増えてしまい、なかなかデータを入力してもらえず、進捗管理が行えないという状況も発生することがあるので注意が必要です。
カスタマイズとしての追加や必須化は対象を絞り込んで、最初はシンプルな項目とし、ツールの活用が浸透してきた段階で、項目を現場の担当者と話し合いながら増やしていくとよいでしょう。
受注率を高めるアプローチ
受注率を高めるためには、商談を確実に前に進めるための活動の質を整えることが重要です。
どれだけ良いターゲットであっても、商談後のフォローが滞ったり、進捗判断が曖昧なままだと成果のばらつきが生まれます。ここでは、誰が担当しても商談がスムーズに前進する状態をつくるための、具体的なアプローチを整理します。
ネクストアクション管理を行う
まず一つ目は、ネクストアクションを明確にすることです。
営業が商談を失う主な理由のひとつが「フォローの抜け落ち」です。営業担当者は複数の案件を同時に扱うため、商談のたびに次に「誰が・いつ・何をするか」のタスク作成を活用すると、抜けやすい一手を確実に積み重ねることができます。
たとえば、ZohoCRMでの「タスク作成」の方法は手動と、自動で行う方法の両方があります。
以下は、タスク作成を手動で行う方法です。商談直後に意思決定者へ商談フォローのメールを送る、というタスクを定めた期限までに行うタスクを作成してみます。


商談情報の詳細画面では、未完了のタスクを一覧で見ることができ、特定の商談に対して行うべきことや状況が、明確に分かります。また、完了すると下の段に表示されます。
このように、ネクストアクションをタスクとして登録することで、自身の営業活動の抜け漏れを防ぎます。結果として、フォローの遅延による受注の機会損失を減らすことができるでしょう。
商談の進捗状況を可視化する
次に、商談の進捗状況を可視化します。可視化することによって、各商談ステージごとの滞留状況などが見えてきます。
ZohoCRMツールでは、商談ステージの表示方法として「一覧表示」「カンバンビュー」などの表示形式を選択できます。中でもカンバンビューは、商談をステージごとに横並びで確認できるため、現在どのフェーズに商談が集中しているのか、どの案件が停滞しているのかが直感的に把握できます。
担当者とマネージャーが同じ画面で状況を共有できるため、優先順位の判断がそろいやすく、受注に向けたフォローの質が安定します。こうした可視化により、チーム全体で注力すべき商談を見極めやすくなり、結果的に受注率の向上につながります。

Zoho CRMでのカンバンビューの見え方
CRM/SFAを活用したフォローアップの実践
商談管理を仕組みとして根付かせるためには、担当者の記憶や判断に頼らず、「次にやるべき行動」をシステムで自動的に管理できる状態が理想です。
ここでは、Zoho CRMでのワークフロー機能を活用し、フォローアップを自動化する方法を整理します。
ワークフローで登録の手間を減らす
フォローアップを仕組み化するうえで効果的なのが、Zoho CRMの「ワークフロー」機能です。ワークフローを使うと、「いつ」「どの商談が」「どの状態になったら」「どのようなタスクを自動登録するか」をあらかじめ設定でき、担当者が手動で登録しなくても、自動的にタスクが作成されるようになります。
例えば、商談のステージが「見積もりの提示」に進んだ案件では、多くの場合「見積もりを作成する」「見積もりを送信する」という二つのタスクが必ず発生します。
今回は、「見積もり作成」「見積もり送信」というタスクを自動化する方法を挙げます。
ワークフローでは、次のようなルールを設定します。
- 実行タイミング:商談ステージが「見積もりの提示」に更新されたとき
- 実行内容:
- 「見積もり作成」というタスクを自動で登録する(商談担当者宛て、期限10日後)
- 「見積もり送信」というタスクを自動で登録する(商談担当者宛て、期限15日後)
ここからは具体的な手順を説明していきます。
まずはルールを作成します。

「ステージが見積もりの提示に変更された瞬間」のトリガーを以下のように設定します。

トリガーが発動した際に、処理が行われた10日後を期限とした「見積もり作成」と15日後を期限とした「見積もり送信」がタスク登録される内容を追加します。


このように、ワークフローでタスク生成を自動化すると、タスクの実施漏れなどが起きにくくなります。
今回の例では「見積もり作成」「見積もり送信」というタスクを自動化しましたが、同様の方法でさまざまなフォローアップを仕組み化できます。
例えば、以下のような運用も可能です。
- 「提案フェーズ」に進んだらデモ実施の準備タスクを登録する
- 「交渉フェーズ」に入ったら契約条件の確認タスクを割り当てる
- 「受注後」には導入キックオフ準備タスクを自動作成する
商談ステージと紐づいたタスク生成を取り入れることで、営業プロセス全体が一貫し、再現性の高い商談管理が実現しやすくなるでしょう。
