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CRM/SFAツールの基本機能
ロイヤルカスタマー管理で活用するのは、CRM/SFAツールの中でも特に以下の4つの機能です。ここでは、何ができ、何を把握できるのかを整理します。
顧客情報の一元管理
まず基盤となるのが、顧客データの一元管理です。
商材・ビジネスモデルによって必要な項目は変わりますが、ここでは BtoB企業のSaaS関連サービスなどを想定して、ロイヤルカスタマーの管理に必須となる情報を整理します。
企業 / 担当者情報
- 企業名
- 担当者(氏名・役職)
- 業種/業界
- 企業規模(従業員数・売上規模)
これらは、どのような企業や担当者が自社にフィットしやすいのかを見極めるための土台です。ロイヤル層に共通する業界や規模の傾向が分かれば、将来のターゲティングにも活かせます。
商談 / 契約情報
- 契約開始日
- 契約プラン
- 契約更新日
- 金額(契約金額)
- アップセル履歴
- クロスセル履歴
- 購買回数(年間受注件数)
- 接触開始日
- 商談期間
- 営業担当者の訪問回数
これらの情報を取引先情報に保存しておくことで、いつから付き合いがあり、どれくらいの売上をもたらし、その後もアップセル・クロスセルが発生しているか、といった状況を数字で把握できるようになります。
また、必要に応じて、接触してから初回購買が発生するまでの商談期間などの営業活動に関する情報も活用します。
行動履歴管理
契約情報だけを見ていても、顧客が何をきっかけに興味を高め、どのタイミングで熱が冷めていくのかは分からないものです。そのため、顧客の行動変化も確認し、ロイヤル化の兆しや離脱の予兆を捉えるようにすることが重要になります。
例えば、以下のような顧客行動を捉えておくと良いでしょう。
- メール開封
- 資料DL
- イベント参加
- ウェビナー参加
「活用セミナーに毎回参加している」「導入事例に関するメルマガを何度も閲覧している」といった行動は、よくサービスを活用している・解決できていない課題があるサインになり得ますので、将来的にアップセルや契約更新も考えられるかもしれません。
一方で「メール開封がぱったり止まった」「ログインが90日以上ない」という状態は、離脱リスクのシグナルとして受け取ることができます。
スコアリング・ランク管理
実際に、レッスン3で定めた顧客ステージのうち、購入後の段階である「離反」「一般」「リピーター」「ロイヤル」の4つの顧客ステージに当てはめるために、活用するのがスコアであり、スコアの考え方の代表的なものが以下の二つです。
- RFMスコア(Recency・Frequency・Monetary)
- 利用状況に基づくエンゲージメントスコア
RFMスコアは、「一番最近の取引がいつで」「どのくらいの頻度で取引があり」「一定期間の中でどれほどの金額を使っているか」をまとめたもので、金額面、取引量などでスコア付けを行う考え方です。
エンゲージメントスコアは、「ログイン頻度」「利用機能数」「イベント参加数」「アンケート回答」などを点数化し、サービスの活用度合いでスコア付けを行うために使います。
自社のビジネスモデルやサービスの特性を検討した上で、どのようなスコア付けを行うべきか、具体的なスコア条件を決め、XX点以上のスコアを「リピーター」、最も高い層を「ロイヤル」と定義する、といった使い方ができます。
セグメント作成
顧客ステージにより分類した顧客を「セグメント(顧客リスト)」として切り出す機能も活用します。
セグメントは、単にリストを一覧化する機能というわけではなく、取引状況などに応じて、常に最新の状態に更新されて自動で抽出されるリストでもあります。
ロイヤルカスタマー管理で活用するセグメント例は基本的に顧客ステージとして分類したものと同じ区分けになることが多くなります。
レポート・ダッシュボード
最後に、ロイヤルカスタマーに関連する施策の成果をモニタリングするためのレポート・ダッシュボード機能です。
レッスン5で整理した成果指標を、セグメント別に可視化することで、どの層に、どの施策が効いているかを把握しやすくなります。
【代表的な指標】
- 継続率(契約更新率)
- 解約率
- 売上推移
- アップセル率
- 顧客満足度(CS)
- NPSスコア
リピーターやロイヤル層のセグメントごとの「年間売上」を棒グラフで比較したり、特定層の「解約率」を四半期ごとに折れ線グラフで表示するなど、セグメント別 × 時系列で眺めることで、単に売上が増えた減ったではなく、どの顧客層の動きが要因なのか、またどの施策が効いたのか、というところまで踏み込んで議論できるようになります。
ロイヤルカスタマーを抽出する方法
ここからは、ロイヤルカスタマーを抽出・分類する手法として、RFM分析を採用し、CRM/SFAツールで実施するために実際に必要な情報項目と、ランク分けの方法を整理します。
RFM分析に必要な情報項目を設定
RFMの各要素は、業態によって定める要素や意味が変わるため、ここでは一般的な項目中心に項目例をここで挙げていきます。
1. Recency(最新購買日/最新接点日)
Recency は一般的には「直近の購買日」をもとに計算時点からどのくらい近しい期間で購買行動を行っているかを測る指標です。計算に利用される項目は以下の通りです。
- 直近の購買日
- 契約更新日
- 初回契約日
一方、SaaSを商材として扱う企業では、購買日付だけでは、月次や年次でのサービスの更新日付が自動で更新される形にしかならず、顧客の「実際の活用度」を判断できないため、例えば以下のような利用データが Recency に含まれるケースがあります。
- 最終ログイン日
- 利用開始日
- 最終サポート受付日(問い合わせ・チャット・ヘルプページ閲覧など)
2. Frequency(購買頻度)
Frequency はどれだけ頻繁に購入・利用しているかを示す指標です。一般的な頻度は、以下のような項目が挙げられます。
- 一定期間内の購買回数(例:年度ごとの購買回数)
- 契約更新回数
- 請求回数
その他、継続的な利用が前提となるSaaS関連サービスの場合は、「追加ライセンス購入数」などの情報を取得する場合もあります。
3. Monetary(購買金額)
Monetary は売上貢献度を示します。一般的な項目は以下の通りです。
- 受注金額
- 年間売上
- 追加購入金額(アップセル・クロスセル)
- 契約プランの金額帯
SaaSの場合、受注金額や売上だけでなく「どのプランに移行したか」を見て、評価されるケースもあります。
RFM分析でよく利用される「購買日」「購買回数」「受注金額」などは、CRM/SFAツール内の管理項目にデフォルトで設置されている事が多いため、RFM分析機能のあるツールでは、カスタマイズなどをする必要はありません。
扱う商材がSaasの場合に利用される「最終ログイン日」のような項目必要な場合には、CRM/SFAツール上に項目を追加したり、Saas側とのシステム連携を行って、自動で項目を更新したりといったカスタマイズを行う必要があります。
セグメント別に分類する
次に、RFMデータに基づき「離反顧客」「一般顧客」「リピーター」「ロイヤル顧客」の4つのステージに分類していきます。
これまで少し特殊な例としてSaasサービスの例なども提示してきましたが、分類のわかりやすさから、以下は、製造業・卸売・商社など定期的に購買が発生するビジネスモデルを前提とした場合の分類例としています。
セグメント名 | Recency(最新購買日/更新日) | Frequency(契約更新・購入回数) | Monetary(年間売上) | 特徴 |
ロイヤルカスタマー | 過去30日以内 | 年間3件以上 | 300万円以上 | 高頻度・高単価・継続的に更新している最重要顧客 |
リピーター | 過去60日以内 | 年2件以上 | 200万円以上 | R・F・Mのうち2つがロイヤル基準に近い伸びしろ層 |
一般顧客 | 90日以上購買なし | 年1〜2件 | 300万円以上 | 単価は高いが、接点が弱まり始めている |
離反顧客 | 180日以上購買なし | 年0〜1件 | 100万円以下 | 活動・購買傾向が下がっており要注意 |
CRM/SFAツールでのセグメント作成
ランク定義が固まった後、次に行うのが「セグメント化」です。
ここで重要なのは、Excelのように「その時点での状態を切り取る」のではなく、CRM/SFAツールが持つ自動抽出機能を活かし、常に最新状態の顧客リストを維持することです。
セグメンテーション機能を持ったCRM/SFAツールでは、設定した条件に合致した顧客が自動で反映され、ロイヤルカスタマー・リピーター・一般・離反層などの各セグメントに属する企業・個人を、いつでも最新の状態として把握できます。
しかし単に最新の状態を維持すればよいかというとそうではなく、セグメント設計時の注意点として、施策の実施・運用ができる規模で各セグメントを設計する必要があることが挙げられます。
セグメント分けは細かくすればするほど精度が高まりそうに見えますが、細かく分けたセグメントごとに施策を実行しなければならず、施策が打ち切れずに終わってしまうということもありえます。
セグメント機能を使い始めた当初は、3~4分類程度にセグメント分けを行い、施策が問題なく実施できることを確認し、さらにセグメント必要が出てきてからさらに細かく分けることを検討するようにしましょう。
現実的に施策を実行できるセグメント分けとなっているか、継続的にフォローできるかを常に念頭に置き、データ精度より「運用可能性」を優先して設計するようにしましょう。
顧客データの整備・セグメント分けの実践例
ここでは実際に、Zoho CRM を使ったデータ項目の整備やセグメント作成方法を、画面イメージとともに解説します。
顧客データの整備
前の章で整理したRFM分析に必要な項目を、実際にCRM上で扱える状態に整えるところから始めます。
Zoho CRMの場合、セグメンテーション機能で利用するRFM分析に必要な情報はデフォルトで設置されている「商談」タブ内の以下の項目を管理されています。
RFM分析で使用する項目(商談タブ)
- Recency(最新購入日)
→ 受注に至った商談の「完了予定日」 が該当 (最も最近の受注日として扱える) - Frequency(購入頻度)
→ 受注商談の「件数」 を年間などの期間で集計 (どれだけ頻繁に的に購入しているかの指標) - Monetary(購入金額)
→ 受注商談の「総額」 を合計 (顧客の売上貢献度を表す)

これらの項目を用いることで、シンプルなRFM分析を実施できますが、さらに詳しく、「業界別のロイヤル顧客比率を比較したい」「地域別にアップセル成功率を比較したい」といった場合には、業種分類や地域分類の項目を新しいカスタム項目として追加すると良いでしょう。
セグメント分けの実践
RFMスコアを算出できる状態になったら、次はCRM/SFA上でそのデータを基に「セグメント(顧客リスト)」として切り分けていきます。
抽出条件を設定する
Zoho CRMでは、セグメンテーション機能を使ってセグメント分けしたデータについては、以下の2つの方法で抽出できます。
- RFMの各スコア(数値項目)を条件に指定する方法
- 「セグメントラベル」を条件として使う方法
今回は、以下の条件に合わせてロイヤルカスタマー層を「セグメントラベル」を使って抽出する方法について解説していきます。
まずはセグメンテーション機能を使って、以下の条件による企業が自動で分類される設定を行います。
セグメント名:ロイヤルカスタマー
抽出条件
- Recency(最新購買日):過去30日以内
- Frequency(年間購買回数):年間2件以上
- Monetary(年間売上):300万円以上
セグメンテーション機能の設定画面で、RFM分析の計算元となるデータ(商談)を指定し、最新購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・購入金額(Monetary)の各スコア条件を設定していきます。
なお、ここではロイヤルカスタマーだけでなく、それ以外のセグメントも同時に設定しています。
■最新購入日(Recency)
スコア | 最新購買日 | 該当セグメント |
5 | 過去30日以内 | ロイヤルカスタマー |
4 | 過去60日以内 | リピーター |
3 | 過去90日以内 | 一般顧客 |
2 | 過去180日以内 | 離反顧客 |
1 | 180日以上購買なし | 離反顧客 |

■購入頻度(Frequency)
スコア | 購入回数(年間) | 該当セグメント |
5 | 3件以上 | ロイヤルカスタマー |
4 | 2件以上 | リピーター |
3 | 2件未満(1〜2件) | 一般顧客 |
2 | 1件 | 一般顧客 |
1 | 0件 | 離反顧客 |

■購入金額(Monetary)
スコア | 年間売上(合計額) | 該当セグメント |
5 | 300万円以上 | ロイヤルカスタマー |
4 | 200万円以上 | リピーター |
3 | 100〜200万円 | 一般顧客 |
2 | 〜100万円 | 一般顧客 |
1 | 〜50万円 | 離反顧客 |

また、RFMの各スコア組み合わせに対して、以下のようにセグメント名を入力します。

セグメント(顧客リスト)として保存
RFM分析で定義したスコアをもとに顧客ステージに該当するラベル(ロイヤル・リピーター・一般・離反)を作成したら、次は「いつでも呼び出せる顧客リスト」として保存します。
Zoho CRM では、セグメントラベルを利用してビューを作成することで、常に最新状態のロイヤル顧客リストを自動更新で保持できるようになります。
まず、取引先タブを表示した画面から「新しいカスタムビュー」を作成し、フィルタ条件を設定します。ロイヤルカスタマーのビューを作成する方法を例とした場合は以下の通りです。



Zoho CRM のビューは、静的なリストではなく、条件に該当するレコードがリアルタイムで反映される動的なリストです。
つまり、
- 新たにロイヤル基準を満たした顧客 → 自動でリストへ追加
- スコアが下がり基準を満たさなくなった顧客 → 自動でリストから除外
というように、リストを手動で更新しなくても常にリストが最新状態に保たれます。
このようにCRM/SFAツール上でRFM分析に基づいたセグメントを設計・実装しておくことで、顧客の状態変化をきっかけに自動で施策へつなげる、仕組み化されたアプローチが実現できるようになります。
