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セグメントに基づくパーソナライズ施策
前回のレッスンで作成した、ロイヤルカスタマー、リピーター、一般顧客、離反顧客、といったセグメントは、単に顧客を分類するためのものではありません。本来の目的は、それぞれの顧客セグメントに応じて最適なアプローチを行い、適切な顧客体験を提供することです。
例えば、セグメント分けをせずに、同じ情報を全顧客に一斉メール配信するようなアプローチ施策は、運用は楽ですが、反応率や成果は伸びにくくなりがちです。
一方で、セグメントを利用し、「今、その顧客がどの段階にいるのか」「その段階の顧客は何に困り、何を求めているのか」を起点にアプローチ施策を設計すると、無駄なアプローチを減らし、必要な相手に必要な情報だけを届けられるようになります。
ここからは、前回のレッスンで定義した各セグメントごとに、ロイヤルカスタマーを増やし業績を向上させるという視点で、どのような施策を打つべきか、そしてそれをCRM上でどう実行していくと良いかを具体的に見ていきます。
ロイヤルカスタマー向け施策
ロイヤルカスタマーは、すでに高い頻度で継続的に利用している、売上や利益の観点でも貢献している最重要顧客層です。そのため、この層に対しては新規獲得のようなアプローチではなく、関係性をさらに深めながら、顧客体験を向上させるような施策を検討・実施します。
例えば、一般には公開していないプロダクトの最新情報や先行イベントの案内など、ロイヤル層だからこそ得られる情報を提供することで、「自分は大切に扱われている」という体験を生み出すことができます。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
- VIP向け情報提供・限定資料の共有一般公開前の活用ノウハウ、業界別の成功事例、サービスやプロダクトの先行リリース情報などを優先的に案内する
- 新サービス・新機能の先行案内正式リリース前のベータ利用や事前説明会などを企画し招待する
- カスタマイズされたアップセル・クロスセル提案単なる営業提案ではなく、「利用状況を踏まえた改善提案」として個々のクライアントに適した提案を行う
- ユーザー会・イベントへの優先招待ユーザー同士の交流や他社事例に触れる場を提供する
- 専任担当者による定期フォロー通常は専任担当を配置しないが、特別に専任担当をつけ、月次・四半期などの定期レビューミーティングを開催する
上記のような特別感のあるコミュニケーションを積極的にとることで、ロイヤルカスタマーの満足度を高め、長期的な定着やアップセルにつながりやすくなります。
CRMでの実装ポイント(キャンペーン管理)
前述したようなイベント企画や個別提案など、ロイヤルカスタマー向けの施策が増えてくると、誰に何を対応すべきかが見えづらくなるかもしれません。
このような状況に対しては、キャンペーン管理機能を使うことを検討してみましょう。
CRM/SFAツールでは特定の顧客層に対して、継続的な販売促進活動を管理するための機能=キャンペーン管理機能を持っていることがあります。
キャンペーン管理では、対象となる顧客を明らかにし、イベント集約・参加状況の管理、イベントやキャンペーン活動から生まれた商談の管理、コストの予実管理などを行うことができます。
例えば、以下のような活用が挙げられます。
- ロイヤルカスタマーセグメントに該当した顧客をロイヤルカスタマー施策を行うためのキャンペーンに登録する
- 特別イベントへを企画し、招待メールの送信、参加状況の管理を行う
- さらにイベント参加によって発生した商談を登録し、最終的に発生した売上とコストからキャンペーンの収益性を判断する
ロイヤルカスタマー向けのマーケティング・販促活動をCRM/SFAツールで管理することで、ロイヤルカスタマー向けの施策実行を効率的に行い、投資対効果を明らかにすることができるでしょう。
リピーター・一般顧客向け施策
リピーターや一般顧客は、すでに一定の取引実績はあるものの、ロイヤルカスタマーほどの継続性や利用深度には至っていない顧客層です。
そのため、施策においては短期的な売上拡大を狙うことよりも、成功体験を積み重ね、サービスの利用価値を実感してもらうことが重要になります。
ロイヤルカスタマー向けのような特別扱いを前面に出す施策ではなく、「自分たちも活用できそうだ」「もう一歩踏み込んでみよう」と感じてもらえるような情報提供や後押しできる施策が有効です。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
- 成功事例・活用ノウハウの提供同業他社や同規模企業の導入事例、具体的な活用方法、成果が出た運用パターンなどを紹介し、自社での活用イメージを持ってもらう
- トライアル延長や限定特典の提供上位プランの一部機能を期間限定で試せるトライアルや、契約更新時の特典などを用意し、次のステップに進むきっかけを作る
これらの施策は、単なる値引き施策とは異なり、「売り込み」として受け取られにくく、顧客側も前向きに情報を受け取りやすい点が特徴です。結果として、サービスの利用頻度や理解度が高まり、ロイヤルカスタマーへと育っていく可能性が高まります。
CRMでの実装ポイント(メールのセグメント化と配信)
前述した成功事例の共有やトライアル延長といった情報提供を、例えばメール配信で行う場合は、誰宛に、何の情報を、どのタイミングで届けるか、が整理されている必要があるでしょう。
CRM/SFAツールを活用することで、リピーター・一般顧客のセグメントをCRM上で明確に分けておき、配信対象を絞ることが可能です。
- リピーターセグメント上位プラン活用事例、導入効果が分かる具体的な数値付き事例
- 一般顧客セグメント基本機能の活用方法や、導入初期でつまずきやすいポイントの解説
このように、セグメントごとに届ける事例やコンテンツを切り替えて情報提供を行います。
またCRM/SFAツールで提供されていることの多いメールテンプレート機能を使えば、担当者名や会社名などを差し込んで配信を行うことができ、「一斉配信でありながら自分向けに感じられる」メールを作成することも可能になります。
離反リスク層向け施策
離反リスク層は、過去には一定の取引や利用実績があったものの、直近の接点や利用頻度が低下している顧客層です。
前回のセグメント分けでは、「離反顧客」としていましたが、施策を実行する場合には、できれば完全に離反する前の離反リスクが高まってきている段階で、フォロー施策を行う方が効果的でしょう。
離反リスク層は、何もアクションを起こさなければ、解約やサービスの乗り換えにつながる可能性が高まります。一方で、適切なタイミングで声をかけ、課題や不満を解消できれば、関係を立て直せるケースも少なくありません。
そのため提案などを急ぐよりも、関係が弱まりつつある兆しにいち早く気づき、適切なフォローを行う施策が重要になります。
- 離脱リスクを検知し、解約防止を目的としたオファーの提示ヒアリングの結果、サポート不足や活用面での課題が見えてきた場合には、サポート体制の強化、オンボーディングや活用支援の再実施、一時的な割引や条件調整など、解約を防ぐための現実的な打ち手を検討
最も重要なのは、単なる継続のお願いや安易な値引きを行うのではなく、顧客が再び価値を感じられる状態をつくることです。
CRMでの実装ポイント(最新受注日を起点にした離脱リスク検知)
SaaSやクラウドサービスを対象とした場合、ログイン頻度や機能利用状況といった詳細な利用データは、CRM/SFAツール単体で取得はできませんが、管理項目である契約や受注に紐づくデータを指標とし、一定期間を超えたらアラートを鳴らす、といった管理を行うことはできます。
例えば、以下のようにCRM/SFAツールを活用することができます。
- 次回の契約更新日を軸とする
- 次回の契約更新日を起点として、顧客をフォロー対象として扱う
- 次回の契約更新日の3か月前に担当者へアラート通知
- アラート通知を受けた担当者が顧客の利用状況を確認し、利用頻度が下がっているようであれば、順番にヒアリングやフォロータスクを実行
このような設定をしておくことで、「最近連絡が減っている気がする」や 「そろそろ危なそうな顧客を感覚で探す」といった個々の判断ではなく、客観的なデータに基づいて対象を洗い出して離脱リスクを防止するフォローを行うことができます。
キャンペーン管理によるロイヤル施策の管理
ロイヤルカスタマー向けの施策などの販促活動・マーケティング活動では、対象者を管理し、施策の実施状況や投資対効果を明らかにするのは簡単ではありません。
CRM/SFAツールではそのような機能を「キャンペーン管理機能」として提供していることが多く、今回はZoho CRMでのキャンペーンタブを利用した管理方法を解説していきます。
キャンペーンの作成
Zoho CRMでは一連の販促活動などを管理するタブとしてキャンペーンタブを利用します。
キャンペーンタブでは、キャンペーン名やキャンペーンが行われる期間、活動に必要なコストなどの計画時点の情報を登録し、対象者を登録した上で活動管理を行っていきます。
最初から用意されているキャンペーンの管理項目は以下のようになっています。
- キャンペーン名:一連の施策を表す名称
- 種類:展示会やメール、ユーザー会など自社が扱う施策の種類
- ステータス:施策が行われている状態
- 予算:施策の実施に必要なコストの予定
- 開始日:施策の開始日
- 終了日:施策の終了日
- 予想反応数:イベントなどの場合は参加予定者数など
- 実際の費用:実際に掛かったコストを終了時点で入力
- 売上の期待値:一覧の施策で上がる売上の予測数値を入力
- 送信数:メールキャンペーンやダイレクトメールなどの場合の送信済み数など
- 親キャンペーン:複数のキャンペーンをまとめて管理するための情報
例えば、ロイヤルカスタマー向けのWebセミナーを企画した場合には、以下のような情報を登録します。

キャンペーンメンバーの登録
キャンペーン情報を登録したら、次に行うのはキャンペーンの対象者の登録です。
キャンペーンには、「見込み客」や「連絡先」を施策の対象者として登録可能です。具体的な登録の操作手順については、以下の動画を参考としてください。

キャンペーンメンバーとして登録すると、キャンペーンステータスも同時に管理することが可能です。
最初から用意されているステータスは、以下のようなものですが、イベント管理を行う場合には、他に「参加」「不参加」なども追加しておくと、出欠管理などにも利用できます。

施策の実行と管理
施策の対象者まで明らかになったら、次は施策の実行です。
キャンペーンメンバーに登録された連絡先などには、キャンペーンタブからメールの一斉送信が可能です。
「連絡先」に対してメールを一斉送信する場合には、事前にメールテンプレートを用意して送信します。
メールの送信が終わったら、キャンペーンステータスを「送信済み」としておくことで、新たにキャンペーンメンバーとして追加された連絡先が出た場合に招待メールが送られていないことが一目でわかるように管理可能です。
施策終了後の投資対効果の検証
キャンペーンタブは、施策の終了後に実際に掛かったコストを入力し、施策から生まれた商談の金額などを集計する機能を持っています。

キャンペーンタブの画面では、必要な情報の入力やデータの紐づけを行えば、上記のように、
- 予算と実際にかかった費用の比較
- 売上の期待値と実際に受注した商談の金額の比較
などを一つの画面で行うことが可能です。
多くの組織では、さまざまな施策の実行が最後まで行われなかったり、実行はしても効果検証が行われず、惰性で施策を実施しているという状況が発生しがちです。
そのような状況を起こさないために、CRM/SFAツールによるロイヤルカスタマー施策の実施と効果検証を行うようにしましょう。
タスク・アラートの自動化による運用効率化
ロイヤル施策を継続的に実行するためには、担当者の「気づき待ち」ではなく、CRM/SFAツールからの自動通知やタスク生成により、行動が抜け漏れなく行われる仕組みが重要です。
タスクとアラート設計例
ここからは、CRM/SFAツールの活用例として挙げた、タスク管理とアラートの設定について、ZohoCRMを活用して実際に実行していきます。
受注日を起点として、契約更新のためのフォロー活動を行い際の設計イメージは以下の通りです。
- トリガー契約更新日の90日前(受注後の3ヶ月前)※1年契約の場合を想定
- アクション担当者に以下のようなタスクを自動作成
- タスクの例更新前ヒアリング、利用状況・成果の整理、次期プラン・追加提案の検討
この設計を実現するために、Zoho CRMでは「ワークフロー機能」を活用します。
ワークフローを使うことで、あらかじめ定めた条件を満たしたタイミングで、タスクの作成や通知といったアクションを自動で実行できます。
トリガー条件を設定する
まずは、いつタスクを発生させるのかというトリガー条件を設定します。
今回のケースでは、契約年数が1年であり、更新日の3ヶ月前のタイミングで、更新に向けたフォローを開始することを想定します。

上記の設定で、「受注日」を起点にした時間ベースの処理が可能になります。

この設定で、更新前のヒアリングを行うためのタスクを自動作成することができます。

詳細情報には、上記のようなチェック観点をあらかじめ記載しておくと、誰が対応しても一定品質のフォローが可能になります。

ここまでの例では、更新日を起点にすべての取引先に対して更新前フォロータスクを自動作成する設計を紹介しました。
施策の成果モニタリングと改善
各施策の実行後は、成果を定量的に把握し、次のアクションに反映できる状態を作ることが大事です。
CRM/SFAツールには、商談データや受注情報をもとに成果を可視化できる、レポートやダッシュボードといった機能が標準で備わっていますので、それらを活用して可視化し、改善につなげていきます。
ここでは、Zoho CRMの標準機能を前提に、具体的なレポート・ダッシュボードの活用例と運用の考え方を見ていきます。
売上推移の可視化例
ロイヤルカスタマー施策の成果を確認するうえで、まず押さえておきたいのが、売上がどう推移しているかです。
ロイヤルカスタマー施策の多くは、短期的な反応ではなく、中長期的な取引価値の最大化を目的としているため、時間をかけて売上に影響していくケースがほとんどです。そのため、売上推移を定点観測していきます。

上記のレポートでは、ロイヤルカスタマーである取引先に絞って、「完了予定日」の年月ごとに売上金額を集計ししています。
一定期間内に、どれくらいの金額が積み上がっているか、特定の取引先に売上が偏りすぎていないか、などを表形式で集計されたレポートして確認できます。
ZohoCRMでは、月次、四半期、半期といったさまざまな単位で、同じ条件・同じレポートを継続して集計・可視化し、業務改善につなげていくことが可能です。
