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リード育成の基本
まずは、リード育成の基本の考え方を整理し、その目的や重要性を確認した上で、どのように進めるべきかを見ていきます。
リード育成とは
リード育成(ナーチャリング)とは、リード管理のプロセスの一つで、リード(見込み客)が製品やサービスに関心を持ち始めた段階から、最終的に購買に至るまでの間に、信頼関係を築きながら購買へとつなげるために段階的に情報を提供するプロセスです。このプロセスでは、単にリード数を増やすことが目的ではなく、購買意欲の高いリードを育成し、営業部門へ引き渡して商談の機会の創出や契約につなげることを目的としています。
BtoBでは、製品やサービスの購入にあたって情報収集、比較検討、社内稟議など複数のステップが必要で、1人の担当者だけでなく、経営層、現場担当者、IT部門や法務部門など複数の関係者が意思決定に関わります。そのため検討期間が長期化しやすく、定期的にフォローや情報提供を行う必要があります。リード育成では、リードの状態や行動に応じた情報提供を意識して行うため、特に、リード育成はBtoBマーケティングで重要視される概念となっています。
リード育成は「質」を重視するプロセス
リード育成では、単にリードとの接触回数を増やすことよりも、リードの質を高めることを重視します。質の高いリードとは、製品やサービスについて積極的に情報を集めている、問い合わせや資料請求など具体的な行動を取っているリードです。こうしたリードを、より多く育成し営業部門へ引き渡すことができれば、より多くの商談の機会を創出することができます。
質を高めていくには、リードの行動履歴や属性情報を分析し、リードの関心度や購買意欲に応じて、リードが本当に求めている情報を提供していくアプローチが必要になります。例えば、以下の2つのケースを考えてみましょう。
- A社は、リードに対して定期的にメールを送り続けているが、リードの興味や行動を考慮せず、一方的に情報を提供している。
- B社は、リードの行動履歴をもとに、関心がありそうなコンテンツを選定し、最適なタイミングでメールを送っている。
どちらの方が商談につながる可能性が高いでしょうか。当然、B社のようにリードの興味に応じた情報を提供する方が、成果につながりやすくなります。
質の高いリードを育成するためには、上記のように、リードの関心度や行動に応じた最適なアプローチが求められます。その中でも、特に重要なのが「タイミング」と「適切な情報提供」です。次に、この2つの要素がなぜリード育成において重要なのかを具体的に見ていきます。
リード育成のポイントは「タイミング」と「適切な情報提供」
リード育成において重要な要素の一つが、「タイミング」と「適切な情報提供」です。例えば、製品に興味を持ち始めたばかりのリードには、すぐに商談の機会を求めて積極的に営業を行うのではなく、まずは製品がどのような課題を解決できるのかという情報を提供したり、製品の業界内での立ち位置を紹介したり、まずリードが「知りたいであろう」情報をタイミングを見計らいながら提供し、製品への関心を深めてもらいます。
しかし、購買意欲が高まりつつあるリードには対応を変えます。実際の製品の導入事例の紹介、競合製品と比較表、さらには無料デモや個別相談の案内など、営業担当者が直接リードと会話を行い、購買判断を後押しするために、適切な情報提供とサポートをすると良いでしょう。
このように、リード育成では「誰に」「どのタイミングで」「どのような情報を届けるか」を戦略的に考えることがポイントとなります。
リード育成の段階
リード育成を進めるには、リードを段階的に分類し、それぞれの状態に応じたアプローチを行うことが重要です。リードは一般的に「初期段階(コールドリード)」「中間段階(ウォームリード)」「最終段階(ホットリード)」の3つの段階に分けられます。ここでは、それぞれの段階の特徴と適切なアプローチについて見ていきます。
1:初期段階(コールドリード)
初期段階にあるコールドリードは、まだ自社の製品やサービスを認知していない、もしくは関心が薄い状態のリードです。この段階のリードは、情報収集を始めたばかりであり、具体的な購買検討には至っていません。自身の課題やニーズを明確に認識していない傾向が強く、解決策を探している段階には至っていないことが特徴です。
この段階では、「製品・サービスを認知してもらい、興味を持たせること:が育成のポイントです。リードが潜在的な課題に気づき、興味を持てるようなコンテンツを活用しましょう。強引な営業ではなく、自然に価値を理解してもらえる環境を整えることが重要です。
2:中間段階(ウォームリード)
中間段階にあるウォームリードは、自社の製品やサービスに興味を持ち始め、自身の課題やニーズを認識し始めた状態のリードです。ただし、購入にはまだ至っておらず、複数の選択肢を比較しながら検討段階にある場合が多いです。
この段階では、「自社の製品・サービスの強みを理解してもらうこと」が育成のポイントとなります。リードに製品の活用事例や課題解決の役立つコンテンツを提供し、自社を有力な候補として意識してもらうことを目指します。また、個別のニーズに応じた対応を行いながら、定期的にメール配信やフォローアップを実施し、リードとの信頼関係を深めることが重要です。
3:最終段階(ホットリード)
最終段階のホットリードは、すでに自社の製品やサービスに強い関心を持ち、購入や契約の検討段階に入っているリードです。この段階のリードは、予算や導入スケジュールについて検討しているほか、意思決定者への説明資料や社内稟議用の情報を必要としている可能性が高いです。そのため、「意思決定を後押し、最終的な契約につなげること」が重要になります。リードは、導入の具体的な条件や価格、サポート体制などを重視する傾向にあるため、必要な情報を適切に提供し、意思決定をスムーズに進められる環境を整えることが求められます。
ではリードの段階に応じた適切な情報提供を行うには、どのような手段を活用すればよいのでしょうか。
リード育成におけるメールの重要性
リードの育成では、リードの状態に応じた適切なアプローチが必要ですが、その中でも特に有効な手段が「メール」です。メールはリードとの直接コミュニケーションが取れる手段であり、「ステップメール」や「シナリオメール」を活用することで、配信するタイミングやコンテンツを調整でき、リードの行動や属性に応じた情報をパーソナライズした内容を届けることができます。
また、メールは、開封率、クリック率、読了率などのデータを計測でき、データに基づいて改善しやすい点も特徴であり、データを分析・活用することで、改善を行いやすいです。リードを育成は、狙った通りに進めることは難しく、結果を分析して、検証して、改善を加えながら実行していくものです。
メールを効果的に活用することで、リードごとの関心や行動に合わせた情報提供が可能になり、より確実に購買意欲を高めることができます。
メールを使ったリード育成の基本ステップ
メールは、リード育成において非常に有効なツールです。しかし、うまく活用するためには、リード育成の適切なステップを理解し、実行することが重要です。ここからは、メールを活用したリード育成の基本ステップを具体的に見ていきます。
ステップ1: リードをセグメント化する
まず最初に行うべきは、リードを適切に分類する「セグメント化」です。セグメント化とは、リードをそれぞれの特性や行動に基づいてグループ分けすることを指します。
セグメント化の例:
- 業界別:製造業、IT業界など、リードの所属業界ごと
- 行動履歴別:資料請求をした、セミナーに参加したなど、リードが取った行動ごと
- 購買意欲別:興味が薄い「コールドリード」、関心が高まりつつある「ウォームリード」、購入に近い「ホットリード」といった購買意欲ごと
- 役職別:経営者、現場担当者
特にBtoBでは、役職ごとに抱える課題や関心が異なる傾向にあるため、それぞれの立場に合ったコンテンツを準備し、アプローチを行う必要があります。例えば、経営層は、会社全体の利益や成長を重視しているため、「コスト削減」「売上アップ」「投資効果の向上」といったビジネス成果に関する情報が響きます。一方、現場担当者は、日々の業務をスムーズに進めることに関心があるため、「操作のしやすさ」「導入後の使いやすさ」など、具体的な業務改善につながる情報を提供します。
このように、リードの状況や特性を把握してリードを細かくセグメント化することで、リードごとに最適な情報が届けられるため、リードの育成がスムーズに進むようになります。
ステップ2: リードの行動に基づくトリガメールを設定する
次に行うのは、リードの行動をきっかけに自動で配信する「トリガーメール」の設定です。トリガーメールは、リードが「資料ダウンロード」「問い合わせ」「ウェビナー参加」など特定のアクションを起こしたタイミングで、自動でメール配信できる仕組みのため、リードが関心を持った瞬間に関連性の高い情報を提供することができるようになります。
トリガーメールの具体例
- 資料ダウンロード後:ダウンロードした内容を深掘りする情報や、次のアクションを促すフォローアップメール
- ウェビナー参加後:ウェビナーで取り上げたトピックに関連する資料や事例を紹介するメール
- サービスページ閲覧後:閲覧したサービスや商品に関連する成功事例やデモ動画の案内メール
上記のように、行動に合わせてトリガーメールを適切なタイミングで送信することで、リードの関心を持続させ、次のアクションへとスムーズに誘導できます。
ステップ3: メールの開封率・クリック率を分析し改善する
メールを送信したら、配信後に結果を分析し、内容を改善していくことも必要です。特に、開封率やクリック率といった指標を確認することで、メールの件名やコンテンツ、配信のタイミングが効果的だったかを評価できます。
件名はメールの開封率に影響を与える要素のため、ABテストを行いながら、異なる件名の効果を比較し、最も反応が良いものへと改善します。
メール内のコンテンツもリードの興味に応じた内容に調整します。クリック率が低ければリードにとって価値のあるコンテンツを提供できるかを検討しましょう。CTAボタンの配置やメッセージの簡潔さも、クリック率を高めるポイントになります。
配信タイミングは、業界やターゲット層によって最適なタイミングは異なるため、テストを重ねて最適な時間帯を見つけることが重要です。リードがメールを確認しやすい時間帯をテストし、どの時間が開封率やクリック率が高いかを検証します。
ここまでのレッスンでは、リード育成の基本的な考え方や重要性、そしてリードの段階ごとに適切なアプローチを行うポイントについて学びました。特に、「質を重視したリード育成」や「タイミングと適切な情報提供」の重要性について理解できたことでしょう。次のレッスンでは、メールを活用した具体的なリード育成の方法について掘り下げていきます。