休眠顧客の掘り起こし戦略を立てよう

休眠顧客を特定できたら、次に考えるべきなのは「どのように掘り起こすか」です。ただ休眠顧客へ連絡をするだけでは、相手に響かないことが多く、期待した成果が得られないこともあります。このレッスンでは、休眠顧客を掘り起こす戦略の立て方を学びます。目的に応じたゴールの設定から始まり、優先的にアプローチする顧客の選定、最適なアプローチ方法の検討、そして顧客の購入履歴や行動履歴の活用方法まで、体系的に学んでいきます。

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休眠顧客の掘り起こし戦略を立てよう
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休眠顧客の掘り起こし施策を考える

休眠顧客を掘り起こすためには、やみくもにアプローチするのではなく、「どの顧客に、どのような施策を、どんな目的で行うのか」をしっかり設計する必要があります。

レッスン2では、休眠顧客を特定し、データを整理・分析してグループ分けする方法を学びました。このレッスンでは、それを基に具体的な施策を考え、どのように掘り起こすかを決めていきます。施策を立てるには、まず掘り起こしの目的を明確にした上で、優先順位を設定し、適切な施策を決定する必要があります。

施策の目的を考える

休眠顧客の掘り起こし施策を実施する前に、まず「なぜ掘り起こしを行うのか?」という目的を明確にします。目的が曖昧なままでは、適切な施策を選ぶことができず、成果にもつながりにくくなります。「過去の顧客に再購入してもらうこと」を目的とするのか、「商談につなげること」を目的とするのかによって、アプローチ方法は大きく変わってきます。

具体的にどの成果を目指すのか

目的が決まったら、「どのような成果を目指すのか?」という具体的なゴールを数値で設定します。数値で目標を明確にすることで、施策の方向性が定まるだけではなく、施策を実施した後にその成果を客観的に評価できます。

例えば、「再購入を促す」ことが目的の場合、「休眠顧客の10%が再購入する」という具体的なゴールを設定すると、施策の効果を判断しやすくなります。ゴールを設定しないまま施策を実施すると、施策がうまくいっているのか、どこかでつまずいているのかの判断が難しくなり、改善の方向性も見えづらくなります。そのため、ゴールは数値を用いて設定し、施策の成果を定量的に評価できるようにしましょう。

ゴールを設定する際のポイント

  • 目標は短期的な成果(例:1ヶ月で○件の問い合わせ増)だけでなく、中長期的な視点も考慮することが重要です。すぐに成約に結びつかない場合でも、「問い合わせ数」や「商談数」の増加が見られれば、次の施策に活かすことができます。
  • 休眠顧客の掘り起こしは一度の施策で完結するものではなく、段階的に進めるものであるため、施策ごとに適切なKPIを設定しましょう。

具体的な目標設定の例

施策の種類によって、ゴールの設定は異なります。以下に、休眠顧客の掘り起こし施策で設定しやすいゴールの例を示します。

施策の目的

具体的なゴールの例

再購入を促す

休眠顧客の10%が再購入する

問い合わせを増やす

施策実施後1ヶ月で、休眠顧客からの問い合わせ数を20件増やす

商談数を増やす

営業部門が休眠顧客との商談を30件設定する

メールの反応率を向上させる

ステップメールの開封率を15%以上にする

ウェビナーやイベントへの参加を促す

休眠顧客100人を対象に案内し、30人が参加する

無料トライアルの申し込みを増やす

休眠顧客のうち5%が無料トライアルに申し込む

達成したいゴールを設定したら、次はどのように施策を進めるべきかを整理していきます。

優先順位を決め、対象顧客を選定する

休眠顧客を掘り起こし施策を実施する際、次に重要なのは「どの顧客に優先的にアプローチするか」を見極めることです。

そのためには、まずは休眠顧客を分類し、優先順位を設定しましょう。優先順位を決める際には、以下の要素を考慮し、それぞれの指標に基づいて評価を行います。

分類項目

優先度の決め方

取引履歴

取引金額が大きい、または過去に継続的に取引があった顧客を優先

行動履歴

最近のメール開封、Web訪問、資料ダウンロードなどのアクションがある顧客を優先

営業履歴

直近の商談で前向きな反応を示していた顧客を優先

企業属性

業種・企業規模が自社のターゲットに適している顧客を優先

優先度を決める具体的な基準

4つの評価軸をもとに顧客を分析し、最終的に優先度リストを作成します。単一の指標に頼るのではなく、複数の要素を組み合わせることで、より精度の高い優先順位設定が可能になります。

1. 取引履歴を基にした優先度設定

まず、過去の取引履歴を分析し、取引頻度や金額の変化を確認します。取引実績が大きい顧客ほど、再取引の影響も大きいため、優先的にアプローチするべき対象となります。

  • 年間の取引金額が高い顧客
    例:過去1年間で500万円以上の取引があった企業
    → 影響度が大きいため、優先度を高める要因となる
  • 定期的な取引があった顧客
    例:過去に毎月発注があったが、6ヶ月以上取引がない企業
    → 過去の関係性が強いため、再購入の可能性が高いと判断できる

2. 行動履歴を基にした優先度設定

休眠顧客の中には、取引は途絶えているものの、自社の情報を収集している顧客もいます。こうした顧客は、購入意欲が再び高まる可能性があるため、優先的にアプローチしましょう。

  • 最近のメール開封やWebサイト訪問履歴がある顧客
    例:直近6ヶ月以内に製品ページを複数回閲覧した企業
    → 興味を示している可能性があるため、優先度を高める要因となる
  • 資料ダウンロードを行った顧客
    例:比較資料や導入事例をダウンロードした企業
    → 具体的な検討段階にある可能性が高い

3. 営業履歴を基にした優先度設定

営業履歴を確認することで、過去の商談や問い合わせ対応の履歴から、顧客の関心度を把握できます。

  • 過去の商談で前向きな反応があった顧客
    例:「予算の都合で導入を見送ったが、今後検討したい」と言っていた企業
    → 状況が変われば再検討の可能性があるため、優先度を高める要因となる
  • 過去に競合製品に乗り換えた顧客
    例:「機能が不足している」として競合に移った企業
    → 自社の新機能追加や改善ポイントを訴求することで、再検討を促せる可能性あり

4. 企業属性を基にした優先度設定

顧客の業種や企業規模も、優先順位の判断材料になります。

  • 自社のターゲット市場と合致している顧客
    例:自社がターゲットとする業種・企業規模の企業
    → もともと親和性が高いため、掘り起こしの優先度を上げる要因となる

優先順位を設定したら、具体的なリストを作成する

評価軸をもとに、アプローチ対象の優先順位を設定したら、最終的に複数の要素を組み合わせた優先度リストを作成します。このリストを基に、次の施策(掘り起こし施策の設計)を行います。

リストを作成する際は、「最終取引日」、「年間取引金額」、「最近の行動履歴」を整理し、それを基に優先度(高・中・低)に分類しましょう。

対象リストの例

顧客名

最終取引日

年間取引金額

最近の行動履歴

優先度

A社

1年前

800万

メール開封・価格表ダウンロード

B社

6ヶ月前

500万

なし

C社

2年前

300万

製品ページを3回閲覧

D社

3年前

200万

なし

このように、複数の評価ポイントを組み合わせることで、どの顧客にどのような施策を実施すべきかが明確になります。

掘り起こし施策を設計する

休眠顧客の優先順位を決めたら、次に考えるべきは「どのような手法でアプローチするか」です。「顧客の状態」「施策の目的」「提供する情報」「アプローチのタイミング」の4つのポイントを考慮しながら設計を進めましょう。

① 顧客の状態に応じたアプローチ

休眠顧客の状態によって、適切なアプローチ方法は異なります。

顧客が休眠に至った理由を考慮し、それに合わせた施策を設計することがポイントとなります。下記が顧客の状態に合わせた、適切な施策の例になります。

顧客の状態

適切な施策の例

購買意欲がまだ残っている可能性がある顧客

製品の最新情報や事例を提供し、関心を引き出す

過去に予算の都合で見送った顧客

投資対効果を示した提案や価格以外の価値を提案

競合製品に乗り換えた顧客

自社の新機能・改善点を訴求し、再検討を促す

サポートに不満を感じて離れた顧客

支援体制の見直しと強化策を提示

このように、整理すると、顧客が休眠した背景に応じてどのアプローチが適切かがわかりやすくなります。さらに、施策の目的を明確にすることで、提供すべき適切な情報は何かが見えてきます。

②施策の目的に合わせた情報を提供する

休眠顧客の状態に応じたアプローチを決めたら、次に「どのような目的で、どんな情報を提供するか」を整理します。「顧客の状態」によって適切なアプローチが異なるように、「施策の目的」によって提供すべき情報も異なります。

そのため、「顧客の状態」と「施策の目的」を組み合わせ、最適な情報を届けることが重要です。

施策の目的

提供する情報の例

製品の価値を再認識してもらう

新機能の紹介・活用事例・導入企業の成功事例

購入意欲を高める

無料トライアル・デモ環境の提供

競合との差別化を図る

自社の強み・競合比較をまとめたデータ

不安を解消する

個別相談会

例えば、

  • 「過去に予算の都合で見送った顧客」に再購入を促したい場合 → 「投資対効果を示すデータ」や「無料トライアルの提供」を組み合わせる
  • 「競合製品に乗り換えた顧客」に自社の強みを再認識してもらいたい場合 → 「自社の新機能を訴求する情報」を提供する

など、顧客の状態に合わせて、施策の目的と情報提供の内容を組み合わせることが重要になります。

③ タイミングを考慮する

休眠顧客へのアプローチは、タイミングも重要になってきます。顧客の購入サイクルに合わせて、決算期前後や業界の繁忙期・閑散期を考慮して施策を打ちましょう。

タイミング

施策の例

決算期前

無料トライアルやデモ環境の提案を踏めた導入プランを提案

新年度・期初

予算が確保されやすい時期に新しい提案を実施

業界の繁忙期

業務の効率化や売上アップにつながる活用例を含めた提案を実施

業界の閑散期

じっくり検討できるよう、個別相談会や無料トライアルを提供

「どの顧客に、どの目的で、どんな情報を提供するのか」を決めたら、適切なタイミングで実施していきましょう。ただし、提供する情報が顧客にとって興味を引くものでなければ、アプローチの効果は期待できません。そのためにも、休眠顧客が関心を持ちやすいコンテンツを見極めていく必要があります。

休眠顧客が今、求めているコンテンツを見極める

休眠顧客に再び関心を持ってもらうには、「どのような情報を提供すれば、関心を引きやすいのか?」を考えることが重要です。そのためには、顧客の関心やニーズを分析し、それに合わせたコンテンツを準備する必要があります。

購入履歴や行動履歴を活用する

過去の購入履歴や行動履歴を分析すると、休眠顧客がどのような製品やサービスを利用していたのか、また現在どのような関心を持っているかを把握できます。「なぜこの情報が必要なのか」を理解した上で情報を提供する方が、顧客の関心を引きやすくなります。

購入履歴を分析することで、以前に購入した製品やサービスの種類、購入時期や導入タイミング、過去にアップグレードを検討したか、また実施したかの履歴など確認でき、休眠顧客が過去に購入した製品やサービスと相性の良い新機能やアップグレード版を提案することもできます。

一方、行動履歴を分析すると、過去の行動履歴だけではなく、直近でページにアクセスしている場合、直近でどのような関心を持っているかも把握できます。

過去に「価格がネックで導入を見送った顧客」が最近「料金プラン」のページを何度も閲覧している場合、コスト面の懸念が解消されつつある可能性があり、再アプローチの好機となるかもしれません。

また、競合製品に切り替えた顧客が「導入支援サービス」について調べていた場合、移行後のサポート不足に悩んでいる可能性があり、自社のカスタマーサポートの強みを訴求するアプローチが有効になるかもしれません。

このように、購入履歴と行動履歴の両方を活用することで、顧客の過去の取引状況だけでなく、現在の関心や課題を踏まえた、有益な情報を提供できるようになります。

提供するコンテンツを整理する

コンテンツを選定する際は、「どのような情報を提供すれば、関心を引きやすいのか?」を考えることも重要です。顧客ごとに関心のある情報が異なるため、過去の購入履歴や行動履歴をもとに、顧客が興味を持ちやすいコンテンツを選び、適切な形で提供しましょう。

コンテンツの種類

概要

活用ポイント

市場調査レポート

最新の業界動向や市場の変化をまとめたレポートを提供し、顧客の関心を引きつける。

自社の製品やサービスが市場のトレンドにどう対応しているかを示し、導入の必要性を訴求する。

ホワイトペーパー

特定の課題について詳しく解説した資料を提供し、製品の魅力を再確認してもらう。

休眠顧客が抱える課題に焦点を当て、「今導入すべき理由」を提示する

導入事例・ケーススタディ

他社の導入成功事例を紹介し、製品・サービスの有用性を具体的に示す。

競合に乗り換えた顧客や導入を見送った顧客へ、再検討のきっかけを作る

製品・サービスのアップデート情報

既存製品の改良点や新機能を紹介し、休眠顧客の関心を引く。

「以前は○○ができなかったが、今は改善された」と伝え、再検討を促す

ブログ記事

製品の活用方法や業務効率化のノウハウを解説し、顧客に価値を提供する。

休眠顧客の関心があるテーマに沿った記事で、再アプローチの入口を作る

ウェビナー

オンラインセミナーを通じて、新製品や業界動向を紹介し、顧客の興味を引く。

比較的関心の高い休眠顧客向けに「導入のきっかけ」として活用

無料トライアル

実際に製品を試用してもらい、導入のメリットを実感してもらう。

「試しに使ってみる」ことで導入ハードルを下げる(特にSaaSなどで有効)

価格比較表

自社製品と競合製品のコスト比較

「価格面が原因で離れた顧客」に対し、費用対効果を再提示する

メルマガ

定期的な情報提供を行い、顧客との関係を維持する。

長期的なナーチャリングが必要な休眠顧客向け

優先度に応じたアプローチスケジュールを決める

休眠顧客を掘り起こすためには、1回のアプローチで終わらせるのではなく、適切なタイミングでフォローアップを行うことが重要です。特に、顧客の優先度ごとにアプローチの頻度や内容を調整することで、よりスムーズなコミュニケーションができます。

フェーズ1:初回アプローチ

1回のアプローチで反応が得られないことは珍しくありません。そのため、段階的に接触しながら、顧客の関心を引き出す必要があります。フェーズ1ではまず関心の有無を確認し、フェーズ2でさらに関心を高め、フェーズ3で最終的な判断を促します。

  • 高優先度の顧客
    →直接フォローを行い、商談機会を作る
    例:「〇〇様、以前ご購入いただいた製品ですが、新しいバージョンが登場しました。今すぐご案内できますので、ぜひご確認ください。」
  • 中優先度の顧客
    → 近況を尋ねるメールを送付し、状況を確認
    例:「〇〇様、最近〇〇製品をご利用いただいていませんが、お困りのことはありませんか?」
  • 低優先度の顧客
    → 営業感をあまり出さずに連絡をする(アンケート案内など)
    例:「〇〇様、過去に当社の製品をご利用いただきありがとうございます。現在の状況に関して簡単なアンケートにご協力いただければと思います。」

フェーズ2: 1週間後(フォローアップ)

最初のアプローチを行った後、返答の有無を確認し、次のステップを決めます。

1回で反応がなかった場合でも、適切なタイミングで再アプローチを行うことが重要です。

  • 高優先度の顧客
    → 返答がない場合は、別の担当者からフォローを行う。
    例:「〇〇様、ご案内した内容について、その後いかがでしょうか?少しでもご興味があれば、お打ち合わせの機会をいただければと思います。」
  • 中優先度の顧客
    → 導入事例や活用事例を紹介し、導入メリットを再提示
    例:「〇〇様、同業他社の〇〇社様が当社の製品を導入し、業務効率を〇%向上させた事例がございます。詳細をお送りしますので、ぜひご確認ください。」
  • 低優先度の顧客
    → さらに軽いリマインドメールを送る
    例:「〇〇様、以前の製品について、ご不明点などございませんか?また新たにご利用いただける機会があれば、お手伝いできればと思います。」

フェーズ3:さらに2週間後(最終アプローチ)

2回目のアプローチ後も反応がなかった場合、最終的な提案を行い、それでも反応がなければ長期的なナーチャリングに切り替えます。

  • 高優先度の顧客
    → 事業課題を解決する具体的な提案を実施
    例:「〇〇様、現在の市場環境において、貴社の〇〇部門での業務効率化が課題になっているかと存じます。当社の〇〇ソリューションを活用することで、年間〇%のコスト削減が可能です。詳しい資料をお送りしますので、ご興味があればぜひご確認ください。」
  • 中優先度の顧客
    → アンケートを送付し、関心の有無を確認する
    例:「〇〇様、今後のご提案の参考にしたいため、簡単なアンケートにご協力いただけますでしょうか?」
  • 低優先度の顧客
    → 反応がない場合は、リストを再評価し、長期間を見据えたナーチャリングへ移行し、「3ヶ月後に再アプローチする」「定期的な情報提供を継続する」などアクションを決めておきます。
    例:「〇〇様、もしまた機会がございましたら、ぜひご相談ください。今後も役立つ情報を定期的にお届けいたします。」

次のレッスンでは、選定したコンテンツをどのようなチャネルを活用して届けていくのかについて学びます。