PDCAサイクルの実践。営業・経理・マーケ・CS・採用・生産管理の具体例
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルは、「Plan」(計画の立案)、「Do」(計画の実行)、「Check」(成果の評価)、「Action(もしくはAct)」(改善)で構成する仮説検証のフレームワークです。問題の改善点を特定し、継続的にPDCAサイクルを回すとともに、KPI(重要業績評価指標)を達成することで、最終的に企業が定めた経営計画目標や業績を達成できるという仕組みです。

PDCAサイクルの歴史と日本との関係
PDCAサイクルは、1950年代に「品質管理の父」として知られる米国人研究者ウィリアム・E・デミング博士が提唱しました。当時は製品品質を改善する手法として用いられていましたが、現在では品質管理の国際基準(例:ISO14001、ISO9001)をはじめ、企業における業務の改善や教育現場における学習意欲の向上など、さまざまなシーンで活用されています。
PDCAは、日本と深い関係があります。デミング氏は戦後直後、GHQ(占領軍総本部)の統計調査コンサルタントとして来日していました。1950年に、日本科学技術連盟(日科技連)の招待で再来日したデミング氏は、経営者や管理者向けの講演会で、米国人統計学者ウォルター・シューハート氏が提唱した理論を参考にPDCAサイクルを紹介しました。日本の製造業に大きな影響を与えたといわれています。
PDCAサイクルの4つのステップ
ここでは、PDCAサイクルを構成する4つのステップについて、それぞれ詳しく説明します。
Plan「計画の立案」
このステップでは「何をどのように達成するか」を決めるのが、主題となります。目標を設定し、達成に向けた行動計画を立案します。「どのように目標を設定したらいいか分からない」という場合は、「Specific」(具体的な)、「 Measurable」(計測可能な)、「Achievable」(達成可能な)「 Relevant」(関連性のある) 、「Time-bound」(期限が明確な)などで5基準で目標達成を目指す「SMARTの法則」を用いると、情報が整理されて的確な目標を設定しやすくなるでしょう。
PDCAサイクルで課題を洗い出して行動計画を立てる時は、英語学習で有名な「5W1H」に、How muchを組み合わせた「5W2H」が役に立ちます。5W2Hは以下の通りです。
◯5W2H
- Who:誰が
- What:何を
- Where:どこで
- When:いつ
- Why:なぜ
- How:どのように
- How much:いくらで
これら5W2Hを用いて情報を整理することで、やるべきことが明確になるため、具体的な行動計画の作成につながるでしょう。
Do 「計画の実行」
Plan(計画の立案)を実行に移すステップです。この「Do」(実行)には、決めたことを実践するとともに、「検証する」という意味も含まれます。そのため、このステップでは実行の過程や成果を記録することも重要な作業です。行動した時に感じたことや、新たに発生した課題についても、記録として漏れなく残しておくと、次のステップである「Check」(成果の分析)が容易になります。
検証を意識せずに実行してしまうことや、実行途中でプランを変更することは避けましょう。
Check 「成果の評価」
Do(実行)の内容をフィードバックし、Plan(計画の立案)を評価するのが、このステップにおける重要な作業となります。評価を適切に行うことで改善点が見つかりやすくなり、次の「Action」(改善)のステップでの判断を見誤ることが少なくなるでしょう。
Check(成果の評価)で確認するのは、以下の項目です。
- Planで決めた数値目標を達成したか
- Plan で定めた行動計画に沿って行動したか
- 改善点はあるか
達成できたかどうかの確認で終わらせず、その結果にたどり着いた理由や、改善点まで考えるようにして、次の「Action」(改善)に活かすことが求められらます。
Action「改善」
Check(成果の評価)で下した評価をもとに、次の行動を決めます。このステップでは、以下のいずれかを選択する場合が大半とされています。
- 引き続きPDCAサイクルを回して様子を見る
- 計画を修正して再度PDCAを回す
- 計画を中止する
例えば「目標を達成できなかったものの、何を改善したらいいか分からない」という場合は、同じ条件でPDCAサイクルを回すのは避け、再度Plan(計画の立案)を見直し、目標設定や行動計画、実行過程に問題がなかったかを確認しましょう。
経理部門におけるPDCAの具体例
「営業目標を達成したい」「業務効率化を達成したい」「新プロジェクトの管理方法を評価したい」「製品設計のプロセスを最適化したい」「業務の改善点を特定したい」──。PDCAサイクルは、これらのように達成したい目標と検証方法が決まっていれば、どのような課題の解決にも応用可能です。
例えば、社内の経理部でペーパーレス化を推進するという課題を抱えていたとしましょう。
その場合は、以下のようにPDCAサイクルを設定できます。
- 目標:経理部内で3か月以内に紙の使用量を40%減らす
- 課題:交通費の経費申請で紙への依存度が高く、紙の消費量が多い
- 仮説:交通費の申請にSaaS型の精算システムを導入することで紙の使用量を抑制できるのではないか
◯Plan(計画の立案)
- 経費精算システムを導入(無料トライアル)
◯Do(計画の実行)
- 交通費申請や受領で使用していた専用用紙を廃止し、原則電子化
- 交通費の申請だけでなく承認フローも電子化
◯Check(成果の評価)
- 電子化によって、交通費申請での紙使用量はほぼゼロに
- 「交通費精算の方法が分からない」という社員が一定数出て対応に追われた
- システムの操作に慣れずに手間取ることがあった
- 交通費だけでは目標未達だったため、ペーパーレス化の対象を交通費以外にも拡充する必要あり
◯Action(改善)
- 交通費申請のマニュアル化
- ペーパーレス化に関する経理部内でのルール作成
- 社内だけでなく、取引先など社外にもペーパーレス対応をしてもらう必要がある
- 請求書発行システムも導入する(無料トライアル)
PDCAサイクルのメリット
PDCAサイクルの実践で得られるとされるメリットについて、以下にご紹介します。
やるべきことが明確になり、効率よく業務を進められる
PDCAサイクルは、Plan(計画の立案)の段階で、目標達成に向けた計画を立てます。「いつまでに」「誰が」「何をすべきか」が明確になるためで、行動に迷わず、効率よく業務を進められる、というメリットがあります。
改善点が見つかりやすい
PDCAサイクルでは、Plan(計画の立案)で仮説を行動計画に落とし込み、Check(成果の評価)の段階でプロセスや成果を記録します。これは現在のやり方の改善点を最短で見つけられるともいえるでしょう。正しく記録できていれば、たとえ問題が生じたとしても改善点が見つかりやすくなるでしょう。
PDCAサイクルのデメリット
PDCAサイクルには、メリットだけでなくデメリットもあります。以下に主なデメリットをご紹介します。
途中で変更しにくい
PDCAサイクルは、基本的に計画から改善までを一つのサイクルとして回します。そのため、サイクル途中で変更できないなど不便な点があります。特に前提となる目標設定と行動計画に問題がある場合は、無駄な時間を使うことになるでしょう。
手段が目的に変わる可能性がある
PDCAサイクルを回す際は、あらかじめ決めたことを決めた通りに実践します。どの作業よりもPDCAサイクルを優先した場合、それ自体が目的にすり替わってしまうリスクが高まるでしょう。確かにスケジュール通りに進めることは大切ですが、PDCAサイクルの実践はあくまでも手段です。ゴールは別にあることを忘れてしまうと、実践できたか否かが判断基準となってしまい、PDCAサイクル本来の役割を果たすことが難しくなるでしょう。
イノベーションが起こりにくい
イノベーションとは、これまでにない新たな価値を生み出すことによって市場に変化を起こすことです。イノベーションが起こる要素には、消費者のニーズや世論の変化、予想外のイベントなどがありますが、これらはPDCAサイクルがベースとしている要素(過去のデータや評価など)とは反対のものばかりです。つまり、PDCAサイクルばかりに頼ると、クリエイティブな発想をする機会を得にくいというデメリットが強くなります。
営業におけるPDCA活用の具体例
Plan「営業計画の立案」
「営業計画の立案」でまず、達成すべき目標を掲げます。数値で検証できる必要があり、営業の場合は「売上」であることが多いでしょう。さらに、その目標を左右する以下のようなKPI(重要業績評価指標)を定めます。
- 架電数
- 訪問数
- 有効商談件数
例えば、「得意先に対して新製品の提案を行う」という営業計画を練る際は、
計画に対し「アプローチ数」、「商談数」、「受注数」などの指標を設定します。過去の商談化率や受注実績を参考に、売上目標から逆算した数値を設定し、計画の質を高めましょう。
Do 「営業計画の実行」
「Plan(計画)」に沿って実行します。「何を」「いつまでに」「どれだけ」という要素を具体的にします。例は以下の通りです。問い合わせや引き合いに伴い、状況は日々変化します。成果を分析できるように数値で記録するようにしましょう。
- 担当の得意先10件に対して1カ月で全てアプローチする
- 成立した商談数、受注数を1カ月間記録する
Check 「成果の分析」
計画に対してどの程度の成果が得られたのかを計測します。KPIを複数設定していた場合、アプローチ数、商談数、受注数はどこが足りていてどこが足りていなかったのか事実をまず可視化します。
さらに、当初の計画と比べて商談化率や受注率が上回ったのか下回ったのか、その原因は何なのか次のステップへの仮説となるようなレポートにまとめます。
部署全体はもちろん、営業担当者の成績も可視化することで、再現性の有無も判断します。
Action「改善案の作成」
分析を基に改善案を作成します。この改善案は「定量的数値」と、「具体的な改善内容」を含めて作成する必要があります。たとえば、アプローチ数を達成したにもかかわらず商談数が目標に達しなかった場合、アプローチの絶対数を増やすか商談化率を上げるかの二択です。その場合、次のサイクルで検証できるようにするため、具体的な数値の入った改善案にすることが必要です。
- アプローチできる絶対数○件から20%を増やすために、営業部員のリソースを月5時間確保できるよう業務の自動化を図る
- 商談化率を○%から10%上げるために成果の高い担当者のトークとさらなる改善案を2パターン作成して展開し検証する
マーケティングにおけるPDCA活用の具体例
コンテンツマーケティングのリード獲得施策にPDCAサイクルを適用した例です。3ヶ月単位でサイクルを回し、施策の改善を繰り返します。
課題:ホワイトペーパーのダウンロード数が月20件で停滞しており、目標の月50件に届かない。
ステップ | 内容 |
Plan | 3ヶ月以内にホワイトペーパーDL数を月20件→月50件に引き上げる。施策:①ターゲットKWを再選定し、SEO記事を月5本公開 ②既存記事にCTAバナーを設置(上位20記事に設置) ③SNS広告でホワイトペーパーの認知を拡大(月額15万円、Facebook/Linkedinに配分) |
Do | 月5本のSEO記事を公開。20記事にCTAバナーを設置。SNS広告を3パターンのクリエイティブでA/Bテスト実施。広告経由のランディングページも2パターンをテスト |
Check | 1ヶ月目:DL数28件(+40%)。SEO記事経由が12件、CTAバナー経由が8件、SNS広告経由が8件。広告のクリエイティブAがBの2.3倍のCTR。ランディングページは長文版が短文版の1.5倍のCVR。一方、SEO記事のうち2本は検索流入がほぼゼロで、KW選定に問題があった |
Action | 効果の高かったクリエイティブAに広告予算を集中。検索流入ゼロの2記事はKWを変更してリライト。ランディングページは長文版に統一。2ヶ月目の目標を35件に上方修正し、次のサイクルではウェビナー連携も追加する |
マーケティングPDCAのポイント
マーケティングPDCAで最も重要なのは「Check」の精度です。「DL数が増えた/減った」だけでなく、チャネル別・コンテンツ別・クリエイティブ別に分解して評価することで、次のActionが具体的になります。Google AnalyticsやCRMのデータを活用しましょう。
カスタマーサポートにおけるPDCA活用の具体例
カスタマーサポートの応答品質と対応スピードを改善するためにPDCAサイクルを適用した例です。
課題:問い合わせへの初回応答時間が平均8時間で、顧客満足度アンケートのスコアが5点満点中3.2点に低下している。
ステップ | 内容 |
Plan | 3ヶ月以内に初回応答時間を8時間→2時間以内に短縮し、満足度スコアを3.2→4.0に引き上げる。施策:①FAQ記事を充実させて自己解決率を上げる(問い合わせ上位20件をFAQ化) ②チャットボットを導入し、よくある質問を自動応答 ③対応マニュアルを整備し、担当者間の品質差を縮小 |
Do | FAQ記事20件を作成・公開。チャットボットに50件のQ&Aを登録。対応マニュアルを3カテゴリ(技術的質問/契約関連/操作方法)で整備し、週1回のロールプレイ研修を実施 |
Check | 1ヶ月目:初回応答時間が8時間→4時間に短縮(目標の半分を達成)。チャットボットの自動解決率は35%。FAQ記事のPV数は多いが、「記事を見ても解決しなかった」という問い合わせが一定数あり。満足度スコアは3.2→3.6に改善。マニュアル研修後、担当者間のスコア差が縮小(最低3.1→3.4) |
Action | FAQ記事の内容を見直し、解決しなかったユーザーのフィードバックを反映。チャットボットのQ&Aを80件に拡充(不足していた契約変更カテゴリを追加)。応答時間短縮のためにシフト体制を見直し、ピークタイム(10〜12時)に人員を追加配置。次サイクルでは応答時間2時間以内を目指す |
カスタマーサポートPDCAのポイント
CSのPDCAでは、定量指標(応答時間、解決率)と定性指標(満足度スコア、自由回答のコメント)の両方を「Check」に含めることが重要です。数字だけを見ると改善したように見えても、顧客の声を聞くと別の問題が浮かび上がることがよくあります。
採用活動におけるPDCA活用の具体例
中途採用の応募者数と採用決定率を改善するためにPDCAサイクルを適用した例です。
課題:エンジニア中途採用の求人に対して月間応募者が5名しかおらず、そのうち採用に至るのは四半期で1名程度。採用目標の四半期3名に大幅未達。
ステップ | 内容 |
Plan | 次の四半期で中途エンジニア採用3名を達成する。施策:①求人媒体を2媒体→4媒体に拡大(Wantedly・Green追加) ②求人票を全面リライト(技術スタック・開発体制・キャリアパスの情報を充実) ③社員インタビュー記事を3本作成し、採用サイトに掲載 ④書類選考→一次面接のリードタイムを5営業日→2営業日に短縮 |
Do | 4媒体に求人掲載。求人票を技術チームと共同でリライト(Before/After比較を記録)。社員インタビュー3本を撮影・編集・公開。面接日程調整を自動化ツール導入で迅速化 |
Check | 1ヶ月目:応募者が5名→14名に増加(+180%)。うちWantedly経由が6名、Green経由が3名で新媒体が寄与。求人票リライト後、応募CVRが1.2%→2.8%に改善。しかし一次面接通過率が50%→35%に低下。応募者の質が一部低下している可能性(スキルミスマッチが3件) |
Action | 求人票に「必須スキル」と「歓迎スキル」の境界を明確化してミスマッチを防止。Wantedlyのスカウト機能を追加し、受動的候補者にもアプローチ開始。面接通過率改善のために、書類選考時のスクリーニング基準を3項目追加。2ヶ月目の目標を応募15名・面接通過率50%に設定 |
採用PDCAのポイント
採用PDCAの「Check」では、量(応募者数)と質(面接通過率・内定承諾率)の両方を見る必要があります。応募者が増えても質が下がれば採用コストが上昇します。媒体ごとの「採用決定単価(Cost Per Hire)」を追跡するのが理想的です。
生産管理におけるPDCA活用の具体例
製造ラインの不良品率を低減するためにPDCAサイクルを適用した例です。PDCAサイクルの原点である品質管理の現場での活用方法を示します。
課題:主力製品の製造ラインで不良品率が3.5%まで上昇。業界基準の1%以下を大幅に超過し、廃棄コストと再検査工数が月200万円の損失を生んでいる。
ステップ | 内容 |
Plan | 6ヶ月以内に不良品率を3.5%→1.0%以下に低減する。施策:①不良品の発生工程・原因をパレート分析で特定 ②原因の80%を占める上位3工程に対策を集中 ③作業手順書を改訂し、標準作業を再徹底 ④検査工程に画像認識AIによる自動検査を試験導入 |
Do | 過去3ヶ月の不良品データ5,000件を分析。パレート図から上位3原因(溶接不良42%、寸法誤差28%、外観傷15%)を特定。溶接工程の温度管理パラメータを見直し、寸法検査のゲージを新調。外観検査にAIカメラを1ラインで試験導入。全3工程で作業手順書を改訂し、作業者に再教育を実施 |
Check | 2ヶ月目:不良品率が3.5%→2.1%に改善(-40%)。溶接不良が42%→18%に大幅減少(温度管理パラメータ変更が有効)。寸法誤差は28%→22%に微減(ゲージ新調だけでは不十分)。AIカメラは外観傷の検出精度92%で、人間の85%を上回る。月間損失200万円→120万円に削減 |
Action | 溶接工程の温度管理を新パラメータで標準化。寸法誤差は根本原因を深掘り(金型の摩耗が原因と判明)し、金型の交換サイクルを6ヶ月→4ヶ月に短縮。AIカメラを全3ラインに展開(ROI計算済み:投資回収期間8ヶ月)。次サイクルでは不良品率1.5%以下を目標に、残る10%の原因にもアプローチ |
生産管理PDCAのポイント
生産管理は、PDCAサイクルの原点です。デミング博士が1950年代に日本に紹介した品質管理手法そのものがPDCAでした。生産管理では「Check」のデータ収集が自動化しやすい(センサー、検査装置)ため、短いサイクルで回せる利点があります。データの蓄積が多いほど「Plan」の精度が上がるという好循環が生まれます。
PDCAサイクルは「古い」のか?OODAサイクルとの使い分け
近年、「PDCAサイクルは古い」「変化の速い時代にはPDCAでは追いつけない」という指摘が増えています。代替フレームワークとしてOODAサイクル(OODAループ)が注目されていますが、PDCAが本当に時代遅れなのか、それとも使い分けが必要なのかを整理します。
「PDCAは古い」と言われる3つの理由
No. | 批判の内容 | 実際のところ |
1 | 計画に時間がかかりすぎる | PDCAの「Plan」が過剰に詳細化されるケースでの問題。計画のスコープを適切に設定すれば解消できる。1週間〜1ヶ月単位の小さなPDCAなら十分に速い |
2 | 途中で計画を変更できない | サイクルの長さを適切に設定すれば問題にならない。年単位のPDCAは確かに硬直的だが、週単位のPDCAなら柔軟性が高い。問題はPDCAそのものではなく、サイクルの設計にある |
3 | 前例のない領域では使えない | 確かにPDCAは「改善」に強く「0→1の創造」には不向き。ただし、仮説検証型の小さなPDCAは新規事業の検証にも活用できる。前例がない=PDCAが使えない、ではない |
PDCAへの批判の多くは「PDCAの誤った使い方」への批判であり、PDCAそのものが時代遅れなわけではありません。サイクルの長さと範囲を適切に設計すれば、今でも十分に有効なフレームワークです。
PDCAが有効な場面と不向きな場面
PDCAが有効な場面 | PDCAが不向きな場面 |
目標と評価基準が明確に設定できる | 不確実性が高く、ゴール自体が変動する |
既存業務の継続的な改善 | 前例のない新規事業のゼロからの立ち上げ |
データに基づいた意思決定ができる | データが不足しており、直感的判断が必要 |
一定期間ごとに成果を振り返る余裕がある | リアルタイムの即時対応が求められる |
品質管理、コスト改善、KPI達成 | 危機管理、顧客からの即時クレーム対応 |
チーム全体で同じ方向を目指す改善活動 | 個人の裁量と判断力に依存する現場対応 |
OODAサイクルとは
OODAサイクル(OODAループ)は、米空軍の戦闘機パイロットであるジョン・ボイド大佐が提唱した意思決定フレームワークです。「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」の4ステップで構成され、変化の激しい状況でも素早く意思決定・行動するための仕組みです。
OODAサイクルの詳細は、OODAループとはのレッスンで詳しく解説しています。
PDCAとOODAの比較表
比較項目 | PDCA | OODA |
起源 | 品質管理(1950年代、デミング博士) | 軍事戦略(1970年代、ジョン・ボイド大佐) |
構造 | Plan→Do→Check→Act | Observe→Orient→Decide→Act |
重視するもの | 計画と検証。仮説を立て、データで検証する | 観察と判断。状況を素早く把握し、即行動する |
サイクルの速さ | 1週間〜数ヶ月(計画に時間を投資) | 数分〜数日(状況判断と行動が直結) |
前提条件 | 目標が明確、データ収集が可能、改善余地がある | 状況が変動的、前例がない、即時対応が必要 |
強み | 再現性が高い、チームで共有しやすい、定量的に評価可能 | 変化への対応が速い、個人の判断力を活かせる、柔軟 |
弱み | 変化の速い環境では遅れる可能性、計画偏重になりやすい | 属人的になりやすい、振り返りが弱い、チーム共有が難しい |
適した場面 | 既存業務改善、品質管理、KPI達成 | 新規事業、危機対応、競争環境の変化対応 |
状況別:PDCAとOODAの使い分けガイド
実務では、PDCAとOODAは対立するものではなく、状況に応じて使い分けるのが最も効果的です。
ビジネスの状況 | 推奨フレームワーク | 理由 |
営業KPIの改善 | PDCA | 目標・データが明確。週次〜月次で回せる |
マーケティング施策の最適化 | PDCA | A/Bテストとデータ分析が中心 |
製造ラインの品質改善 | PDCA | PDCAの原点。データ蓄積との相性が抜群 |
新規事業の初期仮説検証 | OODA → PDCA | 最初はOODAで素早く仮説を回し、型が固まったらPDCAに移行 |
顧客クレームへの即時対応 | OODA | 計画を立てる余裕がない。観察→即判断→即行動 |
競合の急な値下げへの対応 | OODA | 市場変化に即応する必要がある |
人材育成・研修の効果改善 | PDCA | 長期的な改善が必要。データ比較が可能 |
スタートアップのピボット判断 | OODA | 環境変化が激しく、計画が陳腐化しやすい |
プロジェクト管理全般 | PDCA + OODA | 全体計画はPDCA、日々の課題対応はOODA |
結論:PDCAとOODAは「どちらが優れているか」ではなく「どう組み合わせるか」
多くの企業では、中長期の改善活動にPDCA、日々の現場判断にOODAという組み合わせが現実的です。「PDCAは古い」と切り捨てるのではなく、自社の業務の性質に合わせて使い分けることが、最も成果につながるアプローチです。
このセクションのまとめ
PDCAサイクルは、職種を問わず業務改善の基本フレームワークとして機能します。具体例の引き出しを持つことで、自社の業務にも応用しやすくなります。
このセクションのポイント:
- PDCAは営業・経理だけでなく、マーケティング・CS・採用・生産管理でも効果的に活用できる
- 各職種の「Check」で何を測定するかが成果を左右する。定量+定性の両面で評価する
- 「PDCAは古い」という批判の多くは、PDCAの誤った使い方(サイクルが長すぎる、計画偏重)への指摘
- OODAサイクルは変化の速い環境での即時対応に強い。PDCAは計画的な改善活動に強い
実務では、PDCAとOODAを対立させず、状況に応じて使い分けるのが最も効果的
関連用語
PDCAサイクルに関連した用語として、「OODAループ」「SMARTの法則」について解説します。
OODAループ
OODAループとは、不確実な状況の中で意思決定を下す思考論のことです。OODAループは、「Observe」(観察する)→「Orient」(状況を判断する)→「Decide」(意思決定をする)→「Act」(実行する)のプロセスをループします。
もともとは飛行中のパイロットの意思決定を対象としていましたが、現在ではビジネスを中心に幅広く用いられています。
OODAループとPDCAサイクルは比較されることも多々ありますが、前者が意思決定の思考論であるのに対して、PDCAサイクルは仮説検証のフレームワークです。ビジネスでは、PDCAサイクルとOODAループを組み合わせて、業務改善や経営戦略の策定などに用いられることもあります。
SMARTの法則
SMARTの法則とは、具体的な目標を設定するためのフレームワークのことです。活用することで、目標達成の精度が高まるとされています。SMARTの法則は、以下の要素で構成しています。
- 「Specific」(具体的な)
- 「Measurable」(測定可能な)
- 「Achievable」(達成可能な)または「Assignable」(割り当て可能な)
- 「Relevant」(関連性のある)または「Realistic」(現実的な)
- 「Time-related」(期限が明確な)
PDCAサイクルもSMARTの法則も、ともに目標達成に向けたフレームワークとして活用されています。ただ、PDCAの場合、Plan(計画の立案)の時点でベースとなる目標が現実離れしていると、目標の達成が難しくなる可能性があります。このような失敗を避けるためには、SMARTの法則を意識して目標を設定してからPlanに入るなど、2つのフレームワークを組み合わせるとよいでしょう。