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Faintとは

FAINT(フェイント)とは

FAINTとは、見込み客を正しく見極めるためのフレームワークです。FAINTは、「資金(Funds)」に着目したフレームワークで、予算(Budget)が確保されているかどうかではなく、資金を準備できる企業体力があるかどうかを判断基準の一つとしています。財政状況を事前に調べた上で、資金を確保できる見込みに絞ってアプローチを行います。FAINTは、資金(Funds)、決裁権(Authority)、興味(Interest)、ニーズ(Need)、時期(Timing)の5つの要素から構成されています。表に整理すると以下の通りです。

資金
Funds

予算を確保しているかどうかではなく、購入する資金的余裕があるか。

決裁権
Authority

誰にそれを決める権利があるか。

関心
Interest

製品やサービスにどのくらい興味を持っているか。

ニーズ
Need

製品やサービスをどのように(潜在的なニーズを含めて)必要としているか。

時期
Timing

製品を購入する具体的な時期はいつか。

FAINTとBANTの違い

「予算」の有無で見込み客の優先度を判断するフレームワークとして「BANT」があります。BANTは、「自社製品やサービスを購入するために必要な予算があるか。」を判断基準としてアプローチの優先度を決めます。

しかし、実際の現場では、予算をヒアリングしても「金額はできるだけ安い方がいい」「予算は現状ないが本当に良いものであれば予算は取れると思う」という曖昧な回答が返って来ることないでしょうか。多くの企業では、予算を用意できる資力はあるが、「具体的なROIが不明だ」とか、「相場がわからないから」という理由で具体的に予算化していない企業も多数います。

このような場合、BANTでは予算を確保していない時点で、優先度は低くなります。

つまり、BANTとFAINTはどちらも受注につながる可能性をヒアリングしますが、BANTは顧客側で結論が出ているか判断する一方で、FAINTは企業のポテンシャルを聞き出し、勝機を切り拓けるかで判断します。

FAINTをうまく聞き出すヒアリング例

-まず資金(Funds)の情報を事前に調べる。

そもそも財務的に余裕がないのであれば、仮に商談が進んだとしても成約に結びつく可能性は低いため、事前に資金の確認は不可欠です。

資金があるかどうかを確認する方法:

  • 上場企業の場合は、財務諸表を公開しています。特に、直近の売上高や利益に関する情報を確認します。
  • 非公開企業の場合は、直近のプレスリリースや企業ブログ、経済雑誌などで情報を確認します。

財政状況がある程度把握できて営業先として「見込み有」と判断できたら、
顧客に直接ヒアリングを行い、詳細な情報を聞き出しましょう。

ヒアリングの例:

  • 今回ご想定されている予算のイメージはありますか。
  • これまでに、このような製品を購入したことがありますか?
  • 直近で新たな人材の採用を計画している、または、新たな営業所を開設されるご予定はありますか。

-決裁権は誰にあるか確認する。

決裁者と直接やりとりできれば、受注までのリードタイムが短くなる傾向があります。
しかし、商材や金額によっては、複数の承認が必要だったりと企業によって事情が異なり「決裁権は誰にあるか」と特定するのは困難な場合もあります。また、商談では、検討段階は担当者レベルだけとしか会話ができ決裁者が現れないことも多いです。そのため、「決裁権を持っている方は誰ですか」と単純に質問するのではなく、「誰がどのような行動をすればプロセスを進められるのか」を中心に聞き出すと良いでしょう。

ヒアリングの例:

  • この製品を購入する際の最終的なご判断は〇〇様がなさるのでしょうか?
    それとも別の方のご判断が必要でしょうか。
  • 過去に、このような製品を導入したときはどのような手順でしたか。何かご手伝いできることはありますか?

ただし、決裁者やフローについてばかり聞くと、相手は警戒しがちです。「なるべく貴社のご負担を減らしたい」「弊社に何かご協力できるかことはないか」という姿勢で質問すれば、相手も心を開いて情報を出しやすくなるでしょう。

-製品やサービスにどのくらい興味を持っているか

見込み客が、製品やサービスにどのくらい興味を持っているかを知ることは、営業活動の優先度をつける上で重要です。例えば、自社の製品に強い関心を持っている場合、優先度を高にして積極的にアプローチをする等、営業活動の優先度を決めることができます。一方で、情報収集の段階など、優先度は低くなる顧客でも、競合の製品と比較した際の自社の製品への印象やこれまで同様の製品の購入を検討したことがないかをヒアリングすると、興味を引き出し勝ち筋を作れることもあります。

ヒアリングの例:

  • 製品やサービスに興味をお持ちいただいたきっかけは?
  • 過去に同様の製品やサービスの購入を検討したことはありますか。
  • 選定のポイントは何でしょうか?

-製品やサービスをどのように必要としているか

ニーズのヒアリングでは、見込み客が何を望んでいるのかを明らかにしていきます。要望が明確でなければ、「現状」と「理想」を聞き、見込み客と共に望みを明らかにしましょう。ヒアリングをした結果、見込み客が望んでいることに対して、自社の製品では解決できない場合もあります。

ヒアリング例:

  • 現状どのようなことに苦労していますか。製品やサービスに何を期待していますか?
  • 最終ゴールのイメージはなんでしょうか。
  • 弊社の商品やサービスに対するご要望を教えてください。

-製品を購入する具体的な時期はいつか。

最後に、導入を検討している時期を具体的に確認します。「今すぐ」の購入を検討しているのか、現状購入を検討していない場合はいつ頃購入したいか、などをヒアリングできれば、アプローチのスピード感や優先度を調整できます。もし導入の時期が全く見通せない場合は、たまに連絡をする程度にして、他の顧客へアプローチへと時間を割きましょう。

ヒアリング例:

  • いつまでにご利用を開始したいですか。
  • 今後導入されるとしたらいつ頃に再度検討を始めますか。
  • 完了までにかかる時間はどのくらいでしょうか。それに合わせて提案の準備をさせていただきたいので教えてください。

購入時期をヒアリングするとぼんやりとした回答しかもらえない可能性もあります。クローズドクエスチョンを使って「上半期でしょうか?」「11月頃でしょうか」のように、こちらから、おおよその時期を指定して、うまく答えを聞き出してみましょう。

FAINTをうまくヒアリングするコツ

ロールプレイングを繰り返し基本をマスターする

ヒアリングが苦手な方はロールプレイングで反復練習することをオススメします。ヒアリング力を伸ばすには、経験を多く積むしかありません。実際の営業現場ではもちろん、ロールプレイングで反復練習を繰り返して経験を伸ばすことができ、短期間でヒアリング力の向上を目指すことができます。何を質問すれば良いか分からなくなってしまう方は、ヒアリングシートを手元に用意すると良いでしょう。そうすることで、抑えるべき項目がわかり、漏れなくヒアリングする癖がつくようになります。

下記にヒアリングシートのサンプルを用意しました。ロープレは実際の現場を想定し、会社名、担当者名、部署、役職、業界を設定します。ロープレが終わった後は、必良かった点、悪かった点、改善点などのフィードバックを先輩にもらい、課題、修正点、今後のアクションを明確にし経験値を上げていくと良いでしょう。
(ヒアリングシート例)

ヒアリングシートのサンプル

商談現場では、その場の雰囲気を大切にする

FAINT情報をヒアリングする際に、最初から全てをヒアリングするのは難しいという点は頭に留めておきましょう。顧客との会話のキャッチボールを重視してうまく聞き出し、無理して引き出そうとはしないこと。商談の場においては、質問を行うタイミングに注意し、相手との信頼関係を損なわないよう、一つ一つ丁寧にヒアリングすることが重要です。商談を進めながら、色々と理解を深めてFAINT情報を掴んで行く方が良いでしょう。後から、優先度の低い顧客だったと分かってくることもあります。その時、途中までの労力を惜しんでクローズさせようとせず、優先度の高い顧客に切り替える方が有効です。そのためには、営業は常にFAINT/BANTを軸に勝機を見定めることが大切です。