BANTとは。「古い」と言われる理由とBANTC/BANTCHへの進化

「BANTとは」のキービジュアル

BANTとは

BANTとは、営業活動において顧客からヒアリングする際に用いられるフレームワークです。BANTは「Budget(予算)」「Authority(決定権)」「Needs(需要)」「Time frame(導入時期)」の4つの要素から構成されます。

予算
Budget

予算はどれくらいあるのか。自社製品やサービスを購入するために必要な予算があるか。

決定権
Authority

自社製品やサービスを購入する決定権は誰にあるか。

需要
Needs

ニーズは何か。自社製品がそのニーズを満たせるか。

導入時期
Time frame

導入する時期はいつ頃か具体的に決まっているか。

営業ヒアリングでBANT情報を聴き出すことで、その後の提案やフォロートークなどの営業アプローチが効率化されます。また、BANT情報は案件の進捗状況を管理・分析する際の分類基準としても利用可能です。

「何をどう話せばいいかわからない」という営業経験が少ない新人であっても、BANTを参考にして会話を組み立てれば、顧客から有益な情報を効率よく獲得できます。

営業活動においてBANTが重要な理由

BANT情報が重要な理由は、BANT情報が不足していると営業労力が浪費され、失注する可能性が高まるといった深刻な事態を招く可能性があるからです。

BANT情報は一つ欠けるだけでも失注の可能性が高まります。そのため、営業活動において早期に適切なBANT情報を集めることが重要です。

BANT情報が揃っていないと、なぜ失注するのか?

Budget(予算)
がない場合

提案しても予算が釣り合わず、受注は難しくなる。そもそも予算が確保されていないことも...。

Authority(決定権)
がない場合

承認まで時間がかかりプロセスが停滞する。決裁者と直接コミュニケーションが取れないと、時間だけが無駄に過ぎていくことも...。

Needs(需要)
がない場合

提案しても必要性がないため購入しない。需要をヒアリングしていた競合他社に提案で負けることも...。

Time frame(導入時期)
がない場合

温度感やタイミングがズレたアプローチに。必要な時期に誠心誠意の対応を提供しなければならないのに、時期の調整を後から行うのは大変...。

BANTを営業ヒアリングで活用するメリット

BANTを営業ヒアリングに活用することで、顧客を深く理解でき、営業が対処すべき課題とその優先順位が明確になります。この結果営業アプローチ全体が改善され、成約率の向上につながり売上の増加が期待できます。

・アプローチの優先度を判断できる

以下のように、BANT情報を活用すれば、営業アプローチの優先度を可視化できます。成約の見込みが高い案件に優先してアプローチを行えば、効率的に売上最大化できます。

BANT条件による優先度設定の例:

優先度

最高

Budget(予算)

500万円以上

500万円以上

300万円以上

300万円未満

Authority(決定権)

決定権者

決定者・社内提案者

社内提案者

情報収集

Needs(需要)

有(高)

有(普通)

有(普通)

低または無し

Time frame(時期)

いますぐに・3カ月以内

6カ月以内

1年以内

1年以上または未定

受注までのプロセスが可視化できる

BANTを通じて顧客が抱える課題やニーズを理解することで、受注までのプロセスが明確にできます。必要な情報が整理され、「やるべきこと」「クリアすべき課題」も可視化できます。

傾向の把握と対策ができる

BANT情報を基に案件を分析することで、傾向やボトルネックが明確になります。例えば、「受注しやすいBANTの条件」「失注しやすいBANTの条件」「途中停滞がおこりやすいBANTの条件」などが明確になることで、効率的にリソースを配分し、受注確度の高い案件に集中したり、受注確度を高める対策を講じたりできます。

類似する過去の商談からヒントが得られる

BANTの条件と受注に至るまでの提案プロセスを記録しておけば、類似する商談として後に参考にできます。例えば新人営業がベテラン営業から実務における学びを得る際の重要なヒントとして活用できます。

顧客目線の理解が深まる

BANT情報の収集は、顧客目線からの事情理解に役立ちます。顧客目線の情報を活用することで、顧客の問題やニーズに則した提案が可能となり、顧客からの信頼獲得や受注確度の向上が期待できます。

組織内の連携に役立つ

BANTを活用して可視化された情報は、組織内における情報共有を円滑化できます。営業部門だけでなく、マーケティング部門など他部門との連携が強化され、組織全体で一貫性のある対応が可能になります。

BANTを聴き出すヒアリングのコツ

BANT情報を効率的にヒアリングするには、下記のトーク例が参考になります。

予算は早めに聴き出す

予算は商談の成否に関わる重要な要素であるため、早い段階でどれくらいあるのか確認しましょう。無理に予算を聴き出そうとすると、顧客との関係性を損なう可能性があるため、会話の中で自然に情報を引き出すよう心がける必要があります。
先方の予算感をあらかじめ確認することで、ニーズに合った提案が可能になるという表現にするとよいでしょう。

予算をヒアリングするコツ

  • 「お客様のニーズに沿った適切なご提案をさせていただくために、年間10万、100万など概算のご予算感をお伺いできますでしょうか」
  • 「今期の予算の中で、このプロジェクトに使えるご予算はどのくらいでしょうか」

次に決裁フローを確認する

決定権が誰にあるかを確認する際は、「決定権を持っている方は誰ですか」とストレートに質問しても、望んだ回答は得られにくいでしょう。
企業によっては、「課長決裁は20万まで」、「部長決裁は1,000万まで」と役職によって決裁範囲が異なる場合も多くあります。
そのため、質問と絡めて決裁の流れを尋ねることで、円滑に決裁フローを聴き出すよう心がけましょう。

決裁フローをヒアリングのコツ

  • 「御社のルールでは、金額によって決裁フローが変わるといった決まりはございますでしょうか」
  • 「稟議をご提出される際は、いつまでに何が必要など何かご指定はありますでしょうか」

より具体的なニーズを確認する

ニーズのヒアリングでは、表面的な課題や要望を聴き出すだけでなく、組織的に解決したい課題、組織としてありたい姿、現場の担当者のニーズなど、さまざまな立場や組織レベルにおける潜在的なニーズまで掘り下げることが重要です。潜在的なニーズまでヒアリングできれば、より効果的な商談を実現できます。

ニーズをヒアリングするコツ

  • 「今回、〇〇いただいたきっかけをお聞かせいただけますか。また、会社/上司の方はどのようなご期待をされていますでしょうか」
  • 「これからご提案させていただくにあたり、我々が押さえておくべきポイントがございますか」

時期はヒアリングだけでなく、こちらからも提案してみる

導入時期について質問しても、「将来的に購入を検討しています」や「まだ決まっていません」と答えられるケースも多くあります。この場合、受注までに時間がかかるリスクや、失注リスクが高くなる可能性があります。
導入時期が曖昧な場合、単にヒアリングだけで終わるのではなく、一般的な事例も紹介しながら、こちらから導入時期の仮設定を提案してみましょう。
仮設定を行うことで、先方の意向をより深く確認できると共に、スケジュールに合わせた計画的なアプローチが可能になります。

時期をヒアリングするコツ

  • 「導入時期について、具体的な希望はお持ちでしょうか」
  • 「通常、ご提案から導入開始まで3.5カ月程かかることが一般的なのですが、こちらのスケジュールではいかがでしょうか」

「BANTは古い」と言われる理由と現代的な使い方

BANTは1960年代にIBMで生まれたフレームワークで、半世紀以上にわたって営業現場で使われてきました。一方で、近年は「BANTは古い」「現代の営業には合わない」といった批判もよく耳にします。ここでは、なぜBANTが古いと言われるのか、そして実際にどう使えば現代の営業でも有効なのかを解説します。

BANTが「古い」と批判される3つの理由

批判の理由

内容

①売り手目線すぎる

BANTは「営業が顧客から情報を引き出す」ことに焦点を置いており、顧客の課題解決や価値提供の視点が弱い。現代の営業はカスタマーサクセス志向が重視されるため、売り手中心のフレームワークは時代遅れと見られやすい。

②購買プロセスの複雑化に対応できない

現代のBtoB購買では、平均6.8人の意思決定者が関わるとされる。BANTの「Authority(決定権)」を1人に絞るアプローチでは、複数のキーパーソンを巻き込む現代の商談に対応しきれない。

③予算の事前確定が前提

BANTは「予算が決まっている」前提で機能する。しかし現代では、「課題が明確になってから予算を確保する」ケースも多く、予算がない=失注ではなくなっている。

現代の営業でもBANTが有効な理由

これらの批判は一理ありますが、それでもBANTは現代の営業で十分に有効です。

理由1:シンプルさは初心者教育に最適

BANTの最大の強みは「4つの要素を覚えるだけで誰でも商談管理ができる」シンプルさです。新人営業がいきなりMEDDICのような7要素フレームワークを学ぶのは負担が大きく、まずBANTで基礎を固めてから複雑なフレームワークに進むのが現実的です。

理由2:商談の初期段階のスクリーニングに最適

インバウンドリードや展示会で獲得した大量のリードを、誰に時間を使うべきか判断する初期スクリーニングではBANTが今でも最強です。深いヒアリングは時間がかかるため、BANTの4要素で素早く優先順位を付け、有望リードに集中する運用が効率的です。

理由3:批判は「使い方」の問題

「売り手目線」「複雑化に対応できない」という批判の多くは、BANTを機械的に使った場合の問題です。後述するBANTC・BANTCHのように要素を追加したり、後述のSaaS時代の応用法のように顧客目線で再解釈したりすれば、BANTは今でも強力なツールであり続けます。

SaaS・インサイドセールスでのBANT応用

特にSaaS業界やインサイドセールスでは、BANTを以下のように応用することで効果を発揮します。

要素

従来のBANT

SaaS時代の応用

Budget

「予算はいくらですか?」と直接確認

「現状のツール費用や手作業の人件費はどれくらい?」とROIから逆算する

Authority

決裁者1人を特定

Champion・Influencer・Decision Makerの3層を意識

Needs

表面的なニーズを確認

Job to be done(顧客が達成したい本質的な仕事)まで掘り下げる

Time frame

導入時期を質問

「いつまでに成果を出さないと困るか」をビジネスインパクトから逆算

つまり、BANTは「営業が顧客から情報を引き出すツール」から、「顧客の課題と文脈を理解するための共通言語」として再定義することで、現代の営業でも十分に通用します。

BANTC・BANTCHとは。BANTの進化形フレームワーク

BANTの限界を補うため、近年は要素を追加した進化形フレームワークが登場しています。代表的なのがBANTCとBANTCHです。

BANTCとは。Competition(競合)を加えた5要素

BANTC(バントシー)は、BANTの4要素にCompetition(競合)を加えた5要素のフレームワークです。コンペ形式の商談や、複数ベンダーが比較検討される現代のBtoB営業に対応するために生まれました。

Competition(競合)でヒアリングすべき内容

  • 顧客がどのような他社サービスを比較検討しているか
  • 自社と競合の差別化ポイントを顧客はどう認識しているか
  • 競合がどのような提案・価格を出しているか
  • 「現状維持」も競合として認識されているか

ヒアリングのコツ:

「競合はどこですか?」とストレートに聞くと警戒されることがあります。「他にもご検討中のサービスはございますか?」「ご検討にあたって比較されているポイントは何ですか?」のように、自然な言い回しで聞き出すのがコツです。

BANTCHとは。Human Resources(人的体制)まで含む6要素

BANTCH(バントシーエイチ)は、BANTCにさらにHuman Resources(人的体制)を加えた6要素のフレームワークです。SaaS導入やシステム導入のように、製品を購入するだけでなく「導入後に運用する人」が必要なケースで重視されます。

Human Resources(人的体制)でヒアリングすべき内容

  • 導入後、誰がこのツール・サービスを運用するのか
  • 運用担当者は専任か、兼任か
  • 運用担当者のITリテラシーや業務経験はどれくらいか
  • 社内に推進役(Champion)がいるか
  • 導入時の社内教育やトレーニング体制は確保できるか

なぜHuman Resourcesが重要なのか:

どんなに優れたツールを導入しても、運用する人がいなければ効果は出ません。SaaSでよくあるのが、契約はしたものの誰も使わずに解約されるケースです。Human Resourcesを事前に確認することで、「導入後に成功する見込みがあるか」を判断でき、結果的に契約後の解約防止にもつながります。

BANT・BANTC・BANTCHの比較一覧

項目

BANT

BANTC

BANTCH

要素数

4

5(+Competition)

6(+Human Resources)

登場時期

1960年代

2000年代以降

2010年代以降

適した商材

シンプルな製品・サービス

コンペ案件、複数ベンダー比較

SaaS、導入運用が必要なシステム

適した営業フェーズ

初期スクリーニング

提案フェーズ

クロージング前後

ヒアリング負荷

中〜高

解約防止効果

3つのフレームワークの使い分け

BANT・BANTC・BANTCHは排他的ではなく、商談の進行に合わせて段階的に使い分けるのが実務的です。

  1. 初期スクリーニング → BANT:4要素を素早く確認し、有望リードを絞り込む
  2. 提案フェーズ → BANTC:競合状況を加えて、差別化戦略を構築する
  3. クロージング前後 → BANTCH:人的体制を確認し、契約後の成功を担保する

実務での使い方

新人営業はまずBANTを完璧にマスターし、慣れてきたらBANTCに進み、SaaSのような運用が重要な商材ではBANTCHまで習得する、という段階的な学習が現実的です。一気に6要素を覚えようとすると挫折しやすいので、フェーズごとに必要な要素だけを使いこなしましょう。

BANTとMEDDICの使い分け

BANTと並んでよく比較される営業フレームワークがMEDDICです。どちらも商談の質を判断するためのフレームワークですが、性格と用途が大きく異なります。

BANTとMEDDICの違い

比較項目

BANT

MEDDIC

要素数

4要素(B/A/N/T)

6要素(M/E/D/D/I/C)

発祥

1960年代、IBM

1990年代、PTC(米国ソフトウェア企業)

性格

シンプルなスクリーニング型

詳細な商談分析型

適した商材

シンプルな製品、中小企業向け

複雑な商材、エンタープライズ向け

商談サイクル

短期〜中期

長期(半年〜1年以上)

学習コスト

低(数時間で習得可能)

中〜高(数日〜数週間の研修が必要)

運用負荷

中〜高

適した営業組織

中小規模、新人多め

大規模、エンタープライズ営業中心

どちらをいつ使うべきか

BANTを選ぶべきケース:

  • 商材が比較的シンプル(単機能ツール、定型サービスなど)
  • 商談サイクルが短い(数週間〜数ヶ月)
  • インバウンドリードが多く、初期スクリーニングが必要
  • 営業チームに新人が多く、まずは基礎を固めたい
  • 中小企業向けの営業が中心

MEDDICを選ぶべきケース:

  • 商材が複雑(エンタープライズSaaS、カスタム開発など)
  • 商談サイクルが長い(半年〜1年以上)
  • 1件あたりの契約金額が大きい(数千万円〜数億円)
  • 複数のキーパーソンが意思決定に関わる
  • ベテラン営業が中心で、詳細な商談管理が可能

実務では、初期スクリーニングはBANT、深掘りはMEDDICという段階的な使い分けが効果的です。BANTで「進めるべき商談」を選別し、MEDDICで「勝てる商談かどうか」を見極めるイメージです。

BANTヒアリングのスクリプト例

BANTの4要素を実際の商談でどうヒアリングするか、商談フェーズごとの具体的なスクリプト例を紹介します。新人営業はそのまま使える参考例として、ベテラン営業は自社のトークスクリプト改善のヒントとして活用してください。

初回接触フェーズのスクリプト

初回接触では、信頼関係を構築しながら、相手の警戒心を解いて基本情報を聴き出します。いきなり全要素を聞こうとせず、自然な会話の流れの中で必要な情報を拾っていくのがコツです。

初回接触のスクリプト例

営業:「本日はお時間をいただきありがとうございます。最初に簡単に弊社のサービスをご紹介してから、御社の状況やお考えを少しお伺いできればと思います。」 (サービス紹介後) 営業:「ありがとうございます。早速ですが、今回お問い合わせいただいたきっかけを教えていただけますか?」 → Needs(ニーズ)の入り口 営業:「なるほど、その課題は最近顕在化したのでしょうか?それとも以前から?」 → Time frame(時期感)の確認 営業:「ちなみに、こうしたサービスのご検討は、〇〇様おひとりで進められるご予定ですか?それとも社内の他の方も?」 → Authority(決裁プロセス)の入り口

本番ヒアリングフェーズのスクリプト

初回接触で関係性ができたら、本番ヒアリングで具体的な4要素を深掘りします。ここでは予算と決裁フローも含めて、踏み込んだ質問ができる段階です。

本番ヒアリングのスクリプト例

営業:「前回お伺いした課題について、もう少し詳しくお話を聞かせていただけますか?特に、現状で最もお困りなのはどの部分でしょうか?」 → Needs(深掘り) 営業:「課題の優先順位を考えると、いつまでに解決したいというイメージはお持ちでしょうか?例えば、年度内の解決がご希望でしょうか?」 → Time frame(具体化) 営業:「お客様のニーズに沿った最適な提案をさせていただくため、ご予算感を概算でお伺いできますでしょうか?年間で50万、100万、500万といったレンジで結構です。」 → Budget(具体化) 営業:「ご導入の際は、どのような社内プロセスで決定されますか?最終的な承認は〇〇様が担当されるのでしょうか?」 → Authority(決裁プロセスの可視化)

クロージングフェーズのスクリプト

提案後のクロージングフェーズでは、4要素を再確認しつつ、契約に向けた具体的なアクションを引き出します。曖昧な返答を許さず、次のステップを明確にすることが重要です。

クロージングのスクリプト例

営業:「ご提案させていただいた内容で、御社の課題解決にお役立ていただけそうでしょうか?特に懸念点があればお聞かせください。」 → Needs(合致確認) 営業:「ご予算の件ですが、ご提案させていただいた金額は許容範囲内でしょうか?もし調整が必要でしたら、別プランもご提案できます。」 → Budget(着地確認) 営業:「導入をご決定いただく場合、社内承認のプロセスはどれくらいの期間が必要でしょうか?〇〇様から決裁者の方へのご説明は、私からも資料をご用意しましょうか?」 → Authority + Time frame(具体行動) 営業:「次回お打ち合わせまでに、私の方で〇〇の資料をお持ちします。〇〇様には決裁者様のご意向を確認していただけますでしょうか?それぞれ来週の〇曜日までにいかがでしょうか?」 → 次回アクションの確定

これらのスクリプトはあくまで例なので、自社の業態・商材・顧客層に合わせてカスタマイズしてください。重要なのは、4要素を機械的に質問するのではなく、自然な会話の流れの中で情報を引き出すことです。

このセクションのまとめ

BANTは半世紀以上にわたって使われてきた営業フレームワークの定番です。「古い」と批判されることもありますが、使い方を工夫すれば現代の営業でも十分に有効であり、進化形のBANTC・BANTCHを併用すればさらに精度を高められます。

このセクションのポイント:

  • BANTは「売り手目線」「購買複雑化への対応不足」「予算前提」という批判があるが、シンプルさと初期スクリーニング能力で現代も有効
  • SaaS時代のBANTは、要素を顧客目線で再解釈することで現代化できる
  • BANTC(+Competition)はコンペ案件、BANTCH(+Human Resources)はSaaS導入で効果を発揮
  • BANTは初期スクリーニング、MEDDICは詳細分析という使い分けが実務的
  • ヒアリングは初回・本番・クロージングの3フェーズで、それぞれ適切なスクリプトを用意する
  • 4要素を機械的に質問するのではなく、自然な会話の中で引き出すことが最も重要

BANT情報をヒアリングする際の注意点

BANTは営業活動を効率化する有用なツールですが、使い方を誤った場合、顧客との関係性を損なったり、不正確な情報を入手したりする可能性があるため、以下の点に注意が必要です。

BANTで大切なのは「いきなり聞き出そう」としないこと

BANTは予算(Budget)や決定権(Authority)といった顧客にとってセンシティブな情報を収集しようとする点です。一般的に考えて、初めて接する営業担当者に対して、そのような情報を簡単に提供する見込み客がいるでしょうか。

多くの見込み客は、初回の接触時に営業担当者の対応を見極めています。そのため、いきなりBANTフレームワークに基づいて質問を進めても、本音で詳細に回答してもられません。

まず最も重要なのは、見込み客の信頼を獲得することです。そのためには、以下がポイントです。

  • 四季報や決算短信、中期経営計画、ホームページに掲載されている情報など、事前に容易に入手できる情報は、初回訪問前に把握
  • 競合他社の取り組みや現状について事前に調査し、情報提供
  • 魅力的で簡潔な、わかりやすい自社紹介
  • 正直で本音ベースのコミュニケーション

このような条件が整ってはじめて、「この人になら予算(Budget)や自社の課題(Needs)などを話してもいいかな・・・」と感じていただけるのです。

質問を畳み掛けない

BANT情報をヒアリングする際は、項目をヒアリングすることに固執しないよう注意しましょう。質問を畳み掛けすぎると、必要な情報を得られないどころか、顧客の信頼を失う場合があります。ヒアリングでは、自然な話の流れの中で情報を聴き出すことが理想的です。
ヒアリングの際には、「クローズドな質問ではなく、オープンな質問」を意識すると、効率的に情報を聴き出せます。

クローズドな質問とは?

  • クローズドな質問とは、具体的な答えや情報を引き出すための質問の仕方です。「はい」または「いいえ」あるいは特定の情報や事実について、簡潔な回答が導かれる質問となります。
  • 例えば、「決裁者は部長ですか?」「プロジェクトの予算は1,000万円ですか?」などがクローズドな質問の例です。

オープンな質問とは?

  • オープンな質問とは、広く情報や意見を引き出すための質問の仕方です。相手に多くを話させる質問を意識し、詳細な回答や考えを引き出せます。
  • 例えば、「プロジェクトの目標について教えてください」や「現状の課題にどうアプローチしようと考えていますか?」などがオープンな質問の例です。

ヒアリングは営業が主導する

BANT情報はアンケート調査でも収集可能ですが、表面的なアンケート調査だけでは踏み込んだ調査はできません。営業が顧客に直接ヒアリングを行えば、状況に応じて質問を調整することで質問の深掘りが可能となり、より正確で詳細な情報を得られます。

BANT情報に囚われすぎない

BANTは有用なフレームワークですが、過度な依存には注意が必要です。顧客の状況は常に変化し、BANTで捉えきれない要素も多く存在します。BANTの活用が困難な場面では、顧客の状況に合わせた柔軟なアプローチを行うことが、成果につながる場合もあります。

BANT情報を利用して、商談へ持ち込むアプローチを管理

BANT情報に基づいて見込み客のランク分けを実施することで、商談へ導くアプローチのステージ(段階)が明確になり、アプローチの優先順位や次にとるべき行動が具体化され、効率的な営業活動が可能になります。

商談へ持ち込むアプローチのステージ分け例

ステージ

受注
確度

予算

決定権

需要

導入時期

特徴

A

高(9割程度)

500万以上

決定権者

有(詳細不明)

今すぐ

最も受注に近い層

B

中(5〜8割程度)

300万以上

決定権者

不明

不明

フォローとさらなるヒアリングが必要な層

C

低(1〜4割程度)

300万未満

不明

不明

不明

大きなボトルネックを抱えている層

ステージAは、最も受注に近いケースです。具体的な予算が確保され、決裁者の了承も得られており、導入時期も今すぐですが、ニーズのみが不明瞭な状態です。このステージにいる顧客に対しては優先的にアプローチを行い、顧客のニーズを聴き出して、それに即した提案を迅速に行うことが求められます。

ステージBは、受注からやや遠いケースです。具体的な予算は確保され、決裁者の了承も得ていますが、ニーズと購入時期が不明確です。このケースでは、継続的なフォローで顧客との関係強化を優先しながら、オープンな質問を活用して残りの欠けているBANT情報を集めることで、成約確度を高めた商談が可能になります。

ステージCは、受注までかなり距離があるケースです。BANT情報のほとんどが未収集か、受注に対して大きなボトルネックがあるケースが想定されます。このケースでは、他の受注確度の高い商談にリソースを割くことも有効な選択肢となります。
この顧客にアプローチを継続する場合は、資料やセミナーの案内など役立つ情報を定期的に届けつつ、適切なタイミングでBANT情報のヒアリングを行うことで、BANT条件を満たした提案を行えば、受注への道が開ける場合があります。

BANTは古い?他のフレームワークとの連携も考慮

BANTが古いと言われる理由は、このフレームワークが長年使用されてきた一方で、現代の多様化した顧客の購買行動に十分対応しきれない場面があるからです。

そのため、BANTに要素を追加したBANTCやBANTCHといった新たなフレームワークも考案されています。

ただし、BANTがまったく役に立たないわけではありません。とくにシンプルな購買プロセスにおいては、BANTは依然として有効なフレームワークとして活用できます。

効率的な成約獲得のためには、状況やニーズに応じて適切なフレームワークを選択することが重要です。

以下はBANTと関係が深いフレームワークの例です。

BANTC

BANTにCompetitor(競合)の要素を加えたフレームワークです。顧客が検討している競合情報を収集することで、顧客ニーズのより詳細な把握や、自社の優位性をアピールできる差別化ポイントの特定が可能になります。

BANTCH

BANTCにHuman resources(人的資源)を加えたフレームワークです。商談対象となる組織内の人間関係や役割を把握することで、組織内での意思決定プロセスや決裁フローが明確になり、各関係者に合わせた効果的なアプローチが可能になります。

MEDDIC

Metrics(測定指標)、Economic Buyer(決裁権者)、Decision Criteria(意思決定基準)、Decision Process(意思決定プロセス)、Identify Pain(課題)、Champion(擁護者)の6つの要素から構成される、商談の受注確度を判断するためのフレームワークです。BANTよりも複雑な購買プロセスに向いています。

参考:MEDDICとは?営業プロセスへの組み込み方、BANTとの違い

SPIN話法

「Situation」(状況質問)、「Problem」(問題質問)、「Implication」(示唆質問)、「Need-payoff」(解決質問)の順に質問を展開し、顧客の潜在ニーズを引き出す営業テクニックです。BANT情報をヒアリングする際に活用できます。

参考:SPIN話法とは?「示唆質問」をマスターして営業力を高めよう!