価値と信念

ビジネスとは、単に収益をあげることではありません。少なくとも、そのことだけに限定されるべきではありません。優れた経営理念に基づいて構築された会社には、優れた企業文化が生まれます。私たちは、Zoho を創設したとき、自分たちの価値観を放置せず、会社の骨組みに組み込みました。

資本の再定義

Zoho は、会計上の資本金だけではなく、広い意味での企業資本という定義を採用しています。Zoho の真の資本には、組織を構成する従業員に流れる共通の文化、スキル、献身が含まれます。

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資本の再定義

多くの企業、特に株主や大口投資家を抱える大企業では、自己資本の増加という従来からの視点で、あらゆることに取り組んでいます。すべての決定は、「これで組織の金融資産が増加するか」につながります。そのような核心的な金銭的思考は至る所に存在するため、今日の経済で生き残るための唯一の方法のように思われます。

ところが、ビジネスの成功を財務諸表の数値や株価のみで評価するなら、従業員は最適化される資産になってしまいます。このような資本重視のアプローチでは、あらゆることが金銭的価値に還元され、プロセス内の長期的でより大きなその他の目標は完全に無効になります。

広い意味での資本という概念を取り入れる

私たちは、狭い意味での資本の定義を否定し、それによって生み出される、より限定されたビジネスモデルも否定します。私たちは、資本とはグループや個人が自分たちの経済的ニーズを満たすための能力だと考えています。このような観点から、Zoho ではコア機能を外注する代わりに、社内でスキルを構築することに取り組んでいます。

たとえば、パブリッククラウドでアプリをホストするのではなく、独自のデータセンターを構築して管理する方法を学びました。また、ブランディングと広告対応を外部のマーケティング会社に委託する代わりに、すべて社内で対応しています。どちらの場合も、短期的なコストの削減や市場投入までの時間短縮よりも、長期的な知識資本の構築を優先しました。

資本の概念を限定せず、拡大解釈することで、あらゆるところに機会が見えてきます。ロードマップやマイルストーンはビジネスの過程では役立ちますが、成功するビジネスを真剣に構築するには、想像力の限界を広げることが必要です。

数値による評価に反対の姿勢を取る

成功を評価するものは、収益やトレンドライン、KPIだけではありません。追跡や定量化ができないものや、すべきでないものもあります。Zoho は、ビジネスのあらゆる側面を測定して最適化するという流れに抵抗することで、無形の資産を無視したり忘れたりすることがないようにします。

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私たちの文化が私たちの戦略をここへ導きました。
シュリダー・ベンブZoho Corporation CEO

数値による評価に反対の姿勢を取る

私たちはメトリックやビッグデータの時代に生きており、何でも測定して最適化できると考えがちです。ただし、測定できるからといって、それを測定すべきであるということにはなりません。ソフトウェアは運用の改善方法について無数の洞察を提供できるかもしれませんが、すべてを把握することはできません。成功を心から願う個人の熱意をスコアで表すことはできません。

同様に、企業文化の価値を定量化することもできません。社員数や収益、顧客数の増加状況などを見て、企業文化の成功を判断することはできるかもしれませんが、無形の価値を評価することはできません。

財務状況ではなく無形の価値を評価する

では、何十年も一緒に働いてきたチームの価値をどのように算定できるでしょうか。同僚どうしの信頼の価値はどのように測定できるでしょうか。共通のビジョンへの忠誠心、献身、コミットメントはどのように定量化できるのでしょうか。答えはいずれも「できない」です。

ただし、これらの測定不能な要素は、財務諸表の数字と同様、ビジネスの成功に不可欠なものです。私たちは、株式の時価総額や評価額を計算することよりも、活気に満ち、繁栄する企業文化の構築についてはるかに関心があります。あらゆるものを数値に変換するというのは不可能で、またそうするべきではありません。

企業による自己決定の自由を保持する

投資家や株主に支配権を譲ることなく、自社の立ち位置を確立できたグローバル企業はほとんどありませんが、Zoho は例外です。自己資金で起業した株式非公開の会社として25年間存続し、お客さまと従業員にのみサービスを提供しています。

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私たちは何かを成し遂げるためにビジネスを行っているのであり、その何かから逃げ出すためではありません。
シュリダー・ベンブZoho Corporation CEO

企業による自己決定の自由を保持する

Zoho は、自己資金で起業し、創立当初から利益を得ていますが、それは堅実な支出、懸命な働き、そしてほんの少しの運に支えられています。過去には買収の申し入れを受けたこともありましたが、丁重に辞退しました。私たちは、株式公開を期待してビジネスに参入したわけではありません。ソフトウェアを開発するのは、そのことが好きだからです。

過去10年間、何百にものぼる新興のIT企業では、ベンチャー投資家による評価額が上昇と下降を繰り返しています。投資家を迎え入れるということは、大きなリスクを取る自由を手放すことでもあります。私たちは、資金調達を一円たりとも受けたことはありません。それは名誉の証でもあります。Zoho は、お客さまからの支払いでのみ利益をあげており、それ以外の方法で利益を得ることは考えていません。

株式非公開を続けることで、企業として機敏な対応を続けてきました。私たちは、株価ではなく、お客さまにとって何が最良のサービスであるかに重点を置いています。そのため、次の四半期や翌年まで回収の見込みがないプロジェクトにも投資できます。Zoho の人気商品は長年の取り組みの集大成であり、「どんな犠牲を払っても成長する」という考えからは生まれなかったでしょう。

営業やマーケティングよりも研究開発を優先する

ソフトウェアを購入する際、開発の基となるエンジニアリングやそれによって提供されるソリューションを手に入れるために購入します。ソフトウェアを宣伝したマーケティングチームや、最適なソリューションであることを売り込んだ営業チームのために購入するわけではありません。Zoho が研究開発に100%取り組み、これからも常にそうあり続ける理由はそこにあります。

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プライバシー保護を単なるポリシーとしてではなく企業の信念として扱う

Zoho は創立当初から、プライバシーを単なる法的な問題ではなく、道徳的な問題であると考えてきました。そのため、政府の規制によって強制される前から、強固な保護規定を導入し、一貫してデータプライバシーの最先端に立ってきました。

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営業やマーケティングよりも研究開発を優先する

Zoho は、マーケティング事業ではなく、ソフトウェアの開発事業を行っています。では、このことは実際に何を意味するのでしょうか。Zoho では、営業やマーケティング費用の2倍相当を研究開発費用として使用しています。Zoho ソフトウェアはZoho 全社で運用されるため、Zoho 自体が最大規模のベータ版テスターでもあります。このことは、非常に速いペースで新商品をリリースできる理由の1つです。社内運用でニーズが見つかれば、それに対応できるものを開発します。

そのような取り組みにより、買収を通じてポートフォリオを拡大するのではなく、一からソフトウェアスイートを開発しています。SaaSプロバイダには、スタンドアロンの商品を購入して、それを自社の商品エコシステムに移植することで、提供サービスの不足を補っているところがあります。Zoho は、ギャップを見つけたらコーディングを開始します。

研究開発は、必ずしも直線的なプロセスではありません。時には、商品の設計を根本から見直すか、廃棄しなければならない場合もあります。そのため、商品によっては、開発に数か月から数年(場合によっては数十年)かかることもあります。それでも忍耐強く、こだわりを捨てずに乗り越えてきました。商品を自社開発することで、コストを削減でき、従業員のスキルセットを高め、お客さまに提供する商品の価値を高めることができます。それは、誰にとってもメリットになります。

プライバシー保護を単なるポリシーとしてではなく企業の信念として扱う

お客さまのプライバシーに関するZoho の信条は決して変わることがありません。お客さまのビジネスはお客さまのものであり、そのビジネスの向上を支援するのがZoho です。そのため、お客さまのデータに対して、私たちが望まないことは一切しないことに決めました。

Zoho の商品で、たとえ無料プランであっても、外部サービスの広告をプッシュしたことはありません。また、リターゲティング目的でお客さまのクリック動作をマイニングしたり、(さらに悪いことに)それを他社に販売したりすることには関心がないため、2020年にZoho のWebサイトからすべてのトラッカーを削除しました。

規制に従うだけでなく、業界をリードする

「不道徳なことはしない」という考えから始めるのは良いことですが、プライバシーに関しては「適切である」ことの方がより求められます。そのため、Zoho は、お客さまの所在地に関係なく、GDPR に準拠したデータ保護の対象をすべてのお客さまに拡大しました。そして、お客さまのデータ、そのデータへのアクセスと保存に対するお客さまの制御を制限するのではなく、拡大することを常に目指しています。

お客さまのプライバシー尊重が政府の規制の結果であってはなりません。Zoho では、創立当初からプライバシーの尊重を織り込み済みです。

利益の追求を最優先にしない

お客さまより利益を優先すれば、結果的にどちらも失うことになりかねません。私たちは、お客さまの成長の妨げとなり、市場から追い出すことになる高額なライセンス料は請求せず、お客さまが成功を収められるよう支援します。

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私たちは、お客さまに多額の支払いを強いることなく、技術や生産性の成果を享受していただきたいのです。
シュリダー・ベンブZoho Corporation CEO

利益の追求を最優先にしない

急を要さない、長期的な売上を計画しているのであれば、下降気味の収益レポートを立て直すのに、不当な料金設定や複数年にわたる封じ込めなどの略奪的なビジネス手法は必要ありません。

そのような戦略で、善意やお客さまとの信頼関係を築くことはできません。そして長期的なビジネス関係を成功させるためには、信頼関係や善意が不可欠です。

共に成長するための料金設定

代わりに、私たちが目指しているのは、相互に利益を生むためのバランスポイントを見つけることです。ユーザーに損害を与えるほど多額の料金を請求することも、優れた商品を開発し続けることができなくなるほど安価な料金を請求することも望んでいません。Zoho の料金設定を競合他社の料金と比較すると、そこにはパートナーシップの精神がより分かりやすく現れています。

実際のところ、ジャーナリストやアナリスト、パートナーやお客さまからも、料金はもっと高くしてもよいのではないかと言われ続けてきました。とは言え、喜んでより高い料金を支払ってくれる人がいるからといって、それを請求すべきということにはなりません。結局は、ユーザーが繁栄すれば、私たちも繁栄することになるのです。お客さまが成長すれば、私たちも成長できます。

ただし、最も重要なことは、サービスの提供先であるユーザーを犠牲にして、私たちが成長すべきではないということです。

顧客第一のビジネスモデルの成果

私たちは、「投資家への配当」に足を踏み入れる代わりに、価値のある商品に正当な料金を設定することに満足しています。そして、これもまた、お客さまの信頼と忠誠心を育むことにつながっています。それは、良識が利益の追求よりも大切であることを示しています。そのことは、企業文化や顧客関係、そして大きな決断をする理由や方法に現れます。

変化と継続性のバランスをとる

過去25年間、Zoho では多くの変化が見られました。新しいテクノロジー、新しいビジネスモデル、新しい規制など、変化はいつの時代にも存在します。私たちは最先端のテクノロジー企業であることに誇りを持っていますが、その一方で、これまで変えずに続けてきたやり方や、価値観を守りながら革新的であることを示してきたやり方にも、同じように誇りを持っています。

私たちは、古き良き方法で企業の構築を行ってきた、最先端のテクノロジー企業です。
シュリダー・ベンブZoho Corporation CEO

Zoho では、開発する商品が変わることがあっても、それに従事する人たちが変わることはありませんでした。市場は混乱にあふれているかもしれませんが、私たちの価値観は揺るぎませんでした。業界全体は、ここ数年だけでも成長と失敗を繰り返してきましたが、ビジネスに対するZoho の真摯で謙虚なアプローチは変わっていません。

そして、Zoho は今後25年間も、変わらぬ信念でさらに成長することを計画しています。

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