Zoho One をグローバル共通基盤に。
インスタリムが海外拠点で“使われる仕組み”を構築した理由

- インスタリム株式会社
- 所在地東京都墨田区横川1-16-3 Center of Garage Room 06
- 業種ヘルスケア(医療・福祉機器の研究開発・製造販売など)
- ビジネスBtoB/BtoC
- 設立2017年3月31日
グローバル市場向けに義肢装具の製造プラットフォームを提供するインスタリム株式会社は、日本・インド・フィリピンの3か国で事業を展開するなか、海外拠点における顧客管理や業務プロセスの整備に課題を抱えていた。そこでまず、インド、フィリピン拠点に Zoho CRM を導入。その後、Zoho 製品のカスタマイズ性や統合性に手応えを感じ、Zoho CRM をはじめとする50を超えるアプリケーションを統合的に提供する「Zoho One」をインド、フィリピン拠点へ導入した。
これにより、同社ではセールスのステージ管理や業務プロセスの可視化が進み、的確な改善施策を実施できるようになった。さらに、Zoho One により標準的な業務基盤の整備が進み、今後のグローバル事業の拡大を支える基盤づくりが前進した。
Zoho One 導入の経緯や具体的な活用方法、導入効果について、インスタリム株式会社CEOの徳島 泰氏、CTOの今 信一郎氏、Vice President, IT Departmentの谷 和晃氏、Assistant Managerの須藤 加奈氏の4名に聞いた。
「世界には義肢装具を必要としながらも十分に入手できていない方が約9,000万人から1億人いるとされています。当社は直営のクリニック事業に加え、各国の医療機関へソリューションを提供する事業も広がるなかで、Zoho One によるグローバルな業務基盤が不可欠だと考えています」
インスタリム株式会社CEO 徳島 泰氏
「必要とするすべての人」への
質の高い義肢装具の提供をミッションに、インドをはじめグローバルに事業を展開
― インスタリムの事業概要について教えてください。
今 信一郎氏(以下、今氏):当社は「必要とするすべての人が、質の高い義肢装具を手に入れられる世界を実現する」をビジョンに掲げ、3Dプリント技術やAIを用いた義肢装具製造プラットフォームを提供しています。
現在、世界には糖尿病の合併症や交通事故、紛争などにより足を失い、義肢装具を必要としながらも十分に入手できていない方が約9,000万人から1億人いるとされています。しかし、従来の義足の標準的な価格は1本あたり数十万円ほどであり、新興国やグローバルサウスでは平均年収の数倍にあたることも珍しくありません。こうした社会課題を解決すべく、当社は独自の3Dプリント技術とAIによる自動設計システムを開発し、製造コストを10分の1以下に低減しました。納期も大幅に短縮し、義肢装具を必要とするすべての方に安価で製品を提供できるよう、さまざまな国で事業を展開しています。
須藤 加奈氏(以下、須藤氏):現在、当社は日本、インド、フィリピンの3か国に拠点を有し、主に2つの事業を展開しています。一つが直営クリニックを通じて義肢を提供する「クリニック事業」、もう一つが3Dプリンターや3Dモデラーなどを提供する「ソリューション事業」です。
当初はインドやフィリピンでのクリニック事業が主軸でしたが、コロナによる対面接触の制限を背景に、クリニック事業では遠隔製造モデルが始まりました。一方、「ソリューション事業」はこうした デジタルの柔軟性を評価したインドやフィリピンの、従来は手作業で義足を製造している事業者から、当社の3D技術を導入したいという要望が寄せられたことをきっかけに始まりました。
ソリューション事業には、以下の2つのモデルがあります
- ライセンスモデル(機器のみ提供)
- フランチャイズモデル(機器だけでなく、事業運営に必要な技術やノウハウを包括的に提供)
ここでいうフランチャイズモデルとは、総代理店(マスターフランチャイズ)に対するビジネスとなりますが、このビジネスモデルは、現在、当社がグローバルに事業を拡大するうえでの原動力になっています。
徳島 泰氏(以下、徳島氏):創業の一つのきっかけは、私が2012年にJICAの派遣する「青年海外協力隊」に参加したことです。私は工業デザイナーの経験があったため、フィリピンでものづくりやデザインの視点からの貧困対策に取り組んでいたのですが、その当時、フィリピンの政府関係者から「義足を作れないか?」と相談を受けました。それまで義肢装具に関心を持ったことはなかったのですが、そのときに初めて世界における義足不足の現状を知り、「何とかしなければ」と使命感のような感情が芽生えました。それがきっかけとなり、インスタリムを創業しました。世界初となる義肢装具製造専用の3Dプリンターを開発し、2019年からフィリピンで下腿義足の販売を開始しました。


スプレッドシート中心の管理体制が営業推進や技術開発の妨げに
グローバル展開を加速するため、業務基盤の強化を目指した
― Zoho One を導入する前の課題を教えてください。
谷 和晃氏(以下、谷氏):海外拠点における顧客管理や業務プロセスの整備が、事業拡大のボトルネックになっていました。当時、インド・フィリピン拠点では、顧客管理や商談管理をスプレッドシートで行っていたため、リードや商談のステータス、顧客情報などを正確に管理できていない状況でした。
インド・フィリピン拠点で展開しているクリニック事業では、SNS広告などを通じてリードを獲得し、見込み顧客をナーチャリングしながらクリニックでの検査に誘導し、脚切断部のスキャン、義肢装具の製造などのプロセスを経て、製品の提供に至ります。つまり、製品の提供までに数多くのプロセスを経るため、商談ごとに細かなステージ管理が必要です。しかし、スプレッドシートでの管理では、入力漏れや更新忘れが度々発生し、現地の営業担当者に入力を依頼しても、遠隔拠点ということもあり統制が難しい面がありました。
今氏:顧客管理や商談管理の不備は、私たち開発側のスタッフにとっても不都合でした。どのような製品が求められているのか、逆にどのような製品のニーズが低いのかが可視化されないため、今後の技術開発の見通しがつきにくいのです。より市場のニーズに即した製品を開発するためにも、管理体制の強化が必要でした。
谷氏:さらに、管理体制の不備は組織拡大の妨げにもなります。当社の目標は、世界中の義肢装具を必要とする方に義肢装具を届けることです。その実現に向けては、世界の多くの国や地域に進出しなければいけませんが、セールスや経理、人事労務などの管理体制がしっかりと確立されていなければ、事業展開は難航します。当社のビジョンを実現するためにも、セールスやマーケティングに留まらない管理体制の強化が求められていました。

フィリピン拠点での Zoho CRM の活用に手応え
インド拠点の設立に合わせ、「グローバルな業務基盤」を構築するためZoho One を導入
― Zoho One の導入に至った経緯をお聞かせください。
谷氏:当時の導入は取締役の足立が中心となって進めており、私自身は後から経緯を聞いた形になりますが、2022年4月にインド・フィリピン拠点へ Zoho CRM を単体で導入したのがきっかけです。まずは顧客管理の整備を目的に CRM を導入し、その後、海外拠点での運営を見据えて業務基盤全体の見直しが行われました。インド拠点の立ち上げを契機に業務基盤全体の見直しが行われました。
Zoho CRM を選定した理由は、価格面での優位性と優れたカスタマイズ性です。当社は成長フェーズの企業であるため、大規模な IT 投資は容易ではありません。その点、Zoho CRM は手頃な価格で利用を開始できます。また、クリニック事業では、製品提供までに数多くのプロセスを経るため、管理項目などを柔軟にカスタマイズできる機能が必須でした。この点でも Zoho CRM は要件を満たしていました。その後、インド・フィリピン拠点での Zoho CRM の活用に社内でも手応えが得られたことから、2022年8月に Zoho One の導入を決定しました。

― Zoho CRM からZoho One に移行した一番の決め手は何だったのでしょうか。
谷氏:Zoho One がグローバルでの多拠点展開に適した統合型ビジネスプラットフォームだったことです。限られたリソースのなかで、いかに強固な業務基盤を構築するかが最大の論点でした。
インドでの業務基盤の選定にあたっては、Salesforce やインドで広く普及しているERP なども比較検討しました。しかし、Salesforce は CRM 業界の標準ではあるものの、周辺業務は別途構築が必要であり、コスト面の負担も大きい。一方、インド発ERPの多くは会計中心のオンプレミス型であり、グローバル展開には適さないという判断に至りました。
その点、Zoho One はCRM に加え、会計、人事労務、ヘルプデスクなど、幅広い業務に対応するアプリケーションを備えています。新興国やグローバルサウスの拠点では、複数のツールを導入すると 現地スタッフに定着しにくいことがあります。ひとつのプラットフォームにすべてが統合されている Zoho One であれば、現地スタッフにも浸透しやすく、結果として管理コストや教育コストも抑えられます。
また、拠点を横断したデータ連携も容易なため、将来的に世界各地への進出を見据えている当社にとって、Zoho One は非常に適した統合型ビジネスプラットフォームだと考えました。Zoho One を活用してグローバル事業の標準的な業務基盤を整備し、組織拡大の原動力にしたいと考えています。

精緻な商談のステージ管理が的確な改善施策を可能にし、
義肢装具を必要とする人々に届ける仕組みづくりに貢献
業務プロセス全体が可視化され、情報の一元管理が実現
― Zoho One の導入後、まずZoho CRM の活用効果からお聞きします。顧客管理や商談管理の課題はどのように解決されましたか。
須藤氏:精緻な商談のステージ管理が可能になり、社内の商談状況や、セールスから製造までをつなぐ業務プロセス全体が可視化されました。
例えば、商談のステージ管理については、Zoho CRM でリード獲得から受注、さらに製造・納品に至るまでのプロセスを複数のステージで管理しています。以前のスプレッドシートでの管理では、このプロセス自体が曖昧であり、入力漏れなどもしばしば発生していました。しかし、現在では、商談のステージが進む際には、担当者が Zoho CRM に必要な情報を登録しなければならない業務設計を行っているため、入力漏れは大幅に低減し、正確な顧客情報やステージごとの商談数をリアルタイムで把握できます。
さらに、こうした可視化は、顧客管理や商談管理だけでなく、後工程である製造プロセスにも広がっています。従来、セールスと製造の管理は別々のスプレッドシートで行われていましたが、Zoho One の導入により部門間のデータ共有や連携がスムーズになりました。
これにより、社内の業務プロセス全体が可視化され、拠点や部門を超えた情報の一元管理が可能になっています。


― 顧客管理や商談管理の精緻化により、セールス活動にどのような変化がありましたか。
須藤氏:最も大きいのが、「的確な改善施策」を実行できるようになったことです。従来は、管理体制が不十分だったため、業務プロセスのどこにボトルネックが存在しているのか把握するのが困難でした。しかし、Zoho CRM を活用することで、リード獲得が少ないのか、商談化率が低いのかといったボトルネックが把握しやすくなりました。そのため、それぞれのボトルネックにフォーカスした的確な改善施策が可能になっています。
さらに、Zoho CRM に顧客情報が蓄積されることで、新規顧客の取りこぼし削減や過去リードの掘り起こしにもつながっています。従来は、過去リードに再度アプローチするといった作業は手間がかかりすぎるため現実的ではありませんでした。しかし現在は、Zoho CRM に正確な顧客情報が蓄積されており、関連ツールも活用することで、過去リードにも効率的にアプローチできるようになりました。
― Zoho CRM 以外の活用についてはいかがでしょうか。
須藤氏:リード管理に活用しているのが Zoho Desk です。クリニック事業では、SNS広告を中心にリードを獲得しているのですが、見込み顧客が SNS 広告から流入した際の対応や管理に Zoho Desk を用いています。Zoho Desk では、チケットのステータス管理機能を活用しています。新規に発生したチケットにすべて対応できているかを確認するほか、フォローメッセージを送る必要がある保留中のチケットが何日滞留しているかといった点を管理しています。
谷氏:インド拠点とフィリピン拠点の勤怠管理や休暇管理には、Zoho People を活用しています。これにより、従来は拠点ごとにばらつきのあった勤怠管理や休暇申請のフローを、一定の共通基盤のもとで運用できるようになりました。
当社のように海外で事業を展開する企業にとって、「いかに現地のスタッフにシステムの利用を定着させるか」は重要な論点です。当社は日本の約30名に対して海外拠点が約200名と、海外スタッフが大多数を占める組織体制です。この体制を少人数のグローバルチームで統括するには業務ツールが一元化されていることが不可欠でした。顧客管理や勤怠管理、ワークフローなどを別々のブランドで提供すると使い分けが煩雑になり、定着の妨げになります。
その意味でも、Zoho One を導入したことは大きなメリットでした。実際に、多くの現地スタッフが Zoho People や Zoho CRM の操作に習熟し、日常業務で使いこなしています。

谷氏:また、インド拠点では デジタル署名アプリZoho Sign が半年ほど前から積極的に活用され始めました。
利便性が認知され、社内申請・経費精算・定型的な署名業務を中心に利活用が進んでおります。
しかしながら現時点では、外部(お客様)とのやり取りでの活用は限定的であるため、今後はテンプレートを整備した上でさらなる活用拡大を計画しています。

Zoho Oneをグローバルな業務基盤として活用し、
義肢装具を必要とする人々を支えるため、
さらなる事業拡大と業務基盤の拡充を目指す
― 最後に、Zoho One の活用について、今後の展望をお聞かせください。
今氏:今後は、インド・フィリピンでの導入を足がかりに、Zoho One をグローバル共通の業務基盤として活用していく方針です。そのなかで、ソリューション事業の KPI 管理、顧客・案件管理、財務データの可視化なども、Zoho One に一元化したいと考えています。
現在、当社は国連の専門機関である国際連合工業開発機関(UNIDO)が実施する「ウクライナ復興プロジェクト」に採択され、ウクライナで被災した方々への義肢装具の提供にも取り組んでいます。
この例に限らず、世界では義肢装具がまだまだ必要とされています。そうした方々を支援するために、当社は今後、南米やアフリカにも進出する方針です。その際の事業展開を支えるインフラとして、Zoho One を活用していきます。
これまで義肢装具を手に入れられなかった方々に製品を届けられるよう、これからも Zoho One を活かした業務基盤の拡充と事業拡大に取り組んでいきます。

インスタリム株式会社
- 所在地:東京都墨田区横川1-16-3 Center of Garage Room 06
- 業種:ヘルスケア(医療・福祉機器の研究開発・製造販売など)
- ビジネス:BtoB/BtoC
- 事業内容:・クリニック事業
・ソリューション事業 - 設立:2017年3月31日
- URL :https://www.instalimb.com/jp
