顧客体験
世界有数のリサーチ&アドバイザリー企業であるGartner(ガートナー)は、顧客体験を、「提供企業の従業員、システム、チャネル、製品との相互作用で起きる、1回限りの体験の累積的な効果によって引き起こされる、顧客の認識とそれに関連する感情」と定義しています。
つまり、お客さまとの接点となるチャネルが増え続けるなか、“顧客の要望に企業が耳を傾け、統一されたトーンで、高いレベルでパーソナライズされたコミュニケーションを提供すること” が重要となります。より良い顧客体験を提供することは、顧客満足度とロイヤルティの向上につながります。それにより企業は、収益を維持・拡大していくと考えられています。
顧客体験を取り巻く
環境の変化
従来の顧客サービスや顧客満足度向上のための取り組みは、部分的または一時的な施策で、顧客に不愉快な思いをさせない、あるいは顧客が気持ちよく購入できるようにする、といったレベルのものが主になっていました。しかし、この10年~15年の間に、BtoCの取引や、ECサイトによる商品の流通は劇的に増え、さらにTwitter やInstagram などのソーシャルメディアの発達により、顧客と企業との接点が増加しました。また、サイト上での口コミ評価や、動画によるレビューなど、ブランドやサービスが顧客によって評価される機会も多くなりました。
そのため、顧客の体験は商品の購入前から始まり、商品の価格、配送サービス、また、アフターサービスなど、ありとあらゆる場面で顧客は企業やサービスを評価しているといえます。このような中、企業が顧客を満足させ、ロイヤルカスタマーに育てることは容易ではありません。
顧客体験とカスタマージャーニーの重要性
顧客は支払う費用から最大限の価値を引き出そうとし、企業やブランドと関わるすべての体験において満足することを期待しています。そのため企業は、顧客との長い付き合いの中で常に顧客視点を考慮して、製品やサービスを提供することが重要となります。
こうした顧客ロイヤルティを高めるための手法としていま多くの企業で取り組まれているのが「カスタマージャーニー」です。顧客がブランドや商品を認知し、購入、リピート購入する段階で体験する一連のプロセスを旅に例えて「カスタマージャーニー」と呼んでいます。
実際には、戦略の「打ち手」を考えるためでもありますが、顧客への適切なアプローチにつなげる見取り図と考えられます。
好ましい体験は、顧客との絆を深め、信頼感を高め、顧客を維持し、ブランド支持者に変えていきます。また、実際に、顧客体験が他社との競争や差別化において重視されるというデータもあります。(右データ参照)
の消費者は、ある程度は体験だけを基に購入を決める可能性がある
の会社は、顧客体験を競争上の差別化要因であると考えている
の組織は、主にCX(顧客体験)を基準として競争することになると予想している
有意義な顧客体験のメリット
ロイヤルティの強化
顧客維持率の向上
ブランド支持の改善
顧客解約率の低下
優れたブランドイメージの確立
口コミによるおすすめの発生
顧客からの信頼度の向上
顧客満足度の上昇
顧客対応担当部門を統合するメリット
- 各部門で360度の顧客視点が持てる
- ユーザー管理が容易になり、部門を超えてデータの可視性を上げられる
- 複数チャネルのコミュニケーションが統合できる
- 顧客の背景情報を把握でき、適切なフォローにつなげられる
- 部門を越えた横断的思考を促進できる
各部門で360度の顧客視点がもてる
営業チームだけでなく、マーケティングやサポートなど他部門との間で、顧客との接点で得た情報を共有できます。
ユーザー管理が容易になり、部門を超えてデータの可視性を上げられる
すべての部門が同じインターフェースを使用することで、ユーザーアカウントの作成と管理が容易になります。顧客の情報とその情報にアクセスできるユーザーを詳細に管理し、データの可視性と情報へのアクセスを向上させることで、それぞれの部門での対応を強化できます。
複数チャネルのコミュニケーションが統合できる
顧客対応部門が1つの画面上で異なるチャネルをシームレスに切り替えて対応できます。複数のコミュニケーションチャネルにおける顧客の体験を把握し、顧客のニーズに適切な対応をすることが可能です。また、コラボレーションが促進され、部門全体の生産性が向上します。
例えば、新しい製品やサービスをソーシャルメディアでプロモーションする場合、マーケティング部門がTwitter に投稿すると、さまざまな反応や問い合わせを受けます。顧客対応の部門が複数に分かれていると、重要な情報を部門間で受け渡すことが難しくなります。それでは、複数チャネルでのコミュニケーションを統合できたらどうでしょうか? ソーシャルメディアからの問い合わせをマーケティング部門がすぐに営業部門に転送したり、サポートチケットとしてサポート部門につなげたりなど、すべて1つのインターフェースから可能になります。
顧客の背景情報を把握でき、適切なフォローにつなげられる
顧客と適切にやり取りするためには、背景となる情報を把握していることが極めて重要です。顧客の基本情報だけでなく、マーケティングやサポートとのコミュニケーション履歴、営業トークのメモなど、さまざまなやりとりから得た顧客の情報を1つの画面にまとめれば、顧客の全体像を容易に把握できます。
顧客に関するあらゆる情報を把握し、より適切な応対に品質を上げることで、顧客満足度の向上が見込めます。
部門を越えた横断的思考を促進できる
業務部門間の連携が取れていない、いわゆるサイロ化した組織では、それぞれの顧客対応部門が全体的な顧客体験を考慮することなく、異なった目標に向かっていくことがあります。しかし、データを統合し、データ活用が横断的にできるようになると、顧客対応の部門が顧客インサイトを深め、顧客体験に重点を置いた思考を促進できます。
すべての部門が同じプラットフォーム上で作業していれば、タスクを割り当て、アイデアを話し合い、状況を共有してつながりを保てます。このように、部門間でデータの可視性が向上することで、“それぞれの顧客に合わせた体験を提供する”という目標が達成されやすくなります。
各部門における「顧客体験」
(カスタマーエクスペリエンス)
マーケティング部門
マーケティング部門は、日々、Webサイトの更新やメールマガジンの配信、イベントの企画・実施、広告やソーシャルメディアの管理など、さまざまな方法やチャネルで見込み客や顧客にアプローチしています。より顧客視点を考慮したマーケティング活動やコンテンツを検討するためには、営業・サポート部門からの顧客に関する実際の情報はとても重要になります。
また、マーケティング部門が活動を通して得た顧客の詳細情報を営業・サポートチームにも共有することで、各チームからより適切にフォローできます。例えば、イベントに参加された方からの質問や要望を営業にスムーズに連携して商談を進めたり、顧客のお困りごとをサポートチームが迅速に解決できます。
営業部門
同じ商談はひとつもなく、見込み客ごとに要件は異なります。営業担当者は商談のためのフォローや、商談を成立させるために業務時間の大半を投じています。そのため、他の顧客対応の担当部門とのコミュニケーションに割く時間はほとんどありません。しかし、もしマーケティング部門やサポート部門が営業部門の商談時の情報を把握できたら、顧客独自の要望に、より適切に応えることができるでしょう。このように、すべての顧客記録を管理し、異なる部門間の背景情報を結びつける統一プラットフォームは、ビジネスに大きな変化をもたらします。
カスタマーサービス・ヘルプデスク部門
カスタマーサポート部門は、販売後のサポートだけに限定されるものではありません。 製品やサービスの購入前にお問い合わせに対応したり、注文の受付、あるいは製品の修理・交換、クレーム対応などが一般的に含まれます。このような場面で、顧客に対応する際、顧客に関する情報をさまざまな情報を把握しておくことで、顧客に沿ったより良い対応が可能です。
さらに、カスタマーサポート部門が顧客と交わしたやり取りを記録して共有することで、他部門でも背景情報を把握できるため、他部門においてもより良い対応が可能となります。このように、顧客接点において応対品質を高めてゆければ、競合他社に対する優位性を保てるでしょう。
顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)
CXリーダーは、カスタマージャーニーを通じて顧客体験を向上させる戦略を設計して実行します。CXリーダーとしての主な役割は、顧客がさまざまな部門と交わしたあらゆるやり取りを統合し、分析することです。膨大なデータがまとまっていなければ、CX部門が重要なデータを見落としてしまい、結果として戦略に影響を与える可能性があります。
効果的な戦略を立てるためには、指標や顧客データが極めて重要な役割を果たします。さまざまな顧客接点からのデータを統合できるツールがあれば、CXリーダーは、部門横断的なデータ分析を通じて、十分な情報に基づいた意思決定が下せます。
顧客体験管理ソフトウェアの概要
顧客体験管理ソフトウェアは、顧客対応部門のあらゆるデータを収集・統合・分析し、カスタマージャーニーにおいて一貫した優れた顧客体験を提供できるようにするクラウドソリューションです。
- 組織の垣根を取り払い、異なる部門間で容易にデータの連携できます。
- 理想的な顧客体験管理ソフトウェアは、企業はマーケティング施策の目標を正確に設定し、Web訪問者の行動を分析して営業につなげます。また、見込み客に連絡を取る最適な時間帯を提示したり、営業パイプラインのデータに基づいて問い合わせを整理できます。さらに、360度視点で顧客データを見ることができます。
- 優れた顧客体験管理プラットフォームは、メール、ソーシャルメディア、Webチャット、サポート電話など複数のチャネルにおいて、顧客の背景情報をふまえた、パーソナライズされた対話ができるよう支援します。
Zoho の包括的で統合された顧客体験管理ソリューション
Zoho CRM Plusは、営業、マーケティング、サポートの各部門が必要とする機能を1つのインターフェースに集約した、統合された顧客体験管理プラットフォームです。CRM Plus を導入することで、ビジネス上、顧客とやりとりする際のあらゆる接点を統合管理できます。マーケティング施策の企画・運用、見込み客との対話、顧客サポートなどにおいて、より適切で細やかなデータを画面上に呼び出し、活用することができます。
30日間無料トライアル実際のツール連携でできること
営業の自動化
営業部門は、見込み客の状況確認やフォローアップメールの送信など、日常的な営業タスクを自動化できるため、業務効率を上げられます。
Web訪問者の追跡/リアルタイムフォロー
Webサイトの訪問者の閲覧履歴などを把握したり、Webページ上でのオンラインチャットや自動チャットを通して、リアルタイムにWeb訪問者の質問や要望に応えることができます。
カスタマーサービス
購入後の顧客からのサポート依頼や購入前の問い合わせなど、複数チャネルでの問い合わせを管理でき、抜け・漏れなく対応できるようになります。
プロジェクトでの協働
部門を超えてさまざまなメンバーが関わるプロジェクトにおいて、全体の工数管理やタスクの割り当て、進捗管理などが行えます。コミュニケーションや共同作業を円滑に行えます。
メールマーケティング
メールマガジンの配信はもちろん、メールの自動配信を活用して見込み客や顧客に効果的にメールでアプローチすることも可能です。
ソーシャルメディア管理
Facebook、Twitter、Instagram、LinkedIn、YouTube など、複数のソーシャルメディアへの投稿が管理できます。また、ソーシャルネットワークユーザーを見込み客や連絡先としてCRMに登録し、その連絡先から発生した商談を確認できます。
アンケートの活用
アンケートを活用し、顧客からの貴重なフィードバックを得て、ビジネスの強化につなげることができます。
業務分析
さまざまなサービスのデータを統合してレポートやダッシュボードを作成できます。重要な指標(KPI)に着目してビジネスのパフォーマンスを追跡・評価できます。
メールの分類
営業部門が商談ステージに応じてメールを分類し、送信したメールのパフォーマンスを分析して商談のクローズにつなげます。