「利回りファンド」の業務システムを内製化
法改正や制度変更にも迅速対応できる事業基盤を構築

- 日産証券株式会社
- 所在地東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 9F
- 業種金融
- ビジネスBtoC
- 設立1948年1月
1948年に設立された老舗証券会社の日産証券株式会社は、2023年に取扱いを開始した「利回りファンド」のシステムを構築する際、新サービスの立ち上げということもあり、システム開発中においても頻繁に仕様変更となる可能性があることや、システムリリース後において発生する各種法制度の変更や将来的な取扱いサービスの拡充にも柔軟に対応したいとの考えから、現場に近いところでアジャイル開発によるシステムの構築を目指していた。そこで目に留まったのが社内の別部門において顧客管理に使用していたローコード開発アプリである「Zoho Creator」だった。事業担当者を中心に少人数チームで、手探りで始めた開発ではあったが、システム開発プロジェクトは無事完了し、現在ではシステム運用の内製化も実現している。さらに、本システムを雛形にして次なる新サービスに流用するなど、Zoho Creator を事業プラットフォームとして活用している。
「利回りファンド」の事業開発を担当した日産証券株式会社ファンドマネジメント部長の野呂桂一氏ほか4名の担当者に話を聞いた。
「Zoho Creator により業務システムの開発・運用を内製化したことで、法改正や制度変更にも迅速に対応できる体制を構築できました。少人数でも継続的にサービスを改善できることは、大きな強みになっています。」
日産証券株式会社取締役 ホールセール・オンライン事業本部長
平尾 友亮 氏
「金」を強みに、幅広い金融商品を提供
2023年には「利回りファンド」の取扱いを開始
― まず、日産証券の事業概要について教えてください。
平尾友亮氏(以下、平尾氏):当社は東証スタンダードに上場している日産証券グループ株式会社の中核子会社であり、金融商品取引業者・商品先物取引業者として、株式、投資信託、債券、証券デリバティブ取引、商品デリバティブ取引、貴金属地金など、幅広い商品を提供するマルチプロダクト体制を構築しています。昨今、日銀の利上げが行われるなど、金利のある世界への回帰が進んでいる中、先に挙げた価格変動が前提の商品ではなく、固定利回りの金融商品ニーズも増えてきています。そうしたニーズにお応えするため、当社では新たな金融サービスの開発にも積極的に取り組んでいます。
野呂桂一氏(以下、野呂氏):こうした事業方針のもと、2023年にリリースしたのが「利回りファンド」のサービスです。利回りファンドはお客様の資金を企業への貸付で運用します。企業への貸付のため、株式や為替などと異なり価格変動はなく、固定利回りであることから投資が初めてのお客様でも利用しやすいサービスです。また、当社の利回りファンドは、中途解約や追加購入が可能など、類似サービスのなかでは珍しい特徴も備えています。

新サービスの立ち上げにあたり業務システムの開発が課題に
Zoho Creator での内製開発を決断
― 利回りファンドのサービス開発にあたって、内製開発を選んだ理由をお聞かせください。
野呂氏:利回りファンドのサービスを開発するには、顧客情報やお客様マイページ、商品サイト、口座開設ページなどを管理する業務システムを新たに構築しなければいけません。しかし、当社が取り扱う金融サービスは、関連法令の改正に伴い、システム対応が必要になります。その際の改修作業をシステム会社に外注すれば、変更までに多くの時間を要するとともに、継続的な費用負担が発生します。また、利回りファンドは新たな事業であったため、いきなり高額の事業投資や予算確保も困難です。スモールスタートで徐々に事業を拡大していかなくてはいけないため、外注による開発は現実的ではありませんでした。

― Zoho Creator を利用するに至る経緯をお聞かせください。
平尾氏:通常、当社の多くのサービスは対面での営業を前提としていますが、利回りファンドについては、当初からWeb上で契約や取引が完結するオンラインサービスを想定していました。加えて、リリース後も継続的な改善や機能追加を前提としていたため、既存の基幹システムに手を入れていくことは、機能的にも予算的にも制約があり難しい状況でした。そこで、2016年から別部門で導入して顧客管理などに用いていたZoho Creator を利用できないかと考えました。
長谷川尚輝氏(以下、長谷川氏):Zoho Creator が内製開発に適したツールだったのも決め手です。Zoho Creator はローコードツールであるため、事業担当者である私たち自身でシステム開発が可能でした。そうすれば少人数かつ低コストで業務システムを構築できますし、サービスのリリース後には改修作業も内製化できます。
さらに、「事業上の戦略や方針を反映しやすい」という点もメリットでした。例えば、お客様マイページには、私たちの業務フローに適合した導線設計を反映すべきです。しかし、もしシステムの開発や改修を外部に委託すると、まず開発者に事業やサービスについて伝え、そのうえで導線設計の意図や狙いなどを理解してもらう必要があります。その手間は決して少なくなく、事業推進の足枷でもあります。精度の高いサービスを、スピーディーに構築するうえでも、Zoho Creator は有用なツールでした。

事業担当者を中心とした3名体制でプロジェクトを推進
ローコード機能をフル活用し、約7ヶ月でシステム開発からテストまでを完了
― 業務システムの開発体制や開発プロセスをお聞かせください。
長谷川氏:開発担当者は3名です。事業サイドの担当者である私、エンジニアの富田、グループ内のシステム会社からサポートのエンジニアが1名という体制でした。私自身は営業畑のキャリアであり、システム開発の経験はなかったです。
富田翔太氏(以下、富田氏):私は学生時代に情報系の学部でシステム開発やプログラミングについて学んでいましたが、この開発プロジェクトは入社直後の時期です。つまり、事業向けのシステム開発も初めての経験でした。Zoho製品に触れたのも、このときが初めてです。
長谷川氏:開発プロジェクトがスタートしたのは2023年の年明け頃です。役割としては、まず私が新サービスの方針や業務フローを踏まえてシステムの大枠や画面レイアウト、お客様向けの導線などを作成して、その後、富田がシステムの構築やプログラミングなどを担当。さらに、両者の間でフィードバックやテストを繰り返しながら、完成に近付けていきました。
開発プロジェクトは約5ヶ月でシステムを構築し、最後の約2ヶ月はテストに充てました。サービスのリリースにあたって金融当局に相談した期間も含んでいますが、開発の実作業にはそれほど手を煩わされることもなく、主担当3名の体制でもリソースは十分だったと感じています。
富田氏:私も円滑にタスクをこなせたと感じています。例えば、Zoho Creator はユーザー向けのドキュメントが充実しており、かつ体系的に整理されています。そのため、操作やプログラミング言語などについて分からないことがあっても、すんなりと自己解決が可能でした。
また、特に有用だったのが「カスタマーポータル機能」です。お客様ユーザーごとに専用のログイン環境を簡単に提供できる機能で、多要素認証(MFA)をはじめ当社が求めるセキュリティ要件を担保できており、また簡単に設定可能なことから非常に扱いやすかったです。本システムではお客様の個人情報や取引情報を取り扱いますので、データの誤表示や流出など、何か間違いがあれば取り返しのつかないことになります。こうしたことを発生させない仕組みをいかに構築するかが、開発プロジェクトのポイントでしたが、Zoho のポータル機能を活用すればお客様ごとの専用環境からセキュアにログインできるため、画面の誤表示を防げます。操作が容易でありながら、極めて重要な仕組みも盛り込める点が、Zoho Creator の強みだと思います。
平尾氏:セキュリティの観点では、近年、金融業界ではフィッシング被害や不正アクセスへの対策強化が求められており、金融庁もインターネット取引における多要素認証の導入・適用拡大を呼びかけています。
当社でも、お客様マイページで個人情報や資産情報を取り扱うことから、認証基盤の強化は継続的なテーマの一つでした。そうしたなか、Zoho Creator でも多要素認証やパスキー認証に対応しつつあることで、金融サービスとして求められるセキュリティ要件への対応を進めやすい環境となっています。
金融業界では今後も法改正やガイドラインの見直し、新たなセキュリティ要件への対応が求められると考えています。そのなかで、こうした機能強化を迅速に取り込みながらサービスへ反映できることは、継続的なサービス運営を支える重要な要素だと感じています。
また、サービスのリリース前には外部企業によるペネトレーションテスト(侵入テスト)を実施しました。当社は金融サービスを提供しているため、セキュリティには高い配慮が求められます。そのため、新サービスをリリースする際には必ずペネトレーションテストを実施するのですが、利回りファンドのシステムについても無事にクリアしています。内製開発と高いセキュリティを両立できた証拠だと考えています。

新サービスは初年度の目標を達成
内製化で自前での改修が可能になり圧倒的低コストでの事業展開が実現した
― 新サービスのシステムを内製化したことで、どのようなメリットが得られましたか。
平尾氏:まずは大幅なコスト削減効果です。サービス提供に必要な業務システムを一貫して内製開発したため、外注した場合に比べて、圧倒的に低コストで事業を構築できています。なお、利回りファンドのサービスは、初年度に目標としていた顧客数・募集運用額を無事に達成しています。新サービスをスモールスタートで構築し、徐々に拡大していくという当初の狙いを実現することができました。
長谷川氏:継続的にシステムの運用や改修を行える業務基盤を確立できたこともメリットです。例えば、2024年の金融商品取引法の改正により、お客様の購入時にクーリング・オフが義務付けられましたが、その際にも速やかにお客様向けの画面を改修することができました。もし、外部の企業に改修作業を依頼した場合、多くの費用と時間が費やされていたでしょうから、内製化のメリットは大きいです。
原啓氏:Zoho Creator で構築したお客様マイページは、多くのお客様よりご好評をいただいております。特に口座開設手続きにおいてはスムーズに入力できる点が評価されているようです。お客様にとっての使いやすさを追求することは、私たちが提供するサービスの価値そのものを高めることに他なりません。事業担当者としても大変嬉しく、今後の励みとなっています。


2026年、さらなる新サービスを構築
Zoho Creator を事業プラットフォームに迅速かつ価値の高いサービス提供を目指す
― 最後に、Zoho Creator の活用について、今後の展望をお聞かせください。
長谷川氏:実は先日、私たちのチームで新サービス「ゴールド・バンキング」「プラチナ・バンキング」をリリースしました。お客様に金地金やプラチナ地金を寄託いただき、毎月「寄託料」をお支払いするサービスです。このサービスのシステムを開発する際にも、Zoho Creator を利用しました。しかも、その多くは利回りファンドのシステムを雛形にして流用したため、極めて効率的に開発を進めることができました。
このように、現在、Zoho Creator は、当社がサービスを構築・展開するうえでの事業プラットフォームの一つになっています。昨今、生成AIの普及などにより、お客様の金融リテラシーは爆発的に向上しました。こうしたなかでは、サービス提供者である当社も、お客様のニーズを迅速に捉え、サービスに反映していかなくてはなりません。

日産証券株式会社
- 所在地:東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 9F
- 業種:金融
- ビジネス:BtoC
- 事業内容:金融商品取引業、商品先物取引業
- 設立:1948年1月
- URL :https://www.nissan-sec.co.jp/
