広告施策や営業施策の効果をリアルタイムで分析
常識を覆す気付きによって商機をつかむ!

株式会社星野リゾートが運営し、ブライダル事業などを展開する星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳(以下、リゾナーレ八ヶ岳)および星野リゾート リゾナーレトマム(以下、リゾナーレトマム)。同施設のブライダル事業では、顧客接点データの分析からさまざまな事象の原因を深掘りし客観的に把握するために、データ視覚化/分析ツールZoho Analytics を導入。「今までは集計・可視化・分析と打ち手を実行するまでに大変な時間を要していたが、リアルタイムで何がボトルネックになっているかを確認し、非常に短いサイクルで有効な打ち手を実行できるようになった」と星野リゾート ブライダル広告ユニットの鎌田氏は語る。

旅と滞在を通して家族やゲストがひとつになっていく「リゾートブライダル」

株式会社星野リゾート

「今までは集計・可視化・分析と打ち手を実行するまでに大変な時間を要していたが、リアルタイムで何がボトルネックになっているかを確認し、非常に短いサイクルで有効な打ち手を実行できるようになった」

株式会社星野リゾート
ブライダル広告ユニット 鎌田 隆氏

——リゾナーレ八ヶ岳およびリゾナーレトマムについて教えてください。

鎌田氏 リゾナーレ八ヶ岳は、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳山麓にあります。イタリア語で“響きあう”という意味を持つ“RISONARE”。イタリアの世界的建築家、マリオ・ベリーノが手掛けた「大人のためのファミリーリゾート」がコンセプトです。施設内には回廊などもあり、全体をひとつの街として捉えて、街で挙げるブライダル、街全体が祝福するブライダルを体験できます。

リゾナーレトマムは、国内屈指のパウダースノーを楽しめるスキー場や夏の絶景が楽しめる雲海テラスなど、季節ごとのリゾート体験が自慢の北海道最大級の滞在型リゾート星野リゾート トマム内にあります。世界的建築家、安藤 忠雄氏が手掛けた「水の教会」と、氷でできた冬の間だけ出現する神秘的な空間「氷の教会」。この2つの教会が、ここでしか体験できない特別なブライダルを演出してくれます。

ブライダル事業に関していうと、まずどちらの施設もリゾートウエディングとして全国のお客さまを対象としています。滞在や旅を通して家族やゲストがひとつになっていく、挙式や披露宴だけなく滞在を通したすべてが結婚式であるという、2~3時間の一般的な結婚式とは別の魅力の結婚式を提供しています。リゾナーレ八ヶ岳は、主にゲストとなる家族がホテル滞在を通して、自然やアクティビティ、食事などをそれぞれ楽しむことができるのが一番の強みです。一方トマムは、北海道のさまざまな自然に触れながら家族旅行含めたブライダルを満喫できるのが魅力です。

「データ集約のタイムラグ」と「勘頼みの状況判断」が課題

——Zoho Analytics 導入前のデータ集計・分析上の課題はどのようなものでしたか?

鎌田氏 まずデータを集約し、状況を把握する際のスピードに問題がありました。Zoho Analytics と、そのデータソースであるZoho CRM を導入する以前は、お客さまとの接点情報などは施設の営業拠点ごとにすべてエクセルに手入力し、管理していました。成約率などの全社のKPIなどの状況を把握しようとすると、拠点ごとのファイルに分散しているデータを集約し、手作業で再集計する必要があります。それだけでも相当の工数が必要になるため、タイムリーに集計することは現実的に厳しく、原則2週間単位で数値を把握するしかありませんでした。もちろんこのタイミングでは状況の変化に追いつけず、発生した事象に対する対策や施策が遅れてしまうリスクがありました。

——営業プロセスを管理する上で特に課題となる点はどのようなことですか?

鎌田氏 例えば成約に至るまでの営業プロセスの中で、お客さまに実際に来館いただくか否かは重要なポイントです。多くのお客さまが、お問い合わせや資料請求を経て営業拠点やサロンに来館予約をしてお越しいただくのですが、中には予約のみされて実際には来館されないお客さまもおられます。
しかしその原因を探るにも、エクセルで顧客管理を行っていた当初は、過去の実績とヒューリスティックによる仮説により判断していたところがありました。
そこで、Zoho CRM に蓄積されたお客さまとのさまざまな接点情報を、Zoho Analytics 上で分析、活用することで、上記のような営業上の課題や、さらに広告戦略などのマーケティング上の課題に対して、客観的に判断を下すことができるのではと考えました。

個別の施策効果をリアルタイムで把握。課題に対してタイムリーな打ち手が可能に

——主にどのような形でZoho Analytics を活用いただいていますか?

鎌田氏 基本的にブライダル、資料請求やお問い合わせ、来館予約など実際に検討段階にいらっしゃると想定されるお客さまの数を日々追っています。それらの数値の昨対比や例年比を確認したり、事業期や月次、さらに日別でも分析したりしています。例えば、特定月の月初から月末まで日別のトレンドを昨年および一昨年と比較・分析することで今期の傾向を把握し、必要な対策を講じています。データは自社ブライダルサイトと直接連携しているのではなく、いったんZoho CRM に取り込んだ上で、Analytics にて集計・分析を実施しています。

——最もZoho Analytics の導入効果が現れているのはどのような部分ですか?

鎌田氏 各種媒体への広告以外にも、広報としてテレビで施設の映像が流れたり、CMを流したりするなど、さまざまなメディア露出があります。各施策の効果を、Zoho Analytics によってリアルに目で見て確認できるというのが効果としては大きいですね。成果が大きい施策があれば、それを再現することもできるようになります。

最もZoho Analytics の導入効果を感じているのは、状況が停滞したときにすぐに何らかの対策を打てる点です。マーケットが悪いのか、自社の施策に問題があるのか、それとも競合の競争力が増しているのかを判断し、何がボトルネックになっているかを見極めた上で有効な打ち手を実行する。それを非常に短いサイクルで行えるようになりました。今までは2週間サイクルで回していたPDCAサイクルを、ほぼリアルタイムで回せるようになったのは大きな意味があります。

——具体的に成果が現れた実例を教えてください。

鎌田氏 資料請求や来館予約後の成約転換率が低下した場合、対策としてDMを送付してもまったく改善しないこともあれば、顕著に改善することもあります。そういったところが可視化できるところですね。実際にどのような課題や問題があったのかを確認した上で次の対策を打たなければならない訳ですが、このような検証を積み重ねていくことで、どのような媒体にどのような広告を打てば最も効果的かが分かり、施策の精度が向上しました。さらに、クラウド型顧客管理・営業支援システム「Zoho CRM」と連携して、営業プロセスの詳細を分析することができています。それにより、「予約から来館までの期間が一定日数を超えるとキャンセル率が上がる」という知見が得られ、対策を講じたことで来館予約のキャンセル率を50%削減できました。これまでは、ヒューリスティックな仮説により判断していたものが、客観的なデータに基づいて施策を打てるようになったことも大きな成果です。

常識を覆す知見を得て商機を逃さず攻めに転ずる

——Zoho Analytics のメインユーザーはどのような部署・お立場の方々でしょうか?

鎌田氏 さまざまな部署の人間がそれぞれの立場で活用しています。やはり一番よくZoho Analytics を見ているのは、広告戦略や営業戦略などを考えながらマーケット全体を見る必要がある上流工程の部門です。毎朝全社の成約率を見ては一喜一憂しています。その他にも営業部門では、来館から成約までの状況を、少人数のリゾートブライダルと大人数の地元中心のブライダルに分け、さらにエリア別でセグメントしてそれぞれ状況を見ています。また、接客数に対してどれだけ成約に至っているかなど、各拠点や部署独自の切り口で分析・活用しています。

——営業現場ではどのような効果が現れていますか?

鎌田氏 当社のブライダル商品は、各会場の魅力をいかに作ってそれを訴求していくかという「魅力開発」が重要です。各会場の担当者は、どういう傾向のお客さまがいらっしゃるのかをZoho Analytics 上でピボットテーブルやグラフなどを作成して分析し、今後の魅力開発に役立てようとしています。ある程度のITスキルさえあれば、各担当者が自ら必要なレポートやグラフを作成できるところも、Zoho Analytics の評価できる点です。

また、各拠点の担当者がリアルタイムで成約率を把握できるようになりました。これにより、どうすれば成約率を上げることができるのかを自主的に考えるきっかけとなり、チームマネジメントにも生かされています。

また、ブライダル商品でも、地元向けの大人数のものやリゾートタイプの少人数のものなど、マーケットの異なる商品があります。各営業担当者は、地元生まれだったり首都圏に強かったりと、それぞれ得意不得意が出てきます。そのような個人別・セグメント別の成約率を参照しながら、得意なセグメントに担当者を割り当てて成約率向上を目指したり、逆に不得意分野の課題を克服したりするなど、営業効率の向上や個人の成長を支援するような使い方でも効果が上がっています。

——Zoho Analytics 活用によって得られた新たな気付きはありますか?

鎌田氏 新型コロナウイルス感染症拡大の影響によってブライダルマーケット全体は停滞傾向にあります。多くの人が集まることが難しい状況では、なかなかブライダルを検討するのも難しい状況ではあります。しかし当社が提供するリゾートウエディングのスタイルは、家族や親しい友人のみを招待して少人数で開催し、リゾート地での滞在を中心としたプライベートなウエディングであるため、むしろニーズが高まってきています。「ブライダルマーケットは当面厳しい状況が続く」という一般的な見方の中、Zoho Analytics での分析によって上記のようなリゾートウエディングに対するニーズの高まりに素早く気がつくことができ、むしろ強気の広告戦略を展開すべきだという判断をタイムリーに下すことができました。それが功を奏して徐々にお客さまの動きは活発になってきています。

——今後のデータ分析・活用のビジョンをお聞かせください。

鎌田氏 ウエディングサイトの情報やリゾナーレトマムで運用している成約者様向けのコーディネートサイトの情報をZoho CRM 経由で連携し、どのようなお客さまがどのような商品を選ばれるのか、またどうすればさらに単価アップやアップセルにつながるのかを分析することで、広告戦略やマーケティング全体の最適化を実現できればと思っています。

また、ブライダル市場全体の話で言うと、人口減少や結婚しても式を挙げない方も増えているため、市場自体は中長期的には縮小傾向にあり依然厳しい状況です。しかし、例えば晩婚化が進むなどの理由で今後豪華な結婚式よりも少人数や2人きりでやりたいという嗜好が顕著になってくると思われます。そのニーズは、リゾートウエディングを中心とする当社の商品と相性が良いため、ぜひZoho ソリューションを積極的に取り込んでいきたいと考えています。